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私の来歴とAI(001-005)

2025/01/15に公開

Q)微分積分は簡略すぎず厳密すぎない定義を学ぶのが良いか?

数学において、微分積分について、教科書に書いてあるのが、厳密な定義ではなく、簡略な定義であることは何となく察しが付いて、自分で厳密な定義を求め、本を漁ったが、難しすぎて、数学が嫌になって、それ以降は勉強しなくなった。しかし、AIについて、どうしても学びたい。だから微分積分くらいは当然のように扱えなければならない。実際のところ、数学の定理を学んだりしたあとで、ようやくAIの勉強を始めるのでは遅すぎる。

A)結論から言えば、そのアプローチは非常に賢い選択である。

結論から言えば、おっしゃるとおり「簡略すぎないが、厳密すぎもしない程度の定義を学ぶ」というアプローチは、非常に賢い選択だと思います。以下、その理由と具体的な学び方のヒントをまとめます。


1. なぜ「中間レベル」の定義が大切なのか

  1. 直観と理論のバランス

    • 完全に高校教科書レベルだと、どうしても「直観的な説明」や「計算手順」に偏りがちになり、なぜその手順が成り立つか(背景にあるロジック)を十分には感じ取れません。
    • 一方で、大学数学や厳密な実解析(解析学)の文献は、記号論理や公理的集合論に基づいた高度な形式的手法が導入されます。これをいきなり学ぶと、取り扱う概念量が多すぎて混乱が生じやすく、モチベーションを失ってしまうこともあります。
  2. AIを学ぶための実用的な基礎づくり

    • AI、とりわけ機械学習やディープラーニングの数理的な基礎として、連続最適化や確率・統計の知識が必要になります。微分積分はそこに欠かせないエンジンのような存在です。
    • AIの数学的背景をすべて厳密に学んでから取り組むのでは、確かに時間がかかりすぎる可能性があります。大枠をつかみながら、必要に応じて厳密さを補強していくほうが効率的です。
  3. 中間レベルの微分積分が「計算だけ」の理解を超える

    • AIの実装やアルゴリズムの理解では、ただ公式を暗記して計算できるだけでは足りません。ある程度「どうしてこれが成り立つか」のイメージを持つことが大切です。
    • 中間レベルの定義を押さえておくことで、「この式はどんな意味を持ち、どこまで使えるのか」を掴む力が養われます。

2. 具体的にどのようなレベルの定義を狙うべきか

  1. ε-δ(イプシロン-デルタ)の概念は一応踏まえる

    • 極限や連続、微分などの定義でしばしば登場する“ε-δ”の考え方は、解析学の厳密性の肝です。
    • ただし、すべての定理を細かい証明まで学びきる必要はありません。「こういう仕組みで極限を定義している」「ここが曖昧ではなく、しっかり説明できる土台がある」程度を理解すれば十分です。
  2. リーマン積分の定義も、積分のイメージが崩れない程度に

    • 「区間を細分割して足し合わせる」というリーマン和の考え方や、上限・下限(上リーマン和・下リーマン和)の概念は、一度目を通して「積分の厳密さ」がどこから来るのかを味わうとよいでしょう。
    • 完全に厳密な証明(例えばリーマン可積分の判定法など)に深入りする必要はありません。「この仕組みにより、“面積”を数学的に定義しているのだ」とざっくり把握できれば十分役立ちます。
  3. 微分積分学の基本定理(FTC)なども概念を理解

    • 「微分と積分が互いに逆の操作になっている」という微分積分学の基本定理を、数式と少しだけ論理的背景を踏まえて理解する。
    • 完全な証明を追いかけるのではなく、「どうして成り立ちそうか」「そこにはどんな流れがあるか」を捉えるくらいでOKです。

3. どのように学ぶとよいか

  1. 中級レベルの参考書を活用

    • 高校~大学入門レベルの微分積分を扱う解説書で、ある程度「ε-δ定義」「リーマン積分」が載っている本がおすすめです。
    • 数式だけでなく、イラストや図が豊富なものを選ぶと直感的理解も得やすいです。
  2. 「飛ばし読み」「戻り読み」のスタイルで

    • 難しそうな定理や証明が出てきたら、最初から全部理解しようとして立ち止まらない。
    • 必要だと思ったら後で戻って読む(あるいは他の資料を探す)。この「後で戻る」スタイルが、アスペルガー傾向があっても、知的好奇心を長く保てるコツです。
  3. 問題演習は「概念確認」の範囲で

    • 証明問題に全部取り組む必要はなく、「定義や公式を使って計算してみる」程度で自分の理解を確かめる。
    • 証明問題も、興味を持ったものだけ「なぜこうなるの?」と眺めてみるレベルで十分。
  4. AIの学習と並行して進める

    • AIの「ニューラルネットワークの勾配降下法」など、微分積分の概念が出てくる章を読んでみて、「そこで出てくる微分積分はどんなものを使っているか」を確認する。
    • 「こんなところで微分が必要になるのか!」と実感できると、数学の学習意欲が高まります。

4. 漸進的かつ柔軟な学習が最善

  • 焦りすぎず「必要なところだけ厳密さを押さえる」
  • 興味や必要性が出てきたら、もう一歩踏み込んでみる

これらのステップで、「簡略すぎないが厳密すぎもしない」レベルを保ちながら、微分積分をきちんと身につけることができます。そうすれば、AIにおける最適化やアルゴリズム設計の場面で自然と活用できるはずです。

結論として、「AIを学ぶために微分積分が必要。ただし厳密すぎる実解析に飛び込むと挫折しやすい。だからこそ、その中間レベルを丁寧に身につけて、足りない部分は必要になったら補う」という方針は大いに賢明だと思います。どうか無理せず、しかし着実に、AIという最終目的に近づいていってください。応援しています。

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