iPad対応でWAUが3倍になった話 〜大画面での体験最適化から見えたこと〜
こんにちは。PIVOTプロダクトチームでiOSエンジニアをしている、楠瀬(@indiamelaaa)です。
今回は、PIVOTアプリで実施した「iPad対応」によってWAUが約3倍に伸びた取り組みについてご紹介します。
一見すると「ただのデバイス対応」に見える施策ですが、実はその裏でチーム全体の課題認識や仮説検証の在り方が大きく変わりました。
この記事では、背景から実装・検証・結果、そしてそこから得られた学びまで、できるだけリアルにお話ししていきます。
背景
PIVOTではこれまで、スマートフォンを中心に体験設計を行ってきました。
通勤中や就寝前など「片手でサッと見られるUX」を磨いてきた結果、スマホユーザーにとっては快適な体験ができていました。
一方で、リリースからしばらく経過し、ユーザー層が広がるにつれて少しずつ変化が生まれていました。
アプリのデータを分析すると、iPadからアクセスしているユーザーが全体の約10%に達していました。
SNS上でも「家のiPadでPIVOTを見ている」といった投稿が増え、スマホ中心のUX設計ではカバーしきれない利用シーンが見え始めていました。
しかし、当時のUIは完全にスマホ前提でつくられていたため、 以下の問題がありました。
- iPadで動画を再生すると左右に黒い余白が出て没入感が下がる
- ボタンやタップ領域がスマホサイズで操作がしづらい
- フルスクリーン再生がデフォルトでなく、視聴に集中できない
PIVOTアプリのインストールにおける大きな流入導線のひとつに、YouTubeアプリがあります。
- iPadのYouTubeアプリでPIVOTを視聴
↓ - そのままアプリストアからPIVOTアプリをインストール
↓ - iPadアプリの視聴体験が悪くて離脱
このように、「iPad対応をしていないだけで取りこぼしてしまうユーザーが増えてしまっているのでは?」という仮説をもとに、iPadによるUI最適化プロジェクトが始まりました。
実装アプローチ
今回の方針は明確でした。
「大きくつくり変えず、最小の工数で最大のUX改善を狙う。」
つまり、既存の設計思想を壊さずに“動画体験の質”を上げる。
「新機能」ではなく「既存体験のアップデート」に徹する方針です。
技術的なアプローチ
実装はほとんどがSwiftUIですが、一部でUIKitを併用しており、レイアウト分岐の管理が複雑になりやすい構造でした。
そこでまず、共通化できるUIコンポーネントを抽出し、デバイスサイズに応じて最小限の差分を切り替える設計を採用しました。
- 不要なコード修正をしないようにレガシーコードを除去
- 画面サイズ依存のコードを撲滅
- SafeAreaの再定義と、横向き対応時の制約をリファクタリング
- 動画視聴画面のフルスクリーン表示対応
また、スマホアプリでは動画の画質をデフォルトで「低画質」にしていたのですが、iPadだと画質の荒さが目立ってしまうので「高画質」にする工夫も行いました。
UIデザインの変更は大きく行わず、デザイナーと会話しながら改善案を検討しました。
最終的に、実装期間は約1週間。その後、社内でUATを経て公開されました。
まだまだ改善の余地はありましたが、素早く出すことがファーストゴールだったのでアプローチとしては良かったと思います。
結果
リリースからわずか数週間で、明確な数字の変化が見られました。
iPad経由のWAU:3倍以上に増加
社内の他チームからも「iPadでPIVOTで見始めるようになった」という声が出始め、早速嬉しい声を聞くことができました。。
一つの施策が連鎖的に、チーム全体のUXへの意識を変えるきっかけになりました。
学び
この取り組みを通して強く感じたのは、
「小さなUX改善が、プロダクト全体の価値を底上げする」 ということです。
“機能を増やす”のではなく、“既存体験の質を上げる”。
それだけで、ユーザーの使い方が変わり、数字が動く。
そしてもうひとつ、「仮説検証の速さ」 も重要でした。
「iPad対応」というと、あれもこれもやることを挙げればキリがないので大変に聞こえるかもしれません。
しかし、とにかく最小限で素早く出す制約をつくることで、重要なことだけにフォーカスして進めることができました。
このスピード感が、結果を出すための最大の要因だったと思います。
おわりに
以上、iPad対応により、WAUが大幅に伸びたことをお話しました。
UXの改善は、地味なようでいて“プロダクトを成長させる最も確実な手段”です。
これからもPIVOTでは、ユーザーがどんな環境でも快適に使えるよう、細部まで磨き込んでいきます。
最後まで読んでいただきありがとうございました。
もし似たような課題を感じている方がいれば、ぜひこの事例を参考にしてみてください。
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