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「スピール溝」とは ── 日本一わかりやすい解説

2024/12/07に公開

本記事は全く同じ内容の記事をQiitaで公開しているが、Qiitaにプログラミング以外の技術記事を公開するのは不適という考えがあるため、削除等に備えて転載したものである。

背景

学校のCAD課題で図面上に「スピール溝」という見慣れない指示を目にしたが、インターネットの海を彷徨っても情報がほぼ皆無(2023年2月時点でGoogle検索のヒット2件)であったため、本記事の公開に至った。

スピール溝の検索結果

上述した2件の検索結果は、それぞれ1972年と2007年に公開された文献であり、ともに用語についての説明はされてない。
よって本記事は「スピール溝」という用語について解説した唯一のインターネット記事となる(執筆時点)。

結論

スピール溝とは、下図のような菊座金(歯付座金/ベアリングワッシャ)の舌(内径側に付いている突起)を噛み合わせるため、軸に対して施される溝のことである。

菊座金
出典: https://www.nikki-tr.co.jp/html/lock_nuts2_AW.html

使用目的

ラジアルベアリングを軸に固定する手段の一つにベアリングナットを用いる方法がある。しかしベアリングナットはねじによって締結されているだけなので、軸の回転により緩みが発生する。

この問題を回避するため菊座金を使用する。べアリングとベアリングナットの間に菊座金を挟み、外径側の歯をベアリングナットの溝に、内径側の舌をスピール溝に噛み合わせることで、ベアリングナットの回転は軸と完全に固定され、ねじの緩みを防止することができる。

組立図
出典: https://www.fun.co.jp/u-town/products/fine-u-nut/

キー溝との違い

スピール溝と同じような機能を持つものとして、キー溝がある。
軸との締結にキーを用いる場合はキー溝、菊座金を用いる場合はスピール溝と呼ぶようだが、後者も含めキー溝としている資料もあった。

キー溝は JIS B 1301:1996 によって規格が存在するが、スピール溝には規格の存在が確認できなかった。ミスミのサイトでは「歯付座金具溝」として軸径に対する寸法が記載されているので、設計の際にはこちらを参考にするのが良いだろう。

不明点

「スピール溝」の語源については今回の調査では明らかにならなかった。「キー溝」は「キー」をはめ込む溝であるが、スポール溝にはめ込まれる菊座金または菊座金の舌部分が「スピール」と呼ばれている事例は確認できなかった。

スピールの外国語表記も不明である。英語で「スピール」と発音しそうなスペル(spealやspeel, spielなど)で、washer, keywayといった関連用語ともに検索をしてみたが、有益な情報を見つけることはできなかった。

平行キーのことを「スッピル」と呼称することがあるそうだが、これとの関係の有無も不明である。

まとめ

スピール溝と呼ばれる構造について、その形状や機能を理解することができた。一方、スピール溝という呼称は(少なくとも現在では)一般的ではないため、極力避けるべきである。

キー溝によく似た機能を持ち、実際にキー溝と呼ばれることも多いため、これに倣い「キー溝」と呼称するのが妥当だと思われる。キー溝との区別が必要な際は「歯付座金溝」と呼んでも良いだろう。

また明確な規格が存在しないため、キー溝と異なる寸法を適用したい場合には詳細な寸法を図面上に指示するのが望ましい。

スピール溝についてより詳細な情報をお持ちの方は、コメント等で是非ご教授いただきたい。

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