既にあるRailsプロジェクトにBulletを導入してN+1を検知する
こんにちは。
PharmaX でエンジニアをしている諸岡(@hakoten)です。
この記事の概要
Ruby on Railsのアプリケーションで「N+1」というパフォーマンス問題を自動で検知する方法として、「Bullet」という大変便利なツールがあります。
この記事では、開発初期の段階でBulletを導入していなかったRailsアプリケーションに、後からBulletを導入した際の運用事例をご紹介します。
※ この記事では、「N+1問題」の詳しい内容については、触れていませんのでご了承ください。
Bulletで検知できることの簡単な説明
Bulletを使うと主に次の3つの問題を検知することができます。
問題の種類 | 説明 |
---|---|
N+1クエリ問題 | N+1クエリが発生している箇所を警告する。 |
Eager Loading | 必要のない場所でEager Loadingが使用されている場合に警告します。また、Eager Loadingが必要だが、実際には使用されていない箇所についても警告します。 |
counter_cache | countクエリを使用している箇所で、counter_cacheを使っていない箇所を警告します。 |
これらの検知については、次の設定で個別に有効/無効を切り替えられます。
# N+1クエリ
Bullet.n_plus_one_query_enable = false
# Eager Loading
Bullet.unused_eager_loading_enable = false
# counter_cache
Bullet.counter_cache_enable = false
PharmaXでのBulletの運用方法
具体的にPharmaXでどのように運用を始めたかをご紹介します。
Bulletの実行環境
Bulletは通常、development(開発時)
やtest(CIなどのテスト)
で利用されますが、PharmaXではテスト(RSpec)時のみ有効化しています。
主な理由は次のとおりです。
- テストカバレッジは既に80%程度あるため、テストだけでもある程度の動作担保ができる
- APIサーバーとしてRailsを使っているため、開発時もテスト実行で検知したほうが使いやすい
段階的な運用
今回は、既にあるプロジェクトに対してBulletを導入するため、「現時点で発生している警告をどうするか?」という問題を検討する必要がありました。
理想としては、CIを含めたテスト実行時にエラーでテストを失敗させたいのですが、既存のエラーを完全に解消するには少し時間がかかるため、最終的に以下の運用フローを取っています。
段階①: テストは失敗させず、Sentryへエラーを送る
PharmaXでは、エラートラッキングツールとして Sentry
を使用していて、既存のエラーが解消できるまでは、Sentryへエラーを通知し、CIのテストは失敗させない運用に決めました。
当面は、定期的にSentryをチェックし、既存のエラーを全て解消することを目指します。
- environmentは他エラーと分けるために「develop」に設定しています。
- Bulletからは「UniformNotifier::Exception」という例外が送られます。
段階②: テストを失敗させる
段階①で発生したエラーを修正し、既存のエラー数を0にできたら、Sentryへの通知を停止し、テスト失敗時にエラーを出す運用に移行する予定です。
テストでBulletを使うときの設定
テスト実行時にVulletの検知を有効にするには、次のような設定をしています。
config.after_initialize do
Bullet.enable = true
# ① まずはsentryにエラーを送信する
Bullet.sentry = true
# ② 全ての既存エラーがなくなったら Bullet.raise に切り替えテストを失敗させる
# Bullet.raise = true
# rspecのファイルは除外する
Bullet.stacktrace_excludes = ["_spec.rb"]
end
if Bullet.enable?
config.before(:each) do
Bullet.start_request
end
config.after(:each) do
Bullet.perform_out_of_channel_notifications if Bullet.notification?
Bullet.end_request
end
end
Sentry
へ警告を送信するには Bullet.sentry = true
の設定を行うだけで可能です。
Bullet.raise
をtrueにすることで、警告時にエラーを発生させることができます。(段階①の現時点では設定していません。)
eager_loading の検知は、RSpecファイル内でも行われてしまうようなので、_spec.rb
ファイルは対象から除外しています。
[余談]Bullet.sentryとBullet.raiseは併用できない
余談ではありますが、少しハマった箇所があったため記載しておきます。
Bulletには、非常多くの通知チャンネルがあり大変便利ですが、「Sentryへの通知(Bullet.sentry
)」「エラーのスロー(Bullet.raise
)」という2つの設定は同時に有効にならないという事象がありました。
具体的には、次のように2つの設定をtrueにすると、Bullet.raise
のみ有効になります。
Bullet.sentry = true
Bullet.raise = true
挙動が気になり、少しコードをみてみたのですが、Bulletでは通知のシステムをuniform_notifierという別Gemに切り出していて、このgemの挙動のようでした。
uniform_notifireでは次の箇所で、通知可能なnotifierを定義しています。
一方Bulletでは、このAVAILABLE_NOTIFIERSを設定どおりに順に有効にし、有効なnotifierから通知を投げるという仕組みになっているようです。
正確ではないかもしれませんが、AVAILABLE_NOTIFIERSの順番として、sentryよりもraiseの方が先になっているため、エラーが先にスローされてしまい、後ろのsentryの通知は動かないという挙動なのかなと思いました。
(Bulletでnotifierをactiveにする処理)
(Bulletでactiveなnotifierを発火させる処理)
現時点ではエラーを発生させつつSentryにも通知する必要はないですが、将来的にそのような要件が出てきた場合は、issueやPRを送ってみようと思っています。
終わりに
以上、既存のRailsプロジェクトにBulletを導入した事例について書かせていただきました。
以前(4~5年前)に使っていた頃よりも、通知方法が拡充され非常に便利になったなと感じました。とりあえず既存のエラーを解消して、CI時のチェックでエラーにできるように対応を進めていこうと思っています!
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