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スクラムマスターが担うべき役割と必要なスキルについて

2024/11/08に公開

はじめに

こんにちは。PharmaXでエンジニアリングマネージャーをしている古家(@enzerubank)です。
社内の共有用にスクラムマスターの役割について言語化しているので、記事にしてみました。

スクラムガイド2020の定義

スクラムガイド2020にはスクラムマスターの役割は下記のように定義されています。

スクラムマスターは、スクラムチームの有効性に責任を持つ存在

さまざまな形でスクラムチームを⽀援する

  • ⾃⼰管理型で機能横断型のチームメンバーをコーチする
  • すべてのスクラムイベントが開催され、ポジティブで⽣産的であり、タイムボックス
    の制限が守られるようにする
  • スクラムチームが完成の定義を満たす価値の⾼いインクリメントの作成に集中できるよう支援する
  • スクラムチームの進捗を妨げる障害物を排除するように働きかける
  • スクラムチームがスクラムフレームワーク内でプラクティスを改善できるようにする

さまざまな形でプロダクトオーナーを⽀援する

  • 効果的なプロダクトゴールの定義とプロダクトバックログ管理の⽅法を探すことを⽀
    援する
  • 明確で簡潔なプロダクトバックログアイテムの必要性についてスクラムチームに理解
    してもらう。
  • 複雑な環境での経験的なプロダクト計画の策定を⽀援する。
  • 必要に応じてステークホルダーとのコラボレーションを促進する

スクラムチームと組織において、スクラムの理論とプラクティスを全員に理解してもらえるよう⽀援する

  • 組織へのスクラムの導⼊を指導・トレーニング・コーチする
  • 組織においてスクラムの実施⽅法を計画・助⾔する
  • 複雑な作業に対する経験的アプローチを社員やステークホルダーに理解・実施しても
    らう
  • ステークホルダーとスクラムチームの間の障壁を取り除く

スクラムガイドの定義をスクラムマスターのレベルと比較

スクラムガイドの定義を見ると働きかける対象がスクラムチームと組織の両方あることがわかります。
いきなり最初からどちらも対象にするのは現実的ではないよなぁと感じていたので、レベルのようなものがあるとわかりやすいです。

スクラムマスターとしてのレベルを判断するにはこちらのScrumMasterWayが参考になりました。

ScrumMasterWay(スクラムマスターの道)

スクラムガイドの「さまざまな形でスクラムチームを⽀援する」と「さまざまな形でプロダクトオーナーを⽀援する」はレベル1(私のチーム)がメインで、レベル2(人間関係)も一部やるくらいの状態なのかなと思いました。

「スクラムチームと組織において、スクラムの理論とプラクティスを全員に理解してもらえるよう⽀援する」に関してはステークホルダーとスクラムチームの障壁を取り除くくらいはレベル1-2の段階で取り組むと思いますが、組織全体にアプローチするのはレベル1-2が十分に達成できたと感じる時になってからがよさそうです。

まずはスクラムチームを「良いチーム」「すごいチーム」にする所に集中したいですね。

スクラムを回すことで成し遂げたいこと

スクラムマスターはスクラムを有効的に実践させることによって組織の成功に貢献することが目的です。
この組織の成功の定義は、組織のフェーズや状況によって異なるでしょう。

弊社の場合は、チームトポロジーでいう所のストリームアラインドチームが「高速で仮説検証サイクルを回せるチーム」として自己組織的に継続的成長できるようにスクラムに取り組んでいます。

まだ小規模な組織でスクラムチームとしては1チームしかないので、今後スケール期には複数チームでも高速仮説検証がキープできるような体制にしていく必要があるなと思っています。

弊社で実際にどのようにチームを成長させていっているのかについては、2024年11月15日の開発生産性Kaigiで話す予定なので、興味ある方はご覧ください。

スクラムマスターの動き方はチーム段階によって変わる

スクラムマスターのリーダーシップの取り方はタックマンモデルのチームの状況によっても変わります。
いつでもサーバントリーダーシップ型のコーチングのスタイルが良いかといいとそうでもないです。

最初の方はスクラムマスターがティーチングやファシリテーションをしつつ、POやメンバーと協働しながらルールを整備し、少しずつコーチングスタイルにシフトして委譲していきます。

実際の動き方についてはこちらの記事がわかりやすかったです。

https://zenn.dev/heromina/articles/29e9771698237f

スクラムマスターに求められるスキル・知識は広いので、1人で全部やろうとしない

スクラムマスターに求められるスキル・知識領域についてはScrumMasterWayのコア要素とアジャイルの傘が参考になります。

スクラムを効果的に実践して組織を成長させていくには、スクラムの知識だけでは駄目で、背景にあるマインドセットやアジャイルの価値観・他のプラクティス(XP/カンバン/FDDなど)の理解や、深い人間的スキルの習得も求められます。

最初から全てを身に着けている人はめったにいないと思うので、スクラムマスターの役割を仲間に知ってもらい、足りない部分は補ってもらえるように動くことが大切です。


ScrumMasterWay(スクラムマスターの道)


https://x.com/tnagasawa/status/1386857998367158275

まとめ

今回スクラムマスターの役割について整理してみて「スクラムマスターも大変だな」となりました。

弊社ではまだ専任スクラムマスターは置けていないため、私がエンジニアリングマネージャー(ピープル主体)とスクラムマスターを兼任しています。

エンジニアリングマネージャーとしては組織構造自体にアプローチしたり、人事権を活用して採用・目標設定・評価に関わることで、1人1人の働きがいやパフォーマンスを向上させ、開発組織の持続可能性を高めることにコミットしています。

スクラムマスターとしてはスクラムチームを良いチームにするために諸々の整備をやっていく必要があり、自分もチームの一員としてチームの価値の最大化に貢献できるので、エンジニアリングマネージャーとはまた違ったやりがいがあるなと感じています。

記事の中でも書きましたが、スクラムマスターの役割は非常に大きく、学ぶべきスキル・知識も広いので、勉強は日々しながらも仲間とお互い補い合いながら、良いチーム・良いプロダクトを作ることに向き合っていきたいと改めて思いました!

参考資料

スクラムマスターを1年間経験して変わったこと
(公開版)スクラムマスターはどのように成長するのか
えぇ!?はじめてのスクラムマスターでも新卒研修で最高のスクラムチームを作れるようになれるって本当ですか?
#ScrumMasterWay(スクラムマスターの道)
スクラムチームの成長に向けて
勝手に成果を出し続けてしまうスクラムチームの作り方
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ベロシティ Deep Dive。スクラムにおけるベロシティのアンチパターンと適切な使い方とは(中編)

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