KDE neon で fcitx5-mozc による日本語入力環境をセットアップする
KDE neon における日本語入力 (IME) のセットアップ方法がやや複雑なため解説します。
Linux 環境ではおなじみの mozc (Google 日本語入力のオープンソース版) と、KDE で主流のインプットメソッドフレームワークである fcitx5 をセットアップします。
今回の設定環境は下記の通りです。KDE neon は Ubuntu の LTS をベースにしているものの、KDE 関連のソフトウェアに関してはローリングリリース (随時メジャーアップデートが入る) のため、時期によって UI が異なる可能性があります。本記事も不定期的に更新する予定です。
- 検証日: 2024年10月22日 (アップデート全適用済)
- KDE Plasma のバージョン: v6.2.1
- デスクトップ基盤: Wayland
- X Window System の場合は設定方法が異なります。KDE neon は普通にインストールすれば Wayland になっているはずです。
IME のインストール手順
1. パッケージのインストール・アンインストール
まず以下のコマンドを実行しました。
sudo apt install fcitx5-mozc # (1)
sudo apt remove --purge im-config # (2)
まず、fcitx5-mozc
をインストールします。fcitx5 などその他の必要なパッケージも、依存関係により自動的にインストールされます。(1)
しかし、これにより連鎖的に im-config
がインストールされてしまいます。
(fcit5-mozc
> fcitx5
> im-config
という連鎖依存)
im-config
がインストールされていると、インストール時に /etc/X11/Xsession.d/70im-config_launch というファイルが作成され、どうやらこのファイルを経由して GTK_IM_MODULE
と QT_IM_MODULE
の両変数が OS 起動時かログイン時かに設定されてしまうようです。GTK_IM_MODULE
と QT_IM_MODULE
は、X Window System では必要なのですが、Wayland 環境ではこれらの環境変数が設定されていると問題が発生します。
幸い im-config
は fcitx5
の Recommends
(推奨パッケージ) として指定されているようですので、fcitx5
を維持したまま im-config
の削除が可能です。(2)
apt remove
コマンドに --purge
オプションを付けないと /etc/X11/Xsession.d/70im-config_launch は残ってしまうので注意して下さい。
(任意) 不要な IME 関連パッケージの削除
デフォルトでは不要な IME 関連パッケージがインストールされていますので、お好みで削除してください。
sudo apt remove anthy maliit-framework maliit-keyboard
sudo apt autoremove
Anthy についてはご存知の方も多いと思いますが、Mozc が出てくるまで Linux 用でデファクトスタンダードであった日本語入力エンジンです。
Maliit はモバイル環境に対応したインプットメソッドフレームワークで、おそらく KDE の提供するモバイル環境 Plasma Mobile 向けとしてのものが混じっているのではないかと思われます。
2. GUI 上での設定
GUI 上の設定に進みます。
2-1. キーボードレイアウトの設定
KDE の設定画面から Keyboard > Keyboard と進みます。左上の検索ボックスから Keyboard と検索しても構いません。
- まず、上段の Keyboard のセクション内にある、model の設定があっているか確認して下さい。恐らく OS インストール時に設定したキーボードモデルが反映されていません。現代の多くの Windows 向けキーボードは Generic | Generic 105-key PC で問題なく動作するはずです。
- 次に、下段の Layouts の Enable がオフになっている (disabled 状態である) か、もしくはEnable がオンになっている場合は、その下に Japanese のみが表示されていることを確認して下さい。
2-2. Fcitx 5 を IME として設定
次に、KDE の設定画面 > Keyboard > Virtual Keyboard を開き、Fcitx 5 を選択します。
私の環境は "Fcitx 5 Wayland Launcher ..." というものも表示されていたのですが、こちらを選んでもうまく fcitx は動いてくれないようです。
2-3. Fcitx で Mozc を使うよう設定
画面右下のシステムトレイにキーボードのアイコンがあるので、クリックし、出てきたコンテキストメニューの中から Configure をクリックすると、fcitx の設定画面が出てきます。
尚、キーボードのアイコンは2種類あり、下記のケーブルが上に付いている方のキーボードアイコンの方をクリックして下さい。
下記の左上に緑の点が付いており、ケーブルが付いていない方のアイコンは別のアイコンですので、間違えないように注意して下さい。
さて、ここまで来ると、見慣れた画面だという方も多いのではないでしょうか。
画面左下の Select system keyboard layout ボタンを押すと下記のようなダイアログが表示されるため、Language: Japanese、Layout: Japanese、Variant: Default を選択し OK を押します。
左側の、Current Input Method (現在有効になっている IME の一覧) に Keyboard - Japanese がない場合、「キーボードに対応した IME がないけど、インストールする?」(Your currently configured input method does not match your selected layout, do you want to add the corresponding input method for the layout?) と聞かれます。Yes を押すと Keyboard - Japanese が有効化されてしまいます。
今回は Mozc を使いたいので、No を押しましょう。
ウィンドウ右側の Available Input Method (利用可能な IME の一覧) から Mozc を探し、画面中央にある < ボタンを押すことで、左側の Current Input Method (現在有効になっている IME の一覧) に Mozc を入れることで、Mozc が使えるようになります。
Keyboard - Japanese は、入力メソッドがオフの際に使われるキーボードレイアウトのようです。Mozc があれば不要ですので、画面中央の > ボタンを押して無効化しましょう。Keyboard - English (US) も、IME を無効化すれば英語モードになるので、こちらも無効化して構いません。
これでキーボードの「ひらがな」キーを押せば、fcitx 5 と mozc が有効化され、日本語が入力できるようになるはずです。
下記が最終的な設定画面の状況です。
もしかすると OS アカウントへの再ログインまたは OS 再起動が必要な可能性もあるかもしれません。もしうまく IME が動かなければ、再ログインや再起動を試してみて下さい。
3. Snap からインストールした Electron 製アプリへの対処
Spotify や VSCode など、Electron 製のアプリは、デフォルトでは Fcitx 5 による日本語入力ができません。起動コマンドに --enable-features=UseOzonePlatform --ozone-platform=wayland --enable-wayland-ime
というオプションを付けると正しく日本語入力ができるようになります。(アプリによっては --ozone-platform=wayland
だけで良いケースもあります)
起動コマンドの編集は以下の手順で可能です。
- アプリケーションランチャー (Windows の Windows メニューボタンに相当) を右クリックし、コンテキストメニューから Edit Applications をクリック
- KDE Menu Editor というウィンドウが開くので、対象の Electron アプリケーションをクリックし、General タブ → Command-line arguments の欄に
--enable-features=UseOzonePlatform --ozone-platform=wayland --enable-wayland-ime
を追加する。
この問題は長らく Electron 製アプリの Snap パッケージに存在してきましたが、Electron 側でようやく進展があったようで、近いうちにこの作業は必要なくなりそうです。🎉
Chromium の Snap パッケージにもかつてこの問題が存在しましたが、現在は解消しているようです。
Input Method Panel ウィジェットは追加しない
以前は Input Method Panel というウィジェットを追加しておくと、Windows のように IME 関連のメニューを表示してくれていました。
しかし、現在はこのウィジェットを追加すると、Fcitx のロゴであるペン? を持ったペンギン (Tux 君) が2匹表示されてしまっており、やや動作が変になっているようです。
現在は Input Method Panel を追加しなくても、システムトレイの方にペンを持った Tux 君が1匹追加されており、そちらから Fcitx や Mozc の設定に飛べるようになっていますので、こちらを使うのがおすすめです。
4. 確認
念のため、OS を再起動 (再ログインだけでも良いかも?) した後にターミナルで
echo $GTK_IM_MODULE
echo $QT_IM_MODULE
を実行し、両変数の中身が空になっていることを確認しておくと良いと思います。
空になっていれば成功です。
クレジット
本記事は KDE のフォーラム KDE Discuss に私が投稿した下記の記事を修正して掲載しています。
コメントで頂いたアドバイス等も一部反映しています。
上記の初版の作成においては以下の記事を参考にしました。
蛇足と言い訳
IME の設定一つに踏まなければならないステップが多すぎるので、私の方でもそのうち時間を作って、どうにか修正できないか KDE neon のメンテナーの人に連絡を取りたいなー…などと言っていたのですが、半年経った今も未だコントリビュートできてません…
主要な更新の履歴
- 2025.09.19 Snap からインストールした Electron 製アプリへのワークアラウンドを追加
- 2024.11.01 Input Method Panel の追加は推奨しないよう記述を変更
- 2024.10.22 初版
Discussion