動画視聴に適したBluetooth音声コーデックを調べてみる
はじめに
以前に個人的な趣味で調べてみたので
もし誰かのお役に立てばと思いコラムとして残しておきます。
Bluetoothトランスミッターとは
Bluetooth非対応機器と有線接続することで、Bluetooth通信を可能にする機器です。
以下の画像みたいなやつです。
モード
だいたいのトランスミッターは以下の2つのモードが搭載されています。
TX(トランスミッター)
送信側で使用する場合のモードです。
テレビやPCに接続してその音声をBluetoothで送信します。
スマートスピーカーやワイヤレスイヤホン/ヘッドホンで受信します。
RX(レシーバー)
受信側で使用する場合のモードです。
コンポやスピーカーに接続してBluetoothで送信される音声データを受信します。
スピーカの無線化を実現したい用途の場合はこちらのモードを使います。
送信元は、iPhoneなどのスマホやPCとなることが多いです。
調査課題1
用途
テレビ・PCにトランスミッターを接続し、TX(トランスミッターモード)で利用します。
- 映像をテレビ・PC
- 音声をワイヤレスイヤホン
解決したい疑問
テレビ・PCの映像と受信機器を介して聴く音のズレが発生しないようにするには
どうするのが最善かを知りたいです。
前提
Bluetoothは送信側/受信側で最新のverで通信することとします。
※Bluetoothは下位互換も可能なため通信はできるが、verが低い方の転送速度に準拠してしまうため、
verを合わせた状態を仮定します。
仮説
Bluetoothの音声転送方式をどれにするかで「音ズレ」が発生するかどうかがほぼ決まるのではないか?
コーデック調査
現在Bluetoothの音声転送方式として代表的なものの一覧を以下に示します。
トランスミッター、受信機器は、対応しているコーデックが、製品によってマチマチです。
そのため、どのコーデックに対応した製品を選択すればよいかを明確にすることが疑問解決と同義となります。
コーデック | 信号処理 | ハイレゾ | 遅延 | 備考 |
---|---|---|---|---|
SBC | 48kHz/16bit | × | 220ms±50ms | 必須対応コーデック。これに対応していないBluetooth通信機器は存在しない。 |
AAC | 48kHz/16bit | × | 120ms±30ms | Appleが採用したことで広まったiPhoneやiTunesに代表されるコーデック。データ容量の割に音質が高い。 |
aptX | 48kHz/16bit | × | 70ms±10ms | クアルコムが所有するプロプライエタリの音声圧縮コーデック。CDと同品質の音質と言われる。 |
aptX LL | 48kHz/16bit | × | 40ms未満 | aptX Low Latency(低遅延)コーデック。aptXコーデックからの派生でより低遅延を実現したコーデック。音質もaptXと変わらないとされる。 |
aptX HD | 48kHz/24bit | ○ | 約130ms | aptXコーデックからの派生でより高音質を実現したコーデック。その分転送速度を犠牲にしたため、遅延は拡大。 |
aptX Adaptive | 48kHz/24bit | ○ | 50ms〜80ms | 転送のビットレートを自動で変更して転送する、可変転送方式。CDと同品質の音質と言われる。利点は接続の安定性が増す(通信途切れの発生が少ない)と言われる。 |
LDAC | 96kHz/24bit | ○ | 1,000ms前後 | 高音質コーデック。音声の質を追求したコーデック。データ容量が大きく転送速度は大きく遅延する傾向にある。いわゆるハイレゾといわれているものと同品質の音質と言われる。 |
結局どれがいいの?
映像視聴に適さないコーデック
必須コーデックのSBCは0.2秒ほどの遅延が発生します。(検証済)
人間の耳でも明らかに音ズレを認識するレベルでした。
AACや高音質を目指すaptX HD、LDACも転送速度を犠牲にするため同様です。
ただし、これらの高音質コーデックは音楽を聴く分には最適だと思います。
映像視聴に適したコーデック
aptXは0.08秒程度の遅延、aptX LLは0.04秒程度の遅延とされています。
この2つのコーデックであれば、人間の耳で音ズレを認識しない程度のズレでおさまると思われます。
検証
aptXはbluetooth経由と、直接のテレビ出力音声を同時に聞くと音ズレが認識できるが
bluetooth経由のみで聞くとズレは気にならないレベルでした。
aptXLLはbluetooth経由と経由しないテレビ出力音声を同時に聞いてもズレがほぼ感じられませんでした。
余談
有線接続の場合でも微かな遅延が発生します。
転送遅延は0.01~0.02秒といわれています。
最適なのは
「aptX LL」コーデックでした。次点で「aptX」
※トランスミッター、受信機器ともにaptX LL対応しているものを用意すればよいです。
※トランスミッターによっては同一製品のTXモード、RXモードそれぞれ対応コーデックが異なるものもあるので注意が必要です。
調査課題2
解決したい疑問
テレビ・PCとトランスミッタ間の有線接続方式はどれが良いか知りたいです。
接続方式 | 音量調整 | 音質 | 備考 |
---|---|---|---|
AUX | テレビ・PC側で可能 | アナログから変換しているのでそこまで高くはない。(気になる程ではない)また、小さな音はアナログ→デジタル信号変換時にロスが発生することがある。つまり、聞こえない音が発生する。 | いわゆるイヤホンジャック |
RCA | テレビ・PC側で可能 | テレビ・PC側本体でアナログ→デジタル信号変換しているのでテレビ・PC側とそん色ない音質。アナログ→デジタル信号変換時にロスもない。 | オーディオ電子信号出力。いわゆる赤白黄コードの赤と白 |
光デジタル | テレビ・PC側で不可能 | 受信側機器(イヤホン等)にて音量調整機能があればそちら側での調整は可能。テレビ・PC側本体でアナログ→デジタル信号変換しているのでテレビ・PC側とそん色ない音質。光ファイバーのため転送速度も速く、アナログ→デジタル信号変換時にロスもない。ただし、出力が独立しているためトランスミッタで転送している機器(bluetoothイヤホン等)と同じ音声がテレビ・PCからも個別に出力される。テレビ・PCの音量を0にする等で対応可能 | 光ファイバーを利用したオーディオ電子信号出力。HDMIの音声出力部分と同じ方式 |
結局どれがいいの?
一番良いと思われるのは光デジタル、次点でRCAと判断します。
AUXはトランスミッタへの出力にはあまり適さなそうです。
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