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技術ブログはなぜ止まるのか?—テックブログから始めるDevRel入門

に公開

「採用広報に限界を感じ、次はDevRelだ!とテックブログを始めたけど、半年で更新が止まりました」
「エンジニア組織開発も兼ねて勉強会をやってみたけど、3ヶ月も続きませんでした」
「DevRelをとりあえずやらねばとConferenceスポンサーをしてみたけど、1回きりでした」
 →「・・・どうしたらいいですか?!」

人事や広報担当者、また開発組織のHRBPの方から、最近よくこういう相談を受けます。
そう、技術広報は“燃え尽き”が早いのです。
けれど、だからこそいま DevRel(Developer Relations) に注目が集まっています。

海外では事業成長の戦略として広がるこの考え方、日本ではまだ「採用広報」の文脈でしか使われていません。しかし、これを「採用目的」だけに留めてしまうのはあまりにももったいない。
なぜならDevRelは、採用・事業・組織すべてに効く“長期資産”だからです。

この記事では、現在「AI x HR」で様々なプロダクトローンチにチャレンジしている「PeopleX」社でDevRelを担当しており、過去複数社でDevRelのコンサルティングを行なった筆者の経験から

  • なぜDevRelをやる必要があるのか
  • 最初の半年で何から始めればいいか
  • 次の1年で何を広げていけばいいか

を、簡単に解説していきます。
ぜひ技術広報やエンジニア採用、開発チームの組織開発に悩んでいる方に届くと嬉しいです。


DevRelとは何か?

DevRelを直訳すると「開発者との関係構築」。
海外では「APIやSaaSの普及戦略」として根付いています。

イベントや勉強会、コミュニティ活動、メディアでの情報発信など、さまざまな施策を通じて自社サービスと外部の開発者をつなぐ、どちらかというとマーケティング的な活動を指します。

ただ、日本ではまだ「開発者向けの広報活動」=技術広報という理解で十分です。
採用目的を源流に普及しましたし、担当者も採用やブランディングの現場にいる方や、エンジニアの方でも上長から採用を目的としたミッションとして渡される方が多いと思います。

原理原則を気にする方もいるとは思いますが、個人的には、まず動くために・継続するためにも、正しさよりも動機に繋がることが大切だと思っています。


DevRelをやらない企業が抱える3つのリスク

1. 開発メンバーを採用できない

エンジニアは求人票だけでなく、技術ブログ・登壇実績・OSS活動など様々な開発組織の活動を見ています。
「ここなら成長できそう」「自分の力が生かせそう」「開発環境やポリシーに共感できる」と思ってもらえる発信があるかどうかが応募の分かれ目であり、内定承諾率にも大きく影響します。

2. 技術ブランドが築けず売上に影響する

開発者だけでなく、顧客や投資家も「この会社の技術力は信頼できるのか?」を気にしています。
アクティブな技術の発信や、適切な開発スタンスの共有は、営業活動にも大きく寄与するのです。
DevRelは採用だけでなく企業価値の可視化にも直結します。

3. 社内エンジニアの成長機会が閉ざされる

「自分の発信が外に届く」ことは、エンジニアにとって大きなモチベーションになります。
DevRelの推進による発信活動により、メンバーに多様な発信機会を提供でき、またその過程で情報を整理することにより成長が見込めます。また社外のエンジニアとの交流も増えることで、技術的なフィードバックも得ることができ、企業の技術向上に繋がる可能性もあります。


最初の半年でやるべき3つのこと

DevRelは、小さく始めて止めないのが鉄則です。
最初の半年〜1年は、次の3つに絞りましょう。

  1. テックブログ(月1~2本でもOK)

    • 社内勉強会の内容をまとめるだけでもいい。
    • 大事なのは“続けて出ること”。
  2. 勉強会を外に公開

    • すでにやっている社内LT会をそのまま発信するだけでも効果大。
    • Youtubeがベストだが、これをテックブログネタにしてもOK。
  3. 採用広報との連動

    • ブログや登壇記事をnoteや採用サイト、Engineer Entrance Bookに掲載。
    • 候補者が検索したときに“技術が見える”状態をつくる。

これをやるだけで「技術に前向きな会社」という空気が市場に広がり始めます。
裏を返すと、これをやれている会社がほとんどないんです。
それだけこの程度をやることが、非常に難しいことと言えます。
まずは欲張らず、上記からチャレンジしましょう。


テックブロブ継続のためにやるべき3つのこと

とはいえ、小さく始めろと言われてもテックブログの継続は難しいもの。
継続のために私が気をつけていることを3つ紹介します。

  1. 目的は共有するが、それを採用にしない

    • ブログを書くのは各エンジニアであって人事ではない。採用が目的では続かない
    • 「自社の開発を社会に届ける」「自分の学びを誰かの役に立てる」といったポジティブな発信のループを心掛ける
    • (ただみんな優しいので、採用軸も結果として意識してくれることが多い。感謝。)
  2. 業務と報酬のバランス

    • 経営と協議し業務として明確に定義。執筆時間を確保することへの心理的ハードルを下げる
    • 業務になることで、カレンダー管理や執筆へのコミットメントも促せる
    • 特に賞賛や表彰などの意味報酬を積極的に活用し、発信する楽しさを感じてもらう
    • 自分が一番の読者に。他部署メンバーにも積極的にポジティブフィードバックに参画してもらう
  3. 書きやすい環境の整備

    • テックブログハンドブックを整備し、レギュレーションや書く内容を明確にし、かつ、できるだけハードルを下げる
    • ハンドブック内で、代表的な他社のブログを紹介してイメージをつけてもらう
    • テンプレを複数用意したり、コンテンツメニューで具体テーマをいくつか出すことで書き出しやすくする
    • (PeopleXのはこんな感じ。ご興味あれば共有するので連絡ください)
      PeopleXのテックブログハンドブックの例

採用広報と違い 自分で書くわけではない 点がポイントです。
あくまでも「書いてもらう」ので 筆者ではなく編集者の立場 で、絶対的な味方として支援し続けることが大切です。

2ヶ月前に始めた弊社ブログも、メンバーのおかげでコツコツと形になっています。
ぜひフォローしてください!
https://zenn.dev/p/peoplex_blog


次の1年で広げる選択肢

半年〜1年間続けて基盤ができたら、次の1年では少し外に広げていきましょう。
チャレンジし続けることで、飽きの解消にもなります。

  • コミュニティ活動
    勉強会やOSS活動に参加・主催することで「仲間と学べる会社」と印象づける。

  • カンファレンス登壇・スポンサー
    技術ブランドを一気に広げられる場。採用だけでなく事業への信頼にもつながる。

  • 開発者向け教材整備
    APIドキュメントやハンズオン教材を用意することで、候補者だけでなく顧客にも価値を提供できる。

ここからは、会社のフェーズやリソースに応じて選んでいけばOKです。


DevRelは「採用のため」から始めていい

ここまで読んで「結局、採用目的なんだな」と思った方もいるかもしれません。
その通りです。最初はそれでいいのです。

大事なのは、採用だけで終わらせないこと。
採用で火をつけた発信を、そのまま「技術ブランド」「事業の信頼」「社内エンゲージメント」へと広げていく。

冒頭でお伝えした通り、技術広報は燃え尽きが早く継続する難易度が非常に高い。
またmustではなくniceな側面が強いため、予算も出づらい。

だからこそ目的が明確で、かつ予算も出やすい採用目的から割り切って始めてしまい、目的達成のために努力する。

結果的にそれを「継続」することができたとき、DevRelは単なる採用施策ではなく、本来の目的を果たすような施策に昇華します。
ぜひまずは一歩目を踏み出してみてください。


というわけで

「最初は採用のためでいい」と自分で言い切ったので、弊社の紹介です!笑
シード調達24億円弱という潤沢な資産で、AI面接など複数のAIプロダクトを積極的に開発しています。
ぜひまずはカジュアルにお話しましょう!
https://hrmos.co/pages/peoplex/jobs

Engineer Entrance Bookも読んでね
https://engineer-entrance.peoplex.jp/

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