アジャイルとウォーターフォール⑧ ~「属人化」への考え方と対応~
はじめに
プロジェクト管理手法として知られるウォーターフォールとアジャイルは、それぞれ異なる特徴と利点を持っています。その中でも「属人化」、つまり特定の人に依存するリスクへの対応は、両者で根本的に異なるアプローチが取られています。ウォーターフォールでは「属人化を許さない」ことが重要視される一方で、アジャイルでは属人化についてそれほど言及しない傾向があります。本レポートでは、ウォーターフォールとアジャイルにおけるプロジェクトメンバーの考え方や属人化防止対応の方針、またウォーターフォールが属人化を避けることを強調し、アジャイルがそれほど強調しない理由についても考察します。
ウォーターフォールの属人化防止
ウォーターフォールでは、プロジェクトの進行を明確なフェーズに分割し、それぞれのフェーズで役割分担を厳密に行います。属人化を防止するために、各工程における詳細なドキュメント化が重視され、担当者の交代が生じた場合でも「スポッと抜いてスポッとはめる」ように、他のメンバーが即座に引き継げる体制を整えています。このアプローチでは、担当者が「部品」のように取り替え可能なリソースとして扱われ、特定の個人に依存せず、プロジェクト全体の安定性や予測可能性を重視しています。
ウォーターフォールでは属人化を避けることが強調されがちですが、これは、計画や進捗の安定を重視するウォーターフォールにとって、特定の人に依存することがスケジュール管理や品質の安定を阻害するリスクがあるためです。また、担当者が途中で離脱した場合の影響を最小限に抑え、確実に進められる体制が求められることから、ドキュメント化や役割分担の厳格化が必須とされます。
アジャイルの属人化対応
アジャイルでは、プロジェクトを柔軟に進行するために、メンバー間の有機的なつながりや協力体制が重視されます。この手法において、属人化が発生した場合でも、他のメンバーがそれを補えるようにするため、チーム内のスキルや知識を積極的に共有する仕組みが整えられています。アジャイルチームは「粘菌」のような構造を持ち、あるメンバーが抜けても、残りのメンバーがその役割を「ねばっと」埋めることができる柔軟な体制が特徴です。
さらに、アジャイルでは「T字型人材」の育成が推奨されており、専門分野を持ちながらも他の領域にも柔軟に対応できるよう、メンバーがチーム内でスキルを広げ合うことが求められます。このため、特定の役割に固執せず、プロジェクトの進行や課題の解決に柔軟に対応できることが重視され、属人化が発生した場合でもチーム内で自然とそのリスクが吸収される構造になっています。
アジャイルが属人化をそれほど強調しない理由は、アジャイルが本来、個々のスキルと知識が相互に補い合える柔軟性を前提としているためです。属人化を避けるよりも、チームが互いに協力し、状況に応じて最適に動くことが重視されているため、ウォーターフォールのように「属人化を避ける」という観点が強調されません。属人化が起きてもチーム内の他のメンバーが即座にカバーできるような設計がアジャイルの本質であり、その柔軟な仕組みにより特定の個人に依存するリスクを自然に緩和する狙いがあるのです。
まとめ
ウォーターフォールとアジャイルでは、プロジェクトメンバーの役割や属人化に対するアプローチが大きく異なります。ウォーターフォールは、計画と安定性を重視するため、人的リソースを取り替え可能な部品のように扱い、ドキュメントに基づいた役割分担によって属人化を防ぎます。一方、アジャイルは柔軟性と連携を重視し、チーム内の知識共有やT字型人材の育成を通じて、属人化が起きてもメンバー全員でそのリスクをカバーできる粘菌のような構造を採用しています。
この違いから、ウォーターフォールでは属人化を避けることが重視され、アジャイルではそれをそれほど強調しない背景が見えてきます。プロジェクトの性質や目標に応じて、最適な管理手法を選択することが重要です。
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