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ウォーターフォール&アジャイル② ~プロジェクトの性質的違い~

2024/10/23に公開

はじめに

ソフトウェア開発におけるプロジェクト管理は、さまざまな方式や契約形態を用いて進行します。特に「ウォーターフォール」と「アジャイル」という2つの代表的な方式は、その性質や目的が異なることから、それぞれ異なるプロジェクトに適した特徴を持っています。本レポートでは、まずプロジェクト管理の基本的な概念である「鉄のトライアングル」を解説し、その後にウォーターフォールとアジャイルの開発方式と契約形態の違いについて考察します。これにより、各方式の特徴や適用場面について理解を深めることを目指します。

鉄のトライアングル

プロジェクト管理において重要な考え方として「鉄のトライアングル」があります。これは、プロジェクトの進行を「スコープ(実現する機能の範囲)」「コスト(予算やリソース)」「スケジュール(開発期間)」の3つの要素で捉え、それらが互いにトレードオフの関係にあることを意味します。すべての要素を同時に最大限に満たすことは不可能です。これは、各要素が他の要素に依存しており、1つを増やすと他の要素に負荷がかかるためです。たとえば、機能を追加すれば、コストが増え、時間も長くかかるため、この3つの要素のバランスを取ることがプロジェクト成功の鍵となります。

スコープを固定した場合

スコープ(機能の範囲)を固定する場合、プロジェクトの仕様や実現するべき機能が最初に定義され、それを変更しないことが前提となります。これにより、コストやスケジュールはスコープを実現するために調整されます。しかし、スコープを固定すると、追加の要件や新しいニーズに対応することが難しくなり、その結果として予算が増加したり、納期が延びることがしばしば起こります。スコープを守るためには、コストや時間の調整が必須となります。

スケジュールとコストを固定した場合

一方で、スケジュールとコストを固定する場合、与えられた時間と予算の中で、実現できる範囲が制限されます。この場合、スコープは最も柔軟な要素となり、プロジェクトの進行に応じて機能の一部を削減する必要が出てくることがあります。限られたリソースの中で最大限の価値を提供するために、重要度の低い機能が後回しにされたり、除外されることがあり、スコープの柔軟な管理が求められます。

契約形態と開発方式

ソフトウェア開発の進め方には、ウォーターフォール型とアジャイル型の2つの代表的な方式がありますが、それぞれの方式と契約形態には密接な関連があります。これらの契約形態は古くから民法で定められており、多くの人にとって馴染み深いものです。
民法の規定に基づく契約形態は、現在のソフトウェア開発方式よりもずっと前から存在しています。ウォーターフォールやアジャイルの開発方式は比較的最近のものですが、これらの方式に適した契約形態として、すでに民法で定められていた「請負契約」や「準委任契約」が活用されています。

ウォーターフォール開発と請負契約

ウォーターフォール開発では、プロジェクト開始時にスコープを固定し、それに基づいてコストとスケジュールを決定して進めます。この開発方式は、成果物の完成を前提とする「請負契約」と相性が良いとされていますが、これはあくまで相性が良いというだけであり、契約形態と開発方式が必ず一致する必要はありません。ウォーターフォールと同様に、アジャイル開発でも相性の悪い契約形態を採用すると、プロジェクトが失敗に終わりやすく、裁判沙汰になることも少なくありません。ただし、請負契約では発注側と受注側の間で責任の所在が明確に分かれているため、互いの要求や期待がギスギスしやすく、関係が緊張することが多いです。請負契約では、事前に合意された仕様に基づいて成果物を提供する義務があり、これに基づいてプロジェクトが進行します。
なお、ウォーターフォール開発でもスコープ変更することは可能ですが、これは通常、再契約や大規模な会議を通じた正式な合意が必要です。スコープ変更はプロジェクト全体に大きな影響を及ぼすため、慎重に扱われます。

アジャイル開発と準委任契約

一方で、アジャイル開発はスコープを柔軟に調整しながら進める方式であり、コストとスケジュールを固定し、その範囲内で成果物を段階的に提供します。この方式は、業務を遂行すること自体が目的である「準委任契約」と合致します。準委任契約では、プロジェクトの進行中に定期的に作業内容を確認し、優先順位やスコープを調整していくことが可能です。これにより、変化する要件に柔軟に対応することができるため、顧客のニーズや市場の変化に敏感なプロジェクトに向いています。

まとめ

どちらの開発方式でも、相性の悪い契約形態を採用すると、プロジェクトが失敗に終わりやすく、裁判沙汰になるリスクが高まることがあります。契約形態と開発方式の相性を理解し、適切な組み合わせを選択することが、プロジェクトの成功において非常に重要です。
本レポートでは、開発プロジェクトにおける「鉄のトライアングル」を基に、ウォーターフォールとアジャイルの違いについて考察しました。ウォーターフォールはスコープを固定し、請負契約と相性が良い一方、アジャイルは柔軟にスコープを調整しながら進める方式であり、準委任契約と適合します。これらの方式と契約形態の違いを理解することで、プロジェクトの特性に応じた最適な開発方式の選択が可能となります。それぞれの方式の強みと弱みを把握し、適切に活用することが、プロジェクトの成功に繋がるでしょう。

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