ウォーターフォール&アジャイル② ~鉄のトライアングル~
はじめに
プロジェクト管理における鉄のトライアングル(スコープ、スケジュール、コスト)は、プロジェクトの三要素をどのように管理しバランスを取るかを示す基本的なフレームワークです。ウォーターフォールとアジャイルは、それぞれ異なるアプローチでこの三要素を扱いますが、現実のプロジェクトではどちらも理想通りに機能しない課題が存在します。本レポートでは、まず鉄のトライアングルの概要を説明し、ウォーターフォールとアジャイルのアプローチを分析したうえで、プロジェクトの本質に基づいた結論を導きます。
鉄のトライアングルとは
鉄のトライアングルは、スコープ(成果物や要件)、スケジュール(納期)、コスト(予算)の三要素が相互に依存する関係を表しています。たとえば、スコープが拡大すればスケジュールが延びたりコストが増加したりする一方で、スケジュールやコストを厳格に制約すればスコープを削減せざるを得なくなります。これら三要素のバランスをどのように管理するかが、プロジェクト成功の鍵とされています。
ウォーターフォールのアプローチ
ウォーターフォールでは、スコープを最優先で固定し、それに基づいてスケジュールとコストを計画するのが基本的な考え方です。
こちらは、計画段階での詳細な要件定義を重視し、計画通りに進行することで成果物の品質を保証します。このアプローチは、要求が安定している場合や、変更がほとんどない環境においては有効です。
しかし、プロジェクトが「新しいことを行う」という本質を持つ以上、スコープを完全に固定することは現実にはほとんど不可能です。顧客の要求が変化し、市場環境が予期せぬ方向へ進む中では、スコープは動的に変化せざるを得ません。ウォーターフォールでは、スコープの変更が計画全体に重大な影響を与えるため、スケジュールの遅延やコストの超過が頻発します。このように、スコープを固定しようとする行為は、プロジェクトの本質を無視した硬直的なアプローチと言えます。
アジャイルのアプローチ
アジャイルは、スケジュールとコストを固定し、その範囲内でスコープを柔軟に調整することを基本としています。
こちらは、プロジェクトの進行中に変化する要求に対応しやすく、顧客のフィードバックを反映しながら価値の高い成果を提供することを目的としています。短い反復サイクル(スプリント)で進行し、各サイクルごとにスコープを見直すことで、柔軟性と適応力を持ったプロジェクト運営が可能です。
そもそも、開発プロジェクトにおいて、スコープの変更は意外と柔軟に対応されることが多いものです。たとえば、A機能、B機能、C機能を含む製品の開発において、C機能を省略しても影響は少ないといった判断が下されることは非常によくあります。こうしたスコープの縮小は、プロジェクトの進捗が予定より遅れている場合や、リソースが不足している場合にしばしば行われます。特に、製品のコアとなる機能が明確に定義されている場合には、周辺的な機能を削減することが品質や納期を守る上で合理的な選択となるのです。
一方で、スコープの変更とは逆に、予算を追加で確保できる、あるいはリリース時期を延長できるという状況は、スコープ調整ほど頻繁には発生しません。特に、予算の増加は、プロジェクトの重要性が社内外で再評価されるか、上層部が直接介入するなど、特別な理由がある場合に限られます。また、リリース時期の延長についても、既に外部向けに発表された計画や市場のタイミングが影響するため、簡単には変更できないのが実情です。
このように、ウォーターフォールにおける鉄のトライアングルの捉え方に比べるとアジャイルにおける捉え方の方が現実に即したものと言えます。
まとめ
鉄のトライアングルは、プロジェクト管理における基本的な枠組みとして、その重要性が広く認識されています。しかし、ウォーターフォールとアジャイルのアプローチには、それぞれ特有の利点と課題があります。ウォーターフォールはスコープを固定し、計画に基づいてプロジェクトを進めることで品質を保証しますが、スコープの変更に柔軟に対応するのが難しいという硬直性を抱えています。一方、アジャイルはスケジュールとコストを固定し、スコープを動的に調整することで、変化する状況に適応しながら顧客価値を最大化します。この柔軟性こそが、現代のプロジェクトの本質により適したアプローチと言えるでしょう。プロジェクト管理においては、三要素のバランスを維持しつつ、状況に応じた適切な手法を選択することが成功への鍵となります。
Discussion