LingoSavor - 英語学習の手間を半減し、効果を倍増させるアプリ
理念
およそ二年前、受験生だった私は英語の勉強をするたびに、多くのフラストレーションを感じていました。英語の実力とは、数千個の単語や数十種類の文法など膨大な量の知識を何回も繰り返し学ぶことで伸びていくものです。しかしながら、この膨大な量の知識を纏め、適切なタイミングで復習できるよう管理するには多くの手間がかかります。特に長文読解・リスニングなど、多聴多読は英語の上達に効果的と言われていますが、実際に学習を行うとなると、そこには多くの"面倒くさい"が存在します。読んで聴いて、分からなかった単語を辞書で調べて単語帳などに纏め、分からなかった文法事項を日をおいて友人や先生に訊きに行き、それらをノートにメモする。読んだり聴いたりした文章を自分でも音読(リピーティングやシャドーイングなど)したり、定期的に纏めた単語帳やノートを復習し、知識を定着させる......確かにこれらの勉強法は効果的で、続けていれば確実に英語力は上達しますが、"面倒くさい"故に継続できない人が多い他、かつての私のような限られた期間内に英語を学ばなければいけない受験生や、隙間時間に英語を学ぶ社会人にとって大きな足枷です。
今回私が開発したLingoSavor(líŋgoʊ séɪvɚ)は、この"面倒くさい"をAI技術を用いて効率化し、さらにはユーザーの学習履歴を常に監視するAI Agentによって最も効果的な復習管理を実現することを理念に持つプロダクトです。一個の文章を学ぶ時間を半分にできれば、限られた時間内に読める文章量は倍増し、復習効果が二倍になれば、従来の四倍の速度で英語の実力が伸びていきます。忙しい中英語を勉強する多くの学習者が限られた時間で最大の効果を上げ、目標とする英語力を最速で習得できることを目指します。
機能
デモ動画
まず、多くの英語学習者が行い、かつ効果的だと私が考えるリーディング・リスニングの勉強法を以下に定義します。次に、この勉強法をLingoSavorでどのように効率的・効果的にしていくのか、順を追って紹介していきます。
従来の効果的な勉強法
- 英語の文章を読んだり音声を聴く
- 分からなかった単語を辞書で調べ、単語帳などに纏める
- 分からなかった文法事項を友人や先生に訊きに行き、ノートなどに纏める
- 文章を音読(リピーティング、シャドーイング)する
- 日をおいて、定期的に纏めた単語帳やノートを見返す
LingoSavor
1. 英語の文章を読んだり音声を聴く → スマホで撮影or保存して文字起こし
まず、読み終わったor聴き終わった英語の文章をLingoSavorに取り込みましょう。LingoSavorではテキスト入力・画像・PDF・音声ファイルなど様々な形式の英語資料に対応しています。アプリ内からカメラを起動して撮影することも可能です。紙に印刷されたアナログな英文やリスニング用のmp3音声ファイルなど一般的な英語学習に使われる資料だけでなく、好きなアーティストの歌詞やSNS発信の内容なども取り込めて学習資料にすることができます。
資料を取り込むと、LingoSavorはそれらの文字起こしを行います。ユーザーはその文字起こしを見て不正確な部分を直したり、適切な段落分けを行ったのち「解析」ボタンを押します。すると、バックエンドでGeminiを用いてその文章にまつわる以下の情報を生成し保存します。
- 文章の概要や論理展開、文化的背景をまとめた文章
- 一文ごとの翻訳
- 文章を単語ごとに分割した配列
これらの情報を用いて、これから行う英語学習を効率化していきます。
分からなかった単語を辞書で調べ、単語帳などに纏める ワンタップで単語の意味を生成&保存
2. 取り込んだ英文をタップすると、文章を単語ごとに分割した配列が以下のようなデザインで表示されます。単語はリンクになっており、タップするとその単語に関する以下の情報を得ることができます。
Input | Output |
---|---|
単語、その単語が含まれる段落 | 文脈での役割、意味、例文、類義語、派生語、語源 |
選択ボタンを押して範囲選択を行えば、複数単語からなる熟語やイディオムの意味も調べられます。
下の「単語を保存」ボタンを押せば、単語を保存することができ、文章ページの単語帳タブからいつでも見返すことができます。
効率的になった部分
- Gemini 2.5 Flash-Liteを用いているため、ほんの数秒で意味を生成可能です。辞書で一つ一つ意味を調べるよりも圧倒的に時間短縮になります。
- 「単語を保存」ボタンひとつ押せば、文章に紐づいた単語帳に単語を保存できるため、単語帳をわざわざ作成する手間を省けます。
効果的になった部分
- LLMを用いた意味生成のため、辞書に載っていないスラングや略語の意味も詳しく知ることができます。
- 言語は生き物です。時間の流れや社会情勢の変化とともに単語の意味も移り変わります。辞書に書かれた意味は書かれた瞬間、それ以降の時代の波から永遠に取り残される運命を背負います。一方、LLMは数ヶ月のスパンで新たなモデルが発表されナレッジカットオフは次々更新されます。そのため常に最新のGeminiを用いて逐一単語の意味を生成するLingoSavorでは、常に最新の人間の言語活動を背景に生成された、ニュートラルな単語の意味や用法を知ることができます。
分からなかった文法事項を友人や先生に訊きに行き、ノートなどに纏める 分からなかった文法が含まれる場所を選択してAIに質問&自動保存
3. 左上の選択ボタンを押すと、英文の一部を選択できます。分からない文法やなぜこの表現が使われているか分からない部分を囲い質問を入力すれば、Geminiが24時間いつでも回答してくれます。翻訳タブからもボタンひとつで分からない文を質問できます。System instructionsとして英文全体の内容が送信されるので、文脈に応じた質問にも的確に答えてくれます。ユーザー分析によって頻繁に訊かれることが判明した、文法構造についての質問は、ワンタップで行えるようにしました。
AIとの会話は文章に紐づいた質問タブから一覧表示できるので、自分が分からなかった部分を一目で復習できます。
効率的になった部分
- 相手がAIなので24時間いつでも質問可能です。そのため、分からない箇所があった時、先生や友人に質問し解答をもらうまでのタイムラグが無くなり、中断することなく学習を進められます。
- 質問した文法事項は要約され一目で確認可能です。
効果的になった部分
- ヒューマンエラーがなくなります。Geminiを始めとするLLMの上位モデルは普通の人間が持つ知識を遥かに超える情報を持つため、どんな質問にも高確率で正しい答えを返します。
- 恥ずかしかったり、初学者で自信がなかったりして今まで誰かに質問できなかった人も、LLM相手なら気楽に質問することができます。LLM側もどんな質問が来ても優しく根気よく解答を返すようSystem instructionsで指示されているので、ユーザーは何の不安も不満も感じることなく疑問を解決できます。
4. 文章を音読(リピーティング、シャドーイング)する → 文字だけの学習資料からもリピーティング・シャドーイングに使える音声を生成
音読は英語力の上達に大きく役立ちます。しかしながら、単に英文を読み上げるだけでは音読の効果を最大限引き上げることはできません。リピーティングやシャドーイング、オーバーラッピングといった音読の手法が音読の効果を最も高める方法であると様々な研究が示しています。
リピーティングとは
リピーティングとは、流れてくる英語の音声を聞き取り、一時停止した後に、聞こえた内容をそのまま声に出して繰り返すトレーニングです。
シャドーイングとは
シャドーイングとは、流れてくる英語の音声を聞きながら、その音声から1、2語遅れて影(シャドー)のように、聞こえた内容をそのまま発音していくトレーニングです。通訳者の訓練法としても知られており、高い英語上達効果が期待されています。
しかし、リピーティングもシャドーイングも英文の読み上げ音声がなければ行えません。今まで、文字だけの英文を学習した際は、単に文章を読み上げるだけしか音読する方法がありませんでしたが、LingoSavorでは右上の音声アイコンを押すだけで、GoogleのText-to-Speech APIを用いた英文の音声化を行えます。それだけでなくGemini 2.5で大きく進化したタイムスタンプ付き文字起こし技術を用い、一文ごとに分割され文の後にユーザーの読み上げを待つ空白の時間が追加されたリピーティング用の音声ファイルも生成されます。
効果的になった部分
テキストだけの英文を学ぶ際も、最も効果的と言われる音読方法を行うことができます。
日をおいて、定期的に纏めた単語帳やノートを見返す 忘却曲線に従った復習問題をAI Agentが自動生成、一日約15分の復習で学習事項を反復練習
5. Google Schedulerによって予約された関数が毎日朝四時に発動し、ユーザーがこれまでに学んだ英単語・AIに質問した内容を元に様々な形式の復習問題を作成します。
① 英単語
ユーザーの保存した単語からその日復習すべき単語を、エビングハウスの忘却曲線の近似モデルに従って判断します。それらを「今日の単語」として、単語帳アプリのようなUIでユーザーに提供します。
② 文法問題
ユーザーがAIに質問した内容を元に、四択の文法問題を作成します。こちらもエビングハウスの忘却曲線の近似モデルに従って、一つの知識につき日を置いて全部で三回レコメンドされます。
③ リーディング問題
三回復習した英単語と文法事項が存在すれば、それらは十分に復習されたとみなされ、Geminiを用いてそれらの知識が200語程度のリーディング問題に変化します。過去に学んだ知識を実践的な文章で読むことができるのです。
④ リスニング問題
リーディング問題にも十分出てきた単語や文法事項は、200語程度のリスニング問題として出題されます。こちらもGeminiによって文章を作成し、Google Text-to-Speechを用いて音源化しています。
このように、LingoSavorを使えば①~④のように独立した単語や文法の知識を、反復練習→文章中での応用→音声中での応用と、段階を踏んで聞き取れるものに変えてくれます。
効率的になった部分
煩雑な復習管理の必要性がなくなりました。英語の知識はアプリ内で一つにまとめられ、習熟度に応じて分類されます。ユーザーは復習管理を一切行うことなく、毎日LingoSavorを開き15分ほどかけて問題を解くだけで、最も効率の良い英語学習を行うことができます。
効果的になった部分
これまでのアナログな勉強における復習では、学んだ単語を単に反復したり、文法をメモしたノートを見返すことしかできませんでした。LingoSavorではそれら独立した無機質な知識を、一連の自然な文章や音声の中に収めて提供するため、ユーザーは実際に学んだ単語や文法が使われているという確かな実感を持って英語学習を行うことができます。
従来の効果的な勉強法から、LingoSavorによる1~5の新たな英語学習サイクルにより、ユーザーは効率的かつ効果的に英語学習を行うことができます。
システムアーキテクチャ
新規性
今までの英語学習アプリは、アプリ独自のカリキュラムを持つのが普通でした。英会話学習アプリでは、それぞれ決まったシチュエーションが用意されたり、英単語学習アプリでは、アプリ開発側が用意した単語帳を学んでいったりなどです。しかしながら、LingoSavorにはアプリ独自のカリキュラムもコンテンツもありません。ユーザーが他の教育機関やカリキュラムなどから与えられた英語資料を学ぶのをサポートすることに重点が置かれているのは他のアプリにはない、AIの発展によって実現可能となった大きな強みです。学習のための英文だけでなく、ユーザーが好きな英語の小説や、洋楽や洋画など、身の回りにある英語も学べるLingoSavorのスタンスは、真のパーソナライズされた英語教育に繋がります。ユーザーが日常で触れる生きた英語を起点に学習を開始できるLingoSavorは、従来の体系化されたカリキュラムやコンテンツに従って学んでいかなければならない英語学習法を覆す大きな可能性を秘めていると考えています。
展望 - 今後の目標
新規性の段落でも述べたような「身の回りの生きた英語を学ぶ」アプリという文脈においてLingoSavorは大きな可能性を秘めています。現状のアプリの機能では文章と録音された音声しか学習できません。しかしLingoSavorはこれらに加えて、リアルタイムに行われる会話をもとに語学学習を行う機能をつける余地と可能性を持ちます。PLAUD AIの流行やGenSparkが出したApple Watchでの録音アプリのように、AI×音声認識の市場は急成長を遂げています。こういった身の回りの音声を常時録音してAIで解析するという文化は、語学学習にも応用できると考えます。例えば、留学や移住・出稼ぎなどで異国の地に行き、授業や店頭での会話、友人との会話などにおいて分からない・聞き取れない単語やフレーズがあった時、家に帰って、Apple Watchなどを通じて常時録音していたLingoSavorを起動 → 分からない部分をAIに伝える → TTSを用いたリピーティングなどで練習 → 次の日からの復習問題にその単語やフレーズを使ったものを含める、などといった、これまでにない新たな言語学習の方法を提供することができます。現地人とのリアルな会話という、最も生きた外国語を起点に学習を始めることができるのです。
他にもLingoSavorは、カリキュラムもコンテンツも持たないAI英語学習アプリという特性上、言語の拡張が容易という性質を持ちます。現状のアプリでは日本語話者が英語を学ぶことにのみ特化していますが、Geminiが扱える言語は合計38言語もあります。
つまり、38 × 37 = 1406通りの「語学学習」に対応できる可能性を秘めています。今まで市場の小ささから無視されてきた、エストニア語話者がベトナム語を学ぶなどといったニッチな状況にも対応できます。
カリキュラムにもコンテンツにも縛られない自由な語学学習を、世界中の人々が世界中の言語で行える世界を目指してこれからもLingoSavorは改良を続けていきます。
Discussion