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【PowerPoint】スライドマスターでテンプレートを作ろうの巻

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まえがき

この記事では、「PowerPointのテンプレートを整備したいけどやり方が分からない」という方を対象に、PowerPointのスライドマスターを使ってテンプレートを作る方法を解説していきます。

テンプレートを作り始める前に

1. フォントを決める

フォントとは、文字の書体データのことで、各フォントごとに文字のデザインが異なります。
特に、発表用や情報共有を目的とするスライドにおいては、可読性を最優先にするべきです。
雰囲気や世界観を演出する方法として、特殊なデザインのフォントを用いることもありますが、多くの場合ではゴシック体・サンセリフ体といった、可読性の高いフォントが推奨されます。
フォントを選ぶ際には、全角日本語フォントと半角英数字記号フォントで分けて考えることが多いです。
下記に代表的なフォントの組み合わせを挙げます。

  • Arial(英文) + メイリオ(和文): Webサイトでよく使われる組み合わせ。Windowsのデフォルトフォントとしての歴史が長いので比較的古いOSでも使用可能。
  • Aptos(英文) + Yu Gothic UI(和文): Windowsにおける最新式デフォルトフォントの組み合わせ。
  • Helvetica Neue(英文) + ヒラギノ角ゴ(和文): Macでよく使われる定番の組み合わせ。

英文・和文ともに同じフォントを使用したい場合には以下のフォントが候補に挙がります。環境によって最適なものを採用してください。

  • Yu Gothic UI: Windows10以降の標準フォント。字が縦長の印象を受けるが、書体が見やすくBold体が太めに出るので使いやすい。
  • Meirio UI: こちらもやや縦長で表示される。ベースがメイリオなので可読性は高い。
  • 游ゴシック: Yu Gothic UIに比べてRegularの字が細くやや可読性が低い
  • メイリオ: 言わずと知れたベーシックフォント。文字の幅は広め。Boldがしっかり太めに出るので強調表示に使いやすい。
  • ヒラギノ角ゴ: Mac環境における標準フォント。癖が無く使いやすい。
  • BIZ UDPゴシック: Windows10 October 2018 Update以降に搭載されているUniversal Design(UD)フォント。大文字のIと小文字のlの区別がつくように配慮されるなど万人に見やすいようにデザインされた書体。他のフォントに比べて横幅が広いのが気になる。

逆に非推奨のフォントとしてはMSゴシックやMS Pゴシックが挙げられます。これらのフォントは、アンチエイリアスに対応していないため、縮小した際の表示の可読性が低くなります。

2. 配色を決める

スライドの配色は、用途によって押さえておくべき要点が異なります。
下記にいくつか例を挙げます。

  • コーポレートカラー: スライドを使用する企業や組織のイメージカラーを取り入れることで統一感のあるデザインにすることができる
  • コントラスト: 発表用にプロジェクタに映すためのスライドはコントラストを高めにデザインするように意識する
  • 色覚多様性: 青と黄色を使って構成する
  • 彩度: 彩度が高すぎる色は読み手の負担になる可能性があるので配慮する

3. アスペクト比を決める

発表用スライドであれば、主流のアスペクト比は16:9または4:3です。
モニターに全面表示する場合には16:9がいいでしょう。
オンラインミーティングやプロジェクターで投影する場合には4:3が便利かもしれません。

4. デザインを決める

スライドを作り始める前に、大まかなデザインを決めておくとよいでしょう。

方向性の参考としては、UIデザインで代表的な「スキューモーフィズム」「フラットデザイン」「マテリアルデザイン」「ニューモーフィズム」「ガラスモーフィズム」などがあります。

現在のUIデザイントレンドにおいては、シンプルな凹凸で構成されるニューモーフィズムや要素に透け感を採用したガラスモーフィズムなどがあります。しかし、学会発表や社内プレゼンテーションで使用するスライドには、フラットデザインかマテリアルデザインを採用するのが定石でしょう。

デザインのラフを起こすためのツールとしては、

  • デザイン業界のデファクトスタンダードであるAdobe Illustrator
  • Webサイトのデザイン設計に使われるFigma
  • オープンソースのベクタ画像編集ソフトInkscape

などがあります。

しかし、せっかくPowerPointを使っているのであればデザインラフもPowerPointで作成してもいいでしょう。PowerPointはベクタ画像編集ソフトとしても優秀です(※個人の感想です)。

スライドマスターでテンプレートを作ろう

1. スライドサイズの設定

スライドサイズは、「デザイン」->「スライドのサイズ」から設定します。
4:3と16:9に関しては、標準またはワイド画面を選択することで適用することができます。
それ以外の比率については、「ユーザー設定のスライドのサイズ」から設定を行います。

2. フォントの設定

2.1. テーマフォントの指定

テーマフォントの設定には、スライドマスターを開く必要があります。
表示」->「スライドマスター」をクリックします。

スライドマスターを開いたら、「フォント」->「フォントのカスタマイズ」をクリックし、新しいテーマのフォントパターンの作成を行います。

フォントには

  • 見出しのフォント(英数字)
  • 本文のフォント(英数字)
  • 見出しのフォント(日本語)
  • 本文のフォント(日本語)

が指定可能です。

基本的には、見出しのフォントと本文のフォントは揃えた方が使いやすいと思います。
さらに、前章でご説明したように、英数字用のフォントと日本語用のフォントを同じものに指定するのもおすすめです。

2.2. フォントカラー

フォントカラーは、テーマスライドマスターで指定するとよいでしょう。
各レイアウトスライドでも色を指定できますが、レイアウトスライドで指定したフォントカラーはそのレイアウトにしか反映されません。
スライド全体でフォントカラーを統一する場合にはテーマスライドマスターで設定するべきです。

2.3. フォントサイズ

見出しや本文のフォントサイズもテーマスライドマスターで指定した方が使いやすいです。

フォントのサイズには、スライドの用途に合わせた可読性を損ねないサイズを指定するべきです。

例えば、オンラインミーティングで共有する目的のスライドであれば、フォントサイズは小さめに設定して、1ページ当たりに含められる情報量を増やすといった設定でもよいかもしれませんが、学会発表で使用するスライドであれば、遠くの座席の人でも読みやすいようにフォントサイズを大きめに設定する必要があるでしょう。

また、見出しにはBold体を指定するのもおすすめです。
見出しと本文に同じフォントをしている場合には、文字の太さを変えることでデザインにメリハリが付きます。

3. カラーテンプレートの設定

スライドマスターの「配色」をクリックし、「色のカスタマイズ」をクリックして、テーマの新しい配色パターンを作成します。

色には、濃色1・2、淡色1・2、アクセント1~6、ハイパーリンク、表示済みハイパーリンクの計12色を指定可能です。

スライドテンプレートの用途にもよりますが、基本的にカラーパレットにはアクセシビリティに配慮した色を選ぶのがいいと思います。
デジタル庁のアクセシビリティに関するページが参考になると思います。

https://design.digital.go.jp/foundations/color/color-palette/

また、ハイパーリンクの色に関しては、私はChromeブラウザの色に準拠することが多いです。

https://ja.wikipedia.org/wiki/リンク色

4. レイアウト要素のサイズ設定

見出しや本文、ページ番号、フッターといった要素のサイズもテーマスライドマスターで決めてしまいましょう。
「タイトルスライド」や「セクション見出しスライド」では、装飾を追加したりページ番号の位置を変えたいといったシチュエーションもあるでしょうが、そういった場合はレイアウトスライドで個別に設定しましょう。

5. 共通デザイン要素の設定

これはスライドのメインテーマ、言わばスライドの全体の雰囲気を決定するものです。
前章でご説明した配色やデザインスタイルが大きく関わってくる部分ですね。

いくつかの典型的なレイアウトパターンを例示します。
(※各レイアウトパターンの名前は適当につけているので、配置の特徴だけ抑えていただければと思います。)

また、テンプレートの使用者がスライドを作成している過程で誤って変更されてほしくない要素は、あらかじめスライドマスター側に仕込んでおきましょう。
定位置で表示される企業ロゴやCONFIDENTIAL表記などがそうです。

6. レイアウトごとのデザインを設定

レイアウトごとにデザインを調整したい場合には、レイアウトスライドから個別に設定します。
特にタイトルスライドとセクション見出しスライドは他のスライドとはデザインが大きく異なるので、個別に設定したい場合があるかと思います。

逆に縦書きスライドなどは使用頻度が低いので、私はこれについてはあまり手を加えることがありません。

さらにできること

1. 既定のテキストボックスの設定

テキストボックスを作成して、デフォルトで設定したい内容(フォント、フォントカラー、フォントサイズ、太さなど)を適用した後、右クリックのメニューから「既定のテキストボックスに設定」を選択することで、以降に新規作成するテキストボックスに任意の既定デザインを適用することができます。

2. 既定の図形の設定

図形を作成して、デフォルトで設定したい内容(塗りつぶし、枠線、効果など)を適用した後、右クリックのメニューから「既定の図形に設定」を選択することで、以降に新規作成する図形に任意の既定デザインを適用することができます。

3. 既定の線の設定

線を作成して、デフォルトで設定したい内容(線太さ、色、始点形状、終点形状など)を適用した後、右クリックのメニューから「既定の線に設定」を選択することで、以降に新規作成する線に任意の既定デザインを適用することができます。

4. ガイドの設定

スライドの要素を選択しない位置で右クリックを行い、「グリッドとガイド」にフォーカスを当てると、垂直方向・水平方向のガイドを追加することができます。
追加したガイドは全スライドに適用されます。
ガイドを活用することで、スライド内に配置する要素の位置決めを効率的に行うことができます。
ガイドはドラッグすることで位置を決めることができ、Altキーを押しながらドラッグするとより細かいピッチで調整することができます。
既存のガイドに対してCtrlキーを押しながらドラッグすると、ガイドを複製することができます。
ガイドを削除したい場合には、削除したいガイドの上で右クリックを行い、メニューの「削除」を選択します。

配布する前に

1. フォントの埋め込み

WindowsやMacなどのOSにはじめから入っているデフォルトフォント以外のフォントを使用している場合には、テンプレートファイル自体にフォントを埋め込みましょう。
ファイル」->「オプション」から「PowerPointのオプション」を開きます。
保存」の項目から「ファイルにフォントを埋め込む」の項目を探し、チェックを入れます。
使用されている文字だけを埋め込むか、すべての文字を埋め込むかについては、状況に応じて適切な方を選択してください。

2. プロパティ情報の削除

最後に、ファイルを配布する前にプロパティから削除可能な項目を削除しておきましょう。
作成者名などの情報が埋め込まれている場合がありますので、自身のユーザ名を残したくない方はお忘れなく。

最後に

ここまでの作業お疲れさまでした。

あらかじめテンプレートを用意しておけば、誰が使ってもある程度デザインの統一感を保証できたり、スライド作成の効率を上げることができるなど、嬉しいことがたくさんあります。

さらに詰めようと思えば、配布資料マスター・ノートマスター・グラフテンプレートなども設定することができます。ご興味がある人はやってみてください。

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