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2025年、Windows 10からLinuxデスクトップへ移行を検討する人へ

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Windows 10のサポートが2025年10月に終了します。サポートが終了すると、セキュリティアップデートが提供されなくなり、新たな脆弱性が修正されなくなります。そのため、引き続きWindows 10を使い続けることは、ハッキングなどのリスクが高まることを意味します。

Windows 11への移行には、ある程度新しいハードウェアが必要です。特にIntel製CPUの場合、第8世代以降(2017年以降発売)のCore iシリーズが必要となります。これより古いパソコンはWindows 11にアップグレードできないため、新しいパソコンを購入するか、Linuxへの乗り換えを検討する必要があります。

新しいパソコンを購入する場合、10万円前後の出費が必要ですが、Linuxに乗り換える場合は、既存のパソコンにLinuxをインストールするだけで済みます。ただし、LinuxはWindowsとは異なるOSであり、操作感や利用できるソフトウェアに違いがあります。

この記事では、Linuxデスクトップの現状やできること、注意点、ディストリビューションの選び方について紹介します。特に、Windows 10のサポート終了を機にLinuxデスクトップへの移行を考えている方に向けて、どういうアプリケーションが使えるのか、どのような環境が整っているのかを解説します。

私自身は、Windows 11とLinuxデスクトップをデュアルブートで利用しています。Windows 11は主にゲームや一部のアプリケーション用に使い、日常的な作業はLinuxデスクトップで行っています。Linuxデスクトップは年々進化しており、日常利用や開発用途でも十分に活用できる選択肢となっています。

そもそもLinuxとは?

Linuxは、1991年にリーナス・トーバルズ氏によって開発が始まったオープンソースのOS(オペレーティングシステム)です。正確には「Linuxカーネル」と呼ばれるOSの中核部分を指しますが、一般的にはカーネルに加えて各種アプリケーションやツールをまとめた「Linuxディストリビューション」として使われています。

Linuxは基本的に無料で利用でき、世界中の企業や有志によって開発・改良が続けられています。サーバー用途だけでなく、近年はデスクトップ用途でも使いやすくなってきており、個人利用や古いパソコンの再活用にも適しています。

Linuxデスクトップでできること・できないこと

日本語入力

Linuxでも日本語入力システムが利用できます。Google日本語入力のオープンソース版である「Mozc」や「SKK」、「Anthy」などが利用可能です。
Mozcの操作感はGoogle日本語入力と似ています。変換精度はGoogle日本語入力ほどではありませんが、日常的な利用には十分なレベルです。……ちょっと誤変換があります。

ウェブブラウジング

Chrome、Firefox、Edgeなど主要なブラウザが利用でき、インターネットの閲覧やWebアプリの利用も問題ありません。またこれらの派生ブラウザ(BraveやVivaldiなど)も動作します。基本的にはWindowsやMacと同じように使えます。

動画配信サービス、NetflixやAmazon Prime Videoでも動画視聴が可能です。ただし著作権保護の関係で若干画質が落ちる可能性があります。

最近はウェブ技術が発達し、インターネットブラウザだけで多くのことができるようになっています。ブラウザ中心の利用であれば、Linuxデスクトップでも十分に日常利用が可能です。

オフィスソフト

残念ながらMicrosoft OfficeはLinuxでは動作しません。LinuxでMicrosoft Officeのドキュメントを取り扱う場合は、Microsoft Office OnlineやGoogleドキュメントを利用するか、Microsoft Office互換のLibreOfficeを使うことになります。

LibreOfficeはMicrosoft Officeのファイル形式(.docxや.xlsxなど)をサポートしており、基本的なオフィス作業は問題なく行えます。ただし、Microsoft Officeの高度な機能やマクロなどは完全には互換性がないため、特にビジネス用途でMicrosoft Officeを多用する人には向いていないかもしれません。

メール

ThunderbirdやEvolutionなどのメールクライアントでメールの送受信ができます。GmailやProtonMailなどのWebメールもブラウザで利用可能です。

インストールして利用するOutlookは動作しませんが、Web版のOutlookはブラウザで利用できます。

チャット・ビデオ会議

Slack、Discord、Zoomなどの主要なコミュニケーションツールが利用可能です。Microsoft Teamsはアプリとしては提供されていませんが、ブラウザ版で利用できます。

画像編集・イラスト

画像編集ソフトの有名所としてはやはり Illustrator や Photoshop だと思いますが、LinuxではこれらのAdobe製品は動作しません。

GIMP(画像編集)、Inkscape(ベクター画像)、Krita(イラスト)などの高機能なオープンソースソフトが使えます。これらのソフトはもともとLinux向けに開発されているものであり、WindowsやMacでも動作しますが、Linuxでは特に安定して動作します。

ただしやはりAdobe製品と比べると機能や使い勝手で劣る部分もあります。特にデザイン系の仕事をしている人には向かないかもしれません。

音楽・動画再生

VLCやMPVなどのメディアプレイヤーで音楽や動画の再生が可能です。SpotifyやYouTube Musicなどのストリーミングサービスもブラウザから利用できます。

DVDの再生は可能です。

Blu-rayの再生は、Linuxでは著作権保護の関係で難しい場合があります。再生する方法もあるようですが、頑張って調べる必要があります。

動画編集

Adobe Premiere Proは動作しません。またゆっくり動画編集ソフトのゆっくりムービーメーカーも動作しません。

Davinci Resolveやkdenlive(オープンソース)などで動画編集が可能です。

DaVinci Resolveはプロフェッショナル向けの動画編集ソフトで、Linux版も提供されています。かなり高機能で、映像制作の現場でも使われているようです。

動画配信

OBS StudioがLinuxで動作し、TwitchやYouTubeなどへのライブ配信が可能です。

ゲーム

かつてのLinuxはゲームのサポートが乏しかったですが、近年は大きく改善されました。Steamで配信されている多くのゲームが「Proton」という互換レイヤーを使うことで快適に動作します。Linuxに正式対応していませんが、Protonによってモンスターハンターや三国無双などの人気ゲームも動作します。
中にはWindowsよりもフレームレートが出るものもあります。

ただし、対戦ゲームはApex Legendsを筆頭にアンチチートソフトによってLinuxが弾かれることもあります。

ProtonDBというサイトでは、どのゲームがLinuxで動作するかの情報が集められています。

プログラミング

VS Code、JetBrains製品、Emacs、Vimなど多彩なエディタが利用でき、DockerやGitなどの開発ツールも充実しています。開発環境の構築も容易です。

Dockerは特にLinux上での動作が安定しており、開発環境の構築やテストに便利です。

Linuxはサーバーの実行環境としても広く使われているため、サーバーサイドの開発を行っている人にとっては、普段からLinuxを触ることで知識を吸収できるメリットがあります。

また機械学習やデータサイエンス分野でもLinuxはよく使われています。CUDAやROCmなどを利用したGPU計算環境のサポートはLinuxが一番最初に行われることが多いです。

システムカスタマイズ

ここはLinuxの得意なところです。システムのカスタマイズの幅は非常に広く、デスクトップ環境やウィンドウマネージャを自由に選択できます。代表的なデスクトップ環境にはGNOME、KDE Plasma、XFCEなどがあります。

デスクトップテーマやアイコン、ウィンドウマネージャの切り替えなど、見た目や操作性を自由にカスタマイズできます。

仮想化・エミュレーション

VirtualBoxやQEMUで仮想マシンを動かしたり、WineやProtonでWindowsアプリを動かすことが可能です。

WineはWindowsアプリケーションをLinux上で動作させようとする互換レイヤーです。Wineを使うことで、Windows専用のアプリケーションをある程度動作させることができます。ただし、すべてのアプリケーションが動作するわけではないので注意が必要です。

Linuxはコンテナ技術が非常に強力で、DockerやPodmanを使ってほぼ性能の劣化なくアプリケーションを隔離して実行できます。ほかにもLXD/IncusやKubernetesなどのコンテナ技術も充実しています。メインOSの環境を壊すことなく、簡単に隔離環境を構築、実行できるのはLinuxの大きな強みです。

プリンター

多くのプリンターが対応しており、USB接続やネットワーク経由で簡単に利用できます。何もインストールすることもなくUSBでつなげて少し設定するだけで使えるものもあれば、ドライバーをインストールする必要があるものもありますが、一般家庭向けのプリンターの基本機能は使えることが多いです。

Linuxデスクトップの注意点

  • デスクトップ環境は大きく進化しておりかなり使いやすくなっています。ブラウザ中心の利用であれば、十分に日常利用が可能です。
  • ですが、WindowsやMacとは操作感が異なります。WindowsとMacの操作方法が異なるようにLinuxの操作感もWindowsやMacとは異なります。
  • マルチプラットフォーム対応のソフトは同じように使えますが、Windows専用ソフト、
    Mac専用ソフトは基本的に動作しません。かわりに、Linux向けのソフトウェアやオープンソースの代替ソフトが多く存在します。
  • 問題が発生した場合、自分で調べて解決する姿勢が必要です。解決できない場合は他の方法を検討したり、その問題を受け入れる寛容さや柔軟さが求められます。
  • ネット上には多くのLinux情報があり日本語の解説記事を投稿してくれている人も多いです。また日本語で見つからなくても英語で検索すれば解決できることも多いです。翻訳ツールを使えば、英語の情報を日本語に翻訳して理解することも可能です。
  • 最近はAIに質問することで解決できる場合も増えています。

ディストリビューションの選び方

Linuxと一口に言っても、実際には「ディストリビューション」と呼ばれるさまざまなパッケージがあります。狭義のLinuxはカーネル(OSの中核部分)を指しますが、実際に使うにはアプリケーションやライブラリなどが必要です。これらをまとめたものがディストリビューションと呼ばれます。

代表的なディストリビューションには、Debian、Ubuntu、Fedora、Arch Linuxなどがあります。コミュニティによって開発されているものもあれば、企業がサポートしているものもあります。

初心者にはUbuntuやFedoraがおすすめです。主要なディストリビューションであれば情報も多く、困ったときもインターネットで調べて解決しやすいでしょう。逆にArch Linuxは有名ですが初心者向けではないのでおすすめしません。

Debian

Debianは、非常に安定したディストリビューションで、サーバー用途でも広く使われています。デスクトップ環境も整っており、初心者から上級者まで幅広く利用されています。パッケージ管理システムのAPTが使いやすく、ソフトウェアのインストールや更新が簡単です。

Ubuntu

UbuntuはDebianをベースにしたディストリビューションで、初心者向けに使いやすく設計されています。デスクトップ環境も洗練されており、インストールも簡単です。Ubuntuは2年ごとにLTS(Long Term Support)版がリリースされ、長期間のサポートが提供されるため、安心して利用できます。またそれとは別に最新のソフトウェアを使いたい人向けに、通常版もリリースされています。こちらは半年ごとのリリースサイクルで新しいソフトウェアが提供されます。サポート期間は通常版が9ヶ月、LTS版が5年です。

Canonical社が開発・サポートしており、コミュニティも活発です。Ubuntuはデスクトップだけでなく、サーバーやクラウド環境でも広く使われています。

Fedora

FedoraはRed Hat社が支援するディストリビューションで、最新の技術をいち早く取り入れる傾向があります。デスクトップ環境はGNOMEが標準で採用されており、洗練されたユーザーインターフェースが特徴です。

Fedoraは6ヶ月ごとに新しいバージョンがリリースされ、最新のソフトウェアや機能が提供されます。それぞれのバージョンのサポート期間は13ヶ月です。定期的にアップグレードが必要ですが、最新技術を試したいユーザーには魅力的な選択肢です。

Linuxデスクトップの利用方法

Linuxデスクトップの性能を最大限に引き出すためには、パソコンに直接インストールする方法が良いでしょう。

また、USBメモリから「ライブUSB」として起動する方法もあります。これによってもとからパソコンにインストールされているOSを変更せずにLinuxを試すことができます。ライブUSBは、インストールせずにLinuxを体験できるため、気軽に試すことができます。

また、仮想マシンを使ってLinuxを動かす方法もあります。VirtualBoxやHyper-Vなどの仮想化ソフトを使うことで、Windows上でLinuxを動かすことができます。これにより、既存のWindows環境を壊すことなくLinuxデスクトップを試すことができます。ただし正直なところ、仮想マシン上でのパフォーマンスや操作感は、直接インストールした場合と比べると劣ることが多いです。できたら直接インストールしてLinuxデスクトップの性能を体験いただければなと思います。

まとめ

Linuxデスクトップは年々進化しており、日常利用や開発用途でも十分に活用できる選択肢となっています。Windows 10のサポート終了を機に、Linuxデスクトップを検討してみてはいかがでしょうか。

セキュリティの観点からも、サポートが切れてしまうWindows 10を使い続けるよりもUbuntuやFedoraなどの主要なLinuxディストリビューションに移行することは、安心してパソコンを使うための一つの選択肢です。

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