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ハンセン溶解度パラメーターと溶解パラメーター(SP値)について
ハンセン溶解度パラメーターとは
- 物質の溶解性に用いられる値(Charles M. Hansenが1967年に博士論文で発表した)
- HSP(Hansen solubility parameter)とも呼ばれる
- 以下の3つのパラメーターから構成されている(単位はMPa0.5)
-
:分子間の分散力によるエネルギー\delta_d -
:分子間の双極子相互作用によるエネルギー\delta_p -
:分子間の水素結合によるエネルギー\delta_h
-
溶解性予測の考え方
HSPでは、「分子間の相互作用が似ている2つの物質は、互いに溶解しやすい」という考えに基づいている。 HSPの3つのパラメータが近い値は違いに溶解しやすい。つまり(
ポリマーのHSPに関して
HSPが不明なポリマーのHSPを決定する方法
- HSP値がわかっている溶媒(20弱)に対してポリマーの溶解度を調べる。
- ハンセン空間上で、溶解度を調べた溶媒のうち、ポリマーを溶解した溶媒の点のみを内包する球を求める。
- その球の中心座標をそのポリマーのHSP値と定める。
- その球の半径を相互作用半径
と定める。R_0
あるポリマーが溶媒に対して可溶であるかどうかの予測
ポリマーのHSP値と溶媒のHSP値の距離(
-
R_0$の球の内側にある):溶媒に対してポリマーが可溶RED<1 $(溶媒のHASPが半径 -
R_0$の球の表面上にある):溶媒に対してポリマーが部分的に可溶RED=1 $(溶媒のHSPが半径 -
R_0$の球の外側にある):溶媒に対してポリマーが不溶RED>1 $(溶媒のHSPが半径
その他
混合溶媒の場合のHSPの求め方は?
基本的には分子体積の相加平均を用いるとのと(参考)
HSPが近いのに解けない理由(例)
- 分子のサイズが大きくポリマーの中まで浸透しない
- 溶解する方向ではあるが溶解するのに非常に長い時間を要する
(逆にHSP距離が長いのに溶解する溶媒は解釈が難しい)
ハンセン溶解度パラメータの算出方法
- 蒸発熱から
、ダイポールモーメントと分子体積の値から\delta_{Tot} 、屈折率から\delta_p を計算し、それらの値から残りの\delta_d を求める方法\delta_h - Stefanis-Panayiotouの原子団寄与法を使う方法
- Van Krevelenの原子団寄与法
- Hoyの方法(非推奨らしい)
- Y-MBと呼ばれるニューラルネットワーク法を用いた推算方法
ハンセン溶解度パラメータがまとめられているサイト・文献
溶解パラメーター(SP値)とは
- ヒルデブラントによって導入された正則溶液論により定義された値。
- 2つの成分のSP値の差が小さいほど溶解度が大きくなることが経験的に知られている。
- モル蒸発熱
とモル体積\Delta とおくと、溶解パラメータは以下の式で定義される。V
(つまり、1cm3の液体が蒸発するために必要な蒸発熱の平方根から計算される。
正則溶液理論では、溶媒-溶質間に作用する力は分子間力のみとされているが、実際は水素結合など分子間力以外の力も作用している。しかし経験的に溶解パラメータが近い物質は混ざりやすい傾向を持つ。
溶解パラメータ(SP値)の推算方法
物性力推算する方法
- 蒸発潜熱から求める方法
- Hildebrand Ruleによる方法
- 表面張力による方法
- 溶解度の値から求める方法
- 屈折率から求める方法
- その他の物性値から求める方法
分子構造から推算する方法
- Smallの計算方法
- Rheineck及びLinの計算方法
- KrevelenとHoftyzerの計算方法
- Fedorsの計算方法(参考)
- Hansenの計算方法
- Hoyの計算方法
溶解パラメータ(SP値)がまとめられているサイト・文献
ハンセン溶解度パラメータとヒルデブランドのSP値との関係
参考
- ハンセン溶解度パラメーター(wikipedia)
- 溶解パラメーター(wikipedia
- 溶解度パラメータの計算方法と、溶解性評価への利用
- ハンセン溶解度パラメータ(HSP)を使ったポリマーの溶媒探索法
- 添加剤の溶解性パラメータに関する考察
関連書籍
以上
Discussion