ファシリテーターの役割は会議の司会進行ではないし、司会進行をしてはいけないと声を大にしていいたい。
この記事はファシリテーター Advent Calendar 2025の5日目です
ファシリテーターに関する誤解
よくあるファシリテーターに関する誤解とは「ファシリテーター=会議の司会である」という点です。
「会議体において沈黙や議論の停滞を起こらないようにし、時間内に議論を終わらせ、結論を出すことを助けること」をファシリテーターの役割だと考えている人もいます。
しかしこれは明確に間違っています。
アジャイルにおけるスクラムマスターに関する誤解
またアジャイルとかスクラムをやっているチームだととにかく会議が多いです。
こういうチームではスクラムマスターという役割が存在しても
- アジャイルとは会議体の集まりである
- スクラムマスターは会議においてファシリテートすることが仕事である。
- ファシリテートとは司会として会議の議論を停滞させない仕事である
- つまりスクラムマスターとは司会である
という誤解が発生しがちです。(ちなみに上の4点は全て間違っています。唯一部分的に正解しているのは「会議におけるファシリテート」ですがスクラムマスターの仕事の極一部に過ぎません)
スクラムマスターの役割を「会議における司会進行」というレベルにまで矮小化させてしまうために「スプリントごとの輪番制のスクラムマスター」という専門性を軽視した制度を導入してしまうのでしょう。
おっと話がそれました。
ではファシリテーターとはなんなのか
Google先生のAIに聞いてみました。
どうやらファシリテーターを司会進行と捉えることは明確な誤りのようです。
「ファシリテート」とは、会議や議論などの場を円滑に進め、参加者の意見を引き出しながら、目的達成や合意形成を促進する行為を指します。参加者の中立的な立場で、議論の整理、意見の引き出し、合意形成のサポートを行い、単なる司会進行以上の役割を果たします。この役割を担う人を「ファシリテーター」と呼びます。
ファシリテーションの主な役割
- 議論の促進と整理: 参加者の発言を促し、論点を整理し、議論が脱線しないように調整します。
- 意見の引き出しと共有: 発言しにくい人の意見も引き出し、多様な意見を全員が理解・共有できるように努めます。
- 合意形成のサポート: 全員が納得できる結論に導くことを目指し、組織の意思決定能力や問題解決能力の向上を支援します。
- 場の雰囲気作り: 心理的な安全性を確保し、安心して発言できる場を創出します。
ファシリテーター ≠ 司会進行者 でないならなんなのか
上記のGoogle先生のAIの意見をまとめると 場の雰囲気作りはもちろん、参加者から意見を引き出して議論の促進と整理を行い、最後に合意形成をしないといけない ようです。
では単に議論ができて最後に合意形成ができれば良いのでしょうか?
前に別の記事で書いたのですが会議には議論すべきテーマや、議論することで達成したい目的があります。
会議におけるファシリテーターの存在意義とは会議の限られた時間の中で議論すべきテーマに沿って参加者の議論が行われ、達成したい目的に貢献する結論が得られるようサポートすることです。
会議が始まる前に、会議で議論すべきテーマや達成したい目的を明確にすることで限られた時間の中で議論を発散させずに有益な議論をさせることもまたファシリテーターの重要な役割です。
議論すべきテーマや達成したい目的から外れた議論を止めたり、あるいは時間が必要なら延長やスピンアウトした会議の設定も必要でしょう。
また本質に迫った意見が出たのに議論からスルーされた場合、それをあらためてメンバーの前に突きつけて反応を引き出す行為も必要になります。
あるいは「"すでに利益もバリバリ出ていて、ユーザー数も売上も右肩上がり、なにも問題がないパーフェクトな状態"でないにも関わらず、ふりかえりで改善点が出ない」などの不健全な状態を修正することも仕事に含まれます。
では何がファシリテーターの仕事に含まれないのでしょう?
「司会」や「タイムキーパー」としての役割はファシリテーターとしての仕事ではありません。
またファシリテーターは自分の意見をあまり出すべきではありません。
結論や正解に他の参加者よりいち早く辿り着いたとしても、それが他の参加者の口から出るのを待つべきです。
1on1と同じです。
事実や推測や意見、あるいは結論や正解は必ず参加者側から出るべきで「上位者が下位者に正解を授ける」場ではあってはならないのです。
むしろファシリテーターは司会進行をしてはいけない
「ファシリテーターは司会進行をしてはいけない」
これは読んでそのままです。
理由はファシリテーターが司会を兼ねると議論の方向や結論を容易に誘導できるからです。
すでにファシリテーターの中で仮説や結論が出ていて、その結論に向けてチームの議論や結論を誘導できてしまうし、無意識のうちにしてしまいます。
これをやると短期的にはスムーズに議論を進められているように見えても、長期的には会議が急速に形骸化していきます。
ある程度頭が回る人間は会議がファシリテーターの結論ありきで進められていることを簡単に見抜きますし、周囲の人間もやがて気づいてしまいます。
例を出しましょうか。
上司と部下の1on1で「前年比120%の数値を人事目標に設定し、さらに業務外の時間で資格を取ることを部下が宣言する」よう上司が仕向けるのはとても簡単ですし、部下側の8割の人間はそれに従うでしょう。
形式的には部下が自発的に宣言していますが、実際には上司がそう仕向けています。そして権力勾配や話の主導権を利用すれば簡単です。
しかしその実態に部下が気づいたら二度と上司には心を開かないし、1on1の時間も形骸化していくでしょう。
会議を形骸化させないためにファシリテーターは司会進行をしてはいけません
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