駆け出しスクラムマスターとしてどう振る舞うべきか
この記事はスクラムマスターによるスクラム Advent Calendar 2024の記事です。
これは仮定の話です。
ある日あなたは突然偉い人に呼び出されて「お前、明日からあのチームのスクラムマスターな」と言われたとしましょう。
チームはスクラムを始めて1年以上経っており、スクラムマスターは不在なものの本人たちは「俺たちは俺たちなりにうまくやっている。いやスクラムとかあんまり詳しくないけど」という認識であるとします。
スクラムマスターとして何をすべきでしょうか?
スクラムイベントのファシリテーターをやる?
そうですね、よくある回答です。
スクラムをはじめたてのチームならそれでいいでしょう。
でも今回のチームはスクラム経験1年以上のチームです。
あらたにファシリをしてくれる人がいてもあまり嬉しくないでしょう。
今までファシリが輪番制であったなら、負荷が軽くなって嬉しいかもしれません。
でも3ヶ月もすれば新しい驚きと進歩を求めるに違いありません。
さてあなたは何をすべきでしょう。
本を読んでみる
書籍Scrum Master The Bookにあたってみましょう。
スクラムマスターに必要なメタスキル(ある状況において意図的に取る態度、考え方、スタンス)には、ティーチング、傾聴、好奇心、尊敬、遊び心、忍耐などとあります。
書籍エッセンシャルスクラムにあたってみましょう
スクラムマスターの主な責任は、コーチ、サーバントリーダー、プロセスの権威者、防御壁、インペディメントの除去、チェンジエージェントとあります。
ルールを守らせる
駆け出しスクラムマスターがファシリテーターの次に手をつけがちなのはチケット警察業です。
いい考えですね。
チケットにおいてステータス更新が忘れられていたり、受け入れの基準が未記入だったり、あるいはチームで合意したはずの完了の定義やReadyの定義、憲章が実態と乖離していれば、それを糺すわけですね。
担当者や見積が空欄なのに着手されてしまったチケットを見ればめざとく追いかけて記入するようメンションするわけですね。
もちろんウザがられる可能性はあります。
ですが風紀委員業も重要なスクラムマスターの仕事の一つです。
しかし書籍によれば、これは「プロセスの権威者」のほんの一部に過ぎません。
ではどうすればいいのか
官僚主義的な回答をしましょう。
それを見つけるのがあなたの仕事です(私も分かりません、の婉曲的表現)
意地の悪い人事部の人間みたいな回答をしましょう。
それを聞く時点であなたはスクラムマスターに向いていません。
なぜならスクラムマスターの仕事は名前のない仕事を拾ってどうにかすることだからです。
ああ、ちょっと待って。
その振り上げた拳を一旦下ろして、ちゃんと答えるから。
では何を一歩目にすればいい?
基本は観察です。
ama_chさんもこう言ってます
観察するのは分かったよ、で、どうすりゃいいんだ
Oh, Good Question.
私も半年前にとても悩んだものです。
じゃあどうすればいいのかの話をしましょう。
ただし先にアンチパターンの話をしましょう。
一番やってはいけないこと
「私は理想のスクラムを知っている」
「お前たちのスクラムは間違っている。俺の言う通りにやれ」
このパターンをやるのは、最速失敗バッドエンドRTAを狙っているわけではないのならお勧めしません。
なにより現場の人間へのHRTに欠けています。
仮にその方向で人を動かそうとしても現場が動かず結局失敗するでしょうし、なによりその仮説がよほどフィットしてたちどころに事態が解決しない限りは失敗するでしょう。
失敗した責任はあなた持ちになります。
それで失敗した事例ですか?
「私は勝利の秘訣を知っている」と大風呂敷を広げたWW1の二ヴェル攻勢の目を覆う失敗あたりが参考になるのではないでしょうか。
ではどうすべきか、という話をしましょう。
やるべきこと
チームを観察しましょう。
ああ、それはみなさんご存知ですね。
では観察した上で、なにが起きるかを見るべきでしょうか?
キーワードは「もったいない」です。
努力はなされているのに結果に結びついていない。
あるいは不合理な状況を運用でカバーしている。
要するに、問題の目星はつき、チームに解決や改善の意思はあり、すでにコストを払う意思表示もしているのに結果だけが返ってこないケースです。
最後の部分が問題ですね。
それ以外はすでに現場がどうにかしてくれています。
そこをスクラムマスターの権威力でどうにかするわけです。
するとチームは便益を得ます。
駆け出しスクラムマスターが陥りがちな罠
一つは傲慢になりがちな点です。
俺は理想のスクラムを知っている。お前らのスクラムを間違っている、お前らは俺の指示に合わせろ。
でも駆け出しSMのパワーでどうにかできる事柄はたかが知れています。
問題の目星をつけて、チームに解決や改善の意思を煽り立て、コストを払う意思を導き、結果を出す。
その流れを実現するのは難しいでしょう。
だから与し易い相手から倒していくのです。
いわば相手の力も使う、合気道です。
その方法で結果を出すと何がいいのか
チームからの信頼が得られます。
チーム以外の、ビジネスチームからの信頼も得られます。
「こいつはやるかもしれねぇ」
その信頼を得ることこそが第一歩です。
チーム外に対する干渉力も、チーム内への権威やチェンジエージェントとしての実績も、そうやって得るのです。
(漫画スペースコブラより引用)
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