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AIはあなたの仕事は奪わないが、あなたの職は奪う

2024/05/01に公開

Devin炎上中

少し前にDevinというAIが話題になりました。

”完全自律型AIエンジニア”をうたい、プロンプトを元に情報収集、コーディング、デバッグまで単体でこなせるというリリースはいよいよ人間のエンジニアが完全に置き換えられると衝撃を持って受け止められました。

しかし、その性能は誇大広告ないし虚偽の疑いがあるようです。

Youtubeチャンネル「Internet of Bugs」およびそれを受けたライターのDevanshさんは、クラウドソーシングサイトUpworkでDevinが実際に仕事を受け納品したとするデモンストレーションを検証しています。それによると、Devinのデモンストレーションには様々なチェリーピックングやごまかしがあると指摘されています。

Devinは「自ら生成したコードでエラーが出た場合にそれを自らデバッグし修正できる」という機能が一つの目玉になっていました。しかし、デモンストレーションの中で「Devinがエラーを検出し修正したとするファイル」自体がDevinが出力した成果物に含まれていなかったようです。検証によると、Devinがやったことは「不要なバグを自ら生成し、それを自ら修正してみせ、最終的には出力から除外した」ということなのではないかと推測されています。

他にも、そもそもDevinが納品したとする成果物が実際には案件の要件を満たしていないという指摘や、動画中でDevinが受注したとする案件の依頼主と名乗る人が現れDevinから納品された事実はないというなど、この件に関しては混迷を極めています。

おそらく想像していたより現段階のDevinの性能は高くなく、人間に取って代われるほどのものではないかもしれません。
最近はDevinの他にもAIエンジニアの発表が相次いでいますが、Devinだけがハイプで他は本物であるという可能性は高くないと思います。
すぐに性能を向上させて、実用レベルまで達するというのも難しいのではないかと私は考えています。

AIは我々仕事の代わりはできないが、職は奪うかもしれない

AIは我々の仕事を代わりにやってくれるほどのものではまだない、しかし、我々の職を奪う可能性は多分にあります。

第一に、「我々の専門性は思っている以上に理解されていない」からです。

上の検証で、Devinがかなり古いコードの書き方をしていると指摘されていました。おそらく、学習元のデータに引っ張られたものだと思われます。しかし、Devinの出力するコードと我々の書いているコードがどう違うか誰が判断するのか。

我々の書いているコードとDevinの書いているコードは違いますが、大多数の人類には同じ「コードらしきもの」としてとらえられます。

同じ「コードらしきもの」を出力するものであるならば、生産性が高く、コスパが良く、新しくてピカピカな方を選ばれるかもしれません。

こう書いておいてなんですが、現段階のAIの生産性が高いかはかなり怪しいです。上記の検証でもDevinの出力の遅さは問題になっています。

コスパ面は更に問題であり、これが第二の問題点です。「AIのコスパは良くない」です。「AIのコスパは維持不可能」といったほうが適切でしょうか。

ウォールストリート・ジャーナルによると、「NVIDIAは去年、AIをトレーニングするためのチップに500億ドル使ったが、得られた収益は30億ドルだった」そうです。我々がAPIを通して使う安価なAIはMicrosoftやGoogleなどのビックテックが膨大な設備投資や電力を費やし、赤字を垂れ流しながら提供しています

いつまで我々が安価な料金でAIが使えるかというのは不透明です。ビジネスとしてAIにかかっている莫大な費用を負担するときに、代わりに人件費を削減されるのは想像に難くないでしょう。

かなり憂鬱なシナリオではありますが、「我々が職を失う代わりに、我々の仕事を肩代わりしてくれるわけではないAIが導入される」というのはあり得る未来です。

「どうしたらいいか」と聞かれるならば、「わかりません」と答えるしかないです。どうしたらいいんでしょう?

中島みゆきに「ミュージシャン」という曲があるのですが、

今から20年後にもう一度会ったなら
僕は何をしてるだろう どうやって暮らしてるだろう
他にできることもなしこの齢になってるから
じっとベンチで暮らしてる それより他ないだろうか

という歌詞あるんですけど、そういう感じですかね。

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