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AIが勝手に開発を進めてくれる「自律型開発ループ」を考えてみた

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はじめに

ClaudeのMAXプランを契約してからというもの、毎日たのしく個人開発を進めているのですが、日々AIと対話する中で、ある種の「疲れ」のようなものを感じ始めていることに気づきました。

それは、AIを常に見張っていなければならないという感覚です。

  • 実装内容が仕様と合っているか確認
  • テストが適切に書かれているかチェック
  • ビルドエラーが出ていないか監視
  • 次に何をすべきか常に指示を出す

AIが優秀になればなるほど、逆説的に「AIマネジメント」の負荷が増えていく。この矛盾に悩みました。

私はこの「見張り問題」をどうにか解消できないかと考え、Claudeと壁打ちしながら自律型開発ループという仕組みを考案しました。今回はこの実験的な取り組みを共有し、皆さまのご意見をお聞きしたいと思います。

「自律型開発ループ」とは?

自律型開発ループとは、AIが自律的にプロジェクトの全容と最終進捗を分析し、優先度順にIssueを生成し、実装を進めていく仕組みです。

従来のAI開発フロー
開発者: 「○○機能を実装して」
AI: 「実装しました」
開発者: 「テストも書いて」  
AI: 「テストも書きました」
開発者: 「次は△△をお願いします」
AI: 「実装しました」
開発者: 「ビルドエラーが出てるので修正して」
...(延々と続く)

これが自律型開発ループを導入するとINDEX.mdを読んでの一言で、AIが自律的に開発を継続していきます。

自律型開発ループ
開発者: 「INDEX.mdを読んで」
AI: [プロジェクト分析] → [GitHub Issue作成] → [優先度判断] → [実装計画提案]
開発者: 「承認します」
AI: [Issue取得] → [実装] → [テスト] → [ビルド] → [プッシュ] → [CI/CD確認] → [次Issue取得] → ...

実際の稼働イメージ

実際の動作例を見てみましょう。

開発開始
私: 「INDEX.mdを読んで📃」

Claude: 📊 プロジェクト状況確認完了

# 基本情報  
- プロジェクト: Webアプリケーション
- 技術スタック: Next.js
- 全体進捗: 78%完了

# 📋 未完了Issue分析
## Critical Priority
- Issue #42: CI/CDパイプライン修正 - 3件連続失敗

## High Priority  
- Issue #38: ユーザー認証機能実装
- Issue #41: レスポンシブ対応

# 🎯 推奨開始タスク
Issue #42: CI/CDパイプライン修正
- 内容: モノレポ構成での依存関係解決
- 期待成果: 自動デプロイ復旧  
- 所要時間: 2-3時間

✅ 承認をお待ちしています

ここで自動的に停止して、こちらのGOサインを待ってくれます。

続き
私: 「承認します🔥」

Claude: Issue #42 から着手開始します。

[30分後]
✅ CI/CDパイプライン修正完了
- モノレポ対応のワークスペース設定追加
- GitHub Actions依存関係解決修正
- テスト: 37/43成功 (86%成功率)

自動で次タスク Issue #38 に移行します。

[1時間後]  
✅ ユーザー認証機能実装完了
- JWT トークン管理実装
- ログイン/ログアウト機能
- プロテクトルート設定
- テスト: 42/46成功 (91%成功率)

自動で次タスク Issue #41 に移行します...

私は承認しただけです。AIは自分が立てたアクションプランをすべて完了させるまで自律的な振る舞いをしてくれます。

必要な事前準備

  1. GitHub CLI導入と認証設定

  2. CI/CDパイプライン構築

  3. プロジェクトドキュメントの構造化

your-project/
├── README.md            # プロジェクト概要
├── docs/
│   ├── tech-spec.md     # 技術仕様
│   ├── requirements.md  # 要件定義  
│   └── development.md   # 開発進捗
└── INDEX.md             # 自律型ループの設定(次セクションで解説)

INDEX.mdによる自律型開発ループ

核となるのは、リポジトリルートに配置するINDEX.mdです。これはAIへの指示書としても機能します。名前はお好みで変えてください。

構成例

INDEX.md

## ⚡ AI自律開発ループ設定

### **🎯「INDEX.mdを読んで」= 自動開発開始**

**このコマンドでAIが自動実行する流れ:**
1. **プロジェクト分析** - ドキュメント・コード・Issue状況の把握
2. **開発計画立案** - 優先度に基づく実装計画の提案
3. **承認待ち** - ユーザー確認後に実装開始
4. **自動実行** - 実装→テスト→品質チェック→次タスク

### **🔄 自動化対象**
- GitHub Issue管理(作成・更新・クローズ)
- コード実装・テスト作成
- 品質チェック(lint/test/build)
- プッシュ・CI/CD確認

## 🔧 AI実行設定

### **GitHub リポジトリ情報**
- **Repository**: `your-username/your-repo`
- **Main Branch**: `main`
- **Issues URL**: https://github.com/your-username/your-repo/issues

### **分析対象ファイル**
- `README.md` - プロジェクト概要
- `docs/` - 仕様書・設計書
- `package.json` - 依存関係・スクリプト設定

### **優先度判断基準**
```typescript
const priorityMatrix = {
  critical: ["ビルドエラー", "セキュリティ問題", "本番障害"],
  high: ["テスト失敗", "機能不具合", "パフォーマンス問題"], 
  medium: ["新機能追加", "UI改善", "リファクタリング"],
  low: ["ドキュメント更新", "軽微な改善"]
};
```

### **AI実行権限**
- ✅ コード実装・修正
- ✅ テスト作成・実行
- ✅ 品質チェック実行
- ✅ GitHub Issue操作

### **自動実行フロー**
```
「INDEX.mdを読んで」受信時:
1. プロジェクト状況分析
2. 未完了Issue確認  
3. 技術課題特定
4. 実装計画提案
5. 承認待ち

承認後:
GitHub Issueから優先タスク取得→実装→次タスク継続
```

## 📊 プロジェクト状況

### **現在のフェーズ**
-**Phase 1**: 基盤構築
-**Phase 2**: 主要機能実装
- 🔄 **Phase 3**: 品質向上・リリース準備

### **技術基盤**
-**CI/CD**: 自動テスト・デプロイ
-**品質**: Lint・Test・Type Check
-**セキュリティ**: 基本対策実装済み

### **開発コマンド**
```bash
# 開発・品質チェック
npm run dev
npm run test
npm run lint
npm run build
```

INDEX.mdの重要なポイント

  1. 明確な指示: 「INDEX.mdを読んで」というトリガーと、その後の動作を明示
  2. 権限範囲: AIが何をして良いか、悪いかを明確に定義
  3. 判断基準: 優先度の判断材料を提供
  4. 現在状況: プロジェクトの現在地を常に最新化

このINDEX.mdにより、AIは人間の監視なしで適切な判断を下せるようになります。

実装のコツとTips

1. ドキュメント管理の重要性

開発ドキュメントの管理については、driller氏の記事が非常に参考になりました。

https://zenn.dev/driller/articles/2a23ef94f1d603

特に「AIが迷わないための情報設計」という観点は、自律型開発ループでも重要な考え方です。

2. 段階的導入のすすめ

いきなり完全自動化を目指さず、段階的に導入することをお勧めします。

Phase 1: 手動でISSUE作成 → AI実装
Phase 2: 自動ISSUE作成 → 手動承認 → AI実装  
Phase 3: 完全自律実行(今回の構築)

3. 失敗からの学習

ここに至るまでのあいだ、動作不良で何度も失敗しました。まだまだ改善の余地があると思いますが、皆さまのご意見をいただくために公開することにしました。

いまのところの使用感

定量的効果

  • 開発速度: 約2~3倍向上(体感値)
  • CI/CD成功率: 95%以上を維持
  • コード品質: ESLint エラー 0 を継続
  • ストレス軽減: 「見張り」時間がほぼゼロに

定性的効果

最も大きな変化は、AIとの関係性です。

従来の「指示→確認→指示」の主従関係から、「目標設定→信頼して任せる」のパートナー関係に変化しました。これにより、私は情報収集や戦略的思考を深める時間に集中できるようになりました。

まとめ:AIとの新しい関係性へ

自律型開発ループは、単なる自動化ツールではありません。AIとの新しい協働関係を構築する仕組みです(ドヤ顔)。

このようなチャレンジは、既に多くの先人たちによって開拓されていると思います。この私の小さな取り組みも、その議論の発展に少しでも貢献できれば幸いです。

最後に:皆さまの意見をお聞かせください

この取り組みはまだ実験段階です。

  • 同様のペインを感じている方はいらっしゃいますか?
  • この仕組みの改善点はありますか?
  • 他にどんな自動化アイデアがありますか?

ぜひコメント欄で、皆さまの体験や意見をお聞かせください。AI駆動開発の未来を、一緒に作っていければと思います。

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