📘

高校情報Ⅰ JavaScript

に公開

高校生の情報の教科書 実教出版 令和4年1月20日発行の 「情報Ⅰ javaScript」
を読んだので書評をここに書く。

https://www.jikkyo.co.jp/book/detail/22023322

出版社について

実教出版という名前の出版社は聞いたことがない人が多いと思うが、
工業高校向けの情報工学の本をシリーズで出している唯一の出版社です。
採算が合わないせいか、工業高校の情報の教科書を出せるところがないのでしょう。
工業高校は全国で516校しかないので、
そのうち情報科がある高校というと結構限られていると思います。
工業高校全てに情報科があるとして、
一冊あたり、利益200円、1学年情報科40人と考えても最大516x 40 x 200 = 412万しか利益が無いので、

これは日本全国で手に入れられる利益の最大値と考えるとあまりにも少ないと思います。

話はそれましたが、その工業高校の教科書を書いている実教出版が
学習要領に則って普通科高校向けに書いた情報の教科書が
今回言及する「情報Ⅰ javaScript」というわけです。

内容について

実教出版にあるソフトウェア技術、ハードウェア技術、コンピューター技術の本をまとめて、
要約し、それに普通科高校の学習要領を追加した内容となっている。

私は情報の授業の補助教材としてのJavaScriptの書き方、プログラミングの
教科書だと思ったが、それは違う。

これはあくまで学習要領に沿った普通科の情報の教科書にオマケとしてJavaScriptの書き方、使い方を追加した教科書だ。

よってJavaScriptについて殆ど言及しておらず、高校生のために書いたJavaScriptの入門書として読むと面食らう

正確さ

流石、工業高校の教科書を多数書いている実教出版だけあって、
内容はかなり正確だ。
他の普通科の情報の教科書は首を捻るような内容が多かったが、この教科書は
それが少ない。

教科書としての内容の正確さは東京書籍、数研出版など他社と比べるまでもなく、
実教出版が優れている。
...そもそも教科書自体は検定受けるにあたって間違いや誤解を招く表現があったら
変更することが義務付けられているなので、正確でない教科書など教科書の資格を取り下げられるべきなんだけどね。

難易度

2025-05-10現在、恐らく教科書としては最も難しい教科書だ。
内容は分かりやすく書いているのだが、やっていることが他社の教科書よりも単純に難しい

例えば、10進数の少数を2進数のコンピューターでどうやって表現するか?について1Pかけて説明していたり、
パリティビットについて水平、垂直パリティを使って、縦x横でビットを埋めたら何ビットまで誤りが訂正できるか?という
IPAの応用情報技術者の問題にもあった内容を説明するのに1P使っている。

統計のページにも力が入っており、カイの2乗検定や95%信頼区間、モンテカルロ法などの話も載っている。

これらの内容は他社の教科書に見られない。

また、この教科書を書くにあたって参考にしたであろう工業高校の教科書にもこれらの内容は書かれていない

つまり、元の教科書を要約した上で内容はさらに難しくなっているのだ。

逆に、デジタルデバイドなど他の情報の教科書に多い、「それは情報の教科書でなく、公民の教科書でやるべきでは?」
みたいな内容は無くなっている。

大学受験を突破するという点で考えると難しすぎる気はする。

JavaScriptについて

使われているJavaScriptはJavaScriptの初歩の初歩で、
入門JavaScriptみたいな入門書の前半部分で終わると思ったら良い。

prompt, console.log, for, if, whileループ, function,配列までで、

連想配列やclass, moduleなどの話はあるが駆け足過ぎて、
単語の紹介で終わっているレベルだ。
説明はあることはあるがこの説明でクラスは確かに必要だ!とはならんと思う。
そういう性質のものがあるという程度。

あくまで、プログラミングに触れてみよう程度のレベルだ。

悪い言い方をするとfor, if, while, functionぐらいしか入試で出ないので、classや連想配列を勉強する必要は無く、これらの記述は学生の負担を増やすだけ
なっている。

全ての変数の宣言がvarになっていたのと、
実教出版あるあるのwindows独自の仕様をコンピュータ一般の仕様みたく書くのは
頂けない。

対象者

恐らくは勉強に意欲がある進学校の学生、先生向けに書かれていると思われる。

この教科書は非常に丁寧に書かれているため、ちゃんと勉強したい学生には非常に良い。

先生はこの教科書を教材に扱うにあたって、受験対策のために
この教科書には無いが他社の教科書にはある単語を授業でちゃんと教える必要が出るため、
先生もしっかりと他社の教科書を勉強する必要がある。

これは結構重要なことで、歴史の教科書を見ると分かるが、出版社によって書いてある内容、書いてない内容があり、
入試問題を作るにあたって、どれぐらいの教科書に使われているか?を参考に問題を作る。
そのためどれだけの教科書に使われているという数が書かれている歴史の単語集が重要で、
補助教材として学校指定で買わされるわけだ。

いろんな教科書で使われている単語はそれが実用度が低かろうと入試に出ると言う事は覚えておこう。

先生の負担は他の教科書を使っているよりも大きいと思う。
これは教科書を読み上げるだけだと学生に舐められる教科書だ。
先生はちゃんと勉強しよう。

まとめ

ちゃんと高校生に情報を勉強させる教科書としては合格点、
大学受験突破という意味では落第点な教科書。
明らかに難し過ぎる。

統計の部分は端的だがまとめとしては良い。
これをしっかりできたとして統計検定3級さえ受からないとは思うが(統計がメインの本では無いので仕方ない。)、
まとめとしては最もよくできている本だろう。
大学の教科書や一般に売られている統計の本だとわかりづらいという人は買っても良いと思う。

Discussion