EigenLayerとは何か? イーサリアムの信頼を再利用する仕組み
前書き
この記事では、EigenLayer(アイゲン・レイヤー)の仕組みをシンプルに解説します。
対象は以下の読者層です。
- Web3開発に携わるエンジニア
- 新しいプロジェクトを検討する起業家
- Web3を学習者
「仕組みを理解して、自分の開発や投資にどう活かせるのか?」という視点に絞ってまとめました。
EigenLayerとは?
EigenLayerは、イーサリアムのセキュリティを外部サービスに貸し出す仕組みです。
これにより、外部プロジェクト(AVS:Actively Validated Services)は、自前でセキュリティを構築する必要がなく、既存の強固なイーサリアムの信頼を「借りて」使えるようになります。
例えるなら、
- イーサリアム本体:警備員が常駐する大型ショッピングモール
- EigenLayer:警備サービスの貸出窓口
- AVS:モール内のテナント
テナントは自前で警備員を雇う必要がなく、モールの警備体制のもとで安心して営業できる、というイメージです。
EigenLayerの3者関係
EigenLayerには、次の3つのステークホルダーが存在します。
種類 | 仕事 |
---|---|
リステーカー | ETHを再度委任し、保証金の役割を果たす |
オペレーター | ノードを運営し、AVSの正しい動作をチェック |
AVS(外部サービス) | イーサリアムのセキュリティをレンタルして利用 |
リステーカー
ETHを再度委任し、保証金の役割を果たす。
見返りとして報酬を獲得。
オペレーター
ノードを運営し、AVSの正しい動作をチェック。
報酬をリステーカーに分配。
AVS(外部サービス)
イーサリアムのセキュリティをレンタルして利用。
使用料を支払い、安心してサービスを展開可能。
ネイティブ・リステーキングとリキッド・リステーキング
EigenLayerでは、ETHを再利用する方法が2種類あります。
種類 | 内容 |
---|---|
ネイティブ・リステーキング | バリデーターが報酬先アドレスを EigenLayer専用に切り替え、ETHを再度ステーク。(32ETH以上) |
リキッド・リステーキング | LST(リキッドステーキングトークン)保有者が、LSTをEigenLayerに預けて参加。少額からでも参加可能。 |
共通点は「ETHを再利用して二重に利回りを得られる」という点です。
投資家にとっては、新たなイールド戦略となります。
公共インフラとしてのEigenLayer
従来、L1/L2プロジェクトは独自のセキュリティを確保する必要がありました。
しかし、EigenLayerを使えば次の3つのメリットが得られます。
- 開発コスト削減(セキュリティ設計をゼロから作らなくていい)
- アプリ開発に集中できる
- ETHの活用範囲が広がり、エコシステムの信頼性が増す
例えば以下のようなサービスがEigenLayer上に構築されています。
- EigenDA:データ可用性レイヤー
- Espresso:分散型シーケンサー
結果として、ETHの価値向上→イーサリアム全体のセキュリティ強化→公共インフラとしての信頼性向上という循環が期待できます。
技術的・経済的リスク
もちろん、リスクも存在します。
- 技術リスク:バグや不正による資産流出
- 経済リスク:利回り偏重で未成熟なAVSに過剰資金が流入する危険
- 市場リスク:LRT(リキッド・リステーキング・トークン)のデペッグによる混乱
特に「社会的リスク」――EigenLayerの失敗がイーサリアム全体の信頼を揺るがす可能性――も指摘されています。
この点については、別記事で深掘りします。
まとめ
EigenLayerは、
- Security-as-a-Service という新しい発想
- 開発者にとっての参入障壁を下げるインフラ
- 投資家にとって新しい利回り機会
をもたらします。
EigenLayerはリスクもありますが、今後のWeb3インフラの基盤となり得る仕組みです。
👀 noteでは、「この仕組み、社会にとって本当に安全なの?」について深堀予定です。
Vitalikが警鐘を鳴らす「信頼のデザイン」について説明しているので、気になる人はぜひご覧ください。
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