RHEL, OpenShiftのFIPS準拠モード
はじめに
本記事では、Red Hat製品、特にRHELとOpenShiftをFIPS準拠モードで使用するためにはどうするか、どのような仕組みによってFIPS準拠モードで稼働するか、について調べた内容を書きました。
KubernetesをFIPS準拠させるのはなかなか大変で、実際Red Hatも「OpenShiftはFIPSに対応していたつもりが実はできてませんでしたすみません」というCVEを発行したりしています (CVEの技術的背景等はこちらに解説があります)。
なお、本ドキュメントでは便宜上、FIPSの承認ステータスがFIPS validatedなものもModules in Progressなものもまとめて「RHEL(もしくはOpenShift)はFIPS準拠している」「FIPS準拠した暗号化モジュールを使って」のような表現をしていますのでご注意ください。正確にはざっくりRHEL 8系はほぼ準拠していますがRHEL 9系はまだ申請中の状態です。
FIPSとは
FIPS (Federal Information Processing Standards) とは、軍事以外の用途で利用する情報通信機器が満たすべき技術標準について、アメリカ連邦政府機関定めた規格です。FIPSの個々の規格には通し番号がついています。本ドキュメントで言及するのはFIPS-140という暗号化モジュールが満たすべき基準です。最新版は2019年に発行されたFIPS 140-3です。
FIPS 140の対象は暗号化モジュールです。RHELの場合、具体的にはOpenSSL, GnuTLS, NSS, libgcrypt, Kernel Crypto APIが対象となります。
Red Hat製品のFIPS含めた各種セキュリティへの準拠状況は Compliance Activities and Government Standards にまとまっています。RHELの各マイナーリリースおよび暗号化モジュールごとの申請状況についてもこのページに詳細が載っています。
「申請状況」と書きましたが、正確にはNIST CMVP (Cryptographic Module Validation Program) プロセスといって、以下のステージからなります。
- Implementation
- Under Test
- Modules in Process
- Validated
具体的にどの暗号化モジュールがCMVPプロセスのどのステージにいるかは、NISTの Modules in Process Listページ で確認することができます。Red Hat
でページ内検索してみてください。
FIPS 140のバージョンとRed Hat製品の関係は、FIPS 140 Lifecycle Support Statement のページに記載されています。ざっくりまとめると、
-
FIPS 140-2
- RHEL 8.6、およびそれを使用するOpenShift 4.11および4.12はFIPS 140-2のValidatedなOpenSSL暗号化モジュールを使用します。
- 2025年半ばまでに、FIPS 140-3への移行パスおよび新たなRHELリリースを提供する予定 (OpenShift 4.12は2026年までサポート)
-
FIPS 140-3
- RHEL 9.2[1] (およびRHEL 9.2のOpenSSLを使うOpenShift 4.14) のOpenSSL暗号化モジュールについて、2023年中にFIPS140-3の承認を申請する予定 (実際申請済み)。OpenShift 4.12のーザーが移行できるよう、申請は2025年Q4までに承認される予定。
- FIPS承認されたOpenShift 4.14を3年あいだ使用できること、およびその後1年あいだの次バージョンへの移行期間を設ける予定
という状況です。
RHELをFIPS準拠モードで動かす
RHELをFIPS準拠させるためには、インストール時に「FIPS準拠モード」でインストールする必要があります。具体的には、起動オプションに fips=1
を追加してインストーラを起動します (詳細は製品ドキュメントをご参照ください: https://docs.redhat.com/en/documentation/red_hat_enterprise_linux/9/html/security_hardening/assembly_installing-the-system-in-fips-mode_security-hardening#federal-information-processing-standards-140-and-fips-mode_assembly_installing-the-system-in-fips-mode)。
通常のOSインストールを実施した後、FIPS準拠モードに変更するコマンドも用意されています (fips-mode-setup --enable
)。しかし、作成済みの鍵等が全てFIPSの基準を満たすよう再作成されるわけではないなど、このコマンドで完全にFIPS準拠できることが保証されているわけではありません。確実にFIPS準拠にするためには、OSインストール時に指定する必要があります。
RHELをFIPS準拠モードにすると、
- カーネル起動オプションに
fips=1
が追加される- 起動後、
/proc/sys/crypto/fips_enabled
の値が1
になる (多くのユーザーランドがFIPS準拠モードで起動したかどうかの判断にこのsysctl値を使用する)
- 起動後、
- システム全体の暗号化ポリシーがFIPS準拠になる[2] (
update-crypto-policy --set FIPS
を実行した状態) - dracutモジュールとして
fips
を追加したinitramfsが再作成される- FIPS準拠した暗号化カーネルモジュールのみをロードする
- 暗号化アルゴリズムが想定したものかどうかセルフテストする
等の状態になります。
RHELにおけるGoアプリケーションのFIPS対応
OpenShift/Kubernetesは主にGo言語で書かれています。Goは言語標準の暗号化ルーチンを持っており、通常はそれを使用します。RHELのGoツールチェインは、ビルドしたGoアプリケーションをFIPS準拠にするために、暗号化ルーチンとしてGo言語標準のものではなく、RHELのOpenSSLを使うように改造されています。実際にGo言語のツールチェインに対して加えている変更点は下記です。
- Goのupstreamのdev.boringcryptoブランチの実装を流用してOpenSSLを呼び出す
- 実行時にFIPS準拠モードかどうかを検出して動きを変える
- FIPS準拠モードの場合: OpenSSLの暗号化ルーチンを使用する
- ランタイムがdl_open(3)でlibcrypto.soを読み込む
- FIPS準拠モードではない(通常の)場合: Go言語標準の暗号化ルーチンを使用する
- FIPS準拠モードの場合: OpenSSLの暗号化ルーチンを使用する
- 環境変数
GOLANG_FIPS=1
を設定した場合、FIPS準拠モードかどうかによらずOpenSSLを使用する - アプリケーションのビルド時に
-tags no_openssl
オプションを指定するとOpenSSLを使用しなくなる
OpenSSLの暗号化モジュールを使用するには、OpenSSLのライブラリをdl_open(3)で読み込む必要があるため、CGO_ENABLED=1
でアプリケーションをビルドする必要があります。
これらの変更内容は、次のリポジトリで開発を続けています。
背景
Go言語標準の暗号化ルーチンは、FIPS対応するつもりはないそうです。
一方、HeartBleedの脆弱性が発見された頃にGoogleがOpenSSLからフォークしたBoringSSLのサブセットであるBoringCryptoはFIPS 140-2 Validatedです。
Goは、暗号化ルーチンをGo標準ライブラリではなくBoringCryptoに切り替えるdev.boringcryptoブランチを持っていました[3]。
Red HatのGoツールチェインは、このブランチをフォークして、BoringSSLではなくOpenSSLの暗号化モジュールを呼び出すようにしました。OpenShiftをFIPS準拠させるにあたって、OpenShiftとOS(RHEL)の暗号化モジュールを統一できることは、FIPS準拠の申請にかかる工数や時間の面でメリットになると考えたのだと思われます。
OpenShiftをFIPS準拠モードで動かす
OpenShiftをFIPS準拠モードにするには、install-config.yamlに fips: true
を追記してクラスターを構築します (詳細はドキュメントをご参照ください: https://docs.openshift.com/container-platform/4.15/installing/installing-fips.html#installing-fips-mode_installing-fips)。
FIPS準拠モードのOpenShiftでは、暗号化モジュールとしてRHELのFIPS承認済みのコンポーネントを使用します。
具体的には、RHEL CoreOSが「FIPS準拠モードのRHEL」と同じ状態、つまり fips=1
オプションがついた状態でカーネルが起動し、crypto policyが FIPS
に設定され、dracutモジュールとしてfipsが有効になった状態で動いています[4]。
kubeadm等で使用するKubernetesのバイナリはCGO_ENABLED=0でシングルバイナリとしてビルドされているようです (私が見た範囲では)。
一方、OpenShiftはCGO_ENABLED=1でビルドされています。
OpenShift v4.15.7のkube-apiserverのバイナリを実際に調べます。まず、kube-apiserverコンテナのイメージIDを調べます。
$ oc -n openshift-kube-apiserver get pod kube-apiserver-ip-10-0-0-254.us-east-2.compute.internal -o json | jq -r '.spec.containers[] | select(.name == "kube-apiserver") | .image'
quay.io/openshift-release-dev/ocp-v4.0-art-dev@sha256:dbb6ec887da8c17920f8ceac12c9c10c77f9c77519f3c61fb4c3154d8424db32
oc debug nodeでcontrol planeノードに入り、podman image mountを使ってkube-apiserverのコンテナイメージをホストOS上にマウントします。
$ oc debug node/ip-10-0-0-254.us-east-2.compute.internal
Starting pod/ip-10-0-0-254us-east-2computeinternal-debug ...
To use host binaries, run `chroot /host`
Pod IP: 10.0.0.254
If you don't see a command prompt, try pressing enter.
sh-4.4# chroot /host
# podman image mount quay.io/openshift-release-dev/ocp-v4.0-art-dev@sha256:dbb6ec887da8c17920f8ceac12c9c10c77f9c77519f3c61fb4c3154d8424db32
/var/lib/containers/storage/overlay/ed23a764f024a9f64eccdcb513b90d9a24cd8459b7f88407138c5cfacd304ac3/merged
fileやlddを使うと、kube-apiserverのバイナリがダイナミックリンクされていることがわかります。
# file /var/lib/containers/storage/overlay/ed23a764f024a9f64eccdcb513b90d9a24cd8459b7f88407138c5cfacd304ac3/merged/usr/bin/kube-apiserver
/var/lib/containers/storage/overlay/ed23a764f024a9f64eccdcb513b90d9a24cd8459b7f88407138c5cfacd304ac3/merged/usr/bin/kube-apiserver: ELF 64-bit LSB executable, x86-64, version 1 (SYSV), dynamically linked, interpreter /lib64/ld-linux-x86-64.so.2, BuildID[sha1]=4f82cbaaaea28ab9c195123716cdbba1d3b92790, for GNU/Linux 3.2.0, stripped
# ldd /var/lib/containers/storage/overlay/ed23a764f024a9f64eccdcb513b90d9a24cd8459b7f88407138c5cfacd304ac3/merged/usr/bin/kube-apiserver
linux-vdso.so.1 (0x00007ffff4930000)
libresolv.so.2 => /lib64/libresolv.so.2 (0x00007f390a06f000)
libc.so.6 => /lib64/libc.so.6 (0x00007f3909e00000)
/lib64/ld-linux-x86-64.so.2 (0x00007f390a08a000)
kube-apiserverのプロセス空間にマッピングされているファイルを確認すると、lddの出力にはなかった libcrypto.so
や /usr/lib64/ossl-modules/fips.so
がマッピングされていることがわかります。libcrypto.so
はGoのランタイムによって、fips.so
はOpenSSLのFIPS Prividerの仕組みによってそれぞれdl_open(3)でプロセス実行中に読み込まれたものです[5][6]。
# ls -l /proc/$(pidof kube-apiserver)/map_files
total 0
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 400000-406000 -> /usr/bin/kube-apiserver
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 406000-42b8000 -> /usr/bin/kube-apiserver
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 42b8000-8561000 -> /usr/bin/kube-apiserver
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f616f3cd000-7f616f47a000 -> /usr/lib64/libcrypto.so.3.0.7
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f616f47a000-7f616f6d6000 -> /usr/lib64/libcrypto.so.3.0.7
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f616f6d6000-7f616f7a2000 -> /usr/lib64/libcrypto.so.3.0.7
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f616f7a2000-7f616f7a3000 -> /usr/lib64/libcrypto.so.3.0.7
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f616f7a3000-7f616f7f9000 -> /usr/lib64/libcrypto.so.3.0.7
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f616f7f9000-7f616f7fc000 -> /usr/lib64/libcrypto.so.3.0.7
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f617c049000-7f617c05d000 -> /usr/lib64/ossl-modules/fips.so
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f617c05d000-7f617c151000 -> /usr/lib64/ossl-modules/fips.so
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f617c151000-7f617c179000 -> /usr/lib64/ossl-modules/fips.so
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f617c179000-7f617c18b000 -> /usr/lib64/ossl-modules/fips.so
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f617c18b000-7f617c18c000 -> /usr/lib64/ossl-modules/fips.so
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f617c18c000-7f617c18f000 -> /usr/lib64/libz.so.1.2.11
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f617c18f000-7f617c19d000 -> /usr/lib64/libz.so.1.2.11
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f617c19d000-7f617c1a3000 -> /usr/lib64/libz.so.1.2.11
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f617c1a3000-7f617c1a4000 -> /usr/lib64/libz.so.1.2.11
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f617c1a4000-7f617c1a5000 -> /usr/lib64/libz.so.1.2.11
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a56e2000-7f61a570a000 -> /usr/lib64/libc.so.6
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a570a000-7f61a587f000 -> /usr/lib64/libc.so.6
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a587f000-7f61a58d7000 -> /usr/lib64/libc.so.6
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a58d7000-7f61a58d8000 -> /usr/lib64/libc.so.6
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a58d8000-7f61a58dc000 -> /usr/lib64/libc.so.6
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a58dc000-7f61a58de000 -> /usr/lib64/libc.so.6
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a58eb000-7f61a58ef000 -> /usr/lib64/libresolv.so.2
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a58ef000-7f61a58f8000 -> /usr/lib64/libresolv.so.2
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a58f8000-7f61a58fb000 -> /usr/lib64/libresolv.so.2
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a58fb000-7f61a58fc000 -> /usr/lib64/libresolv.so.2
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a58fc000-7f61a58fd000 -> /usr/lib64/libresolv.so.2
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a5904000-7f61a5906000 -> /usr/lib64/ld-linux-x86-64.so.2
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a5906000-7f61a592c000 -> /usr/lib64/ld-linux-x86-64.so.2
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a592c000-7f61a5937000 -> /usr/lib64/ld-linux-x86-64.so.2
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a5938000-7f61a593a000 -> /usr/lib64/ld-linux-x86-64.so.2
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 7f61a593a000-7f61a593c000 -> /usr/lib64/ld-linux-x86-64.so.2
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 8561000-8562000 -> /usr/bin/kube-apiserver
lr--------. 1 root root 64 May 28 00:09 8562000-866f000 -> /usr/bin/kube-apiserver
おまけ
暗号化モジュールを呼び出すコードを使って、実際にOpenSSLが呼ばれるところをデバッガで追いかけます。
使用するコードはこれです。
package main
import (
"crypto/aes"
"fmt"
)
func main() {
key := "01234567801234567899012345678901"
_, err := aes.NewCipher([]byte(key))
if err != nil {
fmt.Println(err)
}
}
FIPS準拠モードで起動したRHEL 9.2の仮想マシン上で、delveを使ってデバッグ実行します。
$ dlv debug cryptotest.go
Type 'help' for list of commands.
(dlv)
aes.NewCipher()
の中に入ります。
(dlv) b aes.NewCipher
Breakpoint 1 set at 0x4d31ef for crypto/aes.NewCipher() /usr/lib/golang/src/crypto/aes/cipher.go:33
(dlv) c
> crypto/aes.NewCipher() /usr/lib/golang/src/crypto/aes/cipher.go:33 (hits goroutine(1):1 total:1) (PC: 0x4d31ef)
28:
29: // NewCipher creates and returns a new cipher.Block.
30: // The key argument should be the AES key,
31: // either 16, 24, or 32 bytes to select
32: // AES-128, AES-192, or AES-256.
=> 33: func NewCipher(key []byte) (cipher.Block, error) {
34: k := len(key)
35: switch k {
36: default:
37: return nil, KeySizeError(k)
38: case 16, 24, 32:
(dlv)
しばらくステップオーバーします。
> crypto/aes.NewCipher() /usr/lib/golang/src/crypto/aes/cipher.go:42 (PC: 0x4d327d)
37: return nil, KeySizeError(k)
38: case 16, 24, 32:
39: break
40: }
41: if boring.Enabled() {
=> 42: return boring.NewAESCipher(key)
43: }
44: return newCipher(key)
45: }
46:
47: // newCipherGeneric creates and returns a new cipher.Block
(dlv)
boring.Enabled()
の中でOSがFIPS準拠モードで稼働しているかを確認します。今はFIPS準拠モードのRHEL上で実行しているので、42行目に来ます(もしOSが通常モードで起動していれば、boring.Enabled()
はfalseを返すので、44行目に飛んで、Go標準の暗号化ルーチンに入ります)。
boring.NewAESCipher()
にステップインしてしばらく実行を進めると、OpenSSLのEVP_aes_256_ecb()を呼び出すところに来ます。
> vendor/github.com/golang-fips/openssl-fips/openssl.NewAESCipher() /usr/lib/golang/src/vendor/github.com/golang-fips/openssl-fips/openssl/aes.go:58 (PC: 0x4cdeb0)
53: case 128:
54: c.cipher = C._goboringcrypto_EVP_aes_128_ecb()
55: case 192:
56: c.cipher = C._goboringcrypto_EVP_aes_192_ecb()
57: case 256:
=> 58: c.cipher = C._goboringcrypto_EVP_aes_256_ecb()
59: default:
60: return nil, errors.New("crypto/cipher: Invalid key size")
61: }
62:
63: runtime.SetFinalizer(c, (*aesCipher).finalize)
(dlv)
バックトレースを表示します。
(dlv) s
> vendor/github.com/golang-fips/openssl-fips/openssl._Cfunc__goboringcrypto_EVP_aes_256_ecb() _cgo_gotypes.go:1215 (PC: 0x4cd78f)
(dlv) bt
0 0x00000000004cd78f in vendor/github.com/golang-fips/openssl-fips/openssl._Cfunc__goboringcrypto_EVP_aes_256_ecb
at _cgo_gotypes.go:1215
1 0x00000000004cdeb5 in vendor/github.com/golang-fips/openssl-fips/openssl.NewAESCipher
at /usr/lib/golang/src/vendor/github.com/golang-fips/openssl-fips/openssl/aes.go:58
2 0x00000000004d32b0 in crypto/aes.NewCipher
at /usr/lib/golang/src/crypto/aes/cipher.go:42
3 0x00000000004d41c5 in main.main
at ./cryptotest.go:10
4 0x000000000043ff98 in runtime.main
at /usr/lib/golang/src/runtime/proc.go:250
5 0x000000000046b521 in runtime.goexit
at /usr/lib/golang/src/runtime/asm_amd64.s:1594
(dlv)
参考文献
本文中ではリンクを載せていませんが参考にしたページを下記に記します。
- Go and FIPS 140-2 on Red Hat Enterprise Linux
- Is your Go application FIPS compliant?
- General FAQ for OpenShift and FIPS compliance
- FIPS compliant crypto in golang
- RH article on FIPS-compliant Go (よく見たら回答しているのがsmarterclayton氏だった)
- Navigating FIPS Compliance for Go Applications: Libraries, Integration, and Security
-
FIPS 140-3に準拠するため、RHEL 9.2以降では、TLS 1.2接続する際にExtended Master Secret (EMS, RFC7627) 拡張が必須になりました。TLS 1.2でEMS拡張に対応していない古いOS(例えばRHEL7)は、FIPS準拠モードで動くRHEL 9.2とは接続できませんのでご注意ください ↩︎
-
dev.boringcryptoブランチは2022年5月にmasterにマージされたようです ↩︎
-
細かいですが、CoreOSの場合はFIPS準拠モードかどうかによらずinitramfsに最初からfipsモジュールが組み込まれており、FIPS準拠モードで起動した場合のみfipsモジュールを実行するような実装になっています ↩︎
-
RHEL 9はOpenSSL 3系なので、FIPS対応時はfips.soをdl_open(3)しますが、RHEL 8はOpenSSL 1系なので、ファイルのマッピングの見え方は異なります (OpenSSL 1系にはfips.soは存在しないため、libcrypto.soのみdl_open(3)します) ↩︎
-
libcrypto.soに関しては、FIPS準拠モードかどうかに関わらず、Goランタイムがdo_open(3)します。FIPS準拠モードで稼働しているかどうかを実行時に判断するために、libcrypto.soの関数を呼び出すためです ↩︎
Discussion