SINIC理論から考える未来と情報教育の重要性:その1SINIC理論とは。
ワンフレーム株式会社にてVP(ヴァイスプレジデント)をやっている兵藤です。
今回自分の考えていたことと全く同じ考え方が1970年に提唱されていた驚きとともに、SINIC理論のご紹介と私の考えを紹介していきたいと思います。
私について
1982年生まれ、社会に出てからはずっとIT業界で働いており、プログラマーからPM、部長職といろいろ渡り歩き、今は役員としてお仕事させてもらっています。得意分野はDB設計と飲み会設計。
何故こんな記事を書いたのか
ワンフレーム株式会社で行いたい事業の一つに、教育事業があります。
学校教育にも情報の授業が取り入れられ、小学校からタブレット(PC)を使った課題が行われています。日本という国が掲げる情報教育は良い流れだと思うのですが、これはどちらかというと今後の日本の事業に対して不足するであろうIT人材を育成するために行っています。
しかしながら私が考える情報教育が本当に必要な理由はこれからの未来、一部の情報強者やプラットフォーマーが情報技術を握って絶対的な力を持つ時代が来る、もしくはもう来ていると思っています。情報というものは疑う力が無いとあっという間に正しさを強制される力を持っています。
そういった本当に考える力がこれから先どんどん無くなっていく世界が訪れれば、必然的に個の消失が発生してくると思います。それに抗う力を、これからの子どもたち、ないしは大人でも少しでも身に付けて行ってもらいたい、そう思っています。
その前段として、何故このような考えに至ったのかをSINIC理論を使って説明するのがこの記事になります。今後、第二稿では私の考える教育のあり方などを書いていきたいと思います。
はじめに:未来を予測するとは?
現代社会は、テクノロジーの進化によって急速に変化し続けています。AI、IoT、ブロックチェーン、バイオテクノロジーといった技術が次々と登場し、社会のあり方そのものを変えつつあります。しかし、私たちはこの変化の先に何が待っているのかを明確に理解できているでしょうか?
未来を予測する方法の一つに、「SINIC理論」があります。この理論は、日本の精密機器メーカーであるオムロンの創業者・立石義雄氏が1970年に提唱したもので、技術と社会の関係性を体系的に分析し、未来社会の方向性を示しています。本記事では、SINIC理論をもとに2033年以降の未来社会の変化を考察し、これからを生き抜くに当たって必要不可欠な情報教育について考えていきたいと思います。
未来への羅針盤「SINIC(サイニック)理論」 | 企業理念経営について | オムロン
未来予測理論「SINIC理論」の情報発信サイト-SINIC.media 未来予測理論「SINIC理論」の情報発信サイト-SINIC.media
SINIC理論とは?技術と社会の関係を考える
SINIC理論(The Social Intelligent Networked Infrastructure for the future society)は、社会の進化と技術革新が相互に影響を与え合いながら発展するという考えに基づいています。立石氏は、社会の発展を以下のような段階に分けて予測しました。
- 農業社会:労働の大部分が農業に依存し、土地を中心とした社会構造。
- 工業化社会:蒸気機関、電気、機械化により大量生産が可能になり、都市化が進む。
- 情報化社会:コンピューター、インターネットの普及により、情報が経済・社会の中心となる。
- 最適化社会:AI、ビッグデータが発展し、社会全体の効率化が進む。
- 自律社会:AIと人間の共存がさらに進み、経済や社会制度が変革される。
未来の原始社会(2033年以降):テクノロジーの進化が極限に達し、社会構造が分散型へと変化する。
この理論の興味深い点は、「社会の進化が一方通行ではなく、循環する」という考え方にあります。特に2033年以降は、「未来の原始社会」と呼ばれる新たな段階に入るとされています。これは単なる過去への回帰ではなく、「分散型社会」や「AIによる最適化」といった新たな社会の形を示唆するものです。
現在は、SINIC理論で定義される最適化社会から自律社会への移行期にあります。最適化社会では、AIやビッグデータを活用して、あらゆるプロセスの効率化が進められました。企業経営、都市設計、医療、教育など、社会の多くの分野で最適な意思決定が可能になりました。しかし、最適化社会はあくまで「データを活用した意思決定」にとどまり、AIが直接社会の管理を担うには至っていません。
次のステップである自律社会では、AIが単なる支援ツールではなく、社会の意思決定プロセスに積極的に関与するようになります。労働の自動化だけでなく、行政、政策決定、さらには個々の生活に至るまで、AIがより大きな役割を果たす社会です。この移行は、社会をより効率的にする可能性がある一方で、新たな支配構造のリスクも孕んでいます。
「気づかれない支配」のリスク
テクノロジーが発展することで、利便性が向上し、多くのプロセスが自動化されるかもしれませんが、同時に「無意識のうちに支配されるリスク」も生じます。現在でも、GoogleやAmazonなどのプラットフォーマーがアルゴリズムを通じてユーザーの行動を誘導する例があります。未来社会では、これがさらに進化し、人々は「自由に行動している」と思いながら、実はデータやAIの判断によって選択を制限される可能性があります。
このリスクを回避するためには、透明性の確保と個人の情報リテラシー向上が不可欠です。AIが提供する情報の仕組みを理解し、意図的に異なる視点の情報にアクセスする習慣を持つことが重要になります。また、分散型技術の活用によって、一部の企業や政府に依存しない情報流通の仕組みを構築することも求められます。
SINIC理論から見た未来社会のリスクとチャンス
SINIC理論が示す未来社会は、単なる技術進化の延長線ではなく、人間の生き方や価値観そのものが変わる可能性を秘めています。2033年以降の社会では、「分散型社会の実現」「AIと人間の共存の深化」「新しい支配構造の誕生」などが予測されます。
しかし、それが「究極の自由な社会」になるのか、それとも「気づかれない支配の完成形」になるのかは、今の私たちの選択にかかっています。
次回の記事では、こうした未来社会のリスクに対して、「情報教育」がどのように関係してくるのかを深掘りしていきます。
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