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営業組織の「数字上げたらいいんでしょ」を支える仕組み

2024/12/26に公開

フロンティア株式会社 CTO/CIO のomasux(増井義明)です。
この記事は私が営業会社の業務システムをリプレイスしたときに起きたことをまとめたものです。
あまり同じような立場の方はいないかもしれませんが、IT事業ではない企業のCTOPdMをされている方には何かしら参考になるかもしれません。

ビジネスマッチング「レディクル」とは


一言でいうと営業代行です。
発注したい企業から案件をヒアリングし、受注したい企業に紹介する。というビジネスです。
営業社員の比率は全体の70%ほどで現在160名ほどいます。
月間2000マッチングほど発注企業と受注企業をおつなぎしているそんな事業です。

営業会社でCTO/CIOってなにしてるのか

社内で利用する業務システムを開発運用しています。また情シスとして環境周りの整備を行っています。

レディクルのCRMの遍歴

1.0 紙・FAX時代

~2020.12
・紙、FAX、電話、ホワイトボード、メール、個人LINE
・この時期のことはあまり知らないので割愛

2.0 某CRM

2021.1 ~
・某CRMで業務システムを外注で構築し運用開始
・CRM、電話、ホワイトボード、メール、バックヤードは整備されてきました

3.0 内製

2022.9~
・某CRM導入後1年半ほどでリプレイス
・内製組織になる
・CRM、電話、メール、チャットツール、zoomなどさらに整備されました

入社後にまずやったこと

某CRMのシステム理解

私が入社したときには某CRMの運用開始から半年くらい経ったころでした。
当時の状態を一言でいうと「サクラダファミリア、、、!?」でした。
導入後半年だったこともあり、そもそも設計しきれなくローンチ優先でミニマム開発だったのかな。というようなつぎはぎの形跡が多々ありました。

営業に密着

業務を理解しないと業務システムはつくれないので営業にヒアリングして、何日か密着しました。

  • どんな業務をしてるのか
  • どこに何を入力してるのか
  • 何をしたら終わるのか

などなどまずは自分で理解するところかスタートです。

ここで判明した大きな課題は2つです

課題1: みんな自由

密着して分かったことは、最低限のルールはありましたが営業個人個人が自由につかっていることでした。

例)活動履歴を入れる場所
Aさん・・・いれない
Bさん・・・活動履歴にいれる
Cさん・・・荷電メモにいれる
Dさん・・・担当者メモにいれる

などなど、こんなことが頻繁に起こっていました。
またこれが起きる理由としては日々運用が大小変わることも大きな原因でした。
まず運用ルールを整備することから始めないといけないことがわかりました。

課題2: 「数字あげたらいいんでしょ」

営業会社あるあるだと思いますが、ルールつくってもみんな聞いてくれない。これあるあるだと思います。営業組織って「数字あげたらいいんでしょ」こう思ってる人ばかりです。実際それでOKです。
ただそれは営業部の話であり、じゃあ業務ツールなくてもいいんでしょ?っていうのは違います。

仕組みを作る側の人達のやるべき「数字をあげる」は、組織として事業として会社として「数字があがる」ことです。そのために必要なルールや仕組みをシステム面でつくり、運用していってもらうことが重要でした。

リプレイスを判断した理由


結局某CRMをリプレイスしようと思ったのは導入後8か月くらいでした。リプレイスを判断した理由は

  • つぎはぎだらけ、運用もかたまってない
  • 0から作ったほうが早い
  • 5年後どうなっていたいか

の3点でした。

1)つぎはぎだらけ、運用も固まってない

このまま某CRMでいくのもリプレイスするにもどっちにしろ運用整備が必要不可欠でした。
またデータも散らかり放題でデータ移行も必須でした。やるべき作業量はどちらにせよ変わりはないなと思いました。
※後に聞きましたが某CRM導入時にも大がかりなデータ整形をしていたようで、これでもかなりましになったほうだ。とのことでそうゆう意味では助かりました。

2)0から作ったほうが早い

これは僕個人の経験に沿ったものですが、CRMを魔改造していくより、スクラッチで0から設計構築していくほうが最終的に早いのではないかと感じました。このままCRM魔改造で行く場合外注メインになる可能性が高く、それよりエンジニアを内製し高速でリリースしていくほうがこの組織にはあっているのではないかと感じました。

3) 5年後どうなっていたいか

レディクルはよくもわるくも新陳代謝の早い組織でした。部署の再編、個人の役割変更など大きな変更から日々の小さな運用修正が常に発生していました。このままのシステムで行くと考えたときに、そのCRMに特化したエンジニアを探すより、内製して一般的な言語のエンジニアを集めるほうがよい。またこの運用変化に外注で対応はできないこともあり「リプレイス」と「内製」という方向に舵をきりました。

1年後に内製システムの運用開始

リプレイスの判断をしてから1年後にリプレイスした内製システムをローンチしました。
いまではローンチしてから2年ちょい経ちましたが、これまでに行ったことをざっとまとめておきます。

ローンチ後に改善したチケット数

このシステムは毎週ローンチを行っています。(毎週のスプリント、次週にローンチのサイクル)

  • 1年目: 158チケット
  • 2年目: 583チケット
  • 3年目: 722チケット

この2年ちょいで1500弱の大小改善を行ってきました

うまくいった理由

いろいろありましたがうまくいってる理由は大きく2つあります。

  1. 営業メンバーの意識の変化
    営業メンバー含め利用する人の意識が変わったこと。またそう意識が変わるように働きかけてくれた管理メンバーのおかげかと思います。どれだけいいものを作っても、使ってもらえないと意味がないので仕組みと運用の両輪がうまく回ったことが成功の要因です。

  2. 不要なことをやめた
    業務整理していくなかでたくさんあった「不要」なことをたくさんやめました。誰に聞いても「みんなやってるから」「そう教えられたから」など、なぜやってるのかをだれも説明できない業務がたくさんありました。それを紐解いてひとつひとつ「やらない」でいいように運用を変えたり、取引企業に説明をしてまでルールを変えて整備していきました。そうすることで業務がシンプルになっていき、システムに落とし込むことが簡単になりました。

いまなにができるようになったか


いろいろなことができるようになりました。

1) 月報・週報・日報の数値が自動集計

・自動集計はもちろんなのですが、「数字上げたらいいんでしょ」からくる情報の散らばりを一元管理できたことが重要でした。
・営業メンバーのインセンティブとしてはすべて「数字」。集計周りを自動化することで入れるべき内容を入れるべき場所に入れる。一見当たり前ですが本当に実現がむずかしく、システムに入力しないと数字があがらない仕組みを作れたことが本当に大きかったです。

2) 月額モデルへの対応

・2023後半から事業モデルが大きく変わりました。受注企業側の契約形態が、買い切りモデルから月額モデルに変更されました。
・この変更にはおそらく某CRMを利用していたら対応できなかったと思います。

3) AI到来

・2024年からchatGPTをはじめとした生成AIが注目されてきました。
・AIをどの業務にとりこむか。業務フローと運用の整備をしたことでこの判断が飛躍的に早くなりました。結果、業務システム上でAIを取り込み営業メンバーは意識せずAIを活用し業務の効率化、品質UPの恩恵をうけることができました。

AIを取り入れた個所

  1. 商談の要約工数
    会社全体で月2000商談ほど行っているのですがそのすべての文字起しと要約をAIが行っています。組織全体としては月1000時間ほど圧縮できました。(1商談で要約は30分とする)

  2. 商談の要約品質
    要約は営業個人個人でレベルが異なり、この事業の場合、その品質がパートナー企業の満足度に直結する重要なポイントでした。その精度も各種案件ごとの出力プロンプトを設定し、一定の品質を担保することができました

  3. キャッチコピー作成
    案件をご紹介するためにはメールを見てもらうことが重要です。そこでタイトルにキャッチコピーをつける運用が開始されたのですが、このキャッチコピー案を生成AIを利用し5パターンだしてもらい、営業メンバーはそこから選択する、または参考にクリック率UPの為のキャッチコピー作成ができました

  4. AIマッチング
    発注企業からいただいた案件内容により、どのパートナー企業をご紹介するか。ここが事業の肝なのですがこのマッチング先の選出にAIを取り込みました。(ここはまだプロトタイプレベル)最終的には自動で抽出されるところまでもっていきたいと思っています。

結論、リプレイスしてよかった

3年前のリプレイス、内製の判断は今思うと正解だったと確信しています。
また未来を見ても、内製で高速PDCAがまわせるチームができていることもとても大きく、この先の市場の変化、事業の変化にも耐えうる開発チームができています。

今後どうしていくか

今後レディクルのシステム展望ですが

1)パートナー企業が利用するシステムの開発

もうほとんど終わっていますが2025年前半にローンチします。まだメールでのやりとりが多いのでそこをシステム化しさらなる業務効率化と満足度の向上につとめます

2)オウンドメディアの拡充

オウンドメディアはすでにあるのですが、1)のパートナー企業が利用するシステムと連動させさらに案件数を増やすためのメディア事業に注力します
https://readycrew.jp/media/

3)AIマッチングの完成

前述したAIマッチングを実運用可能なところまでもっていきます

まだまだやりたいことが山積みです。

最後に採用について

エンジニアも絶賛採用中ですので興味のある方はお話だけでもしましょう!
いろんなことにチャレンジできる環境があるのでそんなカオスな環境を楽しめる物好きな方がいたら弊社にはベストマッチかなと思っています。
https://recruit.jobcan.jp/frontier/job_offers/1375165

テックリードが書いた記事も参考にどうぞ。
https://qiita.com/koya_frontier/items/b6d8e10a019c5d55391b

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