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技術書典18 初参加!出店レポート

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技術書典18 頒布本ページ

はじめに

こんにちは。この記事は先日開催された技術書典18に出店側として初参加したドタバタ体験記です。

技術書典はLLM無職時代にはじめて購入者として参加してみてめちゃくちゃディープな技術書や趣味本があって楽しい即売会という認識でした。(AIの本だけではなく無線通信とか戦略とかの本などを買い漁ってました)

事の始まりは2025年3月23日の夜でした。Twitterで「技術書典18のサークル参加申込、明日締切!」という投稿を見かけたのです。

「明日締切って、今日じゃん...」

初参加したときから出店側もやってみたいなーと思ってましたが、商業出版で出した『コーディング不要で毎日の仕事が5倍速くなる!Difyで作る生成AIアプリ完全入門』という本の脱稿したばかりでだったのです。

しかし、ええい、やったれ!!と思い、慌てて申込フォームを開き、必要事項を記入。「どんな本を出すの?」という欄には「Difyについて」と書きました。何を書くかは決まってませんでしたが完全に見切り発車です。ノリと勢い、大事です。

そんな軽い気持ちで始まった技術書典への道のりは、想像以上に波乱万丈でした。この記事では、準備から当日まで、失敗談も含めリアルな体験談をお届けします。同じように「技術書典に参加してみたいけど、実際どうなの?」と思っている方の参考になれば幸いです。

執筆開始

5月の現実逃避と迫りくる締切

申し込みから約2ヶ月。5月に入って「そろそろ本格的に書き始めないと...」と思ったものの、現実は甘くありませんでした。

Difyや生成AIのセミナー業務が思った以上に忙しく、執筆に集中できる時間がなかなか取れません。「今日は疲れたから明日やろう」「来週まとまった時間が取れそうだから、その時に一気に書こう」そんな言い訳を繰り返しているうちに、気がつけば5月も終盤に。

一度、気合を入れてコワーキングスペースに籠もったことがありました。「今日こそは!」と意気込んで向かったものの、いざ書き始めようとすると、まず実際にDifyでZapierMCPの機能を構築する必要があることに気づきました。

「記事を書く前に、まず動かしてみないと...」

そこから丸一日以上、ZapierMCPと格闘することになりました。しかし、思うように動かない。エラーメッセージとにらめっこしながら、「これ、本当に本にできるのか?」という不安が頭をよぎりました。

方針転換からの再迷走

この時点で、もう後戻りはできません。「ZapierMCPの限界や難しさも含めて、正直に書こう」と腹をくくりました。

ZapierMCPでの挫折を受けて、「Difyのプラグイン解説本にしよう」と方針転換しました。時間も1週間を切っていたので、プラグインの内容に0から人間で手を出すのはもう無理だと思い、AIエージェントのManusにDifyプラグインの調査からプラグインごとの説明ページのたたきを書いてもらっていました。

プラグインに関しては30種類くらい調べており、実際にこれも動かす必要がるので1個ずつDify環境にプラグインをインストールしてる中、これはもう時間的に間に合わんと確信し(開催3日前)

結局、最初のZapierMCP × Difyの内容に戻すことにしました。ただし、「ZapierMCPだけだと複雑なことはちょっと難しい」という結論も含めて正直に書くことにしたんです。

技術書って、成功例だけじゃなくて「こういう限界がある」ということも価値のある情報だと思うと心のなかで言い聞かせました。

Difyプラグイン本の目次
没になったDifyプラグイン本の目次

執筆ラストスパートとPDF化の地獄

結局、2日前の朝まで徹夜で7割書き上げ、技術書典運営の前夜祭Youtube配信を見ながら前日の夜23時、ようやく本文が完成。しかし、ここからが本当の地獄の始まりでした。

技術書典は同人誌イベントです。つまり、ただのテキストやMarkdownファイルを本の形式に変換する必要があります。

今回はLLMにMarkdownで文章のほとんどを書かせていたのでMarkdownからPDF化して、印刷可能な形にする必要があります。

色々調べてたらPandocというものがMarkdownからPDFにするのに良いらしく、Vive CodingばりにPDF変換のすべてをAIに委ねました。

「AIを使えば簡単でしょ」と思っていたのが大間違い。Cursorと格闘しながら、Markdown → HTML → ブラウザ印刷でPDFという流れを20回以上繰り返しました。フォントサイズ、余白、改ページ位置...細かい調整に時間を取られ、気がつけば深夜3時。

最終的になんとか本と呼べる読み物の形としてPDF化に成功しました。
フォントサイズ、余白、改ページ、画像の配置...すべてが思った通りにならなくて、本当に大変でした・・・

表紙はもうこだわる時間がなかったのでChatGPTで20分ほどでサクッとつくりました。

表紙初期案
表紙初期案

印刷所への駆け込み

技術書典としては5月31日AM10時から電子書籍(PDF)の発売開始が始まりますが、6月1日池袋でオフラインの即売会かがあります。

今回は即売会の出店も申し込んでいたので、せっかくだったら電子媒体だけではなく、紙の物理本も出せたらなと思い、深夜3時の続きで印刷可能かを調べてました。

そしたら日光企画さんにて完全予約制の超特急セットというものがあり、予約もしてないし締切も余裕で過ぎていたのですがダメ元で申し込んでみました。

翌朝、土曜日にもかかわらず日光企画さんから電話を頂戴し、なんとか対応していただけることになりました。

その後の電話対応が本当に丁寧で、「ここを確認していただけますか?」「表紙と本文のページ数を合わせる必要があります」など、素人の私に一つ一つ説明してくださいました。

最終的に入稿できた時は、本当にホッとしました。

日光企画の皆様、素人がギリギリに入稿して大変申し訳ございませんでした!
そして本当にありがとうございました!!

コンビニ印刷という保険

「もしかしたら印刷が間に合わないかも...」という不安から、コンビニで見本誌を印刷することにしました。

最近のコンビニプリンターは本当にすごいですね。冊子印刷機能があって、ちゃんと本のような仕上がりになります。B5サイズ60ページのフルカラー印刷で約1,400円でした。

マーケット登録と当日準備

印刷が終わった後、PDFを作成して技術書典側のマーケット登録作業を実施。途中でマーケットページに反映されない現象があって焦りましたが、最終的には無事反映されました。

即売会当日は朝5時起きで準備。前夜にManusで「技術書典に必要な持ち物」を調べていたので、カッターやポップ用のペンなどは用意していました。ただ、ガムテープを忘れてしまい、ブックスタンドも買いに行く時間がありませんでした。

代わりに、たまたま家にあった静電気でレシートを貼るグッズを持参。これが意外と本を立てかけるのに役立ちました。

会場入り

サークル入場は9時30分からでしたが、9時頃から既に長い列ができていました。

会場に入って自分のスペースに向かうと、なんと既に印刷した本のダンボール置かれていました!

事前に申し込んでいた「手ぶらセット」のおかげで、テーブルクロスや見本誌用のシールなども用意されていました。本当に助かりました。

ただ、他のブースを見回すと、みなさん本格的な準備をされています。ポスター、本棚、吊り下げディスプレイ...「売る気満々」の雰囲気が伝わってきます。

自分のブースを客観的に見ると、正直「何を売っているのか分からない」状態でした。次回はもっとマーケティング視点で準備しようと反省。

一応、ポップや見本誌の展示や即興のDifyフローの動画で着飾ることでそれっぽい状態にはできたかなと。
※動画はほとんど意味がなかったかなーとw

ブース設営完了の様子
ブース設営完了の様子

立地の現実

場所も会場の本当に一番端で、出口よりもさらに奥。人が来づらい上に、「一度全部見てから、後でもう一度買いに来よう」という折り返しのチャンスもない場所でした。

初めて参加でギリギリに申し込んで、最後の最後で出店の場所を確保してもらったので文句は言えませんが、立地の重要性を痛感しました。

販売開始

11時になり、一般参加者が入場して販売開始となります。
自分は一番奥のスペースだったので、最初のお客さんが来るまではだいぶ待ちました。それまで結構ドキドキでしたね。

お客さんがチラホラと目の前を通るようになり、初めて見本誌に手をかけて読んでくれた瞬間、あれはとても嬉しかったですね。
買ってもらえなくてもまじまじと本を目の間で読んでくれる。この体験は商業出版ではできなかったのでとてもいい体験でした。

商業出版の本も置いて良いとのことだったので(もちろん運営確認しました。)Dify黄色本も置かせてもらい、こちらも手にとって読んでもらえました。

ただ黙って待ってるだけでは売れるものも売れないので、見本誌を手に取ってもらうよう呼び込みなどを始めるのですが、興味ない人に(自分も無理な接客はされるの嫌なので)無理やり売ってもなーと思い少しでも興味がありそうな人を見分けながら声をかけることに

目は口ほどに物を言うということわざがありますが、歩容や目線である程度興味がありそうな人を見分けられた気がしてます。

最初は電子500円、物理本+電子で1,500円としてましたが、周りの環境も踏まえてセットを会場限定1,000円に変更するなど工夫をするなどしてちょいちょい売れ始めていきました。

トイレの救世主

即売会も中盤になり、友人のぬこぬこさんが手伝いに来てくれました。

実は一人参加だったので、トイレ休憩すら取れない状況。
膀胱がもうやばい状態でぬこぬこさんを遠くに見つけた瞬間、ダッシュで駆け寄って「トイレ行きたいから、ちょっと見ててもらえる?」とお願いしました。

一人でのサークル参加は本当に大変です。最低2人体制をお勧めします。

トイレから戻ってきたときに、ぬこぬこさんの営業トークを聞いていて、とても勉強になりました。

まず「MCP使ってますか?」という質問から始まり、相手の回答によって話を展開していくのです。

「使ってます」→ より具体的で深い話
「知ってるけど使ってない」→ 簡単な使い方の紹介
「何ですか?」→ 基本的な説明から

一つの質問で相手の技術レベルを把握し、それに応じたアプローチができる。これは本当に効果的だと思いました。
最初からこれができていたら倍は売れたんじゃないかと思いました。

また、開催前のXやWeb告知がいかに大切かも痛感。当日だけでなく、準備段階から勝負は始まっています。

頒布した本について

今回頒布した本は『ZapierMCPとDifyで実現する次世代ワークフロー』です。

技術書典18 頒布本ページ

物理本セットは今日の23:59までと購入までの時間が短いですが、まだ購入できます!!
電子版は開催時期が終わっても買えるのかな?

MCPという少しバズワード化している新しい技術をZapierMCPを使えば簡単にノーコードで構築ができ、Difyも同様にノーコードで構築できるのでノーコード×ノーコードでMCPの構築ができるハンズオンの本として書きました。

ただし、複雑なワークフローでは期待通りに動かないケースもあり、その限界や課題も正直に記載しました。

「夢のある技術だけど、万能感を持たせるには技術が必要」という現実的な視点も大切だと思ったからです。

MCPとは?Difyとは?みたいな説明は完全に省いて実装のみに注力した本となっています。
商業出版ではないので尖った部分のみを書けるのが同人誌の強みかなと感じてます。

本の特徴

  • 豊富な画像・図解でセットアップ手順を解説: Gmail下書き作成など、具体的なユースケースを例に「とりあえず動かせる」ことを重視
  • 複雑なMCP連携への挑戦と限界も正直に記載: Googleカレンダー・Slack連携の課題や、ZapierMCPの現時点での限界も包み隠さず記載

最終結果

販売形態 数量 (冊) 単価 (円) 売上 (円)
5月 電子版 12 500 6,000
6月 電子版 30 500 15,000
6月 会場(紙セット) 20 1,000 20,000
6月 会場(電子版) 14 500 7,000
6月 ネット(紙セット) 8 1,500 12,000
電子版合計 56 28,000
紙セット合計 28 32,000
最終合計 84 60,000

このような結果となりましたが、印刷代などの経費や
技術書典の販売手数料(累計売上50,000円超過分に対して20%)がありますのでそれを加味して最収益を計算してみると・・・

項目 金額 (円)
売上合計 60,000
物理本超特急印刷代 -56,760
見本誌印刷代 -4,800
販売手数料 -2,000
最終益 -3,560

まあ赤字で終わりましたが経験としては楽しかったのでこれはこれでありかなと!!

物理本もそこそこあまったので今後参加するイベントとかで少しずつ配布して行こうと思います!

学んだこと、反省点

今回の経験で学んだことは山ほどあります。

まず、見栄えの重要性。ポスターや本棚などの装飾は「やったもん勝ち」です。次回はもっとマーケティング視点で準備したいと思います。

営業トークのシナリオも重要。来場者の技術レベルを瞬時に把握できる質問を用意しておくと、より効果的な説明ができます。ここらへんはもっと事前にAIと壁打ちして練習しておくべきかなと。

事前告知の大切さ。Twitterやブログなどで「ここで出展します」「こんな本を書きました」という情報を発信しておけば、当日の集客にもつながったはずです。

イベントは当日だけでなく、準備段階から勝負が始まっているのだと実感しました。

そして何より計画性!!事前準備とスケジュールの遵守!!
これがなにより大事!!締切守というお守りを今回配布でいただきましたが、全てにおいて締切破だったの大変ご迷惑をおかけしました!!

運営の皆様、日光企画の皆様本当にありがとうございました!!

おわりに

正直、初参加にも関わらず準備不足で大変なことだらけで右往左往しながらも、無事に本を出し、読者の方々と直接交流できた経験は本当に貴重でした。

そして何よりも商業出版で出した時に自分がやらなかったデザインや編集の部分の力不足を実感し、編集さんデザインさんってほんっとすげーんだなと改めて感じました。

技術書典は、エンジニアが自分の知識や経験を形にして、同じ志を持つ人たちと共有できる素晴らしい場所です。「参加してみたいけど、どうしよう...」と迷っている方がいたら、ぜひ勇気を出して挑戦してみてください。

きっと、想像以上に得るものが多いはずです。

次回の技術書典でお会いしましょう!

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