Apple Visionと自由の法理

現状あんまり問題になってない気もするけどそのうち絶対話題になると思うので。
また、ユーザーが知覚できないレベルで見た目や音を素早く点滅させ、それに対する反応を測定することで、ユーザーの認知状態を推測する技術も開発していたとのこと。そして、そうした体や脳からの信号を利用して、機械学習を用いて集中度やリラックス度、学習効果を予測する方法も開発したそうです。

"ロリコンを警察に突き出す機" が認められるか問題
Appleを始めとしたプラットフォーマーは割と真剣にこの領域を追求している。
(もっとも、これは実際には行われなかった)
Apple Vision Proはユーザの視界を完全に掌握しており、更にUIに使えるレベルの視線追跡機能が備わっているため、表示中の映像を解析しユーザーがどこに注目するかを分析することでユーザーの嗜好/指向を解析できると考えられる。
もっとも、例えば日本の憲法の場合は内心と良心の自由が法理として存在しており、犯罪を"機械的に、未然に"防ぐことは難しいと考えられる。(実際に違法であるような映像を視聴していたりいない限り)視線を向けること自体を証拠として採用できるような実績は今のところ無いだろう。

嘘発見器 / ポリグラフ
人間の生理的反応から、本来人の脳内に留まっている情報を取り出し、それを裁判等で証拠として使用できるデータにするものとして "嘘発見器" とか "ポリグラフ" がある。現実の日本では後者が使われる。
ポリグラフが証拠として採用できるのは信じるに足るだけの検証が重ねられたことによる。
刑事訴訟法第三二六条第一項の同意があつたポリグラフは、検査者が必要な技術と経験を有する適格者で、検査に使用された器具の性能及び操作技術からみてその検査結果が信頼性ある場合には証拠能力がある。
ポリグラフは現代でもかなり実施されている。しかし、その結果を証拠として運用するというよりは容疑者を圧迫する手法として用いられているのではないかという懸念がある。いわゆる狭山事件第2次再審請求 https://www.courts.go.jp/app/hanrei_jp/detail2?id=57849 では逆方向(特定のキーワードについて反応がネガティブであった事)のチャレンジをして失敗している。
ポリグラフの前記質問に反応がなかったとしても,別に異とするに足りない上,そもそもポリグラフ検査によって得られる結果には限界があるから,反応のないことが直ちに申立人の自白の信用性に影響を及ぼすものでもない。
Apple Vision はポリグラフになれるか?
Appleは過去にApple Watchをヘルスケア向けの測定器として成立させた実績があり、各種機関と協力してサーベイも十分な数実施している。
同様の努力を重ねることでApple Visionも信頼された測定器になれる可能性がある。

懸念を払拭するために
Appleは既に懸念を払拭するための手は打っている。視線入力はAppleを含めエコシステムによって処理されないと主張している:
Apple Vision Proを操作中のユーザーの視線に関する情報はプライバシーを保護するかたちで保たれ、Apple、他社のアプリやウェブサイトに共有されることはありません。
視線の情報はVRアプリにとってはかなりクリティカルな情報で、例えばPS VR2のようなゲーム向けのVRではゲームのUIやFoveated Renderingのための中心位置情報として使用している。
このようなインタラクションを捨ててApple Visionは完全なコンピューターになることを取ったと言える。