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AxumでハンドラーがResult::Errを返してもステータスコードは200 OKになりうる

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はじめに

結論に自分でも呑み込めていない部分があるけどとりあえず放出。
Axumを使っていて少し意外だったことを紹介するよ。意外と言っても僕のAPI設計に対する無理解から来ていたことで

前提

以下はTodoアプリのコードの一部で、Routerにパスと対応するリクエストを処理するハンドラーを登録して、リクエストが来たらハンドラーの処理を呼び出す。(.with_stateでDBを注入しているが今回の主題ではない。ハンドラー内でDBを使えるようにするためのもの。)

#[tokio::main]
async fn main() -> Result<(), Box<dyn std::error::Error>> {
    let db = memory_db::DB::default();
    let app = Router::new()
        .route("/", get(todos_index))
        .route("/todos", get(todos_read).post(todos_create))
        .route("/todos/:id", patch(todos_update).delete(todos_delete))
        .with_state(db);

    let listener = tokio::net::TcpListener::bind("localhost:3000").await?;
        
    axum::serve(listener, app).await?;
    Ok(())
}
// Htmlを返すハンドラー
async fn todos_index() -> Html<&'static str> {
    Html(include_str!("../index.html"))
}
// DBからTodoを取得してJsonで返すハンドラー
async fn todos_read(State(db): State<DB>) -> impl IntoResponse {
    let todos = db.read().unwrap();
    let todos = todos.values().cloned().collect::<Vec<Todo>>();
    Json(todos)
}
...

Axumのハンドラーとはtodos_index,todos_readのようにリクエストを受け取るコントローラー層の関数(など)である。(正確な定義は公式ドキュメントにある。)

ハンドラーとして登録できる関数はResultを返すこともできるが、今回の記事では、ハンドラーがResult::Errを返しても、200 OKになりうることを紹介する。Errならいい感じに404 Not Foundとか500 Internal Server Errorを返してくれるのかと思っていたが、必ずしもエラー系のステータスコードが返るわけではなかった。

結論

先に結論を言うと、Errを返すとしてもどんなエラーなのか(500なのか、404なのか)は要件次第であり、それに伴い、どんなレスポンスを返すかも要件次第であるため、Errだからって一概にステータスコードを決められないよね、という話(だと思う)。

コードを追ってみる

実際にResult::Errを返すハンドラーを作って試してみよう。result_testはパスパラメータに1が来たらOKを返すが、それ以外はErrを返すハンドラーである。

async fn result_test(Path(r): Path<u8>) -> Result<String, String> {
    if r == 1 {
        Ok("OK".to_string())
    } else {
        Err("Error".to_string())
    }
}

Result::Okの場合

curlコマンドでリクエストを投げてみる。

curl localhost:3000/result/1 -v

Result OK
OK200 OKが返ってくる。

Result::Errの場合

curl localhost:3000/result/2 -v

Result Err
やっぱり200 OKが返ってくる。

何が起きているのか

関数に対するHandlerトレイトの実装は以下のようになっている。

impl<F, Fut, Res, S> Handler<((),), S> for F
where
    F: FnOnce() -> Fut + Clone + Send + 'static,
    Fut: Future<Output = Res> + Send,
    Res: IntoResponse,
{
    type Future = Pin<Box<dyn Future<Output = Response> + Send>>;

    fn call(self, _req: Request, _state: S) -> Self::Future {
        Box::pin(async move { self().await.into_response() })
    }
}

注目してほしいのはRes: IntoResponseの部分である。これは、ハンドラーの戻り値がIntoResponseトレイトを実装している必要があることを示している。

では、Resultに対するIntoResponseトレイトはどのように実装されているのか見てみよう。

impl<T, E> IntoResponse for Result<T, E>
where
    T: IntoResponse,
    E: IntoResponse,
{
    fn into_response(self) -> Response {
        match self {
            Ok(value) => value.into_response(),
            Err(err) => err.into_response(),
        }
    }
}

OkでもErrでもinto_response()を呼び出していることがわかる。つまり、Resultの中身がIntoResponseトレイトを実装していれば、OkでもErrでもinto_response()をそのまま返すということだ。
なので、ステータスコードはErrの中身のinto_response()次第、ということになる。

Stringに対するIntoResponseトレイトも見てみよう。
たらい回しにされているが、String → Cow → Body → Responseを呼び出していることがわかる。
最終的に呼び出されたResponse::new()ではステータスコードをデフォルトで200 OKにして返すようになっており、Stringへのinto_response()は200 OKを返すことがわかる。
長くなったが、ハンドラーがResult::Errを返すとErrの中身に対するinto_response()の結果が返る。今回中身はStringなので200 OKが返ってきた、ということ。

StringのIntoResponse実装
impl IntoResponse for String {
    fn into_response(self) -> Response {
        Cow::<'static, str>::Owned(self).into_response()
    }
}
impl IntoResponse for Cow<'static, str> {
    fn into_response(self) -> Response {
        let mut res = Body::from(self).into_response();
        res.headers_mut().insert(
            header::CONTENT_TYPE,
            HeaderValue::from_static(mime::TEXT_PLAIN_UTF_8.as_ref()),
        );
        res
    }
}
impl IntoResponse for Body {
    fn into_response(self) -> Response {
        Response::new(self)
    }
}
#[inline]
pub fn new(body: T) -> Response<T> {
    Response {
        head: Parts::new(),
        body,
    }
}
impl Parts {
    /// Creates a new default instance of `Parts`
    fn new() -> Parts {
        Parts {
            status: StatusCode::default(),
            version: Version::default(),
            headers: HeaderMap::default(),
            extensions: Extensions::default(),
            _priv: (),
        }
    }
}
impl Default for StatusCode {
    #[inline]
    fn default() -> StatusCode {
        StatusCode::OK // 200 OKを返している
    }
}

結論

Errでもどんなエラーなのか(500なのか、404なのか)、どんなレスポンスを返すかは要件次第。それゆえErrだからといって一概にステータスコードを決められるわけではない。Errの中身(Errのinto_response())を見て決定する、というAxumの方針はしょうがないのだと思う。
常にステータスコードを指定させる設計にするといいのだろうか?

<!-- # おまけ
明示的にステータスコードを指定してみた。

async fn result_test(Path(r): Path<u8>) -> Result<(StatusCode,String), (StatusCode, String)> {
    if r == 1 {
        Ok((StatusCode::OK,"OK".to_string()))
    } else {
        Err((StatusCode::NOT_FOUND, "Error".to_string()))
    }
}
``` -->

GitHubで編集を提案

Discussion

kanaruskanarus

常にステータスコードを指定させる設計にするといいのだろうか?

について思ったことを書いてみます。

そもそも -> Result<(StatusCode, String), (StatusCode, String)> とするくらいなら単に -> (StatusCode, String) でいいのでは、という話もあり、実際そういう実装は一理あります。
( ただしこれだと、エラー処理をし始めるとコードが冗長になったり手続き的になったりして Go みたいな感じになっていきます。良し悪しは一概にはなんとも言えませんが )

Rust ソフトウェアの一般的な設計として、エラーはある程度のスコープごとに1つの enum にまとめておくのがよいです。
( エラーを全部 String で表現するのでは意味が乗らないというか、型に知識をエンコードできないので Rust でやる意味が薄いというか...そんな感じです )

特に Axum のような型の表現力を活かす系の web framework の場合、以下のようにその enum の IntoResponse ( or それにあたる trait ) で status を出し分けるのがある種の基本形だと思います ( 具体的なコードは適当です ) :

#[derive(Debug, thiserror::Error)]
enum ApiError {
    #[error("not found: {0}")]
    ReourceNotFound(String),
    #[error("error from DB: {0}")]
    Db(#[from] DbError),
}

impl IntoResponse for ApiError {
    fn into_response(self) -> Response {
        tracing::error!("{self}");
        match self {
            Self::ResourceNotFound { .. } => {
                (StatusCode::NOT_FOUND, self.to_string()).into_response()
            },
            Self::Db { .. } => {
                StatusCode::INTERNAL_SERVER_ERROR.into_response()
            },
        }
    }
}

async fn get_message(id: u8) -> Result<Option<String>, DbError> {
    //...
}

async fn result_test(Path(id): Path<u8>) -> Result<String, ApiError> {
    let message = get_message(id)
        .await?
        .ok_or_else(|| ApiError::ResourceNotFound(format!("message (id = {id})")))?;
    Ok(message)
}

ここから、要件や個人の好みなどでいくつか派生系が考えられると思います。

Web アプリのハンドラに関しては、これを踏まえた上でやっぱり -> impl IntoResponse でいい派とか -> (StatusCode, ...) 派とかもいます。
( 先述したように、これはエラー処理をし始めると Go みたいな方向性のコードになっていくはずで、それが読みやすいかは好みが分かれますが、少なくともハンドラの入出力の制約を関数のシグネチャで明示的に表現することはできなくなります )

最近なるほどと思った例で

https://qiita.com/legokichi/items/4e85ec1e74f4e754fb94#エラーの型は-resultresultt-customerror-anyhowerror-でfa

エラーの型は Result<Result<T, CustomError>, anyhow::Error> でFA

というのがあります。