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要件定義フェーズで成果物を揃えられないときの3つのアプローチ

2025/01/05に公開

概要

こんにちは、PMの皆さん!案件の初動である要件定義フェーズはプロジェクトの成否を左右する重要な段階ですが、現実には「要件定義が完璧に固まる前に納期が迫っている…」「ステークホルダーが多くて合意形成が進まない…」など、悩みの種は尽きませんよね。

そこで今回は、要件定義フェーズで成果物が不十分なまま次に進まざるを得ない場合に使える、3つのアプローチをご紹介します。

アプローチ 概要
1. 決定事項 + Q&Aリスト + 申し送り事項 ✍️「決まっていること」「まだ曖昧なこと」を整理し、抜け漏れを可視化する
2. 短いイテレーションで不足要件を擦り合わせる ♻️ 設計や実装を進めながら、合意が取れていない要素を定期的に補完する。工数オーバーしそうならバックログへ
3. バッファを前提にした見積もり ⌛ 不確実性を考慮して余裕ある見積もりを組み、追加見積もりは極力発生させない

なお、これらは 「Quality(要件の精度)」をある程度犠牲にし、CostとDeliveryを優先する という姿勢が前提となります。割り切りが必要な場面も少なくありませんが、関係者全員にリスクとメリットをしっかり説明することで、後々の大きなトラブルを避けることができます。


⭐️ アプローチ1: 決定事項 + Q&Aリスト + 申し送り事項をまとめる ✍️

なぜ必要?

要件定義書として「完璧な成果物」を作り込む時間がなくても、**「現時点で合意が取れている事項」**を整理し、一覧化したドキュメントやQ&Aリストを作ることは非常に重要です。

  • 過去のQ&Aで確定・合意した内容は、そのまま仕様として扱うこともOK。
  • 明確に「未確定要素(申し送り事項)」を別途まとめておくことで、「決まっている」「決まっていない」の切り分けがはっきりします。

具体的なステップ

  1. 過去Q&Aのリストアップ

    • 要件定義中に出た質問・回答を洗い出し、クライアントとの共通認識が取れたものをQ&Aリストとしてまとめる。
    • メールやチャット、打ち合わせメモから拾い、「Q&A履歴」として一覧化すると◎。
  2. 決定事項リストを作る

    • 仕様ごとに「どういう機能なのか」「合意できているポイント」を短文で記載し、合意済み=Fixと明示しておく。
  3. 申し送り事項(未確定要素)の整理

    • まだ合意が取れていない部分や、仕様が曖昧な箇所をピックアップし、**「誰が・いつまでに・何を決めるのか」**をリスト化。
    • これは後述のアプローチ2で擦り合わせる際のタスクリストにもなる。
  4. 前提・制約の明確化

    • 外部API連携、固定納期、運用体制など、どうしても動かせない部分をはっきり書く。
    • 後から「そんな話は聞いていない」と言われるのを防げる。

ドキュメント/Q&Aリスト例

機能/仕様 合意内容 Q&A経緯 今後の対応
ユーザー登録機能 - メールアドレスで重複登録不可
- 登録時に認証メールを送信
Q: 重複登録の判定はメールのみ?
A: はい、メールをキーとして扱うことで合意
設計方針は合意済み
エラー管理(ログ・通知) - ログはサーバーで管理
- エラー画面は共通テンプレートを表示
Q: API障害発生時の再送は?
A: 非同期処理が多いので再送要否は要検討
未確定:再送要否検討
決済サービス連携 - 外部サービスAを利用(APIキーはベンダー管理) Q: 決済失敗時はどうリトライする?
A: 失敗時にユーザへメールを送付する方向で合意
合意済みだが細部は再確認
UIデザインコンセプト - 現行サイトに準拠
- 新CIの色味を反映
Q: 配色はどこまで変更する?
A: メイン・アクセントカラーのみを差し替える方針
ヴァリエーション検討中

申し送り事項リストの例

項目 内容 担当/締切 備考
エラー再送の挙動 API障害発生時の再送フロー ○○さん (5月末) ベンダー確認が必要
デザイン配色の最終決定 クライアント新CIのアクセントカラー検討 デザインチーム (6月上旬) 2パターン比較したうえで決定予定

ポイント:

  • Q&Aリストを参照すれば「どこまで確定? どこが未定?」が一目でわかり、自分自身を守ることにもなります。
  • 「申し送り事項」リストは**のちのイテレーション(アプローチ2)**で重点的に詰める内容です。

♻️ アプローチ2: 短いイテレーションを回して不足要件を擦り合わせる

なぜ必要?

ウォーターフォール型の工程では「要件定義が固まってから設計へ」という流れが理想ですが、現実には「まだ曖昧だけど、スケジュール的には設計に入らないと間に合わない…」というケースが多いですよね。

ここでは、短いイテレーションを回しながら、合意しきれていない要件(申し送り事項など)をその都度擦り合わせるアプローチを取ります。

具体的なステップ

  1. イテレーション区切りで未確定要素を精査
    • 例: 1〜2週間ごとに「仕様調整ミーティング」を設け、前回の申し送り事項を確認・合意を取る。
  2. 合意内容を速やかに反映
    • 決定した要件は、アプローチ1のQ&Aリストや申し送り事項を更新して“FIX”とラベリング。
  3. 工数が溢れそうになったらバックログへ回す
    • イテレーション中に「このままだとオーバーしそう」と分かった場合、機能追加や修正を一旦バックログ化して後回しにするなど調整。
  4. 残る未確定要件は次回イテレーションへ持ち越し
    • 期限や担当者を設定して、合意形成を先延ばしにしすぎないよう管理する。

メリット

  • 不足要件をリアルタイムで補完
    設計・実装が進むタイミングで、まだ定まっていない要素を都度潰していける。
  • 工数オーバーをバックログ化で防ぐ
    必須ではない要件を後回しにしやすく、プロジェクトの破綻を防ぐ。
  • ステークホルダーとのスピーディな合意形成
    ミーティングで即時確認できるので、認識ギャップを早期に解消可能。

⌛ アプローチ3: バッファを前提にした見積もりで走り出す

なぜ必要?

要件定義が固まっていない=不確実性が高い、ということ。ここでは、余裕(バッファ)を持たせた見積もりを組み、開発フェーズに入った後はなるべく追加見積もりを発生させずに進めます。

  • もしどうしても収まらない要件が出たら、バックログ化して次期リリースへ回すなどで対応。

具体的なステップ

  1. 現時点の前提条件を明文化
    • 「今わかっている機能要件・スコープ」「納期の制約」「利用できるリソース」などを明確化。
  2. バッファの設定
    • 「要件が増えそう」「仕様が変わりそう」など不確定要素を洗い出し、一定の工数バッファを盛り込む。
    • 例: 総工数の10〜20%を“変動予備”として確保。
  3. 見積もりを提示し、基本的には変更しない
    • 一度走り出したら大幅な見積もり変更は行わず、バッファで吸収できない場合は、機能をバックログに移すか次期リリースへ回す。

メリット

  • プロジェクト開始を遅らせない
    不確実性があっても、バッファ込みの見積もりなら「とりあえずGO」が可能。
  • “想定外”を減らせる
    細かい変更や仕様追加は、バッファで吸収できればコストや納期へのダメージを抑えられる。
  • 見積もりのブレを最小化
    一度走り出した後に大幅に見積もりを変えずに済むため、進捗管理がしやすい。

まとめ & おすすめの進め方

  1. **決定事項/Q&Aリスト + 申し送り事項(アプローチ1)**で合意範囲と未確定要素を可視化
    • 不十分でも「決まっていること」「決まっていないこと」を一覧化しておけば、最低限の土台はできる。
  2. **短いイテレーション(アプローチ2)**で不足要件をじわじわ詰める
    • 設計・実装が進む中で、まだ固まっていない要素を小さく区切った区間で補完し、必要ならバックログ化して破綻を防ぐ。
  3. **バッファを設定した見積もり(アプローチ3)**でまずは走り出す
    • 現状の不確実性に応じて工数バッファを盛り込み、大きく見積もりを変えない方針を共有。
    • どうしても収まらない場合は、次期リリースへ機能を回すなどのスコープ調整で対応。

これらは同時並行で組み合わせることも多いです。現場の状況に合わせて柔軟に適用してくださいね。(•◡•)/


最後に…✨

要件定義フェーズで100%完璧に要件を固められるプロジェクトは、正直なところ多くありません。ビジネス環境やユーザーのニーズは日々変化しますし、関係者が多いほど合意形成にも時間がかかります。

それでも、曖昧な状態でも前に進むための工夫として、今回ご紹介した3つのアプローチが役立てば嬉しいです。

  • 最小限の決定事項・Q&Aリストをまとめ申し送り事項を明確化。
  • 短いイテレーションを回して不足要件を少しずつ補完し、工数が溢れそうならバックログ化
  • バッファを盛り込んだ見積もりでまずは走り出し、あとからの大幅な見積もり変更を最小化。

こうした取り組みにより、プロジェクトを止めずに進めつつ、最終的に価値ある成果物をリリースすることを目指しましょう。PMの皆さん、いつも本当にお疲れさまです!

それでは、また次の記事でお会いしましょう!お読みいただき、ありがとうございました。


⌛️ Happy PM, Happy Project!

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