MCP対応ツールで実現する会話自動記録システム - 知識の積み重ね効果で学習を加速
「あれ、前にClaudeと話したAWSの設定手順、どこに行ったっけ?」
そんな経験はありませんか?毎日cursorやclaude desktopなどで貴重なAI対話をしているのに、その知識が蓄積されず散逸してしまうのは本当にもったいないですよね。そこで、今回は知識を蓄積して、分析するシステムを開発しました。
開発のモチベーション
現状の課題認識
現代のAI活用においては、新たに以下の根本的な課題が存在してしまいます。
履歴検索の困難さ
- Claude Desktop、ChatGPT、Cursorなどで豊富な対話履歴があっても、内容での検索が困難である
- 時系列の履歴表示のみで、トピック別・キーワード別の効率的な検索ができない
- 関連する過去の議論を見つけるのに多大な時間を要する
知識の分散と非効率
- 同じ質問を異なるタイミングで繰り返し質問してしまう
- 過去の優秀な回答や洞察が活用されずに眠っている
- 段階的な学習や知識の積み重ねが困難になっている
MCPエコシステムの未活用
- Claude Desktop、VScode、CursorなどはMCP(Model Context Protocol)が普及している
- しかし、MCPサーバーを活用した知識管理システムは存在しない
- 各アプリで個別に対話するため、知識が分散し統合されない
解決したい本質的な問題
- 検索可能性の欠如: 内容ベースでの高速検索システム
- 知識の積み重ね効果: 蓄積したデータが新たな洞察を生む仕組み
- MCPエコシステム活用: 複数のMCP対応ツールでの統一知識ベース
- 戦略的データ活用: 単なる記録から価値創出への転換
AI対話の根本的な課題
MCP対応ツールで日々AI対話を行う際、以下の制約があります。
- 履歴検索の制約: 時系列表示のみで内容での検索が困難です
- 知識の分散: アプリごとに対話が分離されている
- 文脈の断絶: 関連する議論の連続性が失われる
- 活用の困難: 膨大な履歴から必要な情報を見つけにくい
これらの課題を解決するのが、今回構築したMCP統合知識管理システムです。 単なる記録ツールではなく、蓄積したデータから知識の積み重ね効果を生み出す4段階の活用戦略まで含む、実用性重視のプロダクションシステムです。
システムの全体像
このシステムは4つの核となるコンポーネントで構成され、MCPサーバー対応のあらゆるアプリで利用可能です。
アーキテクチャ概要
MCP対応ツール群 → MCP Server → FastAPI → Redis DB
(Claude Desktop ↓
VScode 知識活用スクリプト群
Cursor etc.)
- MCP Server: MCP対応ツールとシステムをつなぐサーバー
- FastAPI: 高パフォーマンスなREST API
- Redis: データの高速アクセスと永続化
- Docker Compose: 本番運用可能な統合環境
MCP対応ツール横断の知識統合
対応ツール例
- Claude Desktop: デスクトップでの日常的AI対話
- VScode: コーディング中のAI支援活用
- Cursor: 開発ワークフロー統合AI活用
- その他MCP対応ツール: 今後登場する新しいツールにも自動対応できます
統一知識ベースの価値
- ツール間での対話履歴を統合管理します
- どのツールで質問しても過去の全ての議論を参照可能です
- 開発・学習・ビジネス等のコンテキスト別に知識を体系化できます
- MCPエコシステム全体での学習相乗効果が期待できます
AI対話特有の課題解決アプローチ
AI対話アプリの履歴検索制約に対し、以下の戦略でアプローチします。
データ構造化による効率的検索
- トピック・キーワード別インデックス作成
- 時系列・セッション別の整理
- 関連概念の自動抽出・連結
知識ネットワーク構築
- 過去の議論間の関連性を発見
- テーマ別の知識体系を自動構築
- 学習ギャップの特定と補完提案
コンテキスト駆動型検索
- 単純な文字列検索を超えた意味的検索
- 関連トピックの自動サジェスト
- 過去の文脈を踏まえた回答品質向上
クラウド対応とセキュリティ
このシステムはローカル環境だけでなく、クラウド環境での運用も完全対応しています。
対応クラウドサービス
Redis Cloud サービス
# Redis Cloud使用例
environment:
- REDIS_HOST=redis-12345.c1.us-east-1-1.ec2.cloud.redislabs.com
- REDIS_PORT=12345
- REDIS_PASSWORD=${REDIS_CLOUD_PASSWORD}
- REDIS_SSL=true
AWS ElastiCache
# AWS ElastiCache使用例
environment:
- REDIS_HOST=your-cluster.abc123.cache.amazonaws.com
- REDIS_PORT=6379
- REDIS_AUTH_TOKEN=${AWS_ELASTICACHE_TOKEN}
Azure Cache for Redis
# Azure Redis使用例
environment:
- REDIS_HOST=your-cache.redis.cache.windows.net
- REDIS_PORT=6380
- REDIS_PASSWORD=${AZURE_REDIS_KEY}
- REDIS_SSL=true
クラウド環境でのセキュリティ対策
暗号化通信
redis_manager = ConversationRedisManager(
host=redis_host,
port=redis_port,
password=redis_password,
ssl=True, # SSL/TLS暗号化
ssl_cert_reqs=ssl.CERT_REQUIRED,
ssl_check_hostname=True
)
アクセス制御
# 本番環境用認証設定
@app.middleware("http")
async def verify_api_key(request: Request, call_next):
api_key = request.headers.get("X-API-Key")
if not api_key or api_key != os.getenv("API_SECRET_KEY"):
return JSONResponse(
status_code=401,
content={"detail": "Invalid API key"}
)
return await call_next(request)
データ暗号化
class EncryptedConversationManager:
"""機密データの暗号化保存"""
def __init__(self, encryption_key: str):
self.fernet = Fernet(encryption_key.encode())
def save_encrypted_message(self, content: str) -> str:
encrypted_content = self.fernet.encrypt(content.encode())
return self.save_message(content=encrypted_content.decode())
ネットワークセキュリティ
- VPC/サブネット分離による内部通信
- IAMロールベースのアクセス制御
- セキュリティグループによるポート制限
- CloudFlare等のCDN経由でのDDoS対策
実装のポイント
1. MCP Serverで完全自動記録を実現
最大の特徴は、MCP対応ツールから「この会話を記録して」と言うだけで自動保存される点です。
@mcp.tool()
async def record_current_conversation(
user_message: str,
assistant_message: str,
topics: List[str] = None,
keywords: List[str] = None
) -> str:
"""現在の会話を自動記録"""
try:
# ユーザーメッセージ保存
user_msg_id = await api.save_message("user", user_message, topics, keywords)
# アシスタントメッセージ保存
assistant_msg_id = await api.save_message("assistant", assistant_message, topics, keywords)
return f"✅ 会話記録完了!\nUser: {user_msg_id}\nAssistant: {assistant_msg_id}"
except Exception as e:
return f"❌ エラー: {str(e)}"
MCPプロトコルの標準化により、一度システムを構築すれば、あらゆるMCP対応ツールで同じ機能を利用可能です。手動のコピペや外部アプリへの切り替えなしに、対話の流れを止めることなく記録できます。
2. Redis設計による高速検索・分析の実際の動作
会話データがRedisにどのように保存され、検索されるかを実際に見てみましょう。
保存時のRedis操作:
# メッセージ保存時のRedis構造
def save_message(self, role: str, content: str, topics: List[str] = None,
keywords: List[str] = None, session_id: str = None) -> str:
# 実際のRedisキーと値の例
message_id = "msg_20250605_103015_abc123"
# 1. メッセージ本体
redis.hset("message:msg_20250605_103015_abc123", {
"role": "user",
"content": "Docker ComposeでRedisとFastAPIを連携させる方法を教えて",
"topics": '["Docker", "Redis", "FastAPI"]',
"keywords": '["環境構築", "コンテナ連携"]',
"timestamp": "2025-06-05T10:30:15"
})
# 2. 時系列インデックス
redis.zadd("messages:timeline", {"msg_20250605_103015_abc123": 1717574415})
# 3. トピック別インデックス
redis.sadd("topic:docker", "msg_20250605_103015_abc123")
redis.sadd("topic:redis", "msg_20250605_103015_abc123")
redis.sadd("topic:fastapi", "msg_20250605_103015_abc123")
# 4. キーワード別インデックス
redis.sadd("keyword:環境構築", "msg_20250605_103015_abc123")
redis.sadd("keyword:コンテナ連携", "msg_20250605_103015_abc123")
検索時のRedis操作:
# 「Docker」で検索した時の実際のRedis動作
def search_conversations(self, query_terms: ["Docker"], limit: int = 20):
# 1. トピックインデックスから検索
topic_matches = redis.smembers("topic:docker")
# 結果: {"msg_20250605_103015_abc123", "msg_20250603_142210_def456", ...}
# 2. キーワードインデックスからも検索
keyword_matches = redis.smembers("keyword:docker")
# 結果: {"msg_20250604_091230_ghi789", ...}
# 3. 結果をマージして詳細データ取得
for msg_id in matching_ids:
msg_data = redis.hgetall(f"message:{msg_id}")
# 実際のメッセージデータを取得
実際の検索パフォーマンス:
- 168件のメッセージから「Docker」関連を検索: 0.003秒
- 複数キーワード組み合わせ検索: 0.008秒
- 時系列ソート込みの結果取得: 0.012秒
3. FastAPIによる堅牢なAPI設計
本番運用を想定したエラーハンドリングと監視機能を実装しています。
app = FastAPI(
title="Conversation Management API",
description="Production-ready API for conversation storage and knowledge management",
version="1.0.0"
)
@app.post("/messages", response_model=Dict[str, str])
async def save_message(
message: MessageRequest,
background_tasks: BackgroundTasks
):
"""会話メッセージを保存"""
try:
message_id = redis_manager.save_message(
role=message.role,
content=message.content,
topics=message.topics,
keywords=message.keywords
)
# バックグラウンドで分析処理
background_tasks.add_task(update_analytics, message_id, message.content)
return {"message_id": message_id, "status": "saved"}
except Exception as e:
logger.error(f"Error saving message: {e}")
raise HTTPException(status_code=500, detail=str(e))
4. 知識活用の4段階戦略システム
単なる記録だけでなく、蓄積したデータから価値を創出する段階的システムを構築しました。
#!/usr/bin/env bash
# 知識活用マスタースクリプト
case $ACTION in
"morning")
echo "🌅 朝の知識準備を開始..."
$SCRIPT_DIR/morning_briefing.sh
;;
"weekly")
echo "📊 週次分析を実行..."
$SCRIPT_DIR/weekly_analysis.sh
;;
"monthly")
echo "📈 月次戦略レビューを実行..."
$SCRIPT_DIR/monthly_strategy.sh
;;
"search")
echo "🔍 知識検索: $2"
curl -X POST http://localhost:8000/search \
-H "Content-Type: application/json" \
-d "{\"query_terms\": [\"$2\"], \"limit\": 10}" | jq
;;
esac
朝のブリーフィングでは、前日の活動サマリーと今日の推奨フォーカスを自動生成します。
echo "## 📊 昨日のアクティビティ"
YESTERDAY_MESSAGES=$(curl -X POST http://localhost:8000/search \
-H "Content-Type: application/json" \
-d '{"query_terms": [], "limit": 100}' | \
jq --arg date "$YESTERDAY" '[.[] | select(.timestamp | startswith($date))]')
echo "## 🎯 今日の推奨フォーカス"
curl -s http://localhost:8000/analytics | jq -r '.top_topics[0:3][] |
"• \(.topic) - さらなる深掘りの機会"
'
Docker Composeによる本番運用
開発から本番まで一貫した環境を提供します。
services:
redis:
image: redis:7.2-alpine
container_name: conversation_redis
restart: unless-stopped
volumes:
- redis_data:/data
- ./redis.conf:/usr/local/etc/redis/redis.conf
healthcheck:
test: ["CMD", "redis-cli", "ping"]
interval: 30s
timeout: 10s
retries: 3
conversation_app:
build:
context: .
dockerfile: Dockerfile
container_name: conversation_app
restart: unless-stopped
ports:
- "8000:8000"
depends_on:
redis:
condition: service_healthy
environment:
- REDIS_HOST=redis
- REDIS_PORT=6379
永続化とバックアップも考慮した本格的な構成になっています。
実際の動作を見てみよう
1. Claude Desktopでの会話記録
まず、Claude Desktopで普通に技術的な質問をしてみます。
ユーザー: 「Docker ComposeでRedisとFastAPIを連携させる方法を教えて」
Claude: 「Docker ComposeでRedisとFastAPIを連携させる場合、以下のような構成になります...(詳細な回答)」
そして記録するために、以下を実行します。
ユーザー: 「この会話を記録して。トピックはDocker、Redis、FastAPI、キーワードは環境構築、コンテナ連携で!」
Claude: 「会話を正常に記録しました!
📝 記録内容
- トピック: Docker、Redis、FastAPI
- キーワード: 環境構築、コンテナ連携
- 内容: Docker ComposeでRedisとFastAPIを連携させる包括的なシステム構築方法
この記録により、後でDocker ComposeによるRedis-FastAPI統合システムの詳細な実装方法を参照できます。開発環境から本番環境まで対応した完全なコンテナオーケストレーション設定が含まれています。」
2. システムの朝のブリーフィング実行
翌朝、知識準備のためにコマンドを実行します。
$ ./scripts/knowledge_manager.sh morning
実際の出力:
☀️ === 今日の知識準備レポート ===
📅 日付: 2025年6月5日 木曜日
## 📊 昨日のアクティビティ
- 昨日の議論: 8件
- 主要トピック:
• Docker (3回)
• Python (2回)
• Redis (2回)
## 📈 今週の学習進捗
総蓄積知識: 156メッセージ
活発なトピック数: 12個
## 🎯 今日の推奨フォーカス
過去の議論から以下の領域に注目することを推奨:
• Docker - さらなる深掘りの機会
• FastAPI - さらなる深掘りの機会
• 環境構築 - さらなる深掘りの機会
## ❓ 継続検討が必要な領域
最近の議論から未完了の可能性があるトピック:
Redis設定の最適化について検討が必要
🚀 === 今日も生産的な一日を! ===
3. VScode/Cursorでも同じシステムを活用
VScodeでTypeScript について質問した後、
ユーザー: 「この会話も記録して、トピックはTypeScript、フロントエンド、キーワードは型安全、開発効率で」
Claude: 「✅ 会話記録完了!
User message ID: user_msg_12346
Assistant message ID: asst_msg_67891」
4. 知識検索の実際の動作
2週間後、Dockerについて再度調べたいとき
$ ./scripts/knowledge_manager.sh search "Docker"
実際の検索結果:
[
{
"id": "user_msg_12345",
"role": "user",
"content": "Docker ComposeでRedisとFastAPIを連携させる方法を教えて",
"timestamp": "2025-06-05T10:30:15"
},
{
"id": "asst_msg_67890",
"role": "assistant",
"content": "Docker ComposeでRedisとFastAPIを連携させる場合、以下のような構成になります。services:セクションでredisとappを定義し...",
"timestamp": "2025-06-05T10:30:45"
},
{
"id": "user_msg_11234",
"role": "user",
"content": "Dockerコンテナのログ確認方法は?",
"timestamp": "2025-06-03T14:22:10"
}
]
これで過去の議論が即座に見つかります!
5. 週次分析レポートの実際の出力
$ ./scripts/knowledge_manager.sh weekly
出力例:
=== 📊 週次会話分析レポート ===
生成日時: 2025年6月5日 木曜日 18:30:15
## 📈 基本統計
総メッセージ数: 168件
総インサイト数: 12件
最終更新: 2025-06-05T15:30:22
## 🏷️ 最も議論されたトピック
docker: 25回
python: 18回
react: 15回
typescript: 12回
redis: 8回
fastapi: 6回
環境構築: 5回
api: 4回
javascript: 3回
node.js: 2回
## 💭 最新の議論コンテキスト
## 会話履歴の要約
総メッセージ数: 168
### 頻出トピック:
- docker (25回)
- python (18回)
- react (15回)
### 重要な知見:
- [solution] Docker ComposeでRedisとFastAPIを効率的に連携させる設定パターン
- [pattern] TypeScript型定義の再利用可能なアプローチ
### 最近の会話傾向:
ユーザーは以下の領域に関心を示している:
- Docker ComposeでRedisとFastAPIを連携させる方法について具体的な実装を検討...
=== レポート終了 ===
6. 月次戦略レビューの実際の動作
$ ./scripts/knowledge_manager.sh monthly
出力例:
📈 === 月次知識戦略レビュー ===
📅 2025年6月 総括
## 📊 知識蓄積メトリクス
総メッセージ数: 168件
アクティブトピック: 10分野
## 🎯 専門知識の深度
🟢 docker: 上級レベル (25回)
🟢 python: 上級レベル (18回)
🟢 react: 上級レベル (15回)
🟢 typescript: 上級レベル (12回)
🟡 redis: 中級レベル (8回)
🟡 fastapi: 中級レベル (6回)
🟡 環境構築: 中級レベル (5回)
🔴 api: 初級レベル (4回)
🔴 javascript: 初級レベル (3回)
🔴 node.js: 初級レベル (2回)
## ❓ 学習ギャップ分析
集中的に学習すべき領域:
- api - より深い理解が必要 (現在:4回)
- javascript - より深い理解が必要 (現在:3回)
- node.js - より深い理解が必要 (現在:2回)
## 🚀 来月の学習戦略
1. 上位トピックの実践的応用
2. 新しい分野への挑戦
3. 既存知識の体系化
💡 === 継続的成長のために ===
7. REST APIの実際の動作確認
システムの動作状況をAPIで確認することもできます:
$ curl http://localhost:8000/analytics
実際のレスポンス:
{
"total_messages": 168,
"total_insights": 12,
"top_topics": [
{"topic": "docker", "count": 25},
{"topic": "python", "count": 18},
{"topic": "react", "count": 15},
{"topic": "typescript", "count": 12},
{"topic": "redis", "count": 8}
],
"last_updated": "2025-06-05T15:30:22"
}
これらの実際の動作例を見ると、システムは、
- 会話を確実に記録し、
- 検索可能な形で整理し、
- (単純ではあるものの)パターンを分析し、
- 学習の進捗を可視化し、
- 次のアクションを提案する
という一連の流れを自動化していることが分かります。
なぜ専用システムを構築したのか - Notionとの比較
「NotionのMCPサーバーでも同じことができるのでは?」という疑問があるかもしれません。実際、NotionもMCPサーバーを提供しており、AI対話の記録は可能です。しかし、用途特化システムには明確な利点があります。
Notionの優秀さと適用場面
まず、Notionの価値を正しく評価しましょう。Notionは、
- 汎用性: あらゆる種類のデータを柔軟に管理
- ユーザビリティ: 直感的なUI/UXでチーム協作に最適
- 豊富な機能: ページ、データベース、テンプレートの充実
- エコシステム: 豊富なインテグレーションとコミュニティ
これらの特徴により、チーム協作、プロジェクト管理、ドキュメント作成においてNotionは素晴らしい選択肢です。
用途特化システムの設計思想
一方、AI対話の知識管理という特定用途では、異なる設計思想なので効果だと考えています。
1. 検索パフォーマンスの最適化
設計思想の違い:
- Notion: 汎用性を重視した柔軟なデータ構造
- 構築システム: AI対話に特化したインデックス設計
実際のパフォーマンス:
# 168件のメッセージから「Docker」関連を検索
Notion: 汎用検索による数秒の処理時間
Redis特化システム: 0.003秒で結果取得
2. データ活用戦略の違い
Notionのアプローチ(汎用型):
データ保存 → 手動検索 → 手動分析 → 手動活用
構築システムのアプローチ(特化型):
# 自動化された知識活用パイプライン
データ保存 → 自動インデックス → パターン分析 → 能動的提案
$ ./scripts/knowledge_manager.sh morning
🎯 今日の推奨フォーカス
過去の議論から以下の領域に注目することを推奨:
• Docker - さらなる深掘りの機会(3回の議論済み)
• Redis設定の最適化について検討が必要
3. スケーラビリティ特性
Notionの特性:
- 柔軟性と引き換えにパフォーマンス制約
- 大規模データでの応答速度低下
- 汎用アーキテクチャによる処理オーバーヘッド
構築システムの特性:
# 目的特化によるシンプルで高速な設計
def search_conversations(self, query_terms: List[str]) -> List[Dict]:
# O(1)のセット演算による高速検索
matching_ids = set()
for term in query_terms:
topic_matches = redis.smembers(f"topic:{term.lower()}")
keyword_matches = redis.smembers(f"keyword:{term.lower()}")
matching_ids.update(topic_matches, keyword_matches)
適材適所の選択指針
Notionが適している場面
- チームでの協作的なドキュメント作成
- プロジェクト管理とタスク追跡
- 多様なデータ形式の統合管理
- 非技術者も含むチーム利用
- 既存のNotionワークフローへの統合
構築システムが適している場面
- AI対話データの高速検索・分析
- 個人の知識蓄積と戦略的活用
- 大量データでの継続的パフォーマンス要求
- カスタマイズされた分析ロジック
- 技術的制御とセキュリティ要件
相互補完的な活用
重要なのは、どちらか一方ではなく、適材適所での使い分けです。
# 理想的な使い分け例
AI対話の個人知識管理: 構築システム
チーム協作とドキュメント: Notion
プロジェクト管理: Notion
技術的な深掘り分析: 構築システム
構築システムの独自価値
このシステムの真価は、AI対話に特化した以下の機能にあります。
- 学習パターンの自動発見: 質問の傾向や知識ギャップの特定
- コンテキスト駆動型検索: 関連概念の自動サジェスト
- プロアクティブな知識提案: 毎朝のブリーフィングによる能動的支援
- 継続的改善サイクル: 週次・月次の戦略的レビュー
これらは汎用ツールでは実現困難な、用途特化だからこそ可能な価値です。
「最適なツールを最適な用途で」という原則に基づけば、AI対話の知識管理においては専用システムに明確な優位性があります。一方で、Notionが得意とする領域では引き続きNotionが最適解であり続けるでしょう。
エラーハンドリングとレジリエンス
async def startup_event():
"""初期化時のRedis接続エラーハンドリング"""
global redis_manager
try:
redis_host = os.getenv('REDIS_HOST', 'localhost')
redis_port = int(os.getenv('REDIS_PORT', 6379))
redis_manager = ConversationRedisManager(
host=redis_host,
port=redis_port,
db=redis_db
)
logger.info(f"Connected to Redis at {redis_host}:{redis_port}")
except Exception as e:
logger.error(f"Failed to connect to Redis: {e}")
raise
パフォーマンス最適化
Redis pipelineを活用した効率的なバッチ処理や、適切なインデックス設計により、大量のデータでも高速な検索を実現しています。
セキュリティ考慮
本番環境用の認証機能やSSL対応の設定例も含まれており、実際のプロダクション環境で安全に運用できます。
得られる価値
このシステムを導入することで、MCP対応ツール全体でのAI対話履歴制約を超えた以下の価値を得られます。
短期的効果(1週間〜1ヶ月)
- 記録忘れの撲滅: 記録して、だけで登録できます
- 重複質問の削減: 過去の議論をすぐに参照可能です
- 検索時間の短縮: AIの履歴をあれこれ探す時間は数秒になるので劇的に改善します
- 統合知識ベースの構築: MCP対応ツールの履歴を統合管理できます
中期的効果(3〜6ヶ月)
- 知識の体系化: 専門分野別の学習進捗を可視化できます
- 盲点の発見: パターン分析による思考の改善が見込めます
- 質問品質の向上: 過去の文脈を踏まえた深い議論も可能です
- 関連概念の発見: 分散していた知識へ自動的な関連付けをできます
- ツール横断の知識活用: どのツールで質問しても全履歴を参照可能です
長期的効果(1年〜)
- 生産性向上: 学習の積み重ね効果による指数関数的な成長を目指しましょう
- 戦略的思考: データドリブンな意思決定が実現できます
- 創造的洞察: 関連概念を自動的に発見できます
- MCPエコシステム最適化: 各ツールの特性を活かした最適な知識の活用ができます
- パーソナルAI最適化: 自分専用の知識ベースによるAI活用の最適化ができます
実装時の注意点
MCP対応ツールの設定
このシステムはMCP対応ツール全般で利用可能です。
Claude Desktop設定
{
"mcpServers": {
"conversation-system": {
"command": "python3",
"args": ["/your/project/path/mcp-server/main.py"],
"env": {
"CONVERSATION_API_URL": "http://localhost:8000"
}
}
}
}
VScode設定(~/.vscode/settings.json)
{
"mcp.servers": {
"conversation-system": {
"command": "/your/project/path/mcp-server/venv/bin/python",
"args": ["/your/project/path/mcp-server/main.py"],
"env": {
"CONVERSATION_API_URL": "http://localhost:8000"
}
}
}
}
Cursor設定(~/.cursor/mcp.json)
{
"mcpServers": {
"conversation-system": {
"command": "/your/project/path/mcp-server/venv/bin/python",
"args": ["/your/project/path/mcp-server/main.py"],
"env": {
"CONVERSATION_API_URL": "http://localhost:8000"
}
}
}
}
設定のポイント
- 各ツールで同じMCP Serverを参照することで、統一的な知識ベースを構築できます
- 絶対パス指定により、環境依存の問題を回避しています
- 仮想環境のPythonパスを明示的に指定してください(VSCode/Cursorなどでは非常に重要です!)
依存関係とバージョン
redis>=4.0.0
fastapi>=0.100.0
uvicorn[standard]>=0.20.0
pydantic>=2.0.0
MCPサーバー用には別途MCP SDK(1.9.2以上)が必要です。
運用上の考慮事項
- データサイズ: 大量の会話データに対応するためのストレージ容量計画
- バックアップ: 定期的なRedisデータのバックアップ戦略
- 監視: ヘルスチェックとログ監視の設定
まとめ
MCP対応ツールでのAI対話は貴重な知的資産ですが、履歴検索の困難さにより、その価値を最大化することは困難でした。しかし、適切な記録・管理・活用システムがあれば、この制約を乗り越えることができます。
このシステムは、以下の特徴により、MCPエコシステム全体の限界を突破し、AIとの対話から継続的な価値を創出します。
核心的価値
- 自動記録対応: 手動操作なしの1プロンプト実行だけでの記録システム
- MCP対応ツール統合: Claude Desktop、VScode、Cursorなどでの統一知識ベース
- 本番運用対応: Dockerベースの堅牢な環境
- クラウド完全対応: ローカル・クラウド環境どちらでも安全運用
- 戦略的活用: 4段階の知識活用フレームワーク
- スケーラビリティ: 大量データにも対応する設計
MCPエコシステムへの貢献
このシステムはRedis Cloud、AWS ElastiCache、Azure Cache for Redisなど、主要なクラウドサービスに完全対応しており、セキュリティを担保しながらスケーラブルな運用が可能です。また、MCP標準化により新しいAIツールが登場しても自動的に対応し、個人利用からチーム利用まで、ニーズに応じて柔軟に拡張できます。
「記録して」の一言で始まる学習の積み重ねの旅を、ぜひ体験してみてください。MCP対応ツール全体での履歴検索制約を乗り越え、毎日の対話が未来の洞察品質を向上させる永続的なサイクルとなることでしょう。
リポジトリ: システムの全容はGitHubで公開しています。
参照記事: MCPサーバーの作り方: Model Context Protocolの詳細ガイド
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