物理Q&A:核融合とはなんですか
一般の方を対象に核融合について簡単に説明します。
核融合はどこで起きていますか
【答】太陽と夜空の星々
太陽では核融合が起きていて明るく光り地球をあたためています。夜空の星々もほとんどが核融合で光っています。 晴れていれば空を見上げることで私たちはいつでも核融合を感じることができます。
実験
核融合実験をするほどの技術もお金もないので似たような実験をしてみました。
燃焼実験です。核融合と燃焼の似ているところと、ちがうところを考えてみましょう。
小皿を用意します。ティッシュペーパーでこよりを作って小皿の上におきます。ライターでティッシュペーパーに火をつけます。ティッシュペーパーに火がついたらライターを取り除きます。ティッシュパーパーが燃える様子を観察します。
ものが燃えるときの特徴はなんですか
【問】ものが燃えると何が起きますか
【答】明るく光って熱くなります
そうです、「光と熱が発生する」ことが燃えること(燃焼)の最大の特徴です。
核融合の特徴はなんですか
【問】核融合では何が起きますか
【答】明るく光って熱くなります
核融合の特徴は燃焼とまったく同じです。太陽をみてください。明るく光って熱くなっていますね。
ティッシュペーパーの燃焼を詳しく教えてください
ティッシュペーパーの燃焼実験を考えてみます。
ティッシュペーパーは炭素と水素と酸素でできています(パルプ、セルロース)。加熱すると空気中の酸素と結びついて燃えだします。ティッシュペーパーからでてきた気体が燃えると炎となります。ティッシュペーパーが赤く光っているのは固体のまま燃えているところです。いちど火がつくと燃焼で発生する熱で熱源のライターがなくても燃え続けます(連鎖反応)。
燃えることで二酸化炭素と水蒸気ができます。また光と熱もできます。
燃焼と核融合の違いはなんですか
燃焼では分子と酸素分子が結合して別の分子ができます。 たとえば炭素と酸素が結合して二酸化炭素ができ、水素と酸素が結合すれば水ができます。
それに対して核融合は原子核と原子核が結合して別の原子核ができます。 たとえば水素原子核と重水素核が結合してヘリウムができます。
またどちらも光と熱もできることを忘れてはいけません。
つまり燃焼と核融合の違いをまとめるとこうなります。
燃焼:分子と酸素分子が結合して別の分子ができる(化学反応)
核融合:原子核と原子核が結合して別の原子核ができる(核反応)
物理的に違いはこれだけです。燃えているものとその反応が違うのです。
図解してください
単体の炭素が燃えて二酸化炭素ができるイメージを描きました。大きさと形は適当です。 左側の枠が燃える前で、右側枠の枠が燃えた後です。
小さな黒丸が炭素の原子核で、小さな赤丸が酸素の原子核です。 大きな灰色の丸は原子核のまわりをとりまく電子の雲です。 酸素分子では16個の電子が、炭素原子では6個の電子がとりまいています。
右側が燃えたあとで、二酸化炭素(CO2)、光(光子)、熱(二酸化炭素の運動)ができています。
光子は光の速度でとんでいきます。二酸化炭素は光とは逆方向にとんでいきます(運動量保存の法則)。
このように燃焼は分子(原子)と酸素分子がぶつかって別の分子になります。それに対して核融合では原子核と原子核がぶつかって別の原子核になります。たとえば黒丸の炭素原子核と(ここには描いていませんが)水素の原子核がぶつかって窒素の原子核ができます。
核融合を起こすのはむずかしいですか
核融合は簡単に起きます。
身近なところでは太陽で核融合が起きています。夜空に光る星々もそのほとんどが核融合で光っています。 核融合は宇宙ではとてもありふれた現象です。いたるところで自然に起きています。 しかし地球上で核融合が自然におこることはほぼありません。人工的に核融合で発電しようとしていますがまだ実用になっていません。
それに対して燃焼は地球ではありふれています。しかし宇宙全体を考えると燃焼は珍しい現象だと思います。 十分な酸素がないとものは燃えませんが、地球以外ではまだ十分な酸素が発見されていないからです。
なぜ地球上では核融合が起きないのですか
燃焼は分子と分子を勢いよくぶつけて結合させます。勢いをつけるために加熱します。 上の図をみてください。酸素分子の結合が強いので室温程度では酸素と炭素は結合してくれません。火をつけることで始めて燃え出します。
同じように核融合は原子核と原子核を勢いよくぶつけて結合させます。これも勢いをつけるために加熱します。 上の図をみてください。核融合を起こすためには分子をぶつけるのでなく、分子の中にある小さな赤丸、黒丸どうしをぶつけないといけません。
ただし原子核はお互いプラスの電荷をもっているので近づくと反発して逃げます。この反発力に逆らってぶつけないといけないので燃焼に比べて桁違いの勢いでぶつけないといけません。 また原子核の直径は分子の約1万分の1です。的が小さいのです。断面積にすると1億分の1になります。頻繁にぶつけるためには圧力をあげて密度を高めないといけません。
また勢いよくぶつかったとしても必ず核融合が起きるわけではありません。
どんな条件で核融合が起きますか
AIに聞いたおおよその数字を書いておきます。炭が燃え出す数値も参考に書いておきます。
種類 | 温度 | 圧力 | 継続時間 |
---|---|---|---|
炭素の燃焼 | 400度 | 1気圧 | 数時間 |
トカマク型核融合炉 | 3億度 | 4気圧 | 数分 |
レーザー核融合 | 10億度 | 10億気圧 | 100億分の1秒 |
太陽 | 1600万度 | 2400億気圧 | 100億年 |
まとめ
- 燃焼と核融合の特徴は燃えることで熱と光が出ること
- 燃焼と核融合は一点を除いてほぼ一緒の現象
- 相違点は結合するものの違い。燃焼は分子(原子)、核融合は原子核が結合する
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