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実践CMake入門:問題形式で学ぶ基本から応用まで②

2024/10/28に公開

初めに

実践CMake入門:問題形式で学ぶ基本から応用まで①の続きになります。

練習問題

問題 21: プロジェクトのインストールとパッケージ化

質問: CMakeプロジェクトをシステムにインストールし、他のプロジェクトがfind_package()を使ってこのプロジェクトを利用できるようにパッケージ化する方法を説明してください。install()install(EXPORT)を使用して、インストールディレクトリやCMakeパッケージの作成方法を具体的に示してください。

回答

回答

CMakeプロジェクトをシステムにインストールし、他プロジェクトが find_package() で参照できるようにするには、install()install(EXPORT) でCMakeパッケージを作成する必要があります。この設定により、他のプロジェクトが find_package() を通してこのプロジェクトのライブラリを簡単に利用できるようになります。

以下に、インストール設定方法を初心者向けに解説します。


1. ディレクトリ構成

/project-root
    ├── CMakeLists.txt
    ├── include/
    │   └── MyLib.hpp
    ├── src/
    │   ├── MyLib.cpp
    │   └── main.cpp
    └── MyLibConfig.cmake
  • include/MyLib.hpp: ライブラリのヘッダファイル。
  • src/MyLib.cpp: ライブラリの実装ファイル。
  • src/main.cpp: テスト用の実行ファイル(必要に応じて)。
  • MyLibConfig.cmake: ライブラリ設定を提供するためのCMakeファイル(手動で作成)。

2. CMakeLists.txt の設定

CMakeでインストール設定を行うことで、ビルドしたライブラリや関連ファイルをシステムに配置し、他のプロジェクトが find_package(MyLib) を使って参照できるようにします。

CMakeLists.txt の内容

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyLibrary VERSION 1.0)

# ライブラリの作成
add_library(MyLib STATIC src/MyLib.cpp)
target_include_directories(MyLib PUBLIC include)

# インストール設定
install(TARGETS MyLib
    EXPORT MyLibTargets
    ARCHIVE DESTINATION lib
    LIBRARY DESTINATION lib
    RUNTIME DESTINATION bin
    INCLUDES DESTINATION include
)

# ヘッダファイルをインストール
install(DIRECTORY include/ DESTINATION include)

# CMakeのパッケージファイルをエクスポートしてインストール
install(EXPORT MyLibTargets
    FILE MyLibTargets.cmake
    NAMESPACE MyLib::
    DESTINATION lib/cmake/MyLib
)

# プロジェクト用のConfigファイルを生成してインストール
include(CMakePackageConfigHelpers)
write_basic_package_version_file(
    MyLibConfigVersion.cmake
    VERSION ${PROJECT_VERSION}
    COMPATIBILITY AnyNewerVersion
)
install(FILES
    "${CMAKE_CURRENT_SOURCE_DIR}/MyLibConfig.cmake"
    "${CMAKE_CURRENT_BINARY_DIR}/MyLibConfigVersion.cmake"
    DESTINATION lib/cmake/MyLib
)

各設定の解説

  1. ライブラリのインストール設定 (install(TARGETS ...))

    • TARGETS MyLib: インストールするターゲット(静的ライブラリ MyLib)を指定します。
    • EXPORT MyLibTargets: ライブラリ情報を MyLibTargets.cmake にエクスポートし、他のプロジェクトから MyLib::MyLib としてリンクできるようにします。
    • ARCHIVE DESTINATION lib: 静的ライブラリファイル(.a.lib)を lib ディレクトリにインストールします。
    • INCLUDES DESTINATION include: ライブラリのインクルードパスを include に設定します。
  2. ヘッダファイルのインストール (install(DIRECTORY include/ DESTINATION include))

    • include ディレクトリのヘッダファイルを、インストール先の include/ にコピーし、ライブラリ利用者がヘッダファイルを正しく参照できるようにします。
  3. エクスポートファイルのインストール (install(EXPORT ...))

    • エクスポートファイル MyLibTargets.cmake を生成し、lib/cmake/MyLib にインストールすることで、他プロジェクトが find_package(MyLib) でライブラリを見つけられるようにします。
    • NAMESPACE MyLib:: は、他のプロジェクトから MyLib::MyLib としてリンクできるよう指定しています。
  4. Configファイルの生成とインストール

    • write_basic_package_version_file()MyLibConfigVersion.cmake を生成し、プロジェクトのバージョン情報を提供します。
    • MyLibConfig.cmake は手動で用意し、lib/cmake/MyLib にインストールすることで find_package() を使った自動参照が可能になります。

3. MyLibConfig.cmake の内容と include(CMakeFindDependencyMacro) が必要なケース

MyLibConfig.cmake の例

# MyLibConfig.cmake

# 他の依存ライブラリがある場合、CMakeFindDependencyMacroを読み込む
include(CMakeFindDependencyMacro)

# エクスポートされたMyLibTargets.cmakeをインクルード
include("${CMAKE_CURRENT_LIST_DIR}/MyLibTargets.cmake")

include(CMakeFindDependencyMacro) が必要になるケース

  • MyLib が他のライブラリに依存している場合(例えば、BoostOpenSSL などを利用する場合)、include(CMakeFindDependencyMacro) を使うことで依存ライブラリを自動的に見つけられるようにします。
  • 依存ライブラリがある場合、MyLibConfig.cmake に以下のように記述します:
# MyLibがBoostに依存する場合
include(CMakeFindDependencyMacro)
find_dependency(Boost REQUIRED)

これにより、find_package(MyLib) を呼び出すと、MyLib が依存する Boost も自動で読み込まれます。


4. パッケージのインストール

ビルドディレクトリで以下のコマンドを実行して、プロジェクトをインストールします。

cmake --install build --prefix "/custom/install/path"
  • --prefix オプションは、インストール先の基準ディレクトリを指定するオプションです。この場合、インストール先は /custom/install/path になります。
  • --prefix を指定しない場合、通常 /usr/local のようなシステムのデフォルトインストールパスが利用され、lib/cmake/MyLib/usr/local/lib/cmake/MyLib に配置されます。

5. 他のプロジェクトから find_package() で利用する

他プロジェクトで MyLib を使う際、CMake設定が行われていれば find_package(MyLib) で自動的に読み込まれ、リンクやインクルード設定も適用されます。

他プロジェクトの CMakeLists.txt

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(UseMyLib)

# インストールパスを指定
list(APPEND CMAKE_PREFIX_PATH "/custom/install/path")

# MyLibを検索
find_package(MyLib REQUIRED)

# MyLibを使って実行ファイルを作成
add_executable(MyApp main.cpp)
target_link_libraries(MyApp PRIVATE MyLib::MyLib)
  • list(APPEND CMAKE_PREFIX_PATH "/custom/install/path"): CMakeにインストール先パスを追加し、find_package() でライブラリを探せるようにします。
  • find_package(MyLib REQUIRED): インストール済みの MyLib パッケージを検索して読み込みます。
  • target_link_libraries(MyApp PRIVATE MyLib::MyLib): MyLib::MyLib をリンクして、インクルードパスやライブラリパスを自動適用します。

まとめ

  • install(TARGETS ... EXPORT ...): ライブラリをインストールし、他プロジェクトでの利用が可能なエクスポート情報を提供します。
  • install(EXPORT ...): エクスポートファイルを生成して find_package(MyLib) で読み込めるようにします。
  • Configファイル (MyLibConfig.cmake): find_package(MyLib) を使った際の依存関係を解決できるよう設定を提供します。依存ライブラリがない場合、include(CMakeFindDependencyMacro) は省略可能です。
  • --prefix オプション: インストール先を指定しない場合は、システムのデフォルトインストールディレクトリが使われます

が、--prefix で任意のインストール先を指定することも可能です。

これにより、CMakeを使ったプロジェクトのインストールと再利用が簡単になり、他プロジェクトが find_package(MyLib) で手軽にライブラリを利用できるようになります。


問題 22: 複数ビルドタイプのサポート

質問: CMakeプロジェクトで、DebugReleaseRelWithDebInfoのビルドタイプをサポートする方法を説明し、ビルドタイプに応じたコンパイルオプションや定義を切り替える方法を記述してください。if()条件を使って、ビルドタイプに応じて異なるオプションを設定する方法を示してください。

回答

回答

CMakeプロジェクトで DebugReleaseRelWithDebInfo のビルドタイプをサポートし、ビルドタイプに応じたコンパイルオプションや定義を切り替えるには、CMAKE_BUILD_TYPE 変数を利用し、if() 条件で各ビルドタイプに応じた設定を行います。

以下に、ビルドタイプごとに異なるコンパイルオプションや定義を設定する方法を説明します。


1. ビルドタイプの設定

まず、CMakeでサポートするビルドタイプを設定します。CMakeLists.txt に以下のコードを追加して、デフォルトのビルドタイプを指定し、CMAKE_BUILD_TYPE の選択肢を提供します。

CMakeLists.txt の設定例

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyProject)

# デフォルトのビルドタイプを Release に設定
set(default_build_type "Release")
if(NOT CMAKE_BUILD_TYPE AND NOT CMAKE_CONFIGURATION_TYPES)
    message(STATUS "Setting build type to '${default_build_type}' as none was specified.")
    set(CMAKE_BUILD_TYPE "${default_build_type}" CACHE STRING "Choose the type of build." FORCE)
endif()

# ビルドタイプの選択肢を提供
set_property(CACHE CMAKE_BUILD_TYPE PROPERTY STRINGS "Debug" "Release" "RelWithDebInfo" "MinSizeRel")
  • CMAKE_BUILD_TYPE: ビルドタイプを指定するためのCMake変数です。ユーザーが cmake -DCMAKE_BUILD_TYPE=Debug のように設定できます。

2. ビルドタイプに応じたコンパイルオプションの設定

次に、if() 条件を使ってビルドタイプに応じたコンパイルオプションや定義を切り替えます。

ビルドタイプごとの設定例

# ビルドタイプごとのコンパイルオプションや定義の設定
if(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "Debug")
    # Debugビルド向けのオプション
    message(STATUS "Configuring Debug build settings")
    target_compile_definitions(MyApp PRIVATE DEBUG_BUILD)
    target_compile_options(MyApp PRIVATE -O0 -g -Wall)
elseif(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "Release")
    # Releaseビルド向けのオプション
    message(STATUS "Configuring Release build settings")
    target_compile_definitions(MyApp PRIVATE RELEASE_BUILD)
    target_compile_options(MyApp PRIVATE -O3)
elseif(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "RelWithDebInfo")
    # RelWithDebInfoビルド向けのオプション
    message(STATUS "Configuring RelWithDebInfo build settings")
    target_compile_definitions(MyApp PRIVATE RELWITHDEBINFO_BUILD)
    target_compile_options(MyApp PRIVATE -O2 -g)
endif()

設定の解説

  • CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "Debug": Debug ビルドタイプの場合に適用されるコンパイルオプションと定義を指定します。

    • target_compile_definitions(MyApp PRIVATE DEBUG_BUILD): DEBUG_BUILD というプリプロセッサ定義を追加します。
    • target_compile_options(MyApp PRIVATE -O0 -g -Wall): 最適化を無効化(-O0)し、デバッグ情報(-g)を有効に、全警告(-Wall)も有効にします。
  • CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "Release": Release ビルドタイプの場合に適用されるコンパイルオプションと定義を指定します。

    • target_compile_definitions(MyApp PRIVATE RELEASE_BUILD): RELEASE_BUILD というプリプロセッサ定義を追加します。
    • target_compile_options(MyApp PRIVATE -O3): 高レベルの最適化(-O3)を適用します。
  • CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "RelWithDebInfo": RelWithDebInfo ビルドタイプの場合に適用されるコンパイルオプションと定義を指定します。

    • target_compile_definitions(MyApp PRIVATE RELWITHDEBINFO_BUILD): RELWITHDEBINFO_BUILD というプリプロセッサ定義を追加します。
    • target_compile_options(MyApp PRIVATE -O2 -g): 中程度の最適化(-O2)とデバッグ情報(-g)を有効にします。

3. 実行ファイルの設定

対象のターゲットにビルドタイプごとの設定を適用します。以下では MyApp ターゲットを例にしています。

# 実行ファイルの作成
add_executable(MyApp src/main.cpp)

# ビルドタイプごとのオプションを設定
if(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "Debug")
    target_compile_definitions(MyApp PRIVATE DEBUG_BUILD)
    target_compile_options(MyApp PRIVATE -O0 -g -Wall)
elseif(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "Release")
    target_compile_definitions(MyApp PRIVATE RELEASE_BUILD)
    target_compile_options(MyApp PRIVATE -O3)
elseif(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "RelWithDebInfo")
    target_compile_definitions(MyApp PRIVATE RELWITHDEBINFO_BUILD)
    target_compile_options(MyApp PRIVATE -O2 -g)
endif()

4. コンパイルオプションが適用されるソースファイルの例

src/main.cpp に以下のように条件付きで異なるメッセージを出力させ、ビルドタイプごとに異なるオプションが適用されていることを確認します。

src/main.cpp の内容

#include <iostream>

int main() {
    #ifdef DEBUG_BUILD
    std::cout << "Debug build" << std::endl;
    #elif defined(RELEASE_BUILD)
    std::cout << "Release build" << std::endl;
    #elif defined(RELWITHDEBINFO_BUILD)
    std::cout << "RelWithDebInfo build" << std::endl;
    #else
    std::cout << "Unknown build type" << std::endl;
    #endif
    return 0;
}

5. ビルドと実行

ビルドディレクトリで以下のコマンドを実行して、ビルドタイプごとのオプションが適用されていることを確認します。

Debugビルド

cmake -S . -B build -DCMAKE_BUILD_TYPE=Debug
cmake --build build
./build/MyApp  # "Debug build" と出力されます

Releaseビルド

cmake -S . -B build -DCMAKE_BUILD_TYPE=Release
cmake --build build
./build/MyApp  # "Release build" と出力されます

RelWithDebInfoビルド

cmake -S . -B build -DCMAKE_BUILD_TYPE=RelWithDebInfo
cmake --build build
./build/MyApp  # "RelWithDebInfo build" と出力されます

まとめ

  • ビルドタイプをサポート: CMAKE_BUILD_TYPE 変数を使用して、DebugReleaseRelWithDebInfo を含むビルドタイプをサポートします。
  • 条件分岐でビルドタイプごとの設定: if() 条件を使用してビルドタイプごとのコンパイルオプションやプリプロセッサ定義を設定し、target_compile_options()target_compile_definitions() を使ってターゲットに適用します。

これにより、CMakeプロジェクトでビルドタイプごとに最適な設定を適用でき、開発やデプロイが効率化されます。


問題 23: キャッシュの利用状況を確認する

質問: ccachesccacheを使用している際に、キャッシュがどの程度利用されているか、どのようにして確認しますか?キャッシュの利用状況や統計情報を確認するためのコマンドと、CMakeビルドにおけるキャッシュの効果を確認する方法を説明してください。

回答

回答

ccachesccacheの利用は、主に開発効率の向上やCI環境でのビルド高速化が目的です。開発サイクルでは再ビルドの待機時間が削減され、CI環境では自動ビルドが速く完了するため、リソースの節約と処理速度の向上が期待できます。さらに、クラウドベース(例えばAWS S3)を利用したキャッシュ共有により、チームや異なるビルド環境間でも同じキャッシュが再利用でき、ビルド時間がさらに短縮されます。


1. ccache の統計情報を確認する方法

ccache は、キャッシュの利用状況を確認する統計コマンドを提供しています。これにより、キャッシュヒット率やビルド時間短縮効果を把握できます。

キャッシュの統計情報を表示

キャッシュの利用状況やヒット率を確認するには、以下のコマンドを実行します。

ccache -s
  • cache hit: キャッシュがヒットして再利用された回数。
  • cache miss: キャッシュがミスしてコンパイルが発生した回数。
  • hit rate: キャッシュのヒット率。ヒット率が高いほどキャッシュが効果的に利用されていることを示します。
  • cache sizemax cache size: 現在のキャッシュサイズと設定された最大サイズ。ヒット率が低い場合は、最大サイズの調整で改善される可能性があります。

統計情報をリセット

キャッシュの利用状況をリセットし、新たに効果を測定したい場合は以下のコマンドを使用します。

ccache -z

2. sccache の統計情報を確認する方法

sccache も統計コマンドでキャッシュ利用状況を表示し、キャッシュ効果を把握できます。

キャッシュの統計情報を表示

以下のコマンドでキャッシュのヒット率や利用状況を確認します。

sccache -s
  • Cache hits: キャッシュがヒットした回数。
  • Cache misses: キャッシュされていないため新しくコンパイルが行われた回数。
  • Hit rate: キャッシュヒット率で、ccache と同様にキャッシュ効果の指標です。
  • Cache sizeMax cache size: 現在のキャッシュサイズと設定された最大サイズ。最大サイズの調整でキャッシュ効果が改善する可能性があります。

統計情報のリセット

リセットしてからビルドを実行すると、特定のビルドにおけるキャッシュ効果を測定しやすくなります。

sccache --zero-stats

3. CMakeビルドでのキャッシュ効果を確認する方法

CMakeプロジェクトでキャッシュ効果を確認するために、以下の手順を実行します。

手順 1: 初回ビルド

初回ビルドはキャッシュのない状態で実行し、統計情報をリセットしてからビルドを行います。

# ccacheの場合
ccache -z

# sccacheの場合
sccache --zero-stats

# CMakeビルド
cmake -S . -B build
cmake --build build

手順 2: 再ビルド

再度同じビルドコマンドを実行すると、キャッシュが利用され、ビルド時間が短縮されます。

cmake --build build

手順 3: キャッシュの効果を確認

ビルド後にキャッシュ統計を表示し、キャッシュヒット率や利用状況を確認します。

# ccache の場合
ccache -s

# sccache の場合
sccache -s

4. AWS S3でのキャッシュ共有の設定例

クラウドベースでキャッシュを共有する方法として、AWS S3にキャッシュを保存することで、開発チームやCI環境の異なるジョブ間でキャッシュを再利用できます。

sccacheのS3利用

sccache はS3をキャッシュストレージとしてサポートしています。以下の環境変数を設定することでS3を使用できます。

export SCCACHE_BUCKET=my-s3-cache-bucket  # S3バケット名
export SCCACHE_REGION=us-west-2           # バケットのリージョン
export AWS_ACCESS_KEY_ID=your-access-key-id
export AWS_SECRET_ACCESS_KEY=your-secret-access-key

ccacheのS3利用

ccache でS3を利用する場合、ビルド前にS3からキャッシュを取得し、ビルド後にS3へキャッシュをアップロードする必要があります。

# S3からキャッシュを同期
aws s3 sync s3://my-s3-cache-bucket /path/to/local/ccache

# 通常のビルド手順
cmake -B build -DCMAKE_C_COMPILER_LAUNCHER=ccache
cmake --build build

# ビルド後にキャッシュをS3に同期
aws s3 sync /path/to/local/ccache s3://my-s3-cache-bucket

まとめ

  • 開発効率向上: ccachesccache を使用して、再ビルド時間を短縮し、開発サイクルの効率が向上します。
  • CIでのビルド高速化: CI環境でのビルド時間が短縮され、自動ビルドやテストが速くなります。
  • クラウドベースのキャッシュ共有: S3を利用することで、複数環境間でキャッシュを共有し、ビルド時間をさらに短縮できます。
  • キャッシュの統計情報: ccache -ssccache -s でキャッシュヒット率や利用状況を確認し、キャッシュ効果を可視化できます。

これにより、ccachesccache がビルド時間短縮に貢献し、開発・CI環境全体の効率を向上させます。


問題 24: 外部ライブラリがインストールされていない場合の対応

質問: CMakeプロジェクトで、必要な外部ライブラリ(例えばBoostやOpenCV)がインストールされていない場合にエラーメッセージを出力してビルドを中断するような設定を記述してください。find_package()を使用し、必須ライブラリが見つからない場合にmessage(FATAL_ERROR)を使って処理を行う方法を説明してください。

回答

回答

CMakeプロジェクトで必要な外部ライブラリ(例えばBoostやOpenCV)がインストールされていない場合に、エラーメッセージを出力してビルドを中断するには、find_package() でライブラリを探し、見つからなかった際には message(FATAL_ERROR) を使います。これにより、CMakeビルドが不足する依存ライブラリの確認を自動で行い、エラーメッセージを表示してユーザーにインストールを促すことができます。


1. find_package()message(FATAL_ERROR) を使ったエラーチェックの例

例えば、BoostとOpenCVが必要なプロジェクトで、これらが見つからなかった場合にビルドを中断する設定です。

CMakeLists.txt の内容

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyProject)

# 必須ライブラリのチェック

# Boostライブラリのチェック
find_package(Boost REQUIRED)
if(NOT Boost_FOUND)
    message(FATAL_ERROR "Boost library not found. Please install Boost.")
endif()

# OpenCVライブラリのチェック
find_package(OpenCV REQUIRED)
if(NOT OpenCV_FOUND)
    message(FATAL_ERROR "OpenCV library not found. Please install OpenCV.")
endif()

# 実行ファイルの作成
add_executable(MyApp src/main.cpp)

# 必要なライブラリをリンク
target_link_libraries(MyApp PRIVATE Boost::Boost OpenCV::opencv)

2. 設定の詳細説明

  • find_package(Boost REQUIRED): Boost ライブラリを探します。REQUIRED オプションにより、Boostが見つからなければエラーとなりビルドは中断されます。

    • if(NOT Boost_FOUND): Boostが見つからなかった場合に、message(FATAL_ERROR "Boost library not found. Please install Boost.") によりエラーメッセージを表示してビルドを中断します。
  • find_package(OpenCV REQUIRED): OpenCV ライブラリを探します。REQUIRED オプションを使うことで、OpenCVが必須であることを示しています。

    • if(NOT OpenCV_FOUND): OpenCVが見つからなかった場合は message(FATAL_ERROR "OpenCV library not found. Please install OpenCV.") でエラーメッセージを表示してビルドを中断します。
  • target_link_libraries(MyApp PRIVATE Boost::Boost OpenCV::opencv): BoostOpenCVMyApp 実行ファイルにリンクします。Boost::BoostOpenCV::opencvfind_package() によって提供されるインターフェースです。


3. XXX_FOUND 変数の仕組み

XXX_FOUND 変数(例えば Boost_FOUNDOpenCV_FOUND)は、find_package()依存ライブラリが見つかったかどうかの結果を記録している変数です。CMakeは FindXXX.cmake モジュール(例えば FindBoost.cmake)を読み込み、このファイルで定義されたルールに従ってライブラリを検索します。見つかった場合、XXX_FOUND 変数が TRUE に設定され、見つからない場合は FALSE になります。

自作ライブラリも同様に find_package() でチェック可能ですが、そのためにはFindXXX.cmake モジュールファイルを用意する必要があります。モジュールファイルが存在しない場合、find_package() はエラーとなり、XXX_FOUND 変数も設定されません。

自作ライブラリ用の FindXXX.cmake 作成例

例えば、MyLib という自作ライブラリを探す場合、FindMyLib.cmake というモジュールを作成し、CMAKE_MODULE_PATH から探せるように設定します。

# MyLib ライブラリのパスとヘッダを探す
find_path(MYLIB_INCLUDE_DIR MyLib.hpp PATHS ${CMAKE_SOURCE_DIR}/include)
find_library(MYLIB_LIBRARY MyLib PATHS ${CMAKE_SOURCE_DIR}/lib)

# ライブラリとヘッダが見つかった場合はフラグを立てる
if(MYLIB_INCLUDE_DIR AND MYLIB_LIBRARY)
    set(MyLib_FOUND TRUE)
else()
    set(MyLib_FOUND FALSE)
    message(FATAL_ERROR "MyLib library not found.")
endif()

# エクスポートしたライブラリを提供
if(MyLib_FOUND)
    set(MYLIB_INCLUDE_DIRS ${MYLIB_INCLUDE_DIR})
    set(MYLIB_LIBRARIES ${MYLIB_LIBRARY})
endif()

これにより、自作ライブラリも find_package(MyLib REQUIRED) の形式で検索・エラーチェックが可能になります。


4. 複数のライブラリを条件付きでチェックする場合

複数の外部ライブラリが必要な場合、それぞれに対して find_package()message(FATAL_ERROR) を使ってチェックします。以下は、BoostとOpenCVが両方見つからない場合や片方だけ見つからない場合にカスタムメッセージを表示する例です。

find_package(Boost REQUIRED)
find_package(OpenCV REQUIRED)

if(NOT Boost_FOUND AND NOT OpenCV_FOUND)
    message(FATAL_ERROR "Both Boost and OpenCV libraries are required but were not found. Please install them.")
elseif(NOT Boost_FOUND)
    message(FATAL_ERROR "Boost library is required but was not found. Please install Boost.")
elseif(NOT OpenCV_FOUND)
    message(FATAL_ERROR "OpenCV library is required but was not found. Please install OpenCV.")
endif()

5. ビルドの実行とエラーメッセージの確認

依存ライブラリが見つからない環境でビルドコマンドを実行すると、message(FATAL_ERROR) によって適切なエラーメッセージが表示され、ビルドが中断されます。


まとめ

  • find_package(... REQUIRED): 必須ライブラリを探し、見つからない場合はエラーを出してビルドを中断します。
  • if(NOT <Library>_FOUND)message(FATAL_ERROR ...): ライブラリが見つからない場合に、エラーメッセージを表示してビルドを停止します。
  • FindXXX.cmake の役割: CMakeは FindXXX.cmake に基づいてライブラリを探し、XXX_FOUND 変数に検索結果を反映します。自作ライブラリを find_package() でチェックするには、専用の FindXXX.cmake モジュールを用意する必要があります。

これにより、CMakeプロジェクトで不足するライブラリが明確になり、ユーザーにわかりやすいエラーメッセージを提供でき、必要なライブラリのインストールを促すことができます。


問題 25: target_compile_definitions()を使った定義の追加

質問: CMakeでターゲットに対してコンパイル時の定義を追加するために、target_compile_definitions()を使って、プロジェクト全体や特定のターゲットに対して定義を追加する方法を説明してください。また、デバッグビルド時にのみ定義を追加する方法も説明してください。

回答

回答

CMakeでターゲットに対してコンパイル時の定義を追加するには、target_compile_definitions() を使用します。このコマンドで、特定のターゲットやプロジェクト全体に対してコンパイル定義を設定でき、ビルドタイプに応じた条件付きの定義も適用可能です。

たとえば、target_compile_definitions(MyApp PRIVATE DEBUG_MODE=1)=1 は、DEBUG_MODE というシンボルに値を割り当て、コード内で条件によってビルド動作を切り替えられるようにするものです。実際に#ifdef DEBUG_MODEのように値を気にせずチェックできる場合もありますが、=1 のように値を割り当てることで柔軟な条件分岐が可能になります。以下に、実際の設定方法を説明します。


1. ターゲットに対してコンパイル時の定義を追加する

特定のターゲットに対して定義を追加するには、target_compile_definitions() を使います。

例: 特定のターゲットに定義を追加

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyProject)

# 実行ファイルの作成
add_executable(MyApp src/main.cpp)

# 特定のターゲットに対して定義を追加
target_compile_definitions(MyApp PRIVATE DEBUG_MODE=1)
  • target_compile_definitions(MyApp PRIVATE DEBUG_MODE=1): MyApp ターゲットに DEBUG_MODE を 1 として定義し、コードで #ifdef DEBUG_MODE または #if DEBUG_MODE == 1 として使えるようにします。PRIVATE はこの定義が MyApp ターゲット内でのみ有効となることを指定しています。

2. 定義に値が必要ない場合

値が不要であれば、DEBUG_MODE=1 のように 1 を設定せず、単に DEBUG_MODE を定義するだけでも十分です。

例: 単純な定義の追加

target_compile_definitions(MyApp PRIVATE DEBUG_MODE)
  • target_compile_definitions(MyApp PRIVATE DEBUG_MODE): DEBUG_MODE を値なしで定義します。この場合、コード側では #ifdef DEBUG_MODE として存在の有無を確認します。

=1 を使用する理由

  • 値による柔軟な条件分岐: 値を指定することで、#if DEBUG_MODE == 1 のように条件判定が可能になり、コードで柔軟にビルドオプションを切り替えることができます。
  • 異なるデバッグレベルの設定: DEBUG_MODE=1(通常のデバッグ)、DEBUG_MODE=2(詳細デバッグ)などのように値を変えることで、異なるデバッグレベルを設定できます。

3. プロジェクト全体に対して定義を追加する

複数のターゲットで同じ定義を使いたい場合、target_compile_definitions() でそれぞれのターゲットに同じ定義を追加できます。

例: 複数のターゲットに同じ定義を追加

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyProject)

# 実行ファイルの作成
add_executable(MyApp src/main.cpp)
add_executable(MyApp2 src/main2.cpp)

# 複数のターゲットに同じ定義を追加
target_compile_definitions(MyApp PUBLIC PROJECT_WIDE_DEFINE=1)
target_compile_definitions(MyApp2 PUBLIC PROJECT_WIDE_DEFINE=1)
  • PUBLIC PROJECT_WIDE_DEFINE=1: MyAppMyApp2 の両方に PROJECT_WIDE_DEFINE=1 を設定し、他のリンク先ターゲットにも適用されます。

4. ビルドタイプに応じた定義の追加

デバッグビルドのときだけ、またはリリースビルドのときだけ有効な定義を追加するには、CMAKE_BUILD_TYPE に応じて条件分岐を設定します。

例: デバッグビルド時のみの定義を追加

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyProject)

# 実行ファイルの作成
add_executable(MyApp src/main.cpp)

# ビルドタイプに応じた定義の追加
if(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "Debug")
    target_compile_definitions(MyApp PRIVATE DEBUG_MODE=1)
else()
    target_compile_definitions(MyApp PRIVATE RELEASE_MODE=1)
endif()
  • DEBUG_MODE=1 または RELEASE_MODE=1: デバッグビルド時には DEBUG_MODE=1 が、リリースビルド時には RELEASE_MODE=1 が設定され、ビルドタイプに応じたコード分岐が可能になります。

5. ビルドタイプによる複数設定の適用

さらに詳細なビルドタイプごとの設定も可能です。

if(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "Debug")
    target_compile_definitions(MyApp PRIVATE DEBUG_MODE=1)
elseif(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "Release")
    target_compile_definitions(MyApp PRIVATE RELEASE_MODE=1)
elseif(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "RelWithDebInfo")
    target_compile_definitions(MyApp PRIVATE RELWITHDEBINFO_MODE=1)
elseif(CMAKE_BUILD_TYPE STREQUAL "MinSizeRel")
    target_compile_definitions(MyApp PRIVATE MINSIZEREL_MODE=1)
endif()
  • 各ビルドタイプごとに異なるオプションが設定され、ビルド環境に応じて柔軟にオプションを切り替えることができます。

6. src/main.cpp のサンプルコード

以下のように、ビルドタイプに応じて異なる動作をコード内で切り替えられます。

#include <iostream>

int main() {
    #ifdef DEBUG_MODE
    std::cout << "Debug mode enabled" << std::endl;
    #elif defined(RELEASE_MODE)
    std::cout << "Release mode enabled" << std::endl;
    #elif defined(RELWITHDEBINFO_MODE)
    std::cout << "RelWithDebInfo mode enabled" << std::endl;
    #elif defined(MINSIZEREL_MODE)
    std::cout << "MinSizeRel mode enabled" << std::endl;
    #else
    std::cout << "No specific mode enabled" << std::endl;
    #endif
    return 0;
}

まとめ

  • target_compile_definitions(): ターゲットごとにコンパイル時の定義を追加します。

    • DEBUG_MODE=1 のように値を設定することで柔軟な条件分岐が可能になります。
    • 値が不要な場合は、単に DEBUG_MODE のように定義するだけで #ifdef の条件分岐に利用できます。
  • ビルドタイプによる条件分岐: CMAKE_BUILD_TYPE に応じて異なるコンパイル定義を付与することで、デバッグやリリースビルドで動作を分けられます。

これにより、CMakeプロジェクトにおいて、ビルドごとに適切なコンパイル定義を割り当て、開発やデバッグ、リリースなどの各フェーズに応じた柔軟なビルド構成が実現できます。


問題 26: CMakeのinstall()でディレクトリ構造を維持する

質問: CMakeのinstall()コマンドを使って、特定のディレクトリ構造を維持しながらファイルをインストールする方法を説明してください。複数のディレクトリやファイルを階層ごとにインストールする例を記述してください。

回答

回答

CMakeの install() コマンドを使って、プロジェクトのディレクトリ構造をそのままインストールするのは、特に次のようなケースで役立ちます:

  1. 画像や音声ファイルなど、アセットの管理
  2. サーバーの静的ファイルをインストールする場合
  3. 複数の設定ファイルを扱うデータ処理やシミュレーション

たとえば、ゲーム開発では、画像や音声、シェーダー、設定ファイルなどをディレクトリ構造のまま保持し、バイナリから同じ相対パスで参照することが求められます。これにより、開発環境と実行環境でパスが異なる問題を防ぎ、ファイルが正しく読み込まれることを保証します。

以下に、複数のディレクトリやファイルを階層ごとにインストールする方法とその設定例を示します。


1. ディレクトリ構成例

以下のようなプロジェクト構成で、アセットファイルのディレクトリ構造を保持しながらインストールする方法を説明します。

/project-root
    ├── CMakeLists.txt
    ├── include/
    │   ├── library/
    │   │   ├── libA.hpp
    │   │   └── libB.hpp
    ├── src/
    │   ├── main.cpp
    │   ├── library/
    │   │   ├── libA.cpp
    │   │   └── libB.cpp
    └── assets/
        ├── images/
        │   ├── logo.png
        │   └── icon.png
        └── sounds/
            └── beep.wav

2. ディレクトリ構造を維持してインストールするCMakeLists.txt の例

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyProject)

# 実行ファイルの作成
add_executable(MyApp src/main.cpp src/library/libA.cpp src/library/libB.cpp)

# バイナリファイルのインストール
install(TARGETS MyApp RUNTIME DESTINATION bin)

# インクルードディレクトリのインストール (ディレクトリ構造を維持)
install(DIRECTORY include/ DESTINATION include)

# アセットディレクトリのインストール (特定のディレクトリ構造を維持)
install(DIRECTORY assets/ DESTINATION share/MyProject
    FILES_MATCHING PATTERN "*.png" PATTERN "*.wav"
)

3. 設定の詳細説明

  • install(TARGETS MyApp RUNTIME DESTINATION bin):

    • MyApp の実行ファイルを bin ディレクトリにインストールします。
    • RUNTIME オプションは、実行可能ファイルに対するインストール先を指定します。
  • install(DIRECTORY include/ DESTINATION include):

    • include/ ディレクトリ内のファイルを、ディレクトリ構造をそのまま保ちながら include/ ディレクトリにインストールします。
    • これにより、たとえば include/library/libA.hpp はインストール先で include/library/libA.hpp というパスで利用できます。
  • install(DIRECTORY assets/ DESTINATION share/MyProject FILES_MATCHING PATTERN "*.png" PATTERN "*.wav"):

    • assets/ ディレクトリ内のファイルを share/MyProject 以下に、ディレクトリ構造を維持してインストールします。
    • FILES_MATCHING: PATTERN "*.png"PATTERN "*.wav" を指定して、.png.wav ファイルのみを選択的にインストールします。
    • これにより、assets/images/logo.pngshare/MyProject/images/logo.png としてインストールされ、ディレクトリ構造が維持されます。

4. 実行ファイルからの参照例

インストール後、相対パスが維持されるため、アセットファイルを以下のように読み込むことが可能です:

#include <opencv2/opencv.hpp>
#include <string>
#include <iostream>

int main() {
    // 実行バイナリからの相対パスで画像を読み込み
    std::string imagePath = "../share/MyProject/images/logo.png";
    cv::Mat image = cv::imread(imagePath, cv::IMREAD_COLOR);

    if (image.empty()) {
        std::cerr << "Could not open or find the image!" << std::endl;
        return -1;
    }

    cv::imshow("Logo", image);
    cv::waitKey(0);
    return 0;
}

このコードでは、バイナリからの相対パス ../share/MyProject/images/logo.png で画像を読み込んでいます。ディレクトリ構造が維持されるため、開発中と同様のパス構造でファイルを参照できます。


5. インストールの実行

# CMakeプロジェクトの構成とビルド
cmake -S . -B build
cmake --build build

# インストールの実行 (インストール先を指定)
cmake --install build --prefix /custom/install/path

このコマンドにより、/custom/install/path/ 以下に指定のディレクトリ構造が保たれた状態でファイルがインストールされます。


まとめ

  • ディレクトリ構造の保持: install(DIRECTORY ...) を使うと、アセットファイルなどを含むプロジェクトのディレクトリ構造をそのままインストールできます。
  • ファイルの選択的インストール: FILES_MATCHING オプションでファイルタイプを指定し、必要なファイルだけをインストール可能です。
  • 実行環境での相対パス参照: インストール後もバイナリからの相対パスが変わらず、開発中と同じ構造でファイル参照が可能です。

このようにすることで、開発環境と実行環境でのパスの一貫性が保たれ、プロジェクトの管理が簡潔でミスが減り、可読性も向上します。


質問: CMakeのtarget_link_libraries()で、PRIVATEPUBLICINTERFACEの違いを説明し、それぞれがどのように依存関係をターゲットに伝播するかを解説してください。具体的に、異なる依存関係の伝播を設定する例を記述してください。

回答

以下に、実行バイナリサイズに関する誤解を防ぎつつ、INTERFACE の効果を詳しく説明するように修正した内容です。


回答

CMakeの target_link_libraries() コマンドにおける PRIVATEPUBLIC、および INTERFACE の違いは、ライブラリの依存関係がどの範囲に伝播するかに影響します。特に INTERFACE は、コンパイル時のみに影響し、リンクや実行時には不要な依存関係を提供する際に便利です。

各キーワードの役割と使用例について以下に説明します。


1. 各キーワードの違い

  • PRIVATE:

    • 指定したライブラリやコンパイルオプションはそのターゲット内でのみ有効。
    • 他のターゲットには依存関係は伝播しません。
  • PUBLIC:

    • 指定したライブラリやコンパイルオプションは、そのターゲットとリンクされる他のターゲットの両方に伝播。
    • 依存関係がターゲット外にも必要な場合に便利です。
  • INTERFACE:

    • 自ターゲットには影響せず、リンク先にのみ依存関係やコンパイルオプションを伝播。
    • 主にヘッダオンリーライブラリや、実行バイナリに不要なインターフェースのみの情報(インクルードパスやコンパイルオプションなど)を提供する際に使います。

以下の例では、3つのターゲット LibALibBApp を使用して、異なるキーワードによる依存関係の伝播の仕組みを示します。

プロジェクト構成

  • LibA:ヘッダオンリーの計算用ライブラリとして定義。
  • LibB:通常のソースコードを含むライブラリで、LibA に依存。
  • App:実行ファイルで、LibB にリンク。

CMakeLists.txt の内容

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(LinkPropagationExample)

# INTERFACEライブラリとしてヘッダオンリーのLibAを定義
add_library(LibA INTERFACE)
target_include_directories(LibA INTERFACE include/LibA)

# PUBLICライブラリとしてLibBを定義し、LibAに依存
add_library(LibB src/LibB.cpp)
target_link_libraries(LibB PUBLIC LibA)
target_include_directories(LibB PUBLIC include/LibB)

# Appを実行ファイルとして定義し、LibBにリンク
add_executable(App src/main.cpp)
target_link_libraries(App PRIVATE LibB)

設定の詳細解説

  1. add_library(LibA INTERFACE):

    • LibA はインターフェースライブラリとして定義され、ソースコードを持たないヘッダオンリーライブラリです。INTERFACE によって他のターゲットにはヘッダファイルのパスのみを提供します。
    • INTERFACE は「リンク時の依存」を追加しないため、App のリンク対象には含まれません。
  2. target_link_libraries(LibB PUBLIC LibA):

    • LibB は通常のライブラリで、LibAPUBLIC で依存します。PUBLIC を使用すると、LibB の依存関係は App にも継承されるため、AppLibA のヘッダファイルを利用できます。
  3. target_link_libraries(App PRIVATE LibB):

    • App は実行ファイルであり、LibBPRIVATE で依存しています。LibB の依存関係にある LibAPUBLIC として設定されているため、間接的に App でも LibA のヘッダファイルを利用できます。

3. インライン化による実行バイナリの影響

LibA がヘッダオンリーライブラリの場合、App において LibA の関数がインライン展開されると、最終バイナリには LibA のコードが組み込まれます。したがって、INTERFACE として LibA をリンクしても、インライン化の影響で実行バイナリのサイズは増加する可能性があります。


4. 依存関係の伝播のまとめ

ターゲット 使用した依存関係のキーワード 依存関係の伝播
LibA INTERFACE LibA のヘッダはリンク先にのみ伝播(リンク対象には含まれない)
LibB PUBLIC LibB および LibALibB のリンク先にも伝播
App PRIVATE LibBApp 内でのみ利用(他には伝播しないが、LibA のヘッダは使用可能)

5. CMakeにおける INTERFACE の目的

INTERFACE の設定により、ヘッダオンリーライブラリを効率的に利用でき、リンクの複雑さを減らせます。実行バイナリに直接リンクされるわけではないため、リンクエラーを避け、必要なコンパイル時情報のみを伝播できる点が INTERFACE のメリットです。

ただし、インライン展開されたコードはバイナリに組み込まれるため、最終バイナリサイズに影響を与えることもあります。このため、INTERFACE はリンクを軽量化する一方で、インライン化やヘッダ依存を意識した設計が重要です。


問題 28: テストの詳細な出力設定

質問: CMakeでテストを定義する際、ctestの出力を詳細に設定する方法を説明してください。ctest --output-on-failureや他のオプションを使って、失敗時に詳細なログを出力する方法を記述してください。

回答

回答

CMakeでテストを定義し、ctestの出力を詳細に設定するには、ctest --output-on-failure や他のオプションを利用します。ctest の出力オプションを使うことで、特にテスト失敗時に詳細なログを表示してデバッグしやすくすることができます。

以下に、詳細なテスト出力を得るためのオプションと設定方法を説明します。


1. ctest --output-on-failure の利用

ctest --output-on-failure オプションは、テストが失敗した場合にのみそのテストの詳細な出力を表示します。成功したテストの出力は表示されません。

利用例

以下のコマンドで、失敗したテストに対してのみ詳細な出力を得ることができます。

ctest --output-on-failure

これにより、失敗したテストの標準出力や標準エラーが表示され、どこで失敗したかが確認しやすくなります。


2. ctest --verbose で詳細なテスト出力

--verbose オプションを使うと、すべてのテストの詳細な出力が表示されます。テストが成功した場合でも、そのテストの実行内容がすべて出力されます。

利用例

ctest --verbose

このオプションは、テストの実行内容を確認したい場合や、すべてのテストのログを確認したい場合に便利です。


3. ctest --output-log でログファイルを指定する

ctest --output-log を使うと、テストの出力を指定したログファイルに保存できます。これにより、長時間のテストや複数回にわたるテストの詳細なログをファイルに残すことができます。

利用例

ctest --output-on-failure --output-log test_output.log

このコマンドは、失敗時の出力を表示するだけでなく、すべてのテスト出力を test_output.log に保存します。出力内容が長い場合や、後から結果を確認したい場合に有効です。


4. CMakeLists.txt 内で ctest のオプションを設定する

CMakeプロジェクトにおいて、テスト実行時に常に詳細な出力を表示させるために、CMakeLists.txtctest オプションを設定できます。

例: add_custom_targetctest --output-on-failure を設定

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyProject)

# テストの有効化
enable_testing()

# テストを追加
add_executable(MyTest tests/test_main.cpp)
add_test(NAME MyTest COMMAND MyTest)

# ビルド後にテストを実行し、失敗時に詳細な出力を表示するターゲットを追加
add_custom_target(run_tests
    COMMAND ${CMAKE_CTEST_COMMAND} --output-on-failure
    DEPENDS MyTest
    COMMENT "Running tests with detailed output on failure"
)

この設定により、run_tests ターゲットを実行すると、ctest --output-on-failure が呼び出され、失敗したテストのみ詳細な出力が表示されます。


5. その他の便利な ctest オプション

  • ctest --repeat until-fail:N: テストが失敗するまでテストを繰り返します(N 回繰り返したら終了)。
  • ctest --parallel N: テストを並列で実行し、テスト時間を短縮します(N は並列実行数)。
  • ctest --stop-on-failure: 最初に失敗したテストでテストを停止します。

まとめ

  • ctest --output-on-failure: 失敗したテストに対してのみ詳細な出力を表示します。
  • ctest --verbose: すべてのテストの詳細な出力を表示し、成功・失敗に関わらずすべてのテストの実行内容を確認できます。
  • ctest --output-log: テストの詳細な出力をファイルに保存できます。
  • CMakeLists.txt の add_custom_target で詳細な出力を指定: プロジェクト内で常に特定の ctest オプションを使うように設定できます。

これらのオプションを組み合わせることで、CMakeのテストにおいて詳細な出力が得られ、デバッグやテスト結果の解析が容易になります。


問題 29: Config.cmakeファイルの役割と作成

質問: Config.cmakeファイルの役割を説明し、独自のライブラリでConfig.cmakeファイルを作成して、find_package()で使用できるようにする方法を記述してください。具体的に、インクルードディレクトリやリンクライブラリを設定する例を示してください。

回答

回答

Config.cmake ファイルは、CMakeで他のプロジェクトから find_package() でライブラリを検索し、インクルードディレクトリやリンクライブラリなどの設定を提供するためのファイルです。このファイルを作成し、インストール時に適切な場所へ配置することで、他のプロジェクトが簡単にライブラリを見つけて使用できるようになります。特に、@PACKAGE_INIT@ プレースホルダーを使うと、依存関係の解決や初期化処理が自動で挿入され、ライブラリの使用がさらに簡単になります。

以下に、Config.cmake ファイルの役割、作成方法、および具体的な設定方法について説明します。


1. Config.cmake ファイルの役割

Config.cmake ファイルは、CMakeの find_package() コマンドが呼び出されたときに、ライブラリの場所や依存関係を提供するために使われます。これにより、インクルードディレクトリ、リンクするライブラリ、必要なコンパイルオプションなどをプロジェクトに伝えることができます。

  • 役割:
    • ライブラリの検索: find_package() がライブラリを見つけるのを支援。
    • インクルードパスやリンクライブラリの設定: 他のプロジェクトに対して、ライブラリのインクルードディレクトリやリンクする必要があるターゲットを提供。
    • 依存関係の自動解決: @PACKAGE_INIT@ を使うことで、依存するライブラリを find_dependency() を使って自動的に解決します。
    • バージョン管理: 使用するライブラリのバージョンが特定の範囲内であるか確認。

2. Config.cmake ファイルの作成手順

ここでは、MyLibrary という独自のライブラリの Config.cmake ファイルを作成し、find_package(MyLibrary) で利用できるようにします。

ディレクトリ構成

/project-root
    ├── CMakeLists.txt
    ├── include/
    │   └── MyLibrary.hpp
    ├── src/
    │   └── MyLibrary.cpp
    └── MyLibraryConfig.cmake.in

CMakeLists.txt の内容

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyLibrary VERSION 1.0)

# ライブラリの作成
add_library(MyLibrary src/MyLibrary.cpp)
target_include_directories(MyLibrary PUBLIC include)

# インストールの設定
install(TARGETS MyLibrary
    EXPORT MyLibraryTargets
    ARCHIVE DESTINATION lib
    LIBRARY DESTINATION lib
    RUNTIME DESTINATION bin
    INCLUDES DESTINATION include
)

# Configファイルの生成とインストール
include(CMakePackageConfigHelpers)
write_basic_package_version_file(
    "${CMAKE_CURRENT_BINARY_DIR}/MyLibraryConfigVersion.cmake"
    VERSION ${PROJECT_VERSION}
    COMPATIBILITY AnyNewerVersion
)

configure_file(MyLibraryConfig.cmake.in MyLibraryConfig.cmake @ONLY)
install(FILES
    "${CMAKE_CURRENT_BINARY_DIR}/MyLibraryConfig.cmake"
    "${CMAKE_CURRENT_BINARY_DIR}/MyLibraryConfigVersion.cmake"
    DESTINATION lib/cmake/MyLibrary
)

# エクスポートファイルのインストール
install(EXPORT MyLibraryTargets
    FILE MyLibraryTargets.cmake
    NAMESPACE MyLibrary::
    DESTINATION lib/cmake/MyLibrary
)

3. MyLibraryConfig.cmake.in ファイルの内容

MyLibraryConfig.cmake.in はプレースホルダーが含まれたテンプレートファイルで、configure_file() によって生成される MyLibraryConfig.cmake ファイルの基となります。特に @PACKAGE_INIT@ を使うことで、依存関係が自動的に解決されるため、他のライブラリに依存する場合に便利です。

MyLibraryConfig.cmake.in の内容

@PACKAGE_INIT@

include("${CMAKE_CURRENT_LIST_DIR}/MyLibraryTargets.cmake")

# インクルードパスとターゲットの設定
set(MyLibrary_INCLUDE_DIRS "@CMAKE_INSTALL_PREFIX@/include")
set(MyLibrary_LIBRARIES MyLibrary::MyLibrary)
  • @PACKAGE_INIT@: CMakeにより自動的に初期化され、パッケージに必要な初期設定が含まれます。例えば、MyLibraryBoost に依存している場合、以下のコードが自動的に追加されます:

    include(CMakeFindDependencyMacro)
    find_dependency(Boost REQUIRED)
    

    これにより、依存関係の解決が自動で行われ、エラーを防ぐことができます。

  • include("${CMAKE_CURRENT_LIST_DIR}/MyLibraryTargets.cmake"): インストールされた MyLibraryTargets.cmake を読み込むことで、MyLibrary::MyLibrary というターゲットを他のプロジェクトで利用可能にします。


4. 他のプロジェクトで find_package() を使用する

インストール後、他のプロジェクトで MyLibraryfind_package() で検索し、インクルードディレクトリやリンク設定を簡単に行えるようになります。

他プロジェクトの CMakeLists.txt の内容

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(UsingMyLibrary)

# MyLibrary を検索
find_package(MyLibrary REQUIRED)

# MyApp 実行ファイルの作成
add_executable(MyApp main.cpp)

# MyLibrary をリンク
target_link_libraries(MyApp PRIVATE MyLibrary::MyLibrary)
  • find_package(MyLibrary REQUIRED): インストールされた MyLibraryConfig.cmake により、MyLibrary のインクルードパスやリンク設定が自動で適用されます。
  • target_link_libraries(MyApp PRIVATE MyLibrary::MyLibrary): 他のプロジェクトで MyLibrary をリンクし、MyLibrary のインクルードディレクトリや依存関係が MyApp に自動的に追加されます。

5. インストールとテスト

  1. インストール:

    cmake -S . -B build
    cmake --build build
    cmake --install build --prefix /path/to/install
    
  2. インストールされたライブラリを他のプロジェクトで利用:
    /path/to/install がインストール先の場合、他のプロジェクトで以下のように使用します。

    list(APPEND CMAKE_PREFIX_PATH "/path/to/install")
    find_package(MyLibrary REQUIRED)
    

まとめ

  • Config.cmake の役割: find_package() を通じて、ライブラリのインクルードパスやリンク設定を他のプロジェクトに提供。
  • MyLibraryConfig.cmake.in: プレースホルダーを含むテンプレートファイルを利用し、インストール時に Config.cmake ファイルを生成。
    • @PACKAGE_INIT@ の役割:依存関係がある場合に自動で依存ライブラリを解決するコードを挿入し、手動で依存関係を追加する手間を省略。
  • 他のプロジェクトで利用: find_package(MyLibrary) により、インストールされたライブラリが他のプロジェクトで利用可能になる。

この設定により、独自のライブラリをCMakeで標準的な方法で提供でき、他のプロジェクトが依存関係として簡単にインポートできるようになります。


問題 30: find_library()find_package()の使い分け

質問: find_library()find_package()の違いを説明し、それぞれを使用すべき具体的なケースを挙げてください。また、どのようにこれらを使ってプロジェクトにライブラリをリンクするかを記述してください。

回答

回答

find_library()find_package() は、CMakeで外部ライブラリをプロジェクトにリンクするために使用するコマンドですが、それぞれの用途と役割が異なります。


1. find_library()find_package() の違い

コマンド 用途・特徴
find_library() ライブラリファイル(libname.so, libname.a など)を直接検索するコマンド。ライブラリの名前やパスを探すのに特化。
find_package() ライブラリやパッケージ全体の設定を検索し、必要に応じて Config.cmakeFind<Package>.cmake などの設定ファイルをロードするコマンド。
検索範囲や依存関係が複雑なライブラリに適しています。
  • find_library() は、指定したライブラリファイルのみを探します。ライブラリのリンクパスやインクルードディレクトリの情報は得られないため、これらは手動で設定する必要があります。
  • find_package() は、CMakeの設定ファイル(Config.cmake など)を通してライブラリやインクルードディレクトリ、依存関係の情報をまとめて取得します。多くのライブラリは、find_package() で利用できるようにCMake設定ファイルを用意しています。

2. 使用すべきケース

find_library() を使用するケース

  • ライブラリファイルのパスを直接指定したい場合。
  • CMakeの設定ファイルが提供されていない単純なライブラリの場合。
  • ライブラリのリンクだけで十分なケース(例: シンプルな .so.a ファイル)。

例: find_library() を使ったケース

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(UsingSimpleLib)

# ライブラリファイルを探す
find_library(SIMPLE_LIB NAMES simplelib PATHS /usr/local/lib)

# ライブラリが見つからない場合はエラーメッセージを出力
if(NOT SIMPLE_LIB)
    message(FATAL_ERROR "simplelib not found")
endif()

# インクルードディレクトリを手動で指定
include_directories(/usr/local/include)

# 実行ファイルの作成
add_executable(MyApp main.cpp)

# ライブラリのリンク
target_link_libraries(MyApp PRIVATE ${SIMPLE_LIB})
  • この例では、simplelib という名前のライブラリファイルを /usr/local/lib に探し、見つかった場合に MyApp にリンクしています。
  • 注意点: find_library() ではインクルードパスが自動的に提供されないため、include_directories() を使って手動で設定する必要があります。

find_package() を使用するケース

  • インクルードパス、リンクライブラリ、依存関係の情報が必要な場合。
  • Config.cmakeFind<Package>.cmake ファイルが提供されている場合。
  • 多くのコンポーネントからなるライブラリや複雑な依存関係を持つライブラリ(例: Boost、OpenCV)。

例: find_package() を使ったケース

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(UsingBoost)

# Boostライブラリを探す
find_package(Boost REQUIRED COMPONENTS filesystem system)

# Boostが見つからない場合はエラーメッセージを出力
if(NOT Boost_FOUND)
    message(FATAL_ERROR "Boost library not found")
endif()

# 実行ファイルの作成
add_executable(MyApp main.cpp)

# Boostライブラリのリンク
target_link_libraries(MyApp PRIVATE Boost::filesystem Boost::system)
  • この例では、Boostの filesystemsystem ライブラリを find_package() で検索し、MyApp にリンクしています。
  • find_package() により、Boostの Config.cmake ファイルが読み込まれ、Boost::filesystemBoost::system としてターゲットが定義されます。
  • メリット: インクルードディレクトリやリンクオプションが自動的に設定されるため、手動で設定する必要がありません。

3. プロジェクトにライブラリをリンクする方法

find_library() を使ってプロジェクトにリンクする場合

ライブラリファイルのパスを見つけ、手動でリンクする例です。

# ライブラリを探して手動でリンク
find_library(SIMPLE_LIB NAMES simplelib PATHS /usr/local/lib)

# ライブラリが見つかったらリンクに追加
if(SIMPLE_LIB)
    target_link_libraries(MyApp PRIVATE ${SIMPLE_LIB})
else()
    message(FATAL_ERROR "simplelib not found")
endif()
  • 注意点: include_directories() でインクルードパスを設定する必要があります。

find_package() を使ってプロジェクトにリンクする場合

find_package() でライブラリを検索し、提供されるターゲットを直接リンクします。

# ライブラリ全体を検索してリンク
find_package(OpenCV REQUIRED)

# OpenCVが見つかったらリンクに追加
if(OpenCV_FOUND)
    target_link_libraries(MyApp PRIVATE ${OpenCV_LIBS})
else()
    message(FATAL_ERROR "OpenCV not found")
endif()
  • 利点: OpenCV_LIBS には、インクルードディレクトリ、リンクするライブラリ、依存関係などが自動的に設定されています。

まとめ

  • find_library(): 単純なライブラリファイルのみを探し、手動でインクルードパスやリンク設定を追加する場合に使用。
  • find_package(): より複雑なライブラリや依存関係があるライブラリに対して、インクルードパス、リンクオプション、依存関係をまとめて提供する場合に使用。

これらを使い分けることで、プロジェクトに応じた適切なライブラリのリンク設定を行うことができます。


問題 31: target_include_directories()include_directories()の違い

質問: target_include_directories()include_directories()の違いを説明し、それぞれの使いどころを解説してください。特に、ターゲットごとの設定が必要な場合にどのように使用するかを例を交えて記述してください。

回答

回答

target_include_directories()include_directories() は、どちらもCMakeでインクルードディレクトリを設定するために使用しますが、適用範囲や管理のしやすさが異なります。

  • target_include_directories(): 特定のターゲットにのみインクルードディレクトリを指定するためのコマンドです。ターゲットごとにアクセス範囲を制御でき、モダンなCMakeで推奨される方法です。
  • include_directories(): グローバルに適用され、すべてのターゲットで共通のインクルードディレクトリを指定します。設定の柔軟性が低く、プロジェクトが大きくなると依存関係がわかりにくくなるため、特定の用途以外では推奨されません。

また、これらのコマンドは コンパイル時に必要なインクルードパスを設定するためのものであり、実行ファイルのサイズや実行速度には直接影響しません


1. target_include_directories() の使いどころ

target_include_directories() は、ターゲットごとにインクルードディレクトリを設定でき、依存関係が複雑になるプロジェクトでも柔軟に管理できます。さらに、PRIVATEPUBLICINTERFACE のキーワードを使ってインクルードディレクトリの伝播範囲を柔軟に指定できます。

例: ターゲットに特化したインクルードディレクトリの設定

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyProject)

# ライブラリの作成
add_library(MyLibrary src/MyLibrary.cpp)
target_include_directories(MyLibrary PUBLIC include/MyLibrary)

# 実行ファイルの作成
add_executable(MyApp src/main.cpp)
target_include_directories(MyApp PRIVATE include/MyApp)

# MyAppにMyLibraryをリンク
target_link_libraries(MyApp PRIVATE MyLibrary)
  • target_include_directories(MyLibrary PUBLIC include/MyLibrary):

    • MyLibrary に対するインクルードディレクトリとして include/MyLibrary を設定。
    • PUBLIC キーワードにより、MyLibrary をリンクするターゲット(MyApp)にもこのインクルードディレクトリが適用されます。
  • target_include_directories(MyApp PRIVATE include/MyApp):

    • MyApp のみに include/MyApp ディレクトリが適用され、他のターゲットには影響しません。

この設定で、MyLibrary のヘッダファイルは MyApp からもインクルードできる一方で、include/MyAppMyApp にのみ適用されます。


2. include_directories() の使いどころ

include_directories() は、プロジェクト全体で共通のインクルードディレクトリを設定する場合に使われます。ただし、大規模プロジェクトではどのターゲットがどのディレクトリを使用しているかが不明確になるため、依存関係の管理が難しくなります。

例: グローバルにインクルードディレクトリを設定

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyProject)

# プロジェクト全体にインクルードディレクトリを設定
include_directories(include)

# ライブラリと実行ファイルの作成
add_library(MyLibrary src/MyLibrary.cpp)
add_executable(MyApp src/main.cpp)

# MyAppにMyLibraryをリンク
target_link_libraries(MyApp PRIVATE MyLibrary)
  • include_directories(include):
    • プロジェクト全体で include ディレクトリをインクルードパスとして設定。
    • MyLibraryMyApp のすべてのソースファイルでこのインクルードディレクトリが使用可能です。

この設定は、小規模プロジェクトには便利ですが、ターゲットごとの管理がしにくいため、依存関係が複雑なプロジェクトには適していません。


3. target_include_directories() を使った詳細な設定

target_include_directories() は、依存関係が明確にわかるように、ターゲットごとにインクルードディレクトリを設定し、柔軟に適用範囲を制御できます。

例: PRIVATEPUBLICINTERFACE の違い

# ライブラリAの作成
add_library(LibA src/LibA.cpp)
target_include_directories(LibA PUBLIC include/LibA)

# ライブラリBの作成 (LibAに依存)
add_library(LibB src/LibB.cpp)
target_include_directories(LibB PRIVATE include/LibB)
target_link_libraries(LibB PUBLIC LibA)

# 実行ファイルの作成 (LibBに依存)
add_executable(MyApp src/main.cpp)
target_link_libraries(MyApp PRIVATE LibB)
  • target_include_directories(LibA PUBLIC include/LibA):

    • LibA に対するインクルードディレクトリとして include/LibA を設定し、LibA に依存するターゲット(ここでは LibBMyApp)にも include/LibA が伝播されます。
  • target_include_directories(LibB PRIVATE include/LibB):

    • LibB にのみ include/LibB が適用され、LibB に依存する MyApp には伝播されません。

まとめ

コマンド 使いどころ
target_include_directories() ターゲットにのみインクルードディレクトリを設定。ターゲットごとに柔軟に範囲を制御できるため、モダンCMakeで推奨。依存関係の伝播も可能。
include_directories() プロジェクト全体に適用するインクルードディレクトリを設定。すべてのターゲットが同じインクルードパスを共有する小規模プロジェクトや一時的な用途に適している。
  • 小規模で単純なプロジェクトには include_directories() が適していますが、依存関係が複雑なプロジェクトライブラリ間の依存関係を明確に管理したい場合には target_include_directories() が推奨されます。

質問: target_link_directories()find_library()の使い方を説明し、ライブラリが標準パス以外にある場合にどのようにCMakeにそのパスを伝えるかを記述してください。また、これらの使い方の違いについても解説してください。

回答

回答

target_link_directories()find_library() は、CMakeでライブラリのパスを設定する際に使用しますが、それぞれの目的や使い方が異なります。

  • target_link_directories(): 特定のターゲットに対して、リンク時に使用するディレクトリを指定します。
  • find_library(): 指定した名前のライブラリファイルを検索し、見つかったライブラリのパスを取得します。

標準パス以外にあるライブラリを使用する場合は、これらのコマンドを組み合わせたり、検索範囲を指定してCMakeにそのパスを伝えることができます。


target_link_directories() は、特定のターゲットに対してリンク時に使用するディレクトリを指定します。このコマンドを使うと、指定したターゲットがリンク時に使用するライブラリディレクトリを柔軟に管理できます。

基本的な使用例

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyProject)

# 実行ファイルの作成
add_executable(MyApp src/main.cpp)

# MyAppに対してリンクディレクトリを設定
target_link_directories(MyApp PRIVATE /custom/path/to/libs)
  • target_link_directories(MyApp PRIVATE /custom/path/to/libs):
    • MyApp のリンク時に /custom/path/to/libs ディレクトリを検索するように指定しています。
    • PRIVATE キーワードにより、この設定は MyApp にのみ適用され、他のターゲットには影響しません。

2. find_library() の使い方

find_library() は、指定した名前のライブラリファイルを検索し、そのパスを変数に格納します。ライブラリの名前やパスを指定することで、特定のライブラリファイルを見つけやすくなります。

基本的な使用例

# カスタムパスで "mylibrary" というライブラリを検索
find_library(MY_LIBRARY NAMES mylibrary PATHS /custom/path/to/libs)

# ライブラリが見つかったか確認し、見つからなければエラーを表示
if(NOT MY_LIBRARY)
    message(FATAL_ERROR "mylibrary not found in specified path.")
endif()

# 実行ファイルにライブラリをリンク
add_executable(MyApp src/main.cpp)
target_link_libraries(MyApp PRIVATE ${MY_LIBRARY})
  • find_library(MY_LIBRARY NAMES mylibrary PATHS /custom/path/to/libs):
    • mylibrary という名前のライブラリを /custom/path/to/libs ディレクトリ内で検索します。
    • 見つかった場合、MY_LIBRARY 変数にライブラリの完全パスが格納されます。
    • 見つからなければ、MY_LIBRARY は空のままなので、if(NOT MY_LIBRARY) を使ってエラーチェックが可能です。

3. 標準パス以外にあるライブラリのパスをCMakeに伝える方法

ライブラリが標準パス以外にある場合、target_link_directories() または find_library() を使用して、CMakeにライブラリの存在場所を知らせます。

target_link_directories(MyApp PRIVATE /custom/path/to/libs)
target_link_libraries(MyApp PRIVATE mylibrary)
  • この方法では、リンクするディレクトリの場所を target_link_directories() に指定し、その後で target_link_libraries() を使ってリンクするライブラリ名(例: mylibrary)を指定します。

方法 2: find_library() を使ってライブラリのフルパスを取得

find_library(MY_LIBRARY NAMES mylibrary PATHS /custom/path/to/libs)
if(NOT MY_LIBRARY)
    message(FATAL_ERROR "mylibrary not found.")
endif()
target_link_libraries(MyApp PRIVATE ${MY_LIBRARY})
  • この方法では、find_library() によってライブラリのフルパスが格納された MY_LIBRARY 変数を target_link_libraries() でリンクします。

機能 target_link_directories() find_library()
適用範囲 特定のターゲットのみにリンクディレクトリを設定 グローバルにライブラリを検索してパスを取得
使用目的 リンク時のディレクトリパスを指定 ライブラリファイルのパスを取得
カスタムディレクトリでのリンク先設定 特定の名前のライブラリを探してリンク
適したケース 特定ターゲットに限定したリンクディレクトリが必要な場合 ライブラリの場所を直接取得したい場合
CMakeによるサポート モダンCMakeのターゲット指向に基づく柔軟なリンク設定が可能 より古くからあるシンプルなパス検索

まとめ

  • target_link_directories(): 特定のターゲットに対して、リンク時に使用するディレクトリを設定します。モダンなCMakeのターゲット指向アプローチに基づく柔軟な設定が可能です。
  • find_library(): 指定した名前のライブラリを検索し、そのパスを取得して利用する際に使用します。簡単にライブラリのパスを変数に格納でき、手動でパスを指定したい場合に適しています。

それぞれのコマンドを活用することで、標準パス以外のディレクトリにあるライブラリに柔軟にリンクできるようになり、プロジェクトの依存関係を効率的に管理できます。


問題 33: 外部ライブラリのConfig.cmakeファイルが見つからない場合の対処法

質問: CMakeプロジェクトでfind_package()を使って外部ライブラリを検索している際に、Config.cmakeファイルが見つからない場合、どのようにして問題を解決できますか?CMAKE_PREFIX_PATHの使い方やパッケージのインストール場所の指定方法について説明してください。

回答

回答

CMakeプロジェクトで find_package() を使って外部ライブラリを検索している際、Config.cmake ファイルが見つからない場合は、CMakeの検索パスにインストール場所を指定して、CMakeが Config.cmake ファイルを探せるようにする必要があります。これには CMAKE_PREFIX_PATH を使います。

以下に、具体的な解決方法を説明します。


1. CMAKE_PREFIX_PATH の使い方

CMAKE_PREFIX_PATH は、CMakeが find_package() で外部ライブラリを検索する際に使用するディレクトリのリストを指定する変数です。ライブラリのインストール先が標準のパス(例: /usr/local/usr)以外の場合、CMAKE_PREFIX_PATH にパスを追加することで、CMakeにインストール場所を教えることができます。

使用例

cmake -DCMAKE_PREFIX_PATH=/path/to/custom/install ..
  • ここで指定する /path/to/custom/install は、パッケージがインストールされたディレクトリのパスです。
  • 注意点: CMAKE_PREFIX_PATH に指定するパスは、ライブラリが格納されている具体的なディレクトリ(/path/to/custom/install/lib/cmake など)ではなく、ライブラリ全体のインストールルートです。

複数のパスを指定する場合

複数のパスを指定したい場合は、リスト形式で指定します。

cmake -DCMAKE_PREFIX_PATH="/path/to/first;/path/to/second" ..

2. CMakeLists.txt で CMAKE_PREFIX_PATH を設定する

CMakeLists.txt 内で直接 CMAKE_PREFIX_PATH を設定して、プロジェクトを構成する方法もあります。この方法は、ビルドシステムに設定を含めるため、毎回コマンドラインで指定する必要がなくなります。

CMakeLists.txt に設定を追加

# 外部ライブラリのインストールパスを設定
set(CMAKE_PREFIX_PATH "/path/to/custom/install" ${CMAKE_PREFIX_PATH})

# ライブラリを検索
find_package(MyLibrary REQUIRED)

この設定を加えることで、find_package(MyLibrary)/path/to/custom/install 内を検索するようになります。


3. find_package() の検索プロセスとインストール場所の指定

CMakeの find_package() は、次の順序で Config.cmake ファイルを検索します。

  1. 標準パス: /usr/local/, /usr/ などの標準のインストールパス。
  2. CMAKE_PREFIX_PATH で指定されたパス。
  3. CMAKE_MODULE_PATH で指定されたパス(CMakeモジュールの検索パス)。

このため、標準パス以外にインストールしたパッケージを使う場合には、CMAKE_PREFIX_PATH でインストール場所を指定することで解決できます。


4. Config.cmake ファイルが存在しない場合の対処法

Config.cmake ファイルが提供されていない場合には、Find<Package>.cmake を自作するか、代替のパッケージ管理ツール(例: vcpkg, Conan)を使用してパッケージを管理することも検討できます。

  • 自作の Find<Package>.cmake:

    • CMakeのモジュールディレクトリ(通常 CMAKE_MODULE_PATH に追加)に、自作の Find<Package>.cmake ファイルを置き、パスや設定を記述します。
  • パッケージ管理ツールを利用する:

    • vcpkgConan などのツールを使うと、CMakeプロジェクトの依存関係として外部ライブラリを管理しやすくなり、各ツールが自動で必要な設定をCMakeに適用します。

5. find_package()HINTS オプションを使ってパスを指定

find_package()HINTS オプションを使って、特定のパスを直接指定することも可能です。

find_package(MyLibrary HINTS /path/to/custom/install)
  • HINTS: CMAKE_PREFIX_PATH と同様に、指定されたパスを優先的に検索するようCMakeに指示します。

まとめ

  • CMAKE_PREFIX_PATH: Config.cmake ファイルの検索パスを指定。標準パス以外にある外部ライブラリのインストール先をCMakeに伝える際に使用します。
  • CMAKE_MODULE_PATHFind<Package>.cmake: 自作の Find<Package>.cmake を作成し、モジュールディレクトリに追加することで、CMakeがパッケージを認識できるようにします。
  • パッケージ管理ツール: vcpkgConan を利用すると、依存関係の管理が簡単になり、ライブラリの取得と設定が容易になります。

このようにして、標準パス以外にある外部ライブラリの検索をCMakeに正しく伝え、find_package() での検索に成功できるようにします。


問題 34: 自作ライブラリのパッケージ化と再利用

質問: 自作のライブラリをConfig.cmakeファイルと共にパッケージ化し、他のプロジェクトで再利用できるようにするにはどうすれば良いですか?install(EXPORT)を使ったCMakeの設定方法を記述し、find_package()で再利用する流れを説明してください。

回答

回答

自作のライブラリを Config.cmake ファイルと共にパッケージ化し、他のプロジェクトで find_package() で再利用できるようにするには、CMakeの install() コマンドと install(EXPORT) を使います。これにより、ライブラリのインストール時にターゲット情報やインクルードパス、リンク情報を含む Config.cmake ファイルが生成され、他のプロジェクトから簡単に利用できるようになります。

以下に、パッケージ化のための具体的な設定方法と find_package() を通じた再利用の流れを説明します。


1. ディレクトリ構成

以下のような構成のプロジェクトを例に、Config.cmake ファイルを生成してインストールする設定を行います。

/project-root
    ├── CMakeLists.txt
    ├── include/
    │   └── MyLibrary.hpp
    └── src/
        └── MyLibrary.cpp

2. CMakeLists.txt にパッケージ化の設定を追加

CMakeLists.txt で、ライブラリのインストールに必要な install()install(EXPORT) の設定を行います。

CMakeLists.txt の設定例

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(MyLibrary VERSION 1.0)

# ライブラリの作成
add_library(MyLibrary src/MyLibrary.cpp)
target_include_directories(MyLibrary PUBLIC include)

# インストールの設定
install(TARGETS MyLibrary
    EXPORT MyLibraryTargets                    # エクスポートターゲットを指定
    ARCHIVE DESTINATION lib                    # ライブラリのインストール先
    LIBRARY DESTINATION lib                    # 動的ライブラリのインストール先
    RUNTIME DESTINATION bin                    # 実行ファイルのインストール先
    INCLUDES DESTINATION include               # インクルードディレクトリのインストール先
)

# インクルードディレクトリのインストール
install(DIRECTORY include/ DESTINATION include)

# エクスポート設定ファイルのインストール
install(EXPORT MyLibraryTargets
    FILE MyLibraryTargets.cmake                # エクスポートファイル名
    NAMESPACE MyLibrary::                      # 名前空間の設定
    DESTINATION lib/cmake/MyLibrary            # インストール先ディレクトリ
)

# Configファイルの生成とインストール
include(CMakePackageConfigHelpers)
write_basic_package_version_file(
    "${CMAKE_CURRENT_BINARY_DIR}/MyLibraryConfigVersion.cmake"
    VERSION ${PROJECT_VERSION}
    COMPATIBILITY AnyNewerVersion
)

configure_file(MyLibraryConfig.cmake.in MyLibraryConfig.cmake @ONLY)
install(FILES
    "${CMAKE_CURRENT_BINARY_DIR}/MyLibraryConfig.cmake"
    "${CMAKE_CURRENT_BINARY_DIR}/MyLibraryConfigVersion.cmake"
    DESTINATION lib/cmake/MyLibrary
)

設定の解説

  1. add_library(MyLibrary src/MyLibrary.cpp):

    • 自作ライブラリ MyLibrary を作成します。
  2. install(TARGETS MyLibrary EXPORT MyLibraryTargets ...):

    • MyLibrary ライブラリをインストールし、EXPORT MyLibraryTargets でエクスポートターゲットとして設定します。
    • これにより、インストール後に他のプロジェクトが MyLibraryTargets.cmake を使って MyLibrary をリンクできるようになります。
  3. install(EXPORT MyLibraryTargets FILE MyLibraryTargets.cmake ...):

    • エクスポート設定ファイル MyLibraryTargets.cmake を生成してインストールします。
    • NAMESPACE オプションで MyLibrary:: 名前空間を指定することで、他のプロジェクトで MyLibrary::MyLibrary として使用できます。
  4. Configファイルの生成とインストール:

    • write_basic_package_version_file() で、バージョン情報が含まれた MyLibraryConfigVersion.cmake ファイルを生成します。
    • configure_file() により、MyLibraryConfig.cmake.in テンプレートを基に MyLibraryConfig.cmake を生成します。

3. MyLibraryConfig.cmake.in テンプレートの内容

MyLibraryConfig.cmake.inconfigure_file() によって変換され、MyLibraryConfig.cmake として保存されます。

MyLibraryConfig.cmake.in の内容

@PACKAGE_INIT@

include("${CMAKE_CURRENT_LIST_DIR}/MyLibraryTargets.cmake")

# インクルードディレクトリとライブラリターゲットを設定
set(MyLibrary_INCLUDE_DIRS "@CMAKE_INSTALL_PREFIX@/include")
set(MyLibrary_LIBRARIES MyLibrary::MyLibrary)
  • @PACKAGE_INIT@: CMakeによる初期化処理が入ります。
  • include("${CMAKE_CURRENT_LIST_DIR}/MyLibraryTargets.cmake"): エクスポートされた MyLibraryTargets.cmake をインクルードし、ターゲット情報を利用可能にします。
  • set(MyLibrary_INCLUDE_DIRS ...): インクルードディレクトリとターゲット変数 MyLibrary_LIBRARIES を設定します。

4. インストールとパッケージの利用

1. インストール

ビルドとインストールを行います。CMAKE_INSTALL_PREFIX を指定してインストール先を設定できます。

cmake -S . -B build
cmake --build build
cmake --install build --prefix /path/to/install

2. 他のプロジェクトでの使用

インストールが完了すると、他のプロジェクトで以下のようにして find_package() を使って MyLibrary を利用できます。

cmake_minimum_required(VERSION 3.10)
project(UsingMyLibrary)

# CMAKE_PREFIX_PATH にパッケージのインストールパスを指定
list(APPEND CMAKE_PREFIX_PATH "/path/to/install")

# MyLibrary を検索
find_package(MyLibrary REQUIRED)

# 実行ファイルを作成し、MyLibrary をリンク
add_executable(MyApp main.cpp)
target_link_libraries(MyApp PRIVATE MyLibrary::MyLibrary)
  • list(APPEND CMAKE_PREFIX_PATH "/path/to/install"): /path/to/install ディレクトリにインストールされたパッケージを検索するため、CMAKE_PREFIX_PATH にインストール先のパスを追加します。
  • find_package(MyLibrary REQUIRED): MyLibraryConfig.cmake が読み込まれ、MyLibrary::MyLibrary ターゲットが使用可能になります。
  • target_link_libraries(MyApp PRIVATE MyLibrary::MyLibrary): MyLibrary をリンクすることで、MyApp に必要な設定が自動で適用されます。

まとめ

  • install(EXPORT) を使ってターゲット情報をエクスポートし、Config.cmake ファイルと一緒にインストールすることで、他のプロジェクトが find_package() を使って自作ライブラリを再利用できるようにする。
  • CMAKE_PREFIX_PATH を使用してインストールパスを指定することで、標準パス以外にインストールされたパッケージも find_package() で検索可能にする。
  • find_package() を利用したライブラリの再利用により、他のプロジェクトで簡単にリンク設定やインクルードパスが適用されます。

この設定により、自作のライブラリを簡単にパッケージ化して再利用でき、他のプロジェクトでも一貫して使用できます。


問題 35: find_package()のオプション指定

質問: find_package()にはREQUIREDOPTIONALなどのオプションがありますが、これらのオプションの違いを説明し、必要に応じてライブラリの有無で処理を分岐させる方法を記述してください。

回答

回答

CMakeの find_package() には REQUIREDOPTIONAL というオプションがあり、これらはライブラリが見つからなかった場合の処理を指定するためのものです。それぞれのオプションにより、ライブラリが見つからない際の動作が異なります。

  • REQUIRED: ライブラリが見つからない場合、エラーメッセージを出力してビルドを中断します。
  • OPTIONAL: ライブラリが見つからなくてもエラーとはせず、ビルドを続行します。ライブラリがない場合の処理をユーザーがコントロールできます。

これにより、必須のライブラリと任意のライブラリを柔軟に管理することができます。


1. REQUIREDOPTIONAL の違い

REQUIRED の例

REQUIRED オプションを使用すると、ライブラリが見つからない場合にビルドが中断されます。

find_package(MyLibrary REQUIRED)
  • REQUIRED を指定することで、MyLibrary が見つからなかった場合にエラーメッセージが表示され、ビルドが停止します。
  • 必須の依存ライブラリが見つからないときにビルドを続行したくない場合に使用します。

OPTIONAL の例

OPTIONAL を使用するには、find_package() のコマンド自体に明示的にオプションを指定しないことで実現します。通常、find_package() でライブラリが見つからなかった場合、エラーにはなりません。見つからない場合の処理を条件分岐して記述できます。

find_package(MyOptionalLibrary)

if(MyOptionalLibrary_FOUND)
    message(STATUS "MyOptionalLibrary was found")
else()
    message(STATUS "MyOptionalLibrary was not found, proceeding without it")
endif()
  • MyOptionalLibrary_FOUND 変数が自動的に生成され、ライブラリが見つかったかどうかを判別できます。
  • ライブラリが見つからない場合でもビルドは継続し、見つからなかった際の処理を条件分岐できます。

2. ライブラリの有無で処理を分岐させる

オプションのライブラリがある場合はそのライブラリに依存する機能を追加し、ない場合はその機能を無効にする、といった柔軟な処理が可能です。

例: REQUIREDOPTIONAL を組み合わせた使用

以下の例では、必須のライブラリ MyLibrary と任意のライブラリ MyOptionalLibrary を設定し、存在しない場合は処理を分岐させます。

# 必須のライブラリ
find_package(MyLibrary REQUIRED)

# 任意のライブラリ
find_package(MyOptionalLibrary)

if(MyOptionalLibrary_FOUND)
    message(STATUS "Building with optional library MyOptionalLibrary")
    target_link_libraries(MyApp PRIVATE MyOptionalLibrary::MyOptionalLibrary)
else()
    message(STATUS "Building without optional library MyOptionalLibrary")
endif()
  • find_package(MyLibrary REQUIRED): MyLibrary が見つからない場合はエラーメッセージを出力し、ビルドを中断します。
  • find_package(MyOptionalLibrary): MyOptionalLibrary の存在を確認し、存在すればリンクします。存在しない場合は、代わりに else() 以下の処理が実行されます。

3. 条件分岐による実際の機能制御の例

任意のライブラリの有無に応じて、機能を有効化・無効化する例です。例えば、OpenMPがインストールされている場合は並列処理を有効化し、ない場合はシーケンシャルに処理する設定を行うことができます。

# OpenMPを任意のライブラリとして設定
find_package(OpenMP)

if(OpenMP_FOUND)
    message(STATUS "OpenMP found, enabling parallel processing")
    add_compile_definitions(ENABLE_PARALLEL_PROCESSING)
    target_link_libraries(MyApp PRIVATE OpenMP::OpenMP_CXX)
else()
    message(STATUS "OpenMP not found, building without parallel processing")
endif()
  • ENABLE_PARALLEL_PROCESSING というプリプロセッサ定義が追加され、コード内で #ifdef ENABLE_PARALLEL_PROCESSING を使って条件分岐が可能になります。
  • OpenMPがない場合でも、シーケンシャル処理用のコードを実行するような構成が可能です。

まとめ

  • REQUIRED: 必須のライブラリが見つからない場合にビルドを停止します。依存ライブラリが必須の場合に使用します。
  • OPTIONAL(デフォルト): ライブラリが見つからなくてもエラーにはならず、_FOUND 変数を用いて条件分岐することで、ライブラリがある場合とない場合の処理を柔軟に設定できます。

この設定を活用することで、CMakeプロジェクトにおいて必要なライブラリを確認しつつ、任意のライブラリがある場合には追加機能を提供する構成が実現できます。

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