Snowflake Icebergテーブル 生誕1周年を祝う
はじめに
2024年、現地参加が叶わなかったSnowflake Summitで「Icebergテーブル」が発表されたとき、私はその構造と思想に大きな衝撃を受けました。
発表を見た直後、すぐに実機検証を行い、記事としてまとめたことを覚えています。
記事のまとめには、こう書き残していました。
Snowflake Data Cloud Summit 24行きたかった。いやまじで。2025はなんとかして行くぞ!!
あれから1年。ついにその想いを実現し、2025年6月、サンフランシスコで開催されたSnowflake Summitに現地参加してきました。
本記事では、Snowflake Summitで発表された最新情報も交えながら、Snowflake Icebergテーブルの1年間の進化と現在地を整理してお伝えします。
Icebergテーブルとは何か?
Icebergテーブルとは、Apache Iceberg™フォーマットに準拠しつつ、Snowflakeの管理性・パフォーマンス・ガバナンス機能と統合されたテーブル形式です。
単なるストレージフォーマットではなく、信頼できるオープンデータ基盤を実現するための構成要素として位置づけられています。
Icebergが提供する主な機能:
- ACIDトランザクション:同時書き込みや一貫性の担保が可能
- スナップショット管理:バージョンごとのクエリが可能(Time Travel)
- スキーマ進化:列追加・変更・再編成に柔軟に対応
- メタデータの分離:高パフォーマンスかつ細かなトラッキングが可能
SnowflakeのIcebergテーブルは、これらをSnowflakeネイティブな操作性とともに実現するものです。
Snowflake Summit 2025での注目度
Snowflake Summit 2025では、Icebergテーブルに関するセッションが45以上開催されました。
テーマはパフォーマンス最適化からガバナンスの事例まで幅広く、実装技術だけでなく組織的な活用方法にもフォーカスが当たっていました。
中でも印象的だったのは、キーノートで紹介された以下のメッセージです:
「技術進化が激しい今、将来の選択肢を狭めないためにIcebergを選ぶべきだ。」
これはIcebergが、「現時点の要件に合うから選ぶ」のではなく、
“将来の不確実性に備える戦略的選択肢”として選ばれるという思想が語られていました。
Icebergテーブル:この1年の進化
以下は、Snowflake Icebergテーブルの1年間における進化を、リリース順に整理したものです。
最初はネイティブテーブルと比較して、Dynamicテーブルが作成できない、クローンができないなど制約が多かったものの、機能は段階的に追加され、制限は徐々に解消されてきました。
※ 詳細な情報はSnowflakeのリリースノートをご覧ください。
年月 | 新機能 | 説明 |
---|---|---|
2024年6月 | Icebergテーブルの利用開始 | Iceberg形式のテーブルをSnowflake上で作成・管理・クエリ実行できるように。外部ストレージと連携した分析が可能に。 |
2024年10月 | Open Catalogの統合 | Polaris Catalogを前身とするSnowflake Open Catalogを通じて、Icebergテーブルのメタデータ参照・相互運用が可能に。 |
2024年11月 | 動的テーブルとの相互運用対応 | Icebergテーブルをソースとする動的テーブルの作成、およびIceberg形式で保存される動的テーブルの作成が可能に。 |
2024年11月 | Snowpipe Streaming対応 | Parquet形式での書き込みと、自動取り込みパイプラインの構築が実現。 |
2024年11月 | Streamオブジェクト対応 | 変更トラッキング用のStreamオブジェクトが作成可能に。 |
2024年11月 | RESTカタログとの統合 | REST APIを利用した外部カタログから、Icebergテーブルの読み取りが可能に。 |
2025年1月 | 自動リフレッシュ機能 | 外部テーブルの変更をSnowflakeが自動検知し、メタデータを同期。 |
2025年2月 | クローン対応 |
CREATE TABLE ... CLONE 構文での複製が可能に。 |
2025年2月 | DeltaベースIceberg書き込み | Snowflakeから直接、Deltaログ付きIcebergテーブルへ書き込みが可能に。 |
2025年3月 | DeltaテーブルからのIceberg化 | Delta LakeのテーブルをIceberg形式に変換可能に。 |
2025年5月 | クロスクラウド/クロスリージョン対応 | 異なるクラウド・リージョン間でも読み書き可能に。 |
2025年6月 | QAS対応 | IcebergテーブルでQuery Acceleration Serviceが利用可能に。 |
2025年6月 | SOS対応 | Search Optimization Serviceが利用可能に。 |
??? | 外部管理Icebergテーブルへの書き込み | 現在開発中。SnowflakeからREST Catalog経由で書き込み可能に。 |
特に注目している進化:外部管理Icebergテーブルへの書き込み対応
この機能は、これまで読み取りに限定されていたSnowflakeとIcebergテーブルの関係を、双方向の“相互運用性”へと進化させるものです。
Icebergの「オープン性」は長らく読み取り中心のものでした。
複数のツールが同じIcebergテーブルを参照できても、書き込みは実質1ツールに限られる――そんな構造が一般的だったのです。
しかし今回、Snowflakeが発表した外部管理Icebergテーブルへの書き込み対応により、
REST Catalogを介してSnowflakeからINSERT/UPDATE/DELETEが実行可能になる世界が見えてきました。
- Icebergテーブルを複数ツールで共有・更新できる構成が現実に
- データ基盤の柔軟性と拡張性が大きく向上
- Icebergが保存形式から運用のハブへと進化するターニングポイント
現在は開発中ですが、今後の技術戦略に大きな影響を与える機能だと感じています。
今後の展望 : Icebergが変える、ツール選定の基準
Icebergテーブルの進化によって、ツール選定における価値判断も変わりつつあると考えます。
従来は:
- 「すでに使っているから」
- 「データがそこにあるから」
といった理由で選定した一つのツールを使い続けることが多く、データの所在や既存の資産に大きく引きずられていました。
しかし、オープンなテーブルフォーマットが普及すると、「どこにデータがあるか」ではなく、
「どのツールがこの用途において最も適しているか」という視点が重要になります。
つまり、これまでは1つのツールに多くを集約する形が一般的でしたが、
今後は用途に応じて複数のツールが役割分担し、柔軟に連携する構成がより現実的になっていきます。
そのとき選ばれるのは、用途に対して最適な特長を発揮できるツールです。
- 高いパフォーマンス
- 信頼性の高いセキュリティとガバナンス
- 柔軟な開発体験やコスト効率
- 組織に合った運用設計 など
Icebergは、どのツールをどう選ぶかという判断に改めて目を向ける機会を私たちに与えてくれます。
Snowflakeをはじめとする各ツールが 「選ばれる理由」を見直し、機能や価値をさらに磨いていくための起爆剤になることを期待しています。
おわりに:Icebergはまだ氷山の一角
この1年で、IcebergテーブルはSnowflakeの中で戦略的な役割を担う基盤へと進化しました。
単なる機能拡張ではなく、変化と不確実性に強い構造そのものが、注目されている理由です。
あなたが選ぶツールや設計は、未来への柔軟性を持っていますか?
Icebergは、まだ氷山の一角。
その下には、まだ多くの可能性が眠っています。
1歳になったIcebergテーブルのさらなる成長に期待しましょう!

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