【AWS】リザーブドインスタンス(RI)とSavings Plans(SP)の選定フローを整理してみた
はじめに
Amazon Web Services(AWS)上に構築するインスタンスのインフラコストを削減する方法として、事前にインスタンスの使用量を予約することで通常のオンデマンド料金と比較してコスト削減が期待できる価格モデルがあります。価格モデルにはリザーブドインスタンス(以降、RIと称す)とSavings Plans(以降、SPと称す)がありますが、似ている価格モデルということからも採用検討を実施する場面も多いと思います。本ブログではRIとSPの価格モデルを選定する際のフローを自分なりに整理してみました。
目次
- はじめに
- 目次
- RIの価格モデル
- SPの価格モデル
- 価格モデルの選定フロー
- 最後に
RIの価格モデル
RIは、特定のインスタンスタイプとリージョンに対して、一定期間の予約購入をすることでオンデマンドインスタンスよりも大幅に割引される価格モデルです。購入可能なAWSサービスはEC2とRDSで、サードパーティーや別のAWSアカウントが保有するRI販売を可能とするプラットフォーム(リザーブドインスタンスマーケットプレイス)も用意されています。なお、特定のインスタンスに紐づいた購入ではないことにご留意ください。
Amazon EC2 リザーブドインスタンスの場合、2つのスコープ(リージョナルRIとゾーンRI)と2つの購入タイプ(Standard RIsとConvertible RIs)の組み合わせから採用可能です。
Amazon EC2 リザーブドインスタンス (RI) は、オンデマンド料金と比較して大幅な割引 (最大 72%) を提供し、特定のアベイラビリティゾーンで使用する場合にキャパシティ予約を提供します。
引用:https://aws.amazon.com/jp/ec2/pricing/reserved-instances/
Standard RIs
割引率が最も高くなる通常の購入方法です。リージョンやインスタンスタイプ、OS等の指定した属性に一致するインスタンスに対して割引されます。
Convertible RIs
Standard RIsと同様の属性指定は必要ですが、途中で別のConvertible RIsへの交換が可能です。つまり、インスタンスタイプの要件変更に対応が可能なためStandard RIsと比較して柔軟性が高いです。一方で、柔軟性が高い分、割引率はStandard RIsより劣ります。なお、交換先との差額が発生する場合はその分の支払いが必要となります。
SPの価格モデル
SPは一定期間の使用量を事前に契約することで特定のインスタンスの使用量に縛られずに、AWS全体でのコストを削減するためのプランです。
AWSで提供される2つのプラン(Compute Savings PlansとEC2 Instance Savings Plans)から採用可能です。
Savings Plans は、1 年または 3 年の期間で、一貫したコンピューティング使用量 (USD/時間で測定) を契約する代わりに、Amazon EC2、AWS Lambda、AWS Fargate の低額の使用料金がオファーされる柔軟な料金モデルです。Savings Plan にサインアップすると、契約量までの使用料金は割引された Savings Plans 料金で課金されます。AWS が提供する Savings Plans には 2 つのタイプがあります。
引用:https://aws.amazon.com/jp/savingsplans/compute-pricing/
Compute Savings Plans
Compute Savings Plansは、リージョンやインスタンスタイプ、OSに縛られないため柔軟性が非常に高く、ワークロードが不透明な場合にも採用しやすいタイプです。一方でRIや後述するEC2 Instance Savings Plansと比較して、割引率は劣る傾向にあります。
EC2 Instance Savings Plans
EC2 Instance Savings Plansは、特定のインスタンスファミリーとリージョンに対して適用されるSavings Plansです。インスタンスタイプとリージョンを限定することでCompute Savings Plansと比較して割引率は高くなる傾向にあります。また、2025年10月現在ではEC2のみ適用されるプランです。
価格モデルの選定フロー
Step1. 適用サービスの整理
RIやSPは購入方法に応じて適用できるサービスが変わります。例えば、EC2が対象サービスであればRIとSPいずれの価格モデルも適用対象となるため、どちらを採用するかを検討できます。一方で、RDSが対象サービスの場合、SPは2025年10月現在では採用できません。適用サービスを整理することで比較対象を絞ることをお勧めします。なお、Step2~Step4はEC2が適用サービスの場合を想定したフローとなっています。

Step2. RIのスコープ選定
EC2に適用できるRIにはリージョナルRIとゾーンRIの2つのスコープが用意されています。差分も少ないため、まずはスコープを選定することをお勧めします。リージョナルRIはAZ(アベイラビリティゾーン)やインスタンスサイズによらず割引が適用されますが、キャパシティ予約機能は使用できない特徴を持っています。
選定例
- 定期的な起動が発生かつ起動失敗が許されないインスタンスが対象のため、キャパシティ予約機能が利用できるゾーンRIとする。
- インスタンスサイズが変更される可能性があるインスタンスが対象のため、リージョナルRIとする。
Step3. RIの購入タイプ選定
EC2に適用できるRIには各スコープに対してStandard RIsとConvertible RIsの2つの購入タイプが用意されています。主に購入後の柔軟性(別のRI交換可否やマーケットプレイスへの出品可否)と割引率とのトレードオフになるので、適用対象のワークロードと照らし合わせて選定することになると思います。
選定例
- 途中の属性変更も予定されないため、コスト効率の高いStandard RIsとする。
- 途中でインスタンスタイプの属性が変更する可能性があるため、交換可能なConvertible RIsとする。
Step4. SPのプラン選定
EC2に適用できるSPにはCompute Savings PlansとEC2 Instance Savings Plansの2つのプランが用意されています。主に購入時の指定必須の属性の数と割引率にトレードオフ関係を持っています。また、Compute Savings PlansはLambdaやFargateにも適用できるため、EC2からLambdaやFargateへの移行が考えられるケースにも適用できる唯一のプランです。
選定例
- インスタンスあたりの起動時間は少ないが、複数リージョンで適用対象となるインスタンスがあるため、Compute Savings Plansとする。
- 特定のリージョンやインスタンスタイプに対する適用を予定しているため、コスト効率の高いEC2 Instance Savings Plansとする。
Step5. 購入方法の選定
ここまで選定してきたRIやSPの特徴を踏まえ、適用対象のワークロードに適した購入方法を採用します。その際、トータルの稼働時間を考慮するとオンデマンド料金の時よりも高くつく可能性があるため、オンデマンド料金との損益分岐点の考慮もお勧めします。例えば、EventBridge等でEC2インスタンスの自動起動停止を行い、起動時間自体を抑える方法もあります。損益分岐点の計算については、公式のAWS Pricing Calculatorを活用できます。
最後に
本ブログでは、AWSのEC2におけるリザーブドインスタンス(RI)とSavings Plans(SP)の選定フローを整理しました。RIやSPはオンデマンド料金と比較して大幅なコスト削減を可能にするための価格モデルです。計画的に採用することでコスト効率を最大化することができるため、本ブログがその一助になれば幸いです。
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