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AIエージェントオーケストレーション×GPTs連携で挑むソリューション提案支援フレーム — 社内ChatGPTハッカソン参加記

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1. はじめに

こんにちは!
MEKIKI X AIハッカソンもぐもぐ勉強会 Advent Calendar 2025の3日目を担当する玉置です。

2025年11月17日、社内で開催された第1回ChatGPTハッカソンに参加しました。

組織内で日頃からAI活用を推進している立場として、社内初のChatGPTハッカソンに関心を持ち、所属組織でチームを組んで挑戦しました。

日々急速に進化するAIを、盲目的に使うのではなく、どう活かし、どう業務を変えていくのかを考えることが重要だと感じています。
進化のスピードに置いていかれないためにも、私たち一人ひとりが常に活用方法を考え続ける必要があります。
今回のハッカソンは、その考えを実際に試し、模索する良い機会になりました。

本記事では、このハッカソンの概要と、私たちがChatGPTを活用して取り組んだ内容をご紹介します。


2. イベント概要

本ハッカソンの紹介も兼ねて、概要を簡単に説明します。

テーマは 「ChatGPTを活用した業務効率化・生産性向上」
ChatGPT Enterpriseを活用し、日常業務の課題を出発点に“業務をAIで変える”アイデアを1日で形にするイベントで、参加チームはカスタムGPTやプロジェクト機能などを活用した成果物を開発し、プレゼンとデモを通じて発表しました。


開催概要

  • 日時:2025年11月17日(月)10:00〜17:00
  • 会場:豊洲センタービル(本社ビル)
  • 主催:NTTデータグループ 技術革新統括本部 OpenAI CoE
  • 共催:OpenAI社
  • テーマ:ChatGPTを活用した業務効率化・生産性向上
  • 参加形態:チーム参加(2〜5名)

審査・表彰

審査は参加者による投票形式で行われ、業務インパクト等を基準に各チームを評価。
最も多くの票を集めたチームには「優秀賞」、OpenAI社に選出されたチームには「OpenAI賞」が授与されます。


スケジュール

時間帯 内容
10:00〜12:00 オープニング・アイデア創出
13:00〜15:00 ソリューション開発・発表準備
14:40〜16:30 成果発表
16:30〜17:00 審査・表彰・クロージング
17:00〜 懇親会

3. 当日の取り組み

チーム構成と役割

同じ組織内の先輩方と私の5名チーム(Team: iQuattro)で参加しました。


採択したテーマと目的

私たちが選んだテーマは、 AIエージェントオーケストレーションによるソリューション提案支援 です。

AIエージェントオーケストレーションとは、複数の専門エージェントAIを “指揮者(オーケストレーター)” によって連携させ、単独では難しい複雑なタスクを自律的に遂行する仕組みです。
カスタムGPTとして作成した複数の“役割特化型GPT”を連携させ、営業・プリセールス・エンジニアなどの観点をGPTが相互補完することで、 少人数でも高品質・高スピードで提案を作成できる仕組み の実現を目指しました。

私たちがこのテーマを選んだ背景には、実際の業務で抱えていたいくつかの課題があります。
私たちの組織では、自社プロダクトの開発やコンサルティング業務の傍ら、API基盤ソリューションの提案・導入支援も行っており、
営業1名+プリセールス1名という少人数体制で提案準備が逼迫しやすいこと、
さらに提案資料の作成や情報整理に多くの時間がかかることが重なり、
十分な準備ができずに提案機会を逃してしまうケースもありました。

こうした「リソース不足」「準備負荷」という課題を補完するため、
複数GPTを連携させた“ソリューション提案支援フレーム”として構築するアプローチに挑戦しました。


午前:アイデア創出と方向性決定

今回のハッカソンにおいてはGPT Actions(外部API連携機能)は使用しないという制約がありました。
そのため、利用できるのは GPTsの「指示」と「知識」 を中心とした構成に限られ、 テキスト入力 → GPT → テキスト出力 で完結する単体 GPTs の提案のチームが多くなると予想しました。

しかし、この形式では 差別化が難しい だけでなく、業務としての実用性の幅も限定されてしまうと考えました。

そこで私たちは、あえて単体ツールとしてのGPTsに留まらないよう、次の戦略を立てました:

  • インプットをテキストに限定しない(音声入力=マルチモーダル化)
  • アウトプットはテキストではなく、外部ツール(Marp)を使ったスライド生成に踏み込む
  • 複数GPTを連携させ、AIエージェントオーケストレーション構造で“疑似チームプレイ”を実現する

こうした構成により、単なる「GPTに聞いて答える」ツールではなく、少人数の提案体制をGPTで補完する“実戦的な提案フレーム” を作ることを目標に据えました。


午後:プロトタイプ開発と発表準備

午後は、午前に決定したアーキテクチャをもとに、プロトタイプの実装に着手しました。今回のポイントは、複数の役割特化型GPTを連携させ、“疑似チームプレイ”を実現すること です。

まず、今回実装した 提案支援フレームの全体的な処理の流れ は以下の4ステップです:

  1. ユーザーが「提案シナリオ(顧客情報・現状の課題・ソリューション要件・期待する将来像など)」を入力する
  2. オーケストレーターGPTが内容を整理し、3つの役割特化型GPT(技術/営業/業界)に投入するプロンプトを生成する
  3. 各GPTがそれぞれの専門的観点で回答を生成する
  4. 最後に、それらの出力を統合し、スライド生成まで行う(Marp使用)

私たちは次の3種類の役割特化型GPTを用意しました:

  • 技術担当GPT:提案ソリューションのプリセールス観点を担当
  • 営業担当GPT:見積り・スコープ・リスク評価を担当
  • 業界担当GPT:今回は金融業界を対象に、規制・業務要件を確認する役割

これらのGPTを横断的に統括するため、入力された 提案シナリオ(顧客情報・現状課題・要件) を解析し、必要な観点ごとに3つのGPTへ振り分ける オーケストレーターGPT を中心に据えました。

チャット内でのGPT連携には GPTsメンション機能 を活用し、1チャットの中でオーケストレーター→役割特化GPTの順に処理を渡すことで、実際のプロジェクトチームのような“分業処理”を再現しました。
GPTsメンション機能を使うと、1つのチャットの中で複数のGPTsを呼び出して使うことができます。

最終的には、複数GPTの出力を統合し、Marp形式のスライド生成 (下記画像左下)まで完了。提案書の基盤となるアウトプットを短時間で生成できる仕組みを実装しました。


作業分担と進め方

限られた時間で完成度を高めるため、午後の作業は次のように分担して進めました。

  • 想定提案シナリオ作成担当:顧客背景・現状課題・刷新要件など、GPTに入力する情報を整理。
  • 各GPT担当(技術/営業/業界):それぞれのGPTに必要な観点や出力フォーマットを定義し、ロールプロンプト(指示)を作成。
  • オーケストレーター設計担当:3つのGPTをどの順番で呼ぶか、どの情報を渡すかなど、連携の流れ全体を設計。
  • 図式化・スライド作成担当:全体構成の図式化、Marpスライドの構成整理、最終資料の作成。

並行作業ができるよう役割を分けたことで、当日の限られた作業時間内でAIエージェントオーケストレーション構造の実装、GPT間連携の検証、スライド・デモの準備をスムーズに進められました。

4. 成果発表・振り返り

午後の作業時間が終了すると各チームの成果発表タイム→審査・表彰となりました。

結果は…

🏆 OpenAI賞を受賞!!

そして全体順位2位!

短時間でのハッカソンにもかかわらず、AIエージェントオーケストレーション構造による提案支援という挑戦的なアプローチが評価され、特にGPT連携という概念がOpenAI社や参加者から高く評価されました。

OpenAI社からは次のようなコメントもいただきました:

  • 「カスタムGPTsだけでここまで実現しようとしたことがすごい」
  • 「他社を見ても、GPTsの連携を提案したのはNTT DATAが初めて」


懇親会でのOpenAI社との交流

イベント後には懇親会が開催され、参加者同士だけでなく、OpenAI社の方々とも直接意見交換する機会がありました。
私たちが日頃どのように ChatGPT、Codex、OpenAI API Platform、カスタムGPTs を活用しているかを共有し、実務の中で感じている 機能面の改善についての要望もお伝えさせていただきました。


5. おわりに(まとめ)

今回のハッカソンを通じて、“ChatGPTをそのまま使う”のではなく、どう活用すれば業務を変えられるのかを考える良い機会になりました。
限られた時間の中で議論し、作り、試し、改善を繰り返すプロセスは、日々の業務に追われる中ではなかなか得られない密度とスピードがあり、生成AIを“活かす”ための実践的な学びとなりました。

特に今回、複数GPTを連携させてツールではなく“提案フレーム”として機能させる試みによって、業務プロセスそのものをAIで拡張する可能性を強く感じることができました。

今後、GPT Actions等のChatGPTの他機能も利用すれば、外部システムと連動したより高度な提案支援や業務自動化も実現でき、今回取り組んだフレームをさらに発展させられると感じています。

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