alteryx Analytics Summit JAPAN 2025 現地レポート~製造業におけるAGCのAlteryx活用事例紹介~
Alteryx社主催のalteryx Analytics Summit JAPAN 2025に現地参加しました。
イベントで、AGCがSAPと連携したAlteryxの活用事例の紹介をしていましたので、そのセッションの内容について紹介させて頂きます。
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講演概要
AGCからはAlteryxの活用事例のみならず、業務ユーザーがAlteryxを活用するための教育内容について紹介されており、Alteryxをどう活用していけば良いのか事例ベースで幅広く知ることが出来ました。
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講演日:
2025年7月9日(水)16:05-16:35 -
講演者:
AGC株式会社 化学品カンパニー経営戦略本部 DX推進室ビジネスイノベーションG
グループリーダー 安井 泰観 氏
AGC株式会社 化学品カンパニー経営戦略本部 DX推進室ビジネスイノベーションG
杉山 和哉 氏 -
講演タイトル:
☆☆製造業DX☆☆ ビジネス領域でのAlteryx活用事例紹介(SAP連携)☆☆ -
講演内容の紹介文:
AGC化学品カンパニーでは2021年から製造領域でのデータ分析プラットフォームとしてAlteryxを導入し、人材育成やデータ活用ツールとして活用を進めてきました。
2024年からはビジネスプロセス・バックオフィスDXの共通プラットフォームとしてAlteryx Designer/Serverを選定し、業務の時間短縮・品質向上・価値向上を目指した取り組みを開始。営業・経理・人事・物流・サステナ・環境安全など各領域での業務効率化を進めるとともに、ERP(SAP)との連携も進めています。今回はその取り組み事例を共有します。
講演内容
アジェンダ
講演は、4つのアジェンダで構成されています。
まずは会社紹介とAlteryxの活用成果について安井氏が説明された後、ビジネス領域でのDXの狙いや、実際の活用事例、SAPとの連携方法など、杉山氏から、実務に直結する具体的な内容が説明されました。

会社紹介とAlteryx活用の成果
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会社紹介
個人的にはCMがとても印象的なAGCですが、AGCは、原塩を出発点に多様な化学製品を展開する素材メーカーで、橋の防食塗料やスタジアムの屋根材など、製品の素材を製造しています。スライドでは、その幅広いケミカルチェーンが図解で分かりやすく、伝えられていました。

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製造工場
化学品の製造プロセスは多岐に渡っており、様々な装置を組み合わせて、工場を構成しています。

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DXの取り組みについて
製造現場だけでなく、サプライチェーン全体やビジネス・バックオフィスまで含めた幅広い領域でDXを推進しています。今回はその中でも、業務生産性向上をテーマとしたビジネス領域DXの取り組みについて、具体的な事例を共有していました。
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Alteryx活用の軌跡
2021年にAlteryxの導入をスタートし、まずは製造領域のデータ活用から取り組みを始めました。2022年にはAlteryx Serverの導入や人材育成施策も加わり、社内での活用基盤が徐々に整備されていきます。2024年からはビジネス領域にも活用を広げ、今回はその成果のひとつとしてSAP連携事例が取り上げられていました。

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1年間の成果
この1年間でビジネス領域における34件のDX施策を検討し、そのうち20件を実装。業務のスピードアップだけでなく、データの整合性向上やヒューマンエラーの防止など、多面的な効果が着実に現れていることを共有していました。

ビジネス領域DXの狙い
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業務の課題
AGCのビジネス領域では、多種多様な製品や取引先に対応するため、複雑かつ高度な業務が数多く存在しています。データ収集の手間や意思決定の遅れ、属人化の進行といった課題を背景に、DXによる業務変革の必要性が語られていました。

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3つの狙い
ビジネス領域の課題解決に向けて共通プラットフォームを整備し、業務の自動化と標準化を推進しています。狙いは、時間削減・リスク低減・付加価値の提供という3つの視点から、業務全体の質とスピードを高めることにあります。

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ツール整備
AGCでは、業務のDX推進に向けた共通プラットフォームとして「kintone」と「Alteryx」を導入しています。kintoneは業務システムの構築に、AlteryxはExcelやSAPデータの加工集計業務の自動化に活用されており、業務の効率化と標準化を支えています。

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人材育成
AlteryxやTableauの操作に特化した実践的な教育を実施し、ユーザー部門での自律的な活用を支援しています。現場の業務に即した内容を中心にすることで、ユーザー部門におけるワークフローの管理や他業務への展開が可能となり、データ活用の裾野が着実に広がっています。

Alteryx活用事例の紹介
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業務について
AGCが取り組む「化学物質出荷管理業務」は、化学製品を海外に輸出する際に法令や出荷要件を満たしているかを確認する重要なプロセスです。各国で異なる規制に対応し、違反によるリスクを未然に防ぐためにも、この業務は欠かせない役割を果たしています。

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マニュアル業務の限界
化学物質出荷管理業務では、これまでExcelを使った手作業での確認や集計が中心で、業務負荷の高さと人的ミスのリスクが課題となっていました。法令違反による罰則リスクも伴う中、業務のシステム化による改善ニーズが高まっていることが共有されました。

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システム化
化学物質出荷管理業務のシステム化を進め、確認作業の工数削減と法令違反リスクの未然防止を目指しています。Alteryxによるデータ自動取得やTableauでのアラート可視化などを活用し、年間140時間に及ぶ業務負荷の軽減に取り組んでいます。

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システム概要
Alteryxで出荷情報と化学物質管理マスタを突き合わせて法令リスクを自動検出し、アラート発出とTableauによる可視化を実現しています。製品や含有物質、日付などの条件で柔軟に絞り込める画面設計により、業務状況の見える化が大きく前進しました。

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システム構成
Alteryx Server上のワークフローを用いてSAPの出荷情報と化学物質マスタを自動突合し、リスクの有無をチェックしています。判定結果は毎朝自動でメール配信され、ユーザーはURLから最新状況を即時に確認できる仕組みが整えられています。

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SAP連携
DVW社のAlteryx Connector for SAPを活用することで、Designerでの開発とServerでの運用を進め、SAP連携を実現しています。

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ツール活用
SAP BW Readツールを使ってデータ取得を自動化し、ログオンから抽出条件の設定、データ抽出までをAlteryx上のシンプルなワークフローで実現しています。

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ワークフロー
SAPからのデータをAlteryxでシンプルに抽出し、その後の加工・集計処理を実施するワークフローを構築しています。

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まとめ
出荷管理業務において、法令違反の未然防止と業務効率化を同時に実現するシステムを構築し、属人化しない効率的な仕組みに移行しました。その結果、年間140時間の工数削減を実現したとの事でした。

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今後の展望
化学物質出荷管理業務の活用範囲拡大と、SAPからのデータ取得業務全般への展開を検討しているとの事でした。

最後に
今回のAGCの講演では、製造業ならではの複雑な業務と高い品質要求に対応しながら、現場起点でDXを着実に進めていく姿勢が非常に印象的でした。特に、SAPと連携したデータ利活用の仕組みをAlteryxで自動化し、Tableauで可視化するという一連の流れは、実務に根ざした工夫とテクノロジーの融合を感じました。
法令対応や業務の標準化といった堅実な土台づくりと、現場の自律的な改善を同時に実現するその取り組みは、今後の製造業DXにおける重要な指針となるように思いました。今後のさらなる展開にも、大いに注目していきたいと思います。
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