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TDX Tokyo参加レポート

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TDX Tokyo 2025について

2025年4月25日に Salesforceのテクノロジーイベントである TDX Tokyo 2025 (公式サイト) が開催されました。
TDX Tokyo 2025 は、Salesforceの最新技術やトレンドを学ぶことができる貴重な機会です。今回のイベントの目玉として、Agentforceの紹介がありました。
Agentforceとは、Salesforceが提供する自律型AIエージェント機能で、業務の自動化や効率化を支援します。このサービスは、チャットや業務プロセスの自動実行をAIが担当することで、従業員の作業負担を軽減します。また、Salesforceのデータや外部システムとも連携可能です。
筆者は業務上、MuleSoftの導入およびデリバリー支援によく関わっています。特に、MuleSoftとAgentforceの連携に非常に興味を持っています。

デジタル労働力とAPIの重要性

近年、世界的な労働力不足が深刻化する中、企業は単なる生産性向上だけでなく、「生産性向上+労働力確保」の両面を検討する必要があります。その解決策として注目されるのが、デジタル労働力を創出するプラットフォームであるAgentforceです。
Agentforceは、AIエージェントによる業務自動化・効率化を実現し、従業員の負担を軽減します。
しかしながら、多くの企業は「AI活用の準備が整っていない」と回答しており、その理由としてインテグレーションの課題やROIの不透明さ、スモールスタートから大規模拡張が進まないという問題が挙げられています。これらの課題を解決するためには、柔軟なアーキテクチャ設計とAPI連携が不可欠です。
一方、MuleSoftはAPI連携と自動化機能を提供し、多様なシステムやデータの接続を可能にし、AIエージェントの活動範囲を広げる役割を担っています。
Salesforceは「AIの世界はAPIの世界です」と力強くアピールします。AIエージェントがリアルタイムでデータを活用し、さまざまなシステムと連携するためにはAPIは不可欠です。API戦略がビジネス戦略そのものになる時代が今、到来しています。

MuleSoftとAgentforceの連携による業務変革

今回のイベントでは、MuleSoftの新機能も織り交ぜられて、MuleSoftのコンポーザブルアーキテクチャとローコード開発機能、Agentforceとの連携による具体的なユースケースが紹介されました。例えば、ホテル予約業務において、宿泊客がホテル予約を行う際、フロントからサービスの提案を受けるとしましょう。このとき、外部システムから天候情報をAPIで取得し、AIエージェントが最適な提案を自動で行うことで、顧客体験の向上と業務効率化を同時に実現しています。

AIエージェントの「アクション」強化と拡張性

AIエージェントの真価は「情報取得」だけでなく、「アクション」を自律的に実行できる点にあります。Agentforceは、Salesforce内外のSaaSや内製システムと連携し、業務を自動で遂行する能力を持ちます。MuleSoftの多様なコネクターやFlow IntegrationTopic Centerなどの新機能により、ノーコード・ローコードで幅広いシステム連携やAPI活用が可能となり、Agentforceの業務適用範囲が大きく拡張されます。
特に、Topic CenterやAPI Catalogを活用することで、既存のAPI資産をAgentforceからシームレスに再利用でき、運用監視やセキュリティも担保されます。これにより、AIエージェントが人と同じように多様なシステムにアクセスし、リアルタイムで最適なアクションを実行する「Agentic Enterprise」の実現が現実味を帯びてきました。

Flow Integration

Flow Integrationは、MuleSoftが提供するノーコードの外部システムとの連携を実現する機能です。この機能により、Salesforce上で完結した操作が可能となり、クリックベースでコネクタを利用してAPIやフローを簡単に作成できます。例えば、CRMとERP間のデータ同期や、Jiraチケットの自動作成など、複雑な業務プロセスを迅速に構築できます。技術的には、異なるシステム間のAPI連携を抽象化し、開発者だけでなくビジネスユーザーも利用可能な点が革新的です。将来的には、企業内の部門間でのデータ共有や、外部パートナーとのリアルタイムな情報交換が期待されます。これにより、業務効率化だけでなく、迅速な意思決定を支援する基盤として活用されるでしょう。

Topic Center

Topic Centerは、MuleSoftが提供するAPI資産の管理と再利用を最適化する機能です。この機能により、既存のAPIをAgentforceに登録し、シームレスに利用可能な形に変換できます。例えば、宿泊業務の予約管理において、外部の天候情報APIを活用して顧客に最適な提案を行う仕組みが構築できます。技術的には、APIの仕様を統一化し、運用監視やセキュリティを担保する点が特徴です。将来的には、企業が保有するAPI資産を最大限に活用し、AIエージェントがリアルタイムで複数のシステムにアクセスする「Agentic Enterprise」の実現が期待されます。これにより、企業は柔軟なデジタルエコシステムを構築し、競争力を強化することが可能となるでしょう。

既存のAI投資を活用する新たな仕組み

今回のイベントではMCPコネクタや内製のベクトルストアをAgentforceと連携させる方法も紹介されました。これにより、既にAI投資が進んでいる企業が独自のAIエージェントを活用しやすくなるとともに、さらなる業務効率化が期待されます。このような仕組みは、企業の既存資産を最大限に活用し、柔軟なAIエージェントの導入を支援するものです。

今後の展望と課題

API戦略とAI活用の一体化

AIエージェントの活用が進む中で、単にAIを導入するだけでなく、その能力を最大限に引き出すためのアーキテクチャ設計やデータ連携が重要です。特に、APIはAIエージェントがリアルタイムでデータを利用し、多様なシステムと連携するための基盤として不可欠です。

NTTデータの事例では、MuleSoftの導入・開発を通じてAPIを活用したシステム連携を現場主導で進め、ローコード開発で業務改革を加速させています。MuleSoft固有のデータ変換言語(DataWeave)、バッチ処理の効率的な実装方法など、MuleSoft開発特有の難しさも存在しています。これらの難しさに対して、様々な知見を活かすこともできます。これにより、AIエージェントと人が協業する新たな業務プロセスが構築され、企業の競争力強化に寄与しています。

マイクロサービス視点から見たMuleSoftの特徴

Agentic Enterpriseの実現

今後は、API戦略をビジネス戦略と一体化させ、AIと人が共創する 「Agentic Enterprise」 の実現が期待されます。この新たな業務モデルでは、AIエージェントが人間のパートナーとして機能し、ルーティン業務の自動化だけでなく、リアルタイムな意思決定や高度な業務プロセスの実行も支援します。これにより、企業は生産性向上と同時に労働力不足の課題を解決し、持続可能な成長を遂げることができるでしょう。

Agentforceは、Salesforce 公式サイトにも国内初稼働した事例が登場したばかりとこれからの発展に大いに期待したいです。

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