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「スマート防災ネットワークシンポジウム2025」イベントログ

に公開

開催概要

https://www.nied-sip3.bosai.go.jp/2025/symposium/

開催日時:2025年6月9日(月) 13:30 - 17:30
参加方法:WEB配信(Zoomウェビナー)にて視聴

(2025/08/13追記)公式のイベントレポートが公開されました。
https://www.nied-sip3.bosai.go.jp/news/2025-news/2025symposium.html

第1部

特別講演

加藤直人氏「デジタル技術でまちを作る、メタバースの現在と未来」

メタバース空間cluster
  • ユーザは1日平均5-6時間利用している
  • 空間内の環境はユーザーが自立的に作っている
  • バーチャル空間の活用は日本企業で特に多い
防災シミュレーションへの活用
  • "怖い"という体験をさせることができる
    • 例) 国交省のPLATEAUとの連携で震災発生から津波が来るまでを可視化
  • 課題
    • BIM/CADデータの活用
    • シミュレーション・計測データの活用
メタバースのメリット
  1. ビジュアライゼーション&コクリエイション

    • 認知コストを下げ、よりプログラマブル/共創可能に
    • 没入感のある世界で"体験"することができる
    • コストがかかる作業を便利にする
    • デジタルツインの作成
      • 実際に建てたビルのデータをバーチャル空間に送り、ビルの状況をアルタイム連携(鹿島建設)、風の流れや熱のこもった空間ビジュアライズされる
  2. データドリブン

    • ユーザーの行動がすべて保存できる
      • 目線データ、移動履歴を計測・可視化
    • これまで集められなかったデータを活用できるようになる

落合陽一氏「デジタルネイチャーの可能性と未来の防災」

デジタルネイチャー

自然は計算機とみなすことができ
自然は計算機の中にも存在する
その融合が計算機時代の自然である

  • デジタルツインが完備されたら次はデジタルネイチャーになるはず
  • 自然をどうとらえるかがテーマとなる
    • デジタルが変化すると物理も変化するようになれば融合状態
    • 自然の中の計算機:例) 3Dプリント
    • 計算機の中の自然:例) 解析モデル、シミュレーション
デジタルツインの課題
  • デジタルツインで導き出した最適解が、物理に還元されるかが課題
    • 物理データから最適解を導く(in-silico: シミュレーション)
         ↓ ループを高速化 ↑
    • 最適解を物理に還元する(in-situ: 現場)
生成AIの研究
  • ゲームを無限に生み出すAI
    • 例)ボードゲームをAIが作成し、人間は遊んで評価しフィードバック
    • AIの作成するものに対する満足度が上がっていく、上限はどこか?
    • デジタル側は人間を組み込んでアクションしていく、人間はどう生きていくか
  • デジタルヒューマン
    • 次は人間のコピーを作っていく
    • たとえば声がでなくなってもデジタルコピーが対応することを想定している

トークセッション「防災×デジトラ ~デジタルでまちを守る~」

※デジトラ=デジタルトランスフォーメーション(DX)

登壇者(敬称略)

【コーディネーター】
入江 さやか(松本大学 地域防災科学研究所 教授)
【スピーカー(五十音順)】
落合 陽一(筑波大学 デジタルネイチャー開発研究センター長)
加藤 直人(クラスター株式会社 代表取締役CEO)
楠 浩一プログラムディレクター(東京大学 地震研究所 災害科学系研究部門 教授)
重野 寛サブ・プログラムディレクター(慶應義塾大学 理工学部情報工学科 教授)

災害対応の技術革新と現状

  • 災害対策の現場は、紙とペンで対応していたところに、40年分の技術が一気に到来している状況である
  • SIPの課題は、現在の制約を取り込みながら、社会実装を進めること
  • リアルタイムシミュレーションとフィードバックループ
    • 建築ではマテリアルレベルで考えるが、防災では人的要因が絡む
    • さらに、災害時の物理面の変化を受けて、シミュレーションをし返すのでは遅い
    • 物理シミュレーションをロボットで回し、ソフトウェアだけでフィードバックを回していければよいのでは
    • バーチャル世界を活用し、災害への対応を自分ごと化してもらいたい

市民とAIの関わり

  • AIの普及で市民科学が発達していく可能性が広がった
    • AIを指示役にして、市民が調査や分析を行い、データを集めやすくなる
  • AIは中央値や最適値を取りやすいが、意図的に突飛で馬鹿げた行動を組み込んだモデルを作ることで、エッジケースに対応する必要がある
  • バーチャル空間での検証やBIM活用において、データ形式の不統一や所在の分散が大きな課題となっている
    • 市民に頼ったデータ作成の動きは、昔からあるものの夢で終わったパターンが多い
  • 市民が興味を持って写真を撮るジャンルはデータ収集が容易
    • 例)食事、災害写真
  • 一方で、何も変哲がない仕事らしさの強いジャンルはやらない
    • 給与を払い、AIを導入のアシスト役につけて業務として扱う
  • 人の興味を引き続けているものはAIが入ってもやりやすい
  • 環境構築は、かつて最も難しいと考えられていたが、AIのサポートにより簡単になった

人間のモデル化

  • 人間をモデル化する際には、身体性を含めるかどうかで設計の複雑さが変わる
  • 災害時の建築物への影響をシミュレーションする際には、人の介在を排除するという割り切りも必要である
    • 安心安全のまちづくりをする上では適用できそうな思想
  • 災害時、AIによって人流データから導かれる最適な行動だけを信頼してはならない
  • AIを活用するには、信頼に足るデータとフォーマットの整備が重要である
  • 最終的には、技術では解決できない足並みや合意形成が大きな課題

AIを活用した防災活動への展望

  • (ゲームを無限に生み出すAIの話を受けて)災害対応にもある種のゲーム性が潜む
    • 壊れたら直すというゼネコン業のなかに、さまざまな条件分岐が存在する
      • 人命は守る、老朽化した建物は残さない、重要文化財は残したいなど
    • いかにAIによる自動開発をすすめるかがポイントで、人間中心になりすぎてはいけない
  • AIはタスクが長期になるとエラーが出やすい点が課題
    • LLMが自動対応できるか、人間が監視しないといけないのか、あと数年はかかりそう
  • AIは概念空間は得意だが、三次元空間の処理が下手
    • 災害は自然であり、AIが対応できるようにするためには、いかに多くのデータを学習させるかが肝となる
  • AIの力を最大限に引き出すには、デジタル化後の合意形成や足並みの調整が不可欠である
  • 市民科学に頼るならば、考えうる方策は2つ
    • データを公開しAIがアクセスしやすい災害情報基盤を作っていく
    • 楽しいところだけお客さんが触れるようにする

第2部

SIP防災萌芽技術ピッチ

13団体が、4分の持ち時間で取り組みを紹介した。

取り組みの分類

取り組みは5つのグループに分かれている。Eグループのみさらに2つに分かれる。
A: 即時災害状況把握
B: 個人・企業の適切な災害対応
C: 災害実働機関活動支援
D: 利水・治水の融合
E-1-1: 都市インフラデジタルツイン化
E-1-2: 津波デジタルツイン化

ピッチ概要一覧
順番 分類 表題 登壇者 所属
1 A マルチセンシングデータの常時解析・可視化・共有システム「SIP4D-Sens」 取出 新吾 防災科学技術研究所 社会防災研究領域 総合防災情報センター 副センター長
2 A AIoT家電を活用した「フェーズフリー防災」 佐藤 浩司 シャープ株式会社 Smart Appliances & Solutions事業本部 Smart Life事業統轄部 戦略推進部
3 A 人工衛星と家電で支える防災ソリューション「宇宙(ソラ)× Eye(アイ)」 栗原 康平 三菱電機株式会社 防衛・宇宙ソリューション事業部
4 E-1-1 災害時の損傷箇所推定技術「高詳細デジタルツイン」 堀田 渉 大成建設株式会社 原子力本部 先端解析技術部 室長
5 A 災害時の構造物センシングデータ収集技術「多リンク系ドローン」 岡田 慧 東京大学大学院 情報理工学系研究科 知能機械情報学専攻 教授
6 C 被災地での効率的な情報収集・共有技術「X-FACE」 坂野 寿和 株式会社国際電気通信基礎技術研究所(ATR)波動工学研究所 所長
7 C 災害訓練シナリオの生成技術「DSG-SIM」 市川 学 芝浦工業大学 システム理工学部 環境システム学科 教授
8 B リスク情報による防災行動の促進に向けた「共創型水防災訓練」 山田 朋人 北海道大学 大学院工学研究院 教授
9 B 企業での気候変動対策の促進に向けた「気候変動適応e-learning」 岡 和孝 国立環境研究所 気候変動適応センター 気候変動影響観測研究室 室長
10 E-1-1 防災デジタルツイン自動作成技術による「次世代型防災情報(NX-HM)」 大石 哲 神戸大学 都市安全研究センター 教授
11 B 低コスト渇水リスク評価技術「全球水環境Webmapシステム」 多田 和広 株式会社地圏環境テクノロジー 専務取締役兼開発部マネージャー
12 D 全国の河川を対象にした洪水モデル・気候モデルによる「確率流量データセット」 佐山 敬洋 京都大学 防災研究所 防災技術政策研究分野 教授
13 D 農村部水路に対応した「浸水深見える化システム」 吉永 育生 農業・食品産業技術総合研究機構 農村工学研究部門 水理制御グループ長

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