Google の Agent2Agent (A2A) プロトコル
Google の Agent2Agent (A2A) プロトコル:AIエージェント間の新しい対話基盤
Googleが開発したAgent2Agent(略称:A2A)プロトコルは、異なるAIエージェント同士が円滑にコミュニケーションできるようにする新しい共通言語です。2025年4月9日に発表されたこの取り組みは、企業のAI活用における大きな課題を解決するものとして注目されています。
A2Aプロトコルとは
A2Aは、異なる開発元や基盤で作られたAIエージェント間での連携を可能にするオープンプロトコルです。AIエージェントとは、特定のタスクを自律的に実行するAIシステムのことで、現在ビジネスの様々な場面で活用が広がっています。
このプロトコルは、異なるベンダーやフレームワークで構築されたエージェント同士が「共通言語」を持つことで、相互に通信できるようにする画期的な仕組みです。これにより、エージェントは互いの機能を把握し、テキスト、フォーム、双方向の音声/ビデオなどを通じてユーザーとどのように対話するかを交渉することができます。
なぜA2Aが必要なのか
現在のAI活用において最大の課題の一つは、異なるシステムで構築されたAIエージェントを連携させることです。例えば:
- 企業内で異なる部門が異なるAIシステムを使用している場合、それらが連携できないと効率が下がります
- 複数のシステムを横断する作業では、AIエージェントが互いに情報交換できないと自動化が難しくなります
- 異なるベンダーのAIサービスを組み合わせて使いたい場合、相互運用が可能でなければ選択肢が制限されます
A2Aはこうした課題を解決し、異なるシステム間でAIエージェントが協力して働くための標準的な方法を提供します。
A2Aの主な特徴
1. エージェント間のスムーズな連携
A2Aでは「クライアントエージェント」と「リモートエージェント」という役割分担があります。クライアントエージェントはタスクを作成・伝達し、リモートエージェントはそのタスクを実行して正確な情報提供やアクションを行います。
例えば、あるエージェントが顧客の質問に答えるために別のエージェントの専門知識を必要とする場合、A2Aを使って適切なエージェントに質問を転送し、回答を得ることができます。
2. 機能のディスカバリと連携
エージェントは「Agent Card」と呼ばれるJSON形式の情報カードを使って自分の機能を公開します。これにより、他のエージェントはどのエージェントにどんな能力があるかを把握し、最適なエージェントを選んでタスクを依頼できます。
例えるなら、チームメンバーの得意分野を記した名刺を交換し合うようなものです。
3. 様々な形式での対話
テキスト、フォーム、音声、ビデオなど、様々な形式でエージェント同士が通信できます。ユーザーがどのような形式で情報を受け取りたいかについても、エージェント同士で交渉可能です。
4. セキュリティと標準技術の活用
A2Aは、HTTP、SSE、JSON-RPCなどの広く使われている技術標準の上に構築されており、既存のITシステムとの統合が容易です。また、エンタープライズレベルのセキュリティも備えています。
実用例:A2Aの活用シーン
カスタマーサポートの例
顧客が複雑な請求書の問題についてメールで問い合わせた場合:
- メールを受け取ったエージェントがA2Aを使って請求システムのエージェントに連絡
- 請求システムのエージェントが関連情報を調査して回答
- 最初のエージェントが情報を統合して顧客に返答
これにより、顧客は複数のシステムにアクセスすることなく、一つの窓口で完結した回答を得られます。
業務プロセスの自動化
複数のシステムを跨いで行われる業務プロセスを自動化する際に、各システムのエージェントがA2Aで連携することで、人間の介入なしに複雑なワークフローを完了できるようになります。
A2Aの開発状況と将来計画
Googleは、A2Aを積極的に発展させるために以下の計画を持っています:
- エージェントディスカバリの強化
- エージェント間の協力関係の深化
- タスク実行中のユーザー体験の再交渉機能
- ストリーミングやプッシュ通知の改善
- より多くのエージェント例の追加
業界からの支持
A2Aプロトコルには、アトラシアン、Box、Cohere、MongoDB、Salesforce、SAP、ServiceNowなど50社以上のテクノロジー企業が賛同しています。また、アクセンチュア、デロイト、キャップジェミニ、マッキンゼーなどの大手コンサルティング企業もこのプロトコルを支持しています。
このような広範な支持は、A2Aがエージェント間通信の標準として確立される可能性を示しています。
始め方
A2Aの使用を開始するには、GitHubリポジトリにアクセスして以下の手順で進めることができます:
- 技術ドキュメントを読んでA2Aの機能を理解する
- プロトコル構造のJSON仕様を確認する
- サンプルを試してA2Aの動作を確認する(Python、JavaScript対応)
- サンプルエージェントを使ってA2Aをエージェントフレームワークに組み込む方法を学ぶ
まとめ
A2Aプロトコルは、AIエージェント間の「共通言語」を確立することで、異なるシステム間での連携を可能にする画期的な取り組みです。これにより、企業は様々なAIソリューションを組み合わせて活用でき、複雑な業務の自動化や生産性向上が期待できます。
AIの活用がますます広がる中、A2Aのような標準プロトコルの確立は、エージェント間の協力を促進し、AIの可能性をさらに拡大する重要な一歩となるでしょう。
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