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【コミュニケーション】今までの経験や知識量によって、一意性の重要性認識度や検出範囲が異なるので、相互理解と歩み寄りを忘れずに

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はじめに

対象

  • 業務上のコミュニケーションで一意性は意識できているが、なぜか相手と距離があると感じる方向け。
  • 以下の記事で情報の一意性に興味を持たれた方向け。

https://zenn.dev/noranuko13/articles/618876efb89736

もしも「情報の一意性は範囲と条件によって決まる」と聞いてピンとこない方は、先に別記事を読むことをおすすめします。なんとなく分かっている方は、このまま読み進めて下さい。

重要性認識度と検出範囲

身近な会話で感じを掴んでみる

ITエンジニアの業務において一意性は重要です。と言われても、技術に詳しい開発者以外の方にはイメージしづらいかもしれません。そこでいくつか例を出します。

  • 母親にジャンプを頼んだら、赤マルジャンプだった。
  • 夫に牛乳を買ってくるよう頼んだら、乳飲料を買ってきた。
  • 父親の話を適当に聞いていたら、「アイマスとラブライブは違う」と力説された。

「全然違うだろうが!」と思った方もいれば、「違いが全然分からん」と思った方もいると思います。本人にとっては重要な違いなのです。というか、もはや別物といってもいいくらい。

では何故このようなすれ違いが起こるのか。

漫画の中身が違うとか、料理に使うのに種類が違うと困るとか、プロ野球と甲子園くらい違うだとか。そんなのは中身も理由も知らない外野からしたら、大して重要でないからです。知らなければ興味もないし、区別も付かないままだからです。

この例を聞いて「ん? 今って一意性の話をしてるんだよね?」という方もいると思います。確かに一見、関係ないように見えます。しかし「沢山並んでいるものの中から、今会話の中心になっている商品を特定する」という点では本質的に同じです。

範囲は商品棚、条件は特徴です。単にコンビニの書棚にある、ジャンプって大きく書いてある、それっぽい少年誌という条件で買ってくると、それが赤マルジャンプだったということなんですね。牛乳にしても青と白のパッケージだと思ってると失敗します。

重要性認識度の違い

もしも全員がジャンプっ子で、家族内で読み回す習慣があったら、母も買い間違えることはなかったでしょう。誰もが自分ごととしてジャンプの確保に走るため、むしろ家族チャットでダブらないように調整するくらいかもしれません。訓練されたご家庭ですね。

このように自分にとって重要だと認識できるかどうかは、個人の関心により異なります。作業を依頼した誰かにとっては大事な違いでも、作業を依頼された側にとっては割とどうでもいいとなると、高いコストを払ってまで良い仕事をしようとはなりません。

母親にだって掃除・洗濯・家事・育児などなど、毎日のTODOがあります。そのついでに頼まれたから買ってくるだけで、買い物袋はかさばるし、特に報酬があるでもなし。だからといって間違って買ってくると、それはそれで面倒事になるのですが。一体どうすれば。

もし良い仕事をしてもらうならば、利害が一致する側に引き込むか、それなりの報酬・対価を用意するかです。息子をアイマス沼に引きずり込んだり、夕飯の予定が好物のシチューからカレーになるとかですね。飴かムチかはお任せしますが。

検出範囲の違い

また牛乳のような紙パック飲料には、似たような違うものが沢山あります。成分調整牛乳、低脂肪牛乳、加工乳、乳飲料。中には牛乳に擬態しているパッケージもあります。

例えばホームページで確認する、見分け方を検索するなどすれば対応できそうです。目的の牛乳のキャプチャを撮ってチャットで送る、スーパーのチラシを添付する。また切欠き(開け口に付いている凹み)があるものが牛乳だと教えてもよいでしょう。

このように知識量を増やすことで、自分が検出可能な範囲を広げることができます。知識量が少ないままだと、店頭で多くの品物に出くわしたとき、一意に特定するための情報が足りていないことに気付けません。つまり検出範囲が小さいということです。

検出範囲が小さいことを許容する場合、検出範囲が大きい側が配慮する必要があります。作業を依頼するとき・されるとき、既に見えている範囲が違うのです。このため見えている側が特定に足る情報を事前に補足しないと、条件が足りなくて迷ってしまう・間違えてしまう訳です。

業務における一意性のすり合わせ

ここまでで大分イメージが付いたと思います。では業務中の事例で見ていきましょう。

バージョン情報は超重要

例えば他社で保守しきれなくなったWebアプリを引き継ぎ、バージョンアップ対応して欲しいという案件があったとします。開発者はフレームワークの種類やバージョンを真っ先に確認します。するとソースコードが来るまで詳しいことは分からないとのことです。あるあるですね。

例えばCSSフレームワークのBootstrapであれば、Bootstrap3まではLessも使えましたし、Bootstrap5からはjQueryが不要になりますし、いくつかのコンポーネントはバージョンアップごとに廃止されていますし、微妙に名前が変更されているクラスもあります。

要するに現在の状態によって、バージョン移行にかかるコストは大きく変わります。早めにバージョンだけでも特定しておきたいものです。しかしバージョン情報を重要だと感じるのは、開発者としてその重要性を認識できているからに他なりません。

多くのクライアントや技術に疎いマネージャーにとって、Bootstrapは「なんか画面が簡単に作れるんでしょ? どのバージョンも大して変わらないじゃん」程度のものでしかなく、実際に経験したことがなければバージョンアップの大変さは体感的に理解できないでしょう。

まだソースコードを事前に受け取り、開発者が見積を出した上で引き受けるならよいですが。詳細不明のまま「まあ、こんなもんだろう」で取ってくるとどえらい目に遭います。どうして起こるかは既にご存知の通り。営業にとって重要度が低く、検出範囲が小さいからですね。

相互理解と歩み寄り

ITの現場は分業制です。誰しもがある物事について専門家であり、別の物事について門外漢です。互いの専門領域について、完全に知識と能力を一致させるのは現実的でないですし、誰もそのような超人パワープレイは想定していない筈です。

ジャンプや牛乳の例は簡単でしたが、業務の専門分野では厳しいでしょう。ではどうするか。

きちんと情報共有を行うこと、間違いやすい部分は対策し説明すること。これに尽きます。より知識と技術を持つ者が相手の検出範囲を想定し、必要に応じて足りない知識を補充したり、できるだけ迷いにくい形で質問や作業依頼を行ったり。

起きるトラブルの原因の大半は、依頼する側の「これくらい説明せずとも知っているだろう」という怠慢と、依頼を受ける側の「これならどれでもいいだろう」という雑さにあるので、面倒臭がらずに密にコミュニケーションを取りましょうという、何ともありきたりな話です。

また互いの仕事に理解を示し、相手にとってその依頼がどのくらい重要かを知った上で、場合によっては優先順位を上げて対応するなどしていきたいものですね。

おわりに

よく日本語は主語や述語が抜けやすいといわれます。では主語と述語を適切に補い、文法的に正しくて過不足のない文章を構成することができたとして、それで全て伝わるでしょうか。恐らくそれだけでは情報の抜け漏れを防ぐことはできません。

  • 一意性を保証することの重要性認識度の違い。
  • 知識量や経験値による対象検出範囲の格差。

これらを意識した上で、相手が事象を一意に特定できる情報を渡すよう心がけなければなりません。この記事を読んだ方であれば、もう理由は何となく分かると思います。

あとは実践あるのみなので、少しずつ知識を増やす努力を行い、相手の立場や関心事を理解するよう心がけてみましょう。

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