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AIが変えた英語登壇。活用と実践テクニック

2025/04/13に公開
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こんにちは、noppeです。
先日のtry!Swift 2025で「Spice up your notifications.」というタイトルで英語での登壇をしました。

この登壇は、2019年のtry!Swift Tokyoでの登壇以来の2回目の英語登壇でした。
この6年間で英語登壇の準備方法は劇的に変わったと感じています。
今回は、これまでの経験から得たノウハウと、特にAIツールが普及した現在と以前との違いについて共有します。

TOEICを受けたことすらなく、英語を聞くのも話すのも得意ではありませんが、適切な準備と心構え、そして現代のAIツールを活用することで効果的なプレゼンテーションが可能になったと思います。
特に英語が苦手な方にとって参考になる内容になれば幸いです。

英語のハードルを下げる日常の取り組み

英語での登壇を成功させるためには、イベント直前の準備だけでなく、日頃から英語に触れる機会を増やすことが大切だと感じています。
全く英語に触れなかった2019年の登壇と比べて、2025年の登壇では、何かリラックスして話せたようにも思います。
特に英語の勉強や試験勉強をしていたわけではありませんが、振り返ると影響の大きかったなと思うものをいくつか挙げてみます。

海外に行った

2019年と2024年にはWWDCに参加する機会を得ました。
そもそもとして、現地での英語経験はコミュニケーションに対する不安を大きく軽減してくれました。
例えば、買い物をした後に「Have a nice day」と言ったり、どいて欲しい時に「excuse me」と言ったり、そういった日常のセリフも、現地に行くまでは何かドラマの中のセリフのように思っていました。
実際に使ったり聞いてみると、全く知らない状態から比べて、英語に対する抵抗感が大きく減ったのを実感しました。

また、WWDCでは、Appleや世界中のエンジニアと直接会話する機会もありました。
技術的な質問を英語で行い回答を理解する1on1セッション、コミュニティの集まるレジストレーションパーティなど、様々な場面で英語を使いました。英語力の低さのため完璧にはいきませんでしたが、ジェスチャーやスマホを見せるなどして何とかコミュニケーションを取ることができました。

そこで感じたのは、相手に何かを伝えたいというパッションは、言語の壁を越える力があるということです。
英会話において、相手がこちらの意図を汲み取ろうとしてくれる事は大きな助けになります。これを手札として持って置けるというだけで、会話のハードルは大きく下がったように思えます。

社内での英語プラクティス

会社の定例ミーティングを英語で実施する取り組みも始めました。進捗報告や技術共有セッションを英語で行い、英語に触れる機会を増やしています。
最初は緊張しますが、回を重ねるごとに自然と英語で話せるようになりました。特にエンジニアリングの話題に絞ることで、必要な語彙も限定され、習得しやすくなります。

この実践から得られた予想外の収穫は、他のエンジニアの言動から「間の繋ぎ方」や「自然な相槌」のパターンを学べたことです。例えば「Got it」「yap」といった相槌や、「And then...」のような会話の繋ぎ方は、実際に使われる現場を見ることで自然と身につきました。

2019年 vs 2025年 英語登壇準備の進化

2019年の登壇体験

初めてtry!Swiftで英語登壇したのは2019年でした。当時はGoogle翻訳くらいしかなく、翻訳精度も現在ほど良くありませんでした。準備は以下のような流れでした。

  1. 日本語の原稿を作成
  2. Google翻訳で一次翻訳
  3. 社内の英語が得意な同僚にレビュー依頼
  4. フィードバックをもとに修正

しかし、この方法には明らかな限界がありました。

  • レビュアーは英語は得意でも技術用語に詳しいわけではない
  • 翻訳の自然さと技術的正確さの両立が難しい
  • 発音の練習は自分でYouTubeの動画を参考にするしかなかった
  • 結果として、英語は文法的に正しくても「聞きやすい」プレゼンテーションになったかは不確かだった

2025年 AIツールを活用した準備

それに比べて現在は、ChatGPTやDeepLなどの高精度な翻訳・AIツールにより、準備プロセスが格段に効率化されています。次章以降で詳しく説明しますが、AIを活用することで

  • 技術的に正確かつ自然な英語表現の獲得
  • 発音のリアルタイムフィードバック
  • プレゼンテーションの時間感覚の把握
  • 聴衆にとって理解しやすい表現への言い換え

といったことが可能になっています。6年前には考えられなかった水準の準備が、個人でも行えるようになりました。

登壇前の準備

英語スクリプトの準備とAI活用法

エンジニアリングの専門用語を英語で適切に表現するのは難しいものです。try!Swift 2025での経験から、以下のようなプロセスが効果的でした。

まずは日本語で自然に伝えたい内容を書き出します。ここは重要なポイントで、AIに丸投げするのではなく自分の言葉で書きます。
結局のところ、なぜ登壇するのかという筋を通すためには、自分の言葉で伝えたいことを整理することが不可欠だと思っているからです。
これをChatGPTで英語に翻訳してもらいます。

次に、エンジニアリング用語の確認を行います。単純な翻訳だと不自然になることがあるため、業界で一般的に使われる英語表現を調べます。例えば、「画面遷移」は直訳だと "screen transition" ですが、実際には "navigation" や "routing" が一般的です。

ChatGPTを使った翻訳と調整では、「これはiOS開発に関する技術的なプレゼンテーションです」と指示し、自然な英語に翻訳してもらいます。翻訳後は「この英文は技術カンファレンスで自然に聞こえますか?」と確認します。
難しい表現があれば「同じ意味でよりシンプルな表現はありますか?」と質問すると効果的です。

発音のチェックと練習では、ChatGPTの会話モードで翻訳した英文を読み上げてもらい、時間を計測します。
発音しづらい単語を特定し、より発音しやすい代替単語を求めることも重要です。例えば "particularly" を "especially" に、"utilize" を "use" に置き換えるなどの工夫ができます。
ChatGPTの音声読み上げ機能で発音を聞きながら練習することも効果的です。

発音練習にはChatGPTを活用し、「登壇内容を話すので、フィードバックを教えてください」と指示します。実際に1文ずつ発話し、リアルタイムでフィードバックを得ることで、問題のある発音や言い回しを即座に修正できます。

ChatGPTとの会話は音声付きでエクスポートできるので、その音声ファイルを使って発表の練習に活用します。音声を聞きながら自分も発音することで、リズムやイントネーションを身につけられます。

トークスクリプトは、自分の場合、日本語であってもトピックだけでなく完全なものを用意しています。
これにより、最悪の場合は「ただ書いてあることを読めば良い」という安全策を確保できます。
読み方に迷う単語や数字には発音メモを付けます。例えば「2019年 → (twenty-nineteen)」「Swift 5.10 → (Swift five point ten)」などです。

最後に登壇時は、感情表現と非言語コミュニケーションを意識します。
話すことはトークスクリプトに書かれているので、残された余裕はジェスチャーや表情に使います。
さらに余裕があれば、トークスクリプトから目を離して聴衆を見たり、スライドを指差したりすることも考えます。
自分の場合、準備の重要性はこの部分に集約されていると思っています。
登壇中に「何を話すか」ではなく「どう話すか」に集中できるようにするための準備です。

今後の挑戦、LTから本格的なセッションへ

今回と2019年の登壇は、どちらもLT(Lightning Talk)形式の5分間のプレゼンテーションでした。短時間かつ「Ask the speaker」の質疑応答時間がないフォーマットだったため、一方的に発信することに集中できました。

短いLTは英語登壇の良い入門になります。準備すべき内容量が少なく、原稿を完全に暗記することも可能で、想定外の質問に対応する必要もないため始めやすいでしょう。

次のステップとして、次回のtry!Swiftで20分の本格的な英語セッションにチャレンジしたいと考えています。
長時間のセッションでは、より多くの内容を体系的に伝える必要があり、質疑応答で聴衆の質問を正確に聞き取る能力が求められ、予定外の質問にその場で対応する即興性も必要になります。

特に「相手の発音を聞き取る」ことは、一方的な発表とは異なるスキルセットが求められます。
しかし、AIツールの進化により、英語の壁は以前よりも低くなっています。きっと来年には今以上に発音や表現の確認が容易になり、聴衆とのインタラクションもスムーズに行えるようになると思います。

まとめ

国内カンファレンスでの英語登壇は、英語力を試すだけでなく、国際的な視点でコミュニティに貢献する素晴らしい機会です。
完璧な英語である必要はなく、自分の知識と経験を共有する姿勢が最も重要です。
日常的な英語環境への取り組みとAIツールの活用で、効果的な英語プレゼンテーションが可能になります。ぜひチャレンジしてみてください。

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