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【農系IoT】M5を使って発酵熱をハックしてみる その1

2024/06/29に公開

冬になると来春用の野菜苗を育てるために温床という苗床を作ります。

そのときに落ち葉、米ぬか、鶏糞、牛糞、油粕などを混ぜて、微生物の活動によって熱がでるのですが、C/N比というものと微生物の働き、それによる分解がどう関係しているのかをしりたくなりました。

なんか思ったより面白くて年末年始は鶏糞に夢中でしたのでシェアします。

C/N比というもの

YANMAR HPより

https://www.yanmar.com/jp/agri/agri_plus/soil/articles/03.html

C/N比(炭素率)とは有機物に含まれる窒素に対する炭素の割合を示す数値です。微生物は、有機物に含まれる炭素(炭酸ガス)をエネルギー源として、また窒素をタンパク源として利用し増殖します。

そして、この微生物が生存と増殖を繰り返すことで、窒素や炭素を消耗することでC/N比が低下します。つまり堆肥化とは、C/N比を下げていくことを意味しています。

有機物の分解には微生物の増殖が欠かせません。窒素が必要です。稲わらなどC/N比の高い(炭素の多い)有機物は分解の過程で窒素を消費します。しかし、有機物自体で窒素をまかなえない場合は、土壌の窒素も利用します。その結果、作物が吸収するはずの窒素が稲わらの分解に利用され生育が阻害されます。これが窒素飢餓です。

窒素飢餓を起こさないためには、窒素を多く含む牛糞や豚ぷんなどの窒素肥料を補う必要があります。また、堆肥の発酵には適切な水分が重要で、水分の多い牛糞や豚ぷんなどを材料とする場合には、バークやおがくずなどで水分を調整し、通気性を良くし、発酵を促します。

(表1)にさまざまな有機物のC/N比を示しました。

実際に温床を作ってみることにした

①標準区 約10Lプランターに下記の3種類の有機物を積層する

1.落ち葉(C/N比高)

2.米ぬか(C/N比普通)

3.鶏糞(C/N比低)

②対照区 約10Lプランターに下記の3種類の有機物を積層する

1.落ち葉(C/N比高)

2.米ぬか(C/N比普通)

3.牛糞(C/N比普通)

結果の予測

①に対して②が温度上昇及び下降が緩やかで長持ちする(はずでしょ!?)

計測機器

マイコンはM5Stackを使用

コード等製作プロセスは別途

①Si7021 温湿度センサ(外気測定(DS18B20が怪しかったときの校正用))

Si7021搭載 温湿度センサモジュール — スイッチサイエンス

②DS18B20 防水プローブ

https://amzn.asia/d/5St17F6

1.外気計測用

2.標準区計測用

3.対照区計測用

計3個使用

③AtomCam2

https://www.atomtech.co.jp/products/atomcam2

腐食の進行を定点観測

計測方法

・温度情報

籠に標準区、対照区の試験部材を入れ、それぞれにDS18B20を挿入した。

ビニールの影響を差分するために、標準区と対照区の間にDS18B20(外気温2)を設置した。

さらにビニールの影響と外気温を比較するためにSi7021(外気温)はビニールの外に設置した。

15分置きに温度のデータを取得し、ambientに送信する。

グラフの識別は以下

試験区

標準区(米ぬか、鶏糞、落ち葉):青

対照区(米ぬか、牛糞、落ち葉):橙

外気温(ハウス内温度):緑

外気温2(試験区内温度):茶


AtomCam2はビニールの中で腐食が進む様子をモニタリングするために設置

実験結果


標準区(米ぬか、鶏糞、落ち葉):青

対照区(米ぬか、牛糞、落ち葉):橙

外気温(ハウス内温度):緑

外気温2(試験区内温度):茶

気温(アメダス):灰

試験結果まとめと考察

標準区は試験開始から3日目(12/27)から外気温を超えて6日目(12/30)に最大で50℃を超えた。

対照区は試験開始から4日目と5日目で20℃に達し、最大の温度を示した。6日目には低下傾向にあった。ただし、気温を超えていないため、自家発熱か、気温の影響かは判断出来ない。

⇒低C/N比の鶏糞 は短期的に微生物の活性を上昇させることが分かった。

⇒牛糞は保水力があり、気温の影響を受けにくいことが分かった。

標準区、対照区ともに試験開始から5日目~6日目を境に温度は低下傾向。

⇒たい肥は施肥してから1週間くらい置いてから定植をするという通説と微生物の発熱の傾向が一致した。

結論

温床には鶏糞。

たい肥を入れてから1週間は定植しないほうがいい。

これらは都市伝説では無かったということでした。

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