圏論 原著第2版の練習問題を解いてみます。
2章-10
離散半順序集合は射影的である
離散半順序集合を D とする。
エピ射 e: E \to B と f: D \to B が与えられたとする。
半順序集合間の単調写像がエピ射であれば全射であるので、
各 d \in D に対して、g(d) \in E を選び、e(g(d)) = f(d) となるようにすることができる。
D は離散半順序集合であるので、d_1 \leq d_2 \implies d_1 = d_2 が成り立つ。
よって、g(d_1) = g(d_2) となり g(d_1) \leq g(d_2) が成り立つ。
よって、g は単調写像である。
以上より、e \circ g = f となるような g: D \to E が存在するので、離散半順序集合は射影的である。
射影的ではない離散半順序集合の例
D を離散半順序集合 \{0, 1\} とする。
C を D に 0 \leq 1 を追加した半順序集合とする。
B = C とし、e: E \to B を e(0) = 0, e(1) = 1、f: C \to B を f(0) = 0, f(1) = 1 とする。
e は全射(エピ射)かつ、単調写像である。
f は単調写像である。
C が射影的であるとすれば、e \circ g = f となるような g: C \to E が存在する。
g は単調写像でなければならないので、g(0) \leq g(1) となる必要があるが、それは g(0) = g(1) となることを意味する。
g(0) = g(1) とすると、e(g(0)) = e(g(1)) = f(0) = f(1) が成り立つ必要があるが、 f(0) = 0, f(1) = 1 なので矛盾する。
よって、C は射影的ではない。
射影的な半順序集合は離散である
P を離散的でない半順序集合とし、 \exists x, y \in P x \leq y が成り立つとする。
E を P を台集合とする離散半順序集合とする。
B = P とし、e: E \to B と f: P \to B を 恒等写像とすると、e, f は単調写像である。
P が射影的であるとすれば、e \circ g = f となるような g: P \to E が存在する。
x \leq_P y \implies g(x) \leq_E g(y) である必要であるが、 g(x) \leq_E g(y) \implies g(x) = g(y) である必要がある。
これは x \neq y と f が恒等写像であることに矛盾する。
よって、P は射影的ではない。
離散的でない半順序集合は射影的ではないため、射影的な半順序集合は離散的である。
\mathbf{Set} \cong \operatorname{Proj}(\mathbf{Pos})
前述で、射影的な半順序集合は離散的であることを示した。そのため \operatorname{Proj}(\mathbf{Pos}) の対象は離散的半順序集合に限られる。
この時、対象間の関数は全て単調写像である。
ここで2つの関手を考える。
\begin{aligned}
F : \mathbf{Set} &\;\longrightarrow\; \operatorname{Proj}(\mathbf{Pos})\\
F(X) &= X_{\text{disc}}\\
F(f) &= f
\end{aligned}
\qquad
\begin{aligned}
G : \operatorname{Proj}(\mathbf{Pos}) &\;\longrightarrow\; \mathbf{Set}\\
G(P) &= |P|\\
G(g) &= g
\end{aligned}
この2つの関手は互いに逆であることを確かめる。
対象について
G(F(X)) = |X_{\text{disc}}| = X \\
F(G(P)) = |P|_{\text{disc}} = P
射については、写像をそのまま送るだけなので
G \circ F = \operatorname{id}_{\mathbf{Set}} \\
F \circ G = \operatorname{id}_{\operatorname{Proj}(\mathbf{Pos})}
よって、F, G は互いに逆であるため、\mathbf{Set} \cong \operatorname{Proj}(\mathbf{Pos}) が成り立つ。
参考文献
Category Theory (Oxford Logic Guides)
圏論 原著第2版
Discussion