圏論 原著第2版の練習問題を解いてみます。
1章-3(a)
以下の内容で \text{Sets} において同型は全単射に一致することを示す。
1. 同型ならば全単射である
\text{Sets} において、 f: A \to B が同型射であるとする。
1.1. 全射であること
任意の b \in B に対して、 f(f^{-1}(b)) = b となる f^{-1}(b) \in A が存在するため、 f は全射である。
1.2. 単射であること
f(a_1) = f(a_2) のとき、 f^{-1}(f(a_1)) = f^{-1}(f(a_2)) となる。
また f^{-1}(f(a_1)) = a_1 と f^{-1}(f(a_2)) = a_2 より、 a_1 = a_2 となるため、 f は単射である。
1.1. と 1.2. より、 f は全単射である。
2. 全単射ならば同型である
f: A \to B が全単射であるとする。
全単射の性質から、任意の b \in B に対して、唯一の a \in A が存在して f(a) = b を満たす。
この性質を用いて g: B \to A を g(b) = a \iff f(a) = b と定義する。
2.1. g \circ f = \text{id}_A
g(f(a)) = a となるため、 g \circ f = \text{id}_A が成り立つ。
2.2. f \circ g = \text{id}_B
f(g(b)) = b となるため、 f \circ g = \text{id}_B が成り立つ。
2.1. と 2.2. より、 g \circ f = \text{id}_A と f \circ g = \text{id}_B が成り立つため、 g は f の逆射である。よって f は同型射である。
3. 結論
- と 2. より、 \text{Sets} において、 同型射は全単射に一致する。
1章-3(b)
以下の内容で \text{Monoids} において同型は全単射な準同型写像に一致することを示す。
1. 同型ならば全単射な準同型写像である
\text{Monoids} において、 f: M \to N が同型射であるとする。
f は集合間の写像であり、全単射であることは3(a)で示した。
2. 全単射な準同型写像ならば同型である
f: M \to N が全単射な準同型写像であるとする。
3(a) と同様に、 g: N \to M を g(n) = m \iff f(m) = n と定義する。
また、 M の単位元を e_M 、N の単位元を e_N とする。
2.1. g \circ f = \text{id}_M
g(f(m)) = m となるため、 g \circ f = \text{id}_M が成り立つ。
2.2. f \circ g = \text{id}_N
f(g(n)) = n となるため、 f \circ g = \text{id}_N が成り立つ。
2.3. g は準同型写像である
任意の n_1, n_2 \in N に対して、 n_1 = f(m_1) , n_2 = f(m_2) とすると、
g(n_1 \cdot_N n_2) = g(f(m_1) \cdot_N f(m_2)) = g(f(m_1 \cdot_M m_2)) = m_1 \cdot_M m_2 = g(n_1) \cdot_M g(n_2)
となる。
また、g(e_N) = g(f(e_M)) = e_M であるため、 g は準同型写像である。
2.1. と 2.2. と 2.3. より、 g は f の逆射である。よって f は同型射である。
3. 結論
- と 2. より、 \text{Monoids} において、 同型射は全単射な準同型写像に一致する。
1章-3(c)
以下の内容で \text{Posets} において全単射な準同型写像が同型射ではない例を示す。
Poset の定義
Poset P と Q を以下のように定義する。
\begin{aligned}
P &= \{a, b, c\}, a \leq b, a \leq c \\
Q &= \{x, y, z\}, x \leq y, x \leq z, y \leq z
\end{aligned}
写像 f: P \to Q の定義
写像 f: P \to Q を以下のように定義する。
\begin{aligned}
f(a) &= x \\
f(b) &= y \\
f(c) &= z
\end{aligned}
写像 f の全単射性
f は P の各要素を Q の各要素に一意に対応付けているため、全単射である。
写像 f の準同型性
a \leq b のとき、 f(a) = x \leq y = f(b) となる。
また、 a \leq c のとき、 f(a) = x \leq z = f(c) となる。
よって、 f は準同型写像である。
逆写像 g: Q \to P の定義
逆写像 g: Q \to P を以下のように定義する。
\begin{aligned}
g(x) &= a \\
g(y) &= b \\
g(z) &= c
\end{aligned}
写像 g の準同型性が破綻することの確認
y \leq z のとき、 g(y) = b \not\leq c = g(z) となる。
よって、 g は準同型写像ではない。
結論
f は \text{Posets} において全単射な準同型写像であるが、 g は\text{Posets} において準同型写像ではないため、 f は\text{Posets} において同型射ではない。
参考文献
Category Theory (Oxford Logic Guides)
圏論 原著第2版
Discussion