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EAMの勘所 第2回: プランニングとスケジューリング - 計画管理とスケジュール管理は違います

2024/04/25に公開

「計画管理とスケジュール管理の違いがわかりますか?」という質問をすると日本では「それって、同じことを言っているじゃない!」という返答が帰ってくることがあります。しかし、保全管理に関して計画管理とスケジュール管理は明確に目的が異なり、また担当者が異なります。日本では計画管理とスケジュール管理を同じ担当者が担っている場合がほとんどなので、この両者の違いを正確に説明することが出来ないのです。

計画管理とは

計画管理は文字通り「計画」を管理する業務です。では保全管理における「計画」とは何でしょうか?通常保全の計画は次年度の予算策定を行う都合上、実際の作業の9ヶ月から12ヶ月以前に作成されます。この計画段階では作業の大体の時期、機関、予算などが検討され、次年度予算の作成に当たり、基礎的な情報となります。また計画段階では保全工事作業に必要な人員の確保や資材の確認など「仕事の段取り」として行うべき内容に関して確認し、準備します。以下の計画段階で管理すべき項目を示します。

  • 作業件名、作業時期、作業期間、影響度

  • 必要人員の確保の目処(特に定期修繕工事のような場合)

  • 作業概算(人件費、資材費、外注費用、工具費など)

  • 予算管理部門との調整、優先度の決定

  • 所管官庁への許可取得の準備

  • 製造・運転部門、生産計画部門、調達部門との調整

上記のように、計画管理者は比較的企業の多くの部門と関係し保全作業に関する全般的な責任を持ち、部門間の調整役となります。従って計画担当者はどちらかというとマネージメント系の担当者はその職責を担います。

スケジュール管理とは

計画管理に対して「スケジュール管理」は実際に保全作業が予定の期日、期間で終了できるようにする管理を行います。計画作成時に計画された予定期日は様々な理由(生産計画の変更、作業員不足など)で変更されます。1つの作業の実行日が変更になると、別の作業にも大きな影響が出てきます。これは保全作業員の配備状況が変化するからです。

また作業の実行時期が早まった場合には「保全作業に必要な資材が納入されない」場合などもなり、実際の保全作業を実行するためには非常に細かで慎重な管理は必要になります。また保全の作業員は病気や個人的理由で作業に参加できなくなる場合もあり、日々発生する様々な変化を把握・管理する必要があります。このすべてをスケジュール管理と呼びます。

スケジュール管理では以下の作業を行います。

  • 計画の目標スケジュールから実際の作業スケジュールの作成

  • 配置する作業員の確認、勤怠情報の把握、作業に対する割当

  • 作業に必要な資材(在庫状態)、またはレンタル工具などの確認

  • 作業許可の調整

  • 作業遅れ、突発事故発生に関する支援

  • 製造・運転部門、生産計画部門、調達部門との最終調整

  • 月間・週間作業表の作成

スケジュール管理者は「日々刻々と変化する状況と戦いながら、計画管理者が作成した計画を着実に処理する」、それがスケジュール管理者です。

日本と米国の考え方の違い

本章の冒頭、「日本では計画管理とスケジュール管理を同じ担当者が担っている」という説明をしましたが、実際にはこれに加えて、作業管理を行い、また実際の作業に参加をしています。すなわち保全担当者がすべてを行っているわけです。この場合の欠点は担当者によって管理能力が異なるため計画ミスまたはスケジュールミスが発生する確率が高くなります。

欧米ではこの反対に計画管理者及びスケジュール管理を専任で割当、作業の管理をおこないます。従って保全作業者はわずらわしい事務的な管理ら開放され、技術や作業のみに集中することが出来ます。また計画管理者及びスケジュール管理者はその管理能力を向上させることができます。この場合の欠点は管理者が多くの対象を管理するため、ミスの波及範囲が大きくなることが予想されます。

この2つの方式のどちらが効率的かは歴史や文化的背景があるため一概にはいえませんが、1つの保全作業を行うに当たって準備作業の総量は日本でも米国でも同じです。どちらがの方式が効率的かはみなさんの環境で一度、議論すると良いかもしれません。

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