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【性能比較】Raspberry Pi 5 vs MiniPC

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ラズパイと似たような存在としてミニPCがいます。

ラズパイはマイコンなどの下位レイヤの制御機器をより複雑な処理を行うために高級化したもの、一方で、ミニPCはオフィスで使われるようなOSが入ったリッチな制御機器をより特定用途向けに低電力、安価にしたもの、といったように元々は違う歴史を持ったものです。

ラズパイは数年前こそ約3,000円/1台くらいで買えましたが、今は約15,000円/1台(8GBモデル)になりました。もちろん性能は向上してますが、円安だの半導体不足だのそういった背景も絡んでると思います。こーゆーのは詳しくないですが。

つまるところ、ラズパイ本体と電源、ケース諸々揃えると2~3万は行くんです。
そして最近のミニPCも2~3万円で買えるんです。最低限の付属ケーブル類が付いててIntelCPUも使えます。Windowsライセンスまで付いてます。

もしかして、ラズパイよりミニPCの方がよいのでは・・・?

ということで、似たような値段のラズパイとミニPCで比較してみました。

↓ちなみにRaspberry Pi 5でmicroSDとSSDの性能差についても前回比較してみたのでよければ

購入機器と費用の比較

ラズパイはmicroSDかSSD、ケースの有無など削ろうと思えば削れる部分はありますが、miniPCと近づけるためにNVMe SSDでブート、ケース有りの構成にしました。
また、ミニPCはデフォルトでWindows11 Proが入っていましたが、類似環境を作るためDebian 13(Trixie)をクリーンインストールしました。

Raspberry Pi 5

名称 費用 リンク
Raspberry Pi 5 / 8GB ¥14,960 秋月電子通商
Raspberry Pi 公式ACアダプター(27W) 黒 ¥2,750 秋月電子通商
ElectroCookie Case + Geekworm X1001 ¥4,390 Amazon
Silicon Power NVMe SSD 256GB ¥2,980 Amazon

Mini PC

名称 費用 リンク
GMKtec Nucbox G3 Plus ¥26,241 Amazon

Mini PC 合計: ¥26,241
Raspberry Pi 5 合計: ¥25,080

値段はほぼ一緒になりました。(価格差:1,161円)

スペック比較をするとこうなります。

特徴 GMKtec Nucbox G3 Plus Raspberry Pi 5 8GB
CPU 第13世代 Intel N150 (4コア/4スレッド, 最大3.6GHz) Broadcom BCM2712 (2.4GHz, 4コア Arm Cortex-A76)
RAM 16GB DDR4 8GB LPDDR4X-4267
ストレージ 1TB SSD (M.2 NVMe PCIe3.0) 256GB SSD (M.2 NVMe PCIe3.0)
グラフィックス Intel Graphics VideoCore VII GPU
OS Debian 13(Trixie) Raspberry Pi OS (Trixie)
ネットワーク Wi-Fi 6、Bluetooth 5.2、2.5G有線LAN 802.11ac Wi-Fi、Bluetooth 5.0 (BLE)
主要ポート USB 3.2 x 4, HDMI x 2 USB 3.0 x 2, USB 2.0 x 2, micro-HDMI x 2, 40ピンGPIO
その他 Vesaマウント対応、ワイヤーロック対応、SATA SSD追加スロット×1 ラズパイカメラモジュール用端子×2

ラズパイはGPIOがあるのが利点くらいで、スペック的にはミニPCの方が圧倒的に強い
消費電力については明確な情報はないがラズパイの方が少ないみたい(Geminiに聞いた)

業務目線だとミニPCはワイヤーロックがあるのは嬉しい。工場セキュリティルールがどんどん煩くなってるから標準でこういうのがあるのは痒い所に手が届く感じ。
ただし、供給保障という観点ではラズパイは10年くらいあるが、低価格ミニPCの多くは保証がない(ほとんどが中国製)ため、替えが効かないのは怖いかも。

性能比較方法について

手軽にできて幅広くベンチマークできるツールないかなぁと調べてたら、**「Phoronix Test Suite」**というツールを見つけました。様々なOSに対応するベンチマークプラットフォームツールです。

Debian(Raspberry Pi OS)でももちろん使えるので両方とも同じ方法でインストールしました。

↓こちらのHPCシステムズさんのブログを参考にさせていただきました。
https://www.hpc.co.jp/tech-blog/2025/09/01/ubuntu-benchmark-autumn-nights/

インストール手順

  1. aptリポジトリ、パッケージ更新
    sudo apt update
    sudo apt upgrade
    
  2. PHPのインストール
    sudo apt install php-pear
    
  3. Phoronix Test Suiteのリポジトリをダウンロードして解凍
    wget https://github.com/phoronix-test-suite/phoronix-test-suite/archive/refs/heads/master.zip
    unzip ./master.zip # ダウンロードしたzipファイル名を指定
    
  4. 解凍したフォルダ(phoronix-test-suite-master/)からインストール
    cd phoronix-test-suite-master/
    sudo ./install-sh
    
  5. バージョン確認
    phoronix-test-suite version
    

バージョンが表示されたらインストール完了です

ベンチマーク項目については以下のコマンドで確認できます。

phoronix-test-suite list-available-tests

テストスイートは以下で確認できます。

phoronix-test-suite list-available-suites

テストスイートは複数のテスト項目を一式(=スイート)にまとめたものです。
特定のサービスやライブラリについてベンチマークしたいときは"list-available-tests"、幅広くベンチマークしたいときは"list-available-suites"から選べばいいと思います。

折角なのでテストスイートで計測してみることにします。
⇒ 一晩待っても一日待っても終わらず、、予定終了時間も9日以上(当初は3時間半だったのに)だったので、個別テストで計測しました。

ベンチマーク項目

今回は主要な項目について計測してみることにします。Gemini君と相談しました。

測定項目 実行テスト 測定内容の概要
CPU pts/compress-7zip 7-Zipによるデータ圧縮・解凍速度
メモリ pts/stream メモリの持続的なデータ転送速度
ディスク pts/fio ディスクのランダム・シーケンシャルアクセス性能
ディスク pts/sqlite SQLiteデータベースへのトランザクション処理性能
ディスク pts/pgbench PostgreSQLデータベースへのトランザクション処理性能

他にもネットワークやGPU関係もありますが、今回は基本性能をとりあえず見たいので上記の4つを確認します。データベースをよく使うのでsqlite、postgreSQLのテストを入れてみました。

テスト項目の実行

実行方法は2つあります。
一つのテストを実行するとき

phoronix-test-suite benchmark {テスト名}

複数のテストを一括で実行するとき

phoronix-test-suite batch-benchmark {テスト名} {テスト名} {テスト名}

軽くテストをしたいときは単一実行、夜寝てる間や出社する前に実行して放置したいときは複数実行という風に使い分ける感じです。

実際に実行したコマンドは以下になります

phoronix-test-suite batch-benchmark pts/compress-7zip pts/stream pts/sqlite

コマンドを実行すると、まずベンチマークの実行に不足している依存パッケージのダウンロードを促されます。(既に全てインストール済の場合はスキップされます)

ずらーっとaptパッケージが表示されます。(これはスイート実行時の画面です)

パスポートの入力が促されるので入力します。が、ここがユーザーのパスワードを入力すると認証失敗となり、うまく行きませんでした。なぜかrootのパスワードを入力するとうまく行きます。
sudo権限は付与済みですがここはよくわかりませんでした。パッケージリストは表示されるので、手動でインストールするか、suでrootログインしてから実行でもいけると思います。

↓ちなみに失敗したときは、どうするか判断しろと言われます。3を選んで再トライしましたが駄目でした。(再トライで失敗するとそのまま勝手に続行しますが、どこかでエラーになります。なりました。)

ここからベンチマークに必要なファイルやツールをダウンロードしていきます。
Estimated Install Timeにダウンロードにかかる推定時間が出ます。

そしてダウンロードが終わるとベンチマークを行う前に色々聞いてきます。
テスト結果は保存したいので"Y"、結果ファイル名はお好みで。
他2つは特に不要そうだったのでそのままエンターキー押してスキップしました。

単一のテストを実行した場合のみに限り、どのような条件でテストを行うか選択を行います
テスト項目によって選択内容は異なります。ない場合もあります
また、batch-benchmarkやスイートを実行したときは全パターンで実行されるみたいです。

テストを実行していきます。「Estimate Time to Completion」に全てのテスト完了までの推測時間が表示されてます。今回のテストだと約45分くらいでした。

もしテストを実行したときに以下のような表示が出た場合は、以下のコマンドを実行してから再度実行するとより高いパフォーマンスで計測が可能みたいです。

echo performance | sudo tee /sys/devices/system/cpu/cpu*/cpufreq/scaling_governor

テストが完了したら最初に指定した名前で~/.phoronix-test-suite/test-results/に入っています。

性能比較結果

ラズパイとミニPCでテストを終えたら、~/.phoronix-test-suite/test-results/の該当フォルダをどちらかに転送します。転送先も~/.phoronix-test-suite/test-results/です。
まず以下のコマンドでマージすると、merge-****という新しい結果フォルダが生成されます。

phoronix-test-suite merge-results {ラズパイフォルダ名} {ミニPCフォルダ名}

以下のコマンドで比較結果を表示します。

phoronix-test-suite show-result merge-****

こんな感じでインジゲータで表示されます。

表でまとめた結果は以下になります。

結果比較

ベンチマーク項目 ミニPC Raspberry Pi 5 勝者
7-Zip 圧縮 (MIPS) 17720 12138 ミニPC
7-Zip 解凍 (MIPS) 11910 13594 ラズパイ5
メモリ Copy (MB/s) 20801.6 6911.1 ミニPC
メモリ Scale (MB/s) 13769.3 8263.6 ミニPC
メモリ Triad (MB/s) 15451.0 6636.5 ミニPC
メモリ Add (MB/s) 15432.6 7069.2 ミニPC
FIO ランダム読込 (MB/s) 1704 431 ミニPC
FIO ランダム書込 (MB/s) 992 389 ミニPC
FIO シーケンシャル読込 (MB/s) 1507 431 ミニPC
FIO シーケンシャル書込 (MB/s) 970 400 ミニPC
SQLite (1スレッド, 秒) 26.67 8.76 ラズパイ5
SQLite (2スレッド, 秒) 45.28 13.01 ラズパイ5
SQLite (4スレッド, 秒) 45.85 17.67 ラズパイ5
PostgreSQL 読込 (TPS) 66331 43150 ミニPC
PostgreSQL 読込 (遅延 ms) 1.508 2.318 ミニPC
PostgreSQL 読込/書込 (TPS) 7227 4843 ミニPC
PostgreSQL 読込/書込 (遅延 ms) 13.84 20.65 ミニPC

※ PostgreSQLは"scalling factor"=100, "client"=100

基本性能はスペック通りミニPC(GMKTek Nucbox G3 Plus)の方が全体的に高い結果になりました。
ただし、sqliteの読み書きやzipの解凍に関してはラズパイの方が優れるという結果になりました。この後もsqliteのテストをしてみましたがほぼ同じ結果になりました。

メモリとストレージは圧倒的にミニPCの方が優れてるので、CPUの処理性能がラズパイの方が優秀なんでしょうか。ARMよりX86の方が高性能と勝手に思い込んでましたが、場合によっては必ずしもそういうわけではないんですね。
純粋にsqliteの結果は3倍くらい違うので、スペックだけ見て判断してはだめですね。良い勉強になりました。

終わり

Phoronix Test Suiteを使ってミニPCとラズパイの性能比較をしてみました。
当初は数時間でベンチマークを終わらせようと思ってましたが、推測時間が全然あてにならない、純粋にめっちゃ時間が長い、ARMに対応してない、やたらエラーが起きる、と結構踏んだり蹴ったりな感じで3日くらいかかり疲れました。
性能が低いPCで行うには少し高級すぎるベンチマークツールかもしれません。
ただし、様々なアプリケーションベースでテストができ、結果比較も簡単に行えるので使いこなしたら大分使いやすそうです。

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