「The Unicorn Project The DevOps 勝利をつかめ!技術的負債を一掃せよ 」感想
私のThe best book of 2022です。
どんな本
広い意味でのDevOpsを題材にした「小説」です。CI/CDやパイプライン、と言った単一の技術だけのことではなく、組織改革として意味であり、プロジェクト、ひいては会社を成功に導くための組織や人の有り様などを含めた広い意味(というか正しい意味)としてのDevOpsを扱っています。
小説として面白く、DevOpsを学べる、またロールモデルを得られるという意味で、とても良い本です。
内容
壮絶です。エンジニア版ホラー映画です。狂気と悲鳴の宴です。
舞台は、オートバックスみたいなBtoCのカー用品小売業・メンテナンスサービス業の企業で、主人公は、優秀なシニアITエンジニアのマキシンです。
話は、家族との長期休暇中に起きたシステム障害の欠席裁判で、マキシンが万年炎上のゾンビプロジェクト(しかしなぜか経営陣からは社運を託されている)に飛ばされる所から、話が始まります。
インターン生にすら同情されるという屈辱を乗り越え、気を取り戻し、新天地で頑張ろうとするやいなや、数週間、担当プロダクトのコードの在り処、wikiの在り処を探し、ビルドの仕方を知ろうにも周りの誰も知らない、というありえない日々を過ごします。
そんな開発体制・開発状況の中、突如「明日prdリリースをする」という謎命令が経営陣から届き、全てが混沌と化し案の定大事故のオンパレードとなり…。
と、この辺りが冒頭です。レガシー企業ならではの、「お堅い」ルールやシステム、会社全体のマインドなどのせいで、エンジニアがまともに働けず、ビジネスも赤字を垂れ流す。
そんな中で、マキシンが、正攻法では埒が明かないと思った人々の集まり「反乱軍」に加わることから、話が動いていきます。その後も絶望、希望が続く、痛快ストーリーというような小説です。マキシンや仲間が、何とかDevOpsの原則に沿った働き方を模索し、希望を見つけ、また絶望イベントがあり、新しい希望を見つけ、と繰り返していきます。
感想
まず純粋に、エンジニアにとっては、小説自体が非常に面白いです。
ただ、それだけでなく、一般的な技術書よりも生々しいため、逆にDevOpsの本質が分かる気がします。一般的な技術書では、「こうするべき」が書かれていますが、この本は「アンチパターンをすると、組織や開発体制などはこうなってしまう」「こういうプラクティスを実行すると、こうなった」といったことが伝わるように書かれているので、よく言われるベストプラクティスの本質がよく理解できます。
また、主人公のマキシンは、きっと多くの人のロールモデルになると思います。この本は、ストーリーの都合上か、さすがにありえないような短い期間で、膨大な出来事が起きており、その部分はフィクションだと感じますが、ITエンジニアがどういった働きをして会社(社会)に貢献し、次第にどのような期待を集めて、何に喜びを得てキャリアを積むのか、ということの参考事例と言えるでしょう。
判然と、与えられたチケットを消化するだけのエンジニアはつまらないものです。この本から、組織や社会にインパクトを与える、楽しいエンジニアライフの考え直してみるのも良いのではないでしょうか。
個人的には、最後の方で大きな成功を収めた後に控えていた最後の闘い(人事を含めた何を組織のコアに添えるか)の部分が最高でした。
この本は、今年のXP祭りの書籍プレゼントイベントで頂きました。XP祭りに大感謝です。
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