M&Aとは?意味や目的などを解説します!
私たちの研究室(NISLab)
アドベントカレンダー 15日目
M&Aとは
M&Aとは「Mergers & Acquisitions」の略である。
M&Aの意味は、企業の合併や買収のことで、2つ以上の会社が一つになったり(合併)、ある会社が他の会社を買ったりすること(買収)である。
M&Aの広義の意味として、企業の合併・買収だけでなく、提携までを含める場合もある。
M&Aの目的
売却側(譲渡企業)のM&Aの目的
①後継者不在・事業承継問題の解決
親族や従業員等に後継者候補がいない場合、M&Aを活用することで、第三者へ事業を承継、経営を託し企業を存続させることができる。
かつては子供など親族に経営のバトンを渡す親族内承継が一般的だった。しかし少子化高齢化の影響や、「家業を継がない・継がせない」など価値観の多様化から近年、親族内承継は約3分の1まで減少し、親族外承継の割合が多くを占めてきている。
経営者の在任期間別の現経営者と先代経営者との関係
②経営基盤の強化
譲受け企業の経営資源(設備・技術・販路・顧客情報・人材・ノウハウなど)を得ることで、不足していた経営基盤の強化を果たせる。また、技術の融合や、顧客や販路の統合といったシナジー効果(相乗効果)によって、事業拡大の加速が期待できる。
③創業者利益の獲得
中小企業の多くは未上場であるため、自社の株式を現金に換えにくいという一面がある。しかしM&Aにより株式譲渡を選ぶと、株式と引き換えにオーナーが譲渡益を獲得することができる。
経営の現場から退き家族と第2の人生を歩む、もしくは譲渡で得た利益を元手に新規事業を立ち上げるなど、様々なケースが見られる。
買収側(譲受け企業)のM&Aの目的
①事業の拡大・強化、シェア向上
同業の会社を買収することで、事業の成長と業界におけるシェアの向上が図れる。また、関連事業をグループに取り込むことで、事業領域の拡大を実現することもできる。
②新規事業への参入
成長戦略として、新規事業に参入することを目的に、M&Aが活用される場合がある。自社でゼロから新規事業を立ち上げるよりも、既に事業展開している他社を取り込むことで、人材やノウハウの獲得含めスピーディーな展開が期待できる。
③シナジー効果の創出
M&Aでは「より成長させるために、両社のシナジー効果がどのように見込めるか」が、非常に重視される。
M&Aで見込めるシナジー効果には、バリューチェーンや資金調達面、会計面など目に見えるもの、各事業の組み合わせによる新規事業の創出、従業員のエンゲージメントなど多岐にわたる。
M&Aのメリットとデメリット
M&Aのメリット
譲渡企業(売り手)のメリット | 譲受け企業(買い手)のメリット |
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①従業員の雇用を守ることができる | ①事業の多角化を推進できる |
②技術やノウハウが承継される | ②バリューチェーンの統合で経営効率を改善できる |
③企業のブランド力・信用力を強化できる | ③有資格者など人材を確保できる |
④個人保証(経営者保証)を解除できる | ④自社の技術力・生産力向上を実現できる |
M&Aの注意点・デメリット
譲渡企業(売り手)のデメリット | 譲受け企業(買い手)のデメリット |
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①既存顧客や取引先との契約・関係性が変わる可能性がある | ①短期間では相乗効果が表れにくい |
②従業員の雇用条件・労働環境が変わる可能性がある | ②統合後の組織再編はスムーズにいかない |
③企業文化のミスマッチ | ③簿外債務が発生する可能性がある |
④想定していた価格で譲渡できない | ④のれん代の減損リスクを抱える |
これまでのM&Aと現状・市場背景
M&Aの歴史と市場背景
日本におけるM&Aの歴史は古く、早くは戦前から行われてきた。戦後の財閥解体や高度成長期の中でも、三菱重工業や新日本製鉄などの大型合併が誕生している。
バブル景気や円高による1980年代後半の海外企業への買収を経て、1990年代以降、日本国内ではM&Aが急増。これは、バブル崩壊で日本企業の株式が軒並み急落したことで、不良債権処理や企業再編に向けた買収が増えたためである。2000年代に入ると、金融ビッグバンを背景とした外資系投資銀行の進出に伴い、M&Aサービスの多様化や法整備も進行。ベンチャー企業によるM&Aが活発化したのもこの時期である。2000年代以降には、立て続けに起こった景気減退や震災の影響を受けてM&Aは低迷期に突入するものの、2014年に施行された改正会社法も後押しとなり、中小企業経営者の高齢化問題を背景とした比較的小規模の中小企業M&Aを中心に再び拡大傾向に転じている。また、景気低迷や人口減で国内市場が縮小する中、M&Aによって海外市場に活路を見出そうという企業も増えている。
深刻化する後継者問題と事業承継
帝国データバンクが2020年に実施した『全国企業「後継者不在率」動向調査』では、60歳以上のオーナーが経営する企業において65.1%が「後継者がいない」と回答しており、後継者問題は深刻さを増している。
社長が60歳以上の企業における後継者の有無
「家業を継がなくてはならない」という時代ではなくなっていることに加え、後継者候補が事業承継を希望していても、金銭的な負担や能力的問題、従業員の理解を得るのが難しいなどの理由から、二の足を踏むことも少なくない。事業承継にあたって、企業が抱える債務についてオーナー経営者の個人保証を含めて引き継がなければならないほか、優良企業であるほど自社株の評価額が高くなり、株式の買取資金を調達することが難しくなる。相続税や贈与税の支払いに向けた資金も準備しなくてはならない。
こうした課題から、中小企業経営者の高齢化問題を背景に、会社の今後を見据えてM&A、すなわち第三者への承継を検討する経営者が増加している。
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