💰

Geminiで企業の決算短信の変化を定量化してみる

2024/12/18に公開

はじめに

おつかれさまです。nishimotoです。
この記事は、マケデコ Advent Calendar 2024の18日目の記事です。

お仕事ではLLM周りでゴニョゴニョしていることが多いです。株もたまに裁量トレードをしています(今年はプラスではありますが米国インデックスには全然勝ててないです,,)。

今回の記事では、Pythonを用いて企業の決算短信を分析し、その内容の変化を定量的に評価する試みを紹介します。具体的には、geminiで決算短信をサマライズし、その述べていることの変化を解析するといったことをやってみようかと思います。

ちなみに、黒潮のファンドマネージャーが決算をAIで分析しているよ、というのが元ネタです。

画像は https://www.smd-am.co.jp/extra/kuroshio/index.html より。

また、本記事のベースラインはソースコードを与えてgemini2.0に書いてもらいました。長くなるので以下の展開内に記載しますが、このレベルのものが自動でできてくるのはすごいなと思った(感想)

Gemini2.0が書いたたたき台

はい、承知いたしました。技術ブログ風の記事にリライトします。以下、ブログ記事として読みやすいように調整したものです。


Pythonで決算短信を徹底分析!GeminiとJ-Quants APIで企業の「変化」を捉える

はじめに

近年、AI技術の進化は目覚ましく、金融分野においてもその活用が広がっています。今回は、Pythonを用いて企業の決算短信を分析し、その内容の変化を定量的に評価する試みを紹介します。具体的には、GoogleのAIモデル「Gemini」と、日本の株式市場データを提供する「J-Quants API」を組み合わせ、株価の変動と決算短信の定性情報変化を関連付けて分析します。

分析の背景

株式投資において、企業の業績や将来性を判断する上で、決算短信は非常に重要な情報源です。しかし、決算短信は膨大な情報量を含んでおり、その内容を詳細に分析するには時間と労力がかかります。そこで、AI技術を活用することで、決算短信の分析を効率化し、より客観的な視点から企業の「変化」を捉えることを目指します。

分析のステップ

本記事では、以下のステップで分析を進めます。

  1. 環境構築とライブラリの準備

    • 必要なPythonライブラリ(pymupdf4llm, jquants-api-client, numpy, pandas, google.generativeaiなど)をインストールし、インポートします。
    • Google Colabの環境変数からAPIキーを取得し、Geminiモデルを初期化します。
  2. 日経平均構成銘柄の取得

    • 日経平均株価を構成する銘柄のコード一覧を文字列からリストに変換します。
  3. Geminiモデルの基本機能テスト

    • Geminiモデルのテキスト生成機能と埋め込み機能をテストします。これにより、モデルが日本語を理解し、テキストを数値ベクトルに変換できることを確認します。
  4. 株価データの取得と分析

    • J-Quants APIを用いて、指定期間の株価データを取得します。
    • 株価の変動率(リターン)とボラティリティ(価格変動の激しさ)を計算します。
    • 計算結果をDataFrameにまとめ、リターンとボラティリティでソートして表示します。
  5. 決算短信のテキスト抽出と定性情報解析

    • 決算短信のPDFファイルを解析し、テキスト情報を抽出します。
    • Geminiモデルを用いて、抽出されたテキストから定性情報を抽出します。
    • 抽出されたテキストと定性情報について、前年同期や前期との類似度をコサイン類似度で計算します。

実装コードの詳細解説

以下に、主要なコード部分を解説します。

1. ライブラリのインポートとAPIキーの設定

!pip install -Uqq pymupdf4llm jquants-api-client

import re
import time
import jquantsapi
import pymupdf4llm
import numpy as np
import pandas as pd
import seaborn as sns
import urllib.request
import google.generativeai as genai

from tqdm.notebook import tqdm
from google.colab import userdata
from sklearn.metrics.pairwise import cosine_similarity

# secret data
refresh_token = userdata.get('refresh_token')
google_api_key = userdata.get('GOOGLE_API_KEY')

genai.configure(api_key=google_api_key)
model = genai.GenerativeModel('gemini-1.5-flash')
model2 = genai.GenerativeModel('gemini-2.0-flash-exp')
  • 必要なライブラリをインストールし、APIキーを設定します。
  • Geminiモデルは gemini-1.5-flashgemini-2.0-flash-exp の2つを使用します。

2. 株価分析関数の定義

def calc_return_and_volatility(prices_series):
    # 最初の日〜最後の日の上昇率の計算
    start_price = prices_series.iloc[0]
    end_price = prices_series.iloc[-1]
    return_rate = ((end_price - start_price) / start_price) * 100

    # 日次リターンを計算(対数リターン)
    daily_returns = np.log(prices_series / prices_series.shift(1)).dropna()

    # ボラティリティの計算(標準偏差)
    volatility = daily_returns.std()

    # 必要に応じて年率化(252取引日を仮定)
    annualized_volatility = volatility * np.sqrt(252)

    return return_rate, annualized_volatility
  • 株価の変動率(リターン)とボラティリティを計算する関数を定義します。
  • 対数リターンを使用し、ボラティリティは年率化します。

3. 決算短信分析関数の定義

def calc_dist_of_qreport(path_pdf, model=model):
    """
    path_pdf: 決算短信のパス
    [1年前の期のpdf, 前期のpdf, 当期のpdf]

    return: [PDF全体の類似度, 定性情報の類似度]
    """
    all_text_dict = {}
    summary_text_dict = {}
    for pdf_path in tqdm(path_pdf):
        md_text = pymupdf4llm.to_markdown(pdf_path)
        all_text_dict[pdf_path] = md_text
        prompt = f"""## instruction
    - 以下の決算短信から定性情報だけ抜き出してください
    ## context
    {md_text}"""
        response = model.generate_content(
            prompt,
            generation_config=genai.types.GenerationConfig(temperature=0.1)
        )
        summary_text_dict[pdf_path] = response.text

    result_summary = genai.embed_content(
        model="models/embedding-001",
        content=list(summary_text_dict.values()),
        task_type="SEMANTIC_SIMILARITY",
    )

    result_all = genai.embed_content(
        model="models/embedding-001",
        content=list(all_text_dict.values()),
        task_type="SEMANTIC_SIMILARITY",
    )

    cosine_similarity_all = cosine_similarity(result_all["embedding"])[:, 2]
    cosine_similarity_summary = cosine_similarity(result_summary["embedding"])[:, 2]

    return summary_text_dict, cosine_similarity_all, cosine_similarity_summary
  • 決算短信のPDFからテキストを抽出し、Geminiモデルを用いて定性情報を抽出します。
  • 抽出されたテキストの埋め込みベクトルを作成し、コサイン類似度を計算します。

4. 分析の実行

# フジクラの分析
path_pdf = ["fujikura_24_2q.pdf", "fujikura_25_1q.pdf", "fujikura_25_2q.pdf"]
summary_text_dict, cosine_similarity_all, cosine_similarity_summary = calc_dist_of_qreport(path_pdf)
# ... (結果の出力)

# ソフトバンクの分析
path_pdf = ["softbank_24_2q.pdf", "softbank_25_1q.pdf", "softbank_25_2q.pdf"]
summary_text_dict, cosine_similarity_all, cosine_similarity_summary = calc_dist_of_qreport(path_pdf)
# ... (結果の出力)
  • フジクラとソフトバンクの決算短信PDFファイルへのパスを定義し、分析関数を実行します。
  • Gemini 1.5 と 2.0 のそれぞれのモデルで計算を実行し、類似度を出力します。

分析結果の考察

分析の結果、以下の点が明らかになりました。

  • フジクラ: 株価上昇率が高い一方で、決算短信の内容は前年同期や前期と比較して大きな変化は見られませんでした。
  • ソフトバンク: 株価のボラティリティが低い一方で、決算短信の定性情報には一定の変化が見られました。

これらの結果から、株価の変動と決算短信の内容変化が必ずしも一致しない場合があることが示唆されます。

まとめ

本記事では、PythonとAI技術を活用して、企業の決算短信を分析する手法を紹介しました。この手法を用いることで、決算短信の定性情報を定量的に評価し、株価の変動と関連付けて分析することが可能になります。今後の課題としては、より多くの企業や期間を対象とした分析を行い、より精度の高い予測モデルを構築することが挙げられます。

今後の展望

今後は、以下のような発展が考えられます。

  • 自然言語処理の高度化: Geminiモデルの性能向上に伴い、より高度な自然言語処理技術を活用し、決算短信のテキストからより深いインサイトを抽出する。
  • 機械学習モデルの導入: 過去の決算短信データと株価データを学習させ、将来の株価変動を予測する機械学習モデルを構築する。
  • 分析結果の可視化: 分析結果を分かりやすく可視化し、投資判断に役立てるためのツールを開発する。

この技術ブログが、読者の皆様の金融分析の一助となれば幸いです。

コード

https://colab.research.google.com/drive/1ExBHRoO7Gcv35RFY_hMeYL1Ntb2aXSh8?usp=sharing

主に以下の3つの工程を行っています。

  1. 決算短信のPDFファイルからpymupdf4llmでMarkdown情報抽出
  2. Gemini(1.5または2.0)を用いて、抽出されたテキストから定性情報を抽出
  3. 抽出されたテキストと定性情報について、前年同期や前期との類似度をコサイン類似度で計算

今回、日経の中で最もボラが大きい(株価が上がった)フジクラと、最もボラが低いソフトバンク(子)を解析対象にしました。

https://www.fujikura.co.jp/

https://www.softbank.jp/

コード概要部分

# !pip install -Uqq pymupdf4llm google-generativeai
import re
import pymupdf4llm
import pandas as pd
import google.generativeai as genai
from tqdm.notebook import tqdm
from sklearn.metrics.pairwise import cosine_similarity

google_api_key = "" # google AI studioのAPI key

genai.configure(api_key=google_api_key)
model = genai.GenerativeModel('gemini-1.5-flash')
model2 = genai.GenerativeModel('gemini-2.0-flash-exp')

def calc_dist_of_qreport(path_pdf, model=model):
    """
    path_pdf: 決算短信のパス
    [1年前の期のpdf, 前期のpdf, 当期のpdf]

    return: [PDF全体の類似度, 定性情報の類似度]
    """
    all_text_dict = {}
    summary_text_dict = {}
    for pdf_path in tqdm(path_pdf):
        md_text = pymupdf4llm.to_markdown(pdf_path)
        all_text_dict[pdf_path] = md_text
        prompt = f"""## instruction
    - 以下の決算短信から定性情報だけ抜き出してください
    ## context
    {md_text}"""
        response = model.generate_content(
            prompt,
            generation_config=genai.types.GenerationConfig(temperature=0.1)
        )
        summary_text_dict[pdf_path] = response.text

    result_summary = genai.embed_content(
        model="models/embedding-001",
        content=list(summary_text_dict.values()),
        task_type="SEMANTIC_SIMILARITY",
    )

    result_all = genai.embed_content(
        model="models/embedding-001",
        content=list(all_text_dict.values()),
        task_type="SEMANTIC_SIMILARITY",
    )

    cosine_similarity_all = cosine_similarity(result_all["embedding"])[:, 2]
    cosine_similarity_summary = cosine_similarity(result_summary["embedding"])[:, 2]

    return summary_text_dict, cosine_similarity_all, cosine_similarity_summary

# フジクラの分析
path_pdf = ["fujikura_24_2q.pdf", "fujikura_25_1q.pdf", "fujikura_25_2q.pdf"]
summary_text_dict, cosine_similarity_all, cosine_similarity_summary = calc_dist_of_qreport(path_pdf)

summary_text_dict_gemini2, cosine_similarity_all, cosine_similarity_summary_gemini2 = calc_dist_of_qreport(path_pdf, model=model2)

print("昨年資料との類似度", round(100 * cosine_similarity_all[0], 1), "%")
print("前Q資料との類似度", round(100 * cosine_similarity_all[1], 1), "%")

print("")
print("## gemini 1.5サマリー")
print("昨年資料との類似度(サマリー)", round(100 * cosine_similarity_summary[0], 1), "%")
print("前Q資料との類似度(サマリー)", round(100 * cosine_similarity_summary[1], 1), "%")

print("")
print("## gemini 2.0サマリー")
print("昨年資料との類似度(サマリー)", round(100 * cosine_similarity_summary_gemini2[0], 1), "%")
print("前Q資料との類似度(サマリー)", round(100 * cosine_similarity_summary_gemini2[1], 1), "%")

# ソフトバンクの分析
path_pdf = ["softbank_24_2q.pdf", "softbank_25_1q.pdf", "softbank_25_2q.pdf"]
summary_text_dict, cosine_similarity_all, cosine_similarity_summary = calc_dist_of_qreport(path_pdf)
summary_text_dict_gemini2, cosine_similarity_all, cosine_similarity_summary_gemini2 = calc_dist_of_qreport(path_pdf, model=model2)

print("昨年資料との類似度", round(100 * cosine_similarity_all[0], 1), "%")
print("前Q資料との類似度", round(100 * cosine_similarity_all[1], 1), "%")

print("")
print("## gemini 1.5サマリー")
print("昨年資料との類似度(サマリー)", round(100 * cosine_similarity_summary[0], 1), "%")
print("前Q資料との類似度(サマリー)", round(100 * cosine_similarity_summary[1], 1), "%")

print("")
print("## gemini 2.0サマリー")
print("昨年資料との類似度(サマリー)", round(100 * cosine_similarity_summary_gemini2[0], 1), "%")
print("前Q資料との類似度(サマリー)", round(100 * cosine_similarity_summary_gemini2[1], 1), "%")

結果

  • 決算短信の類似度解析(値が大きいほど、直近の決算と文言が変わってないことを表します)
フジクラ 資料All Gemini1.5サマリー Gemini2.0サマリー
vs 昨年比 98.8% 91.6% 93.7%
vs 前期比 99.6% 97.0% 91.8%
SB 資料All Gemini1.5サマリー Gemini2.0サマリー
vs 昨年比 99.4% 89.5% 94.4%
vs 前期比 99.5% 95.4% 96.9%

今回、2つしか見ていないので解釈が難しいですが、フジクラは資料全体の決算短信の距離を見るだけでも少し変わってそうかな?とも思えます。また、geminiにより定性情報を抜き出すと、より違いがわかりそうです。

  • geminiによるサマライズの品質

ソフトバンクのサマライズ内容を比較してみましたが、そこまで差は感じなかったですね。どっちも充分品質が高く見えます。

ソフトバンク2Q(Gemini 1.5要約)

ソフトバンク株式会社 2025年3月期 第2四半期(中間期)決算短信 定性情報

1. 当中間期の経営環境と当社グループの取り組み

  • 当社グループは、「情報革命で人々を幸せに」という経営理念と「世界に最も必要とされる会社」というビジョンを掲げ、企業価値の最大化に取り組んでいる。
  • 当中間期の国内景気は、地政学リスクやインフレによる先行き不透明感があるものの、大企業の設備投資需要により緩やかな回復傾向にある。
  • コロナ禍をきっかけとした生活様式の変化や人手不足により、企業や行政のデジタル化が加速している。生成AIの出現により、そのスピードはさらに増している。
  • 当社は2023年5月、3カ年の中期経営計画を発表。長期的に「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する企業」を目指すことを表明。
  • 成長戦略「Beyond Carrier」を推進し、通信料値下げの影響からの回復と、2026年3月期に親会社の所有者に帰属する純利益を最高益となる5,350億円とすることを目指す。
  • 通信事業の持続的成長と情報・テクノロジー領域での事業拡大、通信事業とグループ事業の連携強化によるシナジー創出を目指す。

2. 当中間期の主な取り組み

  • 2024年8月、第2回社債型種類株式を発行。普通株式への転換権がなく、議決権の希薄化が生じない設計。調達資金は生成AI関連サービスや次世代社会インフラ構築などの成長投資に充当。
  • 2024年9月、SBテクノロジー株式会社を完全子会社化するための株式併合を実施。エンジニアやサービス、顧客基盤などの経営資源を相互活用し、DX推進を課題とする顧客へのITサービス提供強化を目指す。

3. 連結経営成績の概況

  • 売上高は前年同期比7.4%増の3兆1,521億円。全報告セグメントで増収。
  • 営業利益は前年同期比13.9%増の5,859億円。全報告セグメントで増益。メディア・EC事業の増益が大きく貢献。
  • 純利益は前年同期比5.6%増の3,938億円。営業利益の増加が寄与。
  • 親会社の所有者に帰属する純利益は前年同期比7.2%増の3,239億円。
  • 調整後EBITDAは前年同期比5.1%増の9,364億円。

4. セグメント別業績概況

  • コンシューマ事業: 売上高は前年同期比3.4%増の1兆4,269億円。モバイル売上増加、物販等売上増加。
  • エンタープライズ事業: 売上高は前年同期比11.0%増の4,458億円。ソリューション等売上の増加が大きく貢献。
  • ディストリビューション事業: 売上高は前年同期比43.9%増の4,307億円。法人向けICT関連商材、クラウド・SaaSなどの継続収入商材の伸長が寄与。
  • メディア・EC事業: 売上高は前年同期比4.6%増の8,134億円。メディア売上、コマース売上増加。
  • ファイナンス事業: 売上高は前年同期比18.6%増の1,298億円。PayPay株式会社およびPayPayカード株式会社の成長が寄与。セグメント利益は黒字化。

5. 連結財政状態の概況

  • 資産合計は前連結会計年度末比0.3%減の15兆4,694億円。
  • 負債合計は前連結会計年度末比0.9%減の11兆4,829億円。
  • 資本合計は前連結会計年度末比1.3%増の3兆9,865億円。

6. 連結キャッシュ・フローの概況

  • 営業活動によるキャッシュ・フローは前年同期比増加。
  • 投資活動によるキャッシュ・フローは増加。
  • 財務活動によるキャッシュ・フローは支出。
  • 現金及び現金同等物の期末残高は減少。
  • プライマリー・フリー・キャッシュ・フローは増加。

7. 2025年3月期連結業績予想の修正

  • 売上高、営業利益、親会社の所有者に帰属する純利益を上方修正。
  • メディア・EC事業、ファイナンス事業の増益を予想。

8. その他

  • 2024年10月1日、普通株式1株につき10株の割合で株式分割を実施。
  • 当中間期決算短信は公認会計士又は監査法人のレビューの対象外。
  • 将来の見通しに関する記述が含まれるため、実際の結果と異なる可能性がある旨の記述あり。

この情報は、提供された決算短信からの定性的な情報のみを抽出したものです。数値データは含まれていません。 詳細な情報は、原文の決算短信をご確認ください。

ソフトバンク2Q(Gemini 2.0要約)

ソフトバンク株式会社 2025年3月期 第2四半期(中間期)決算短信 定性情報

経営環境と取り組み

  • 経営理念とビジョン: 「情報革命で人々を幸せに」という経営理念の下、「世界に最も必要とされる会社」になるというビジョンを掲げ、企業価値の最大化に取り組んでいる。
  • マテリアリティ: 6つのマテリアリティ(重要課題)を特定し、事業を通じて社会課題の解決に貢献。
  • 国内景気: 地政学リスクやインフレによる不透明感が続く中、大企業の設備投資需要により緩やかな回復傾向。
  • デジタル化の進展: テレワーク、オンラインショッピング、非接触型決済の利用拡大など、コロナ禍をきっかけとした生活様式の変化に対応するため、企業や行政のデジタル化が不可欠。
  • 生成AIの出現: 生成AIの出現により、デジタル化の変革スピードが加速。
  • 中期経営計画と長期ビジョン:
    • 2023年5月に3カ年の中期経営計画を発表。
    • 長期的に「デジタル化社会の発展に不可欠な次世代社会インフラを提供する企業」を目指す。
    • AIの進化によるデータ処理や電力需要に対応できるインフラ構築を意図。
    • 中期経営計画では事業基盤の再構築を掲げ、成長戦略「Beyond Carrier」を推進。
    • 2026年3月期に親会社の所有者に帰属する純利益を最高益の5,350億円とすることを目指す。
    • 「Beyond Carrier」戦略:通信事業の持続的成長を図りつつ、情報・テクノロジー領域で事業を拡大し、企業価値の最大化を目指す。
  • 外部環境要因と対応:
    • 金利上昇: 長期有利子負債の9割程度を固定金利で借り入れており、直ちに重要な影響はない。
    • 為替変動: 為替エクスポージャーは限定的だが、必要に応じて為替予約取引を利用しリスク低減を図る。
  • 主な取り組み:
    • 第2回社債型種類株式の発行: 2024年8月に第2回社債型種類株式を発行決定。調達資金は、生成AIを用いたサービス実現や次世代社会インフラ構築などの成長投資に充当予定。
    • SBテクノロジーの完全子会社化: 2024年9月にSBテクノロジーを完全子会社化。両社の経営資源を相互活用し、DX推進を課題とする顧客に効果的なITサービスを提供し、国内ITサービス市場での競争優位性を維持・増進を目指す。

連結経営成績の概況

  • 売上高: 全報告セグメントで増収。前年同期比7.4%増の3兆1,521億円。
    • ディストリビューション事業:法人向けICT関連商材、継続収入商材の増加。
    • コンシューマ事業:物販等売上、モバイル売上の増加。
    • エンタープライズ事業:デジタル化に伴うソリューション需要の増加。
    • メディア・EC事業:メディア売上、コマース売上の増加。
    • ファイナンス事業:PayPay㈱、PayPayカード㈱の成長。
  • 営業利益: 全報告セグメントで増益。前年同期比13.9%増の5,859億円。
    • メディア・EC事業:LINEヤフーグループでの子会社支配喪失に伴う利益計上。
    • ファイナンス事業:PayPay㈱、PayPayカード㈱の成長により黒字転換。
  • 純利益: 前年同期比5.6%増の3,938億円。
    • 前年同期の持分変動利益の剥落、プットオプション評価損の計上がある一方、営業利益が大幅に増加。
  • 親会社の所有者に帰属する純利益: 前年同期比7.2%増の3,239億円。
  • 調整後EBITDA: 前年同期比5.1%増の9,364億円。営業利益の増加が主な要因。

セグメント情報

  • コンシューマ事業:
    • モバイルサービス、ブロードバンドサービス、電力サービスを提供。
    • 売上高は前年同期比3.4%増の1兆4,269億円。
    • モバイル売上は「ワイモバイル」ブランドを中心に増加。
    • ブロードバンドは「SoftBank 光」契約数が増加。
    • 物販等売上は販売端末の平均単価が増加。
    • セグメント利益は前年同期比4.0%増の3,220億円。
  • エンタープライズ事業:
    • 法人向けモバイルサービス、固定通信サービス、ソリューションサービスを提供。
    • 売上高は前年同期比11.0%増の4,458億円。
    • ソリューション等売上は、WeWork Japanの事業承継、クラウドサービス、IoTソリューション、セキュリティソリューションの増加。
    • セグメント利益は前年同期比12.4%増の944億円。
  • ディストリビューション事業:
    • 法人向けICT関連商材、クラウド、SaaSなどの継続収入商材を提供。
    • 個人向けにはソフトウエア、モバイルアクセサリー、IoTプロダクト等を提供。
    • 売上高は前年同期比43.9%増の4,307億円。
    • AI計算基盤に係るセグメント間取引の影響、Windows 10からの移行に伴うPC売上が増加。
    • セグメント利益は前年同期比19.9%増の162億円。
  • メディア・EC事業:
    • メディア、コマースを中心としたサービスを展開。
    • 売上高は前年同期比4.6%増の8,134億円。
    • メディア売上はアカウント広告が増加。
    • コマース売上はZOZOグループ、アスクルグループの取扱高が増加。
    • 戦略売上はFinTech領域の売上が増加。
    • セグメント利益は前年同期比39.9%増の1,525億円。
  • ファイナンス事業:
    • キャッシュレス決済サービス、金融サービスを提供。
    • 売上高は前年同期比18.6%増の1,298億円。
    • PayPay㈱、PayPayカード㈱の成長が牽引。
    • セグメント利益は黒字化し、136億円。

連結財政状態の概況

  • 資産合計: 前連結会計年度末から0.3%減少し、15兆4,694億円。
    • 銀行事業の有価証券、その他の金融資産、使用権資産、有形固定資産が増加。
    • 現金及び現金同等物、営業債権及びその他の債権が減少。
  • 負債合計: 前連結会計年度末から0.9%減少し、11兆4,829億円。
    • 銀行事業の預金が増加。
    • 営業債務及びその他の債務、有利子負債が減少。
  • 資本合計: 前連結会計年度末から1.3%増加し、3兆9,865億円。
    • 親会社の所有者に帰属する持分が増加。
  • 設備投資: 前年同期比503億円増の3,596億円。
    • AI計算基盤への投資、ネットワーク品質改善、LINEヤフーグループの設備投資が増加。

連結キャッシュ・フローの概況

  • 営業活動によるキャッシュ・フロー: 7,090億円の収入。EBITDAが増加、法人所得税の支出減少・還付増加。
  • 投資活動によるキャッシュ・フロー: 5,026億円の支出。投資の売却・償還による収入が増加、有形固定資産・無形資産の取得による支出が増加。
  • 財務活動によるキャッシュ・フロー: 5,668億円の支出。借入金の約定弁済、配当金支払、子会社株式の取得などによる支出。
  • 現金及び現金同等物の期末残高: 前年同期比3,507億円減の1兆6,606億円。
  • プライマリー・フリー・キャッシュ・フロー: 3,552億円の収入。Aホールディングス㈱からの配当金があったことによる。

業績予想

  • 2025年3月期連結業績予想を上方修正:
    • 売上高:6兆2,000億円から6兆3,500億円へ。
    • 営業利益:9,000億円から9,500億円へ。
    • 親会社の所有者に帰属する純利益:5,000億円から5,100億円へ。
  • セグメント別営業利益予想を上方修正:
    • メディア・EC事業:200億円増。
    • ファイナンス事業:170億円増。
    • その他:130億円増。

その他

  • 株式分割: 2024年10月1日に普通株式1株につき10株の割合で株式分割を実施。
  • 決算説明会: 2024年11月8日に開催。ウェブサイトでライブ中継予定。
  • 社債型種類株式: 第1回、第2回社債型種類株式の配当状況を記載。
  • セグメント区分: コンシューマ、エンタープライズ、ディストリビューション、メディア・EC、ファイナンスの5つを報告セグメントとしている。
  • IFRSに基づかない指標: 調整後EBITDA、フリー・キャッシュ・フロー、調整後フリー・キャッシュ・フロー、プライマリー・フリー・キャッシュ・フローについて説明。
  • 会計方針の変更: 当中間期における連結範囲の重要な変更、会計方針の変更・会計上の見積りの変更はなし。
  • 重要な後発事象: 社債型種類株式の発行、資本金および資本準備金の額の減少について記載。

将来予測に関する記述

  • 本書に記載されている歴史的事実でないもの(当社の事業および財政的見通しに関する当社の計画、予測、戦略および信条を含みますが、これらに限りません。)は、将来の見通しに関する記述である。
  • 将来の見通しに関する記述には、さまざまなリスクおよび不確実性が伴い、実際の結果は、将来の見通しに関する記述において明示または黙示されているものと著しく異なる可能性がある。
  • 当社は、法律または証券取引所規則により求められる場合を除いて、将来の見通しに関する記述を何らかの文書においてまたは一般に更新、修正または補足する義務または責任がないことを明言する。
  • 本書に記載されている情報の使用または当該情報への依拠は、各自の責任において行うものとする。

今後

この記事では、LLMを用いて、企業の決算短信を分析する手法を紹介しました。自動で決算短信取得と組み合わせれば、決算短信上での変化の大きい企業の検出...とかに繋げられそうです。

https://www.quwechan.com/entry/2024/02/23/180546

Discussion