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個人開発でFirestoreを選ぶべき?メリットからコスト、セキュリティについて考えてみる

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はじめに

個人開発でアプリを作ろうと思ったとき、多くの人がぶつかる壁が「バックエンドどうしよう…」問題。APIサーバーを立てて、データベースを管理して…と考えると、ちょっと尻込みしてしまいますよね。

この分野は「BaaS (Backend as a Service)」と呼ばれ、サーバー側の面倒な部分を丸っとお任せできる便利なサービスがいくつも存在します。その代表格がGoogleのFirebaseですが、最近では強力なライバルも登場しています。

まずは、主要なBaaSサービスがそれぞれどんな特徴を持っているのか、下の図で全体像を掴んでみましょう。

あなたはどのタイプ?

  • Firebase (Firestore) が向いている人
    NoSQLで柔軟に、とにかく早くアイデアを形にしたい、リアルタイム機能がアプリの要、という方。

  • Supabase が向いている人
    使い慣れたSQL(PostgreSQL)で開発したい、リレーショナルなデータ構造が重要なアプリを作る、オープンソースという点に魅力を感じる方。

  • AWS Amplify が向いている人
    すでにAWSの他のサービスを使っている、または将来的にAWSの豊富なエコシステムをフル活用したい、多機能・高機能なバックエンドを構築したい方。

このように、それぞれに得意なことや思想が異なります。

この記事では、「Firestoreって名前は聞くけど、実際どうなの?」と感じている個人開発者の方に向けて、

  • 個人開発で選ぶメリット・デメリット
  • Firestoreの仕組みの図解
  • 気になるセキュリティ、コスト、学習難易度
  • 2025年時点での最新動向

などを、個人開発者目線で解説していきます。

ちなみにFirestoreとは何か、を軽く説明すると「Googleが提供する、サーバー開発なしで直接アプリから使えるNoSQLデータベース」のこと。これだけ覚えておけばOKです。
詳細は以下で確認してください。

https://firebase.google.com/docs/firestore?hl=ja

🚀 個人開発でFirestoreを選ぶメリット

まずは、なぜFirestoreが個人開発の強い味方と言われるのか、そのメリットを見ていきましょう。

  • サーバー開発が不要
    これが最大のメリットかもしれません。サーバーサイドのコードを書かなくても、データベースのデータを読み書きできます。フロントエンドやアプリの機能開発に100%集中できます!

  • リアルタイム同期が超簡単
    チャットアプリのように、誰かがデータを更新したら、他の人の画面にも即座に反映される…そんな機能を自前で実装するのは大変です。Firestoreなら、数行のコードでこのリアルタイム同期が実現できてしまいます。

  • オフライン対応
    スマートフォンが圏外でもアプリが操作でき、オンラインに復帰した瞬間にデータが自動で同期される。そんなモバイルアプリに必須の機能を、標準でサポートしています。

  • スケーラビリティ
    もしアプリがバズってアクセスが急増しても、Googleの強力なインフラが裏で自動的に対応してくれます。「サーバーが落ちるかも…」という心配から解放されます。

  • 手厚い無料枠
    個人開発や小規模なアプリなら、ほとんどのケースで無料枠の範囲内に収まります。お財布に優しいのは正義ですね!(詳細は後述)

  • Firebaseファミリーとの強力な連携
    認証機能のAuthentication、画像の保存などに使うStorage、サーバーレス関数のFunctionsなど、他のFirebaseサービスと驚くほど簡単に連携できます。

😥 デメリットと注意点

もちろん、良いことばかりではありません。採用する前に知っておきたいデメリットもあります。

  • コスト管理の難しさ
    無料枠は強力ですが、それを超えるとデータの読み書き回数に応じた従量課金が始まります。データ構造の設計が悪い と、意図せず読み書き回数が増え、ある日突然高額な請求が…なんてこともあり得ます。

  • 複雑なクエリが苦手
    SQLのように、複数のテーブルを結合(JOIN)したり、複雑な条件でデータを集計したりするのは得意ではありません。シンプルなデータ構造に向いています。

  • ベンダーロックイン
    一度Firestoreを深く使い始めると、その便利さゆえに他のデータベースへ移行するのが難しくなります。いわゆる「Google沼」にハマる可能性は考慮しておきましょう。

🗂️ Firestoreの仕組み

Firestoreを使いこなすには、その独特なデータ構造を理解することが不可欠です。でも大丈夫、考え方はシンプルです。よく「フォルダとファイル」に例えられます。

  • ドキュメント (Document)
    実際のデータをキーと値のペアで保存する「ファイル」のようなものです。{ name: "Aさん", email: "a@example.com" } といったJSON形式のデータがこれにあたります。

  • コレクション (Collection)
    上記のドキュメント(ファイル)をまとめる「フォルダ」です。例えば、ユーザー情報をまとめるusersコレクション、投稿データをまとめるpostsコレクションといった使い方をします。

  • サブコレクション (Subcollection)
    「フォルダ」の中に、さらに「フォルダ」を作れる仕組みです。これにより、データを階層的に管理できます。

この仕組みを、SNSのようなアプリを例に図で見てみましょう。

この図は、Firestoreのデータベースの中に2つの大きな「フォルダ」がある状態を表しています。

  1. usersとpostsという2つのコレクション(フォルダ)が最上位にあります。
  2. usersコレクションの中を覗いてみると、user_Aやuser_Bといった、個々のユーザー情報を格納したドキュメント(ファイル)が入っています。
  3. user_Aドキュメントの中身は、nameやemailといった具体的なデータフィールドです。
  4. ここで注目したいのがuser_Bです。このドキュメントの中には、さらにtweetsというサブコレクション(user_Bさん専用のツイートフォルダ)が存在します。
  5. そして、そのtweetsサブコレクションの中に、個々のツイートデータがtweet_001のようなドキュメントとして保存されていきます。

このように、データを階層的に管理することで、「user_Bさんのツイートだけを全部取得したい」といった操作が非常に効率的に行えるようになります。このデータ構造の設計が、Firestoreを使いこなす上で最も重要なポイントになります。

🧐 個人開発者が本当に気になる3つのこと

さて、ここからはさらに踏み込んで、個人開発者が特に気になるであろう3つのポイントについて解説します。

1. セキュリティは大丈夫?

結論:正しく設定すれば問題ない。でも設定は自己責任!

Firestoreのセキュリティは、セキュリティルールという設定ファイルで全て管理します。これを設定しないと、データベースが誰でも読み書きできる状態で丸裸になってしまうので、絶対に設定が必要です。

例えば、以下は「ログインしているユーザーは、自分のユーザー情報しか読み書きできない」という、ほぼ全てのアプリで必須となるルールです。

rules_version = '2';
service cloud.firestore {
  match /databases/{database}/documents {
    // "users"コレクションの、任意のドキュメント({userId})に対して
    match /users/{userId} {
      // 読み書きを許可する条件は、
      // リクエストしてきたユーザーのIDと、ドキュメントのIDが一致すること
      allow read, write: if request.auth.uid == userId;
    }
  }
}

難しそうに見えますが、このルールを適切に設定することで、サーバーサイドのコードなしに堅牢なセキュリティが実現できます。**「Firestoreを使う = セキュリティルールを学ぶ」**ことにも繋がるので、ぜひ意識してみてください。

2. コストはどれくらい?

結論:無料枠が神。でも油断は禁物!

Firestoreの無料枠は非常に強力で、個人開発のうちはまず超えることはないでしょう。

無料枠 割り当て
保存データ 1 GiB
ドキュメントの読み取り 50,000/日
ドキュメントの書き込み 20,000/日
ドキュメントの削除 20,000/日
送信データ転送 10 GiB/月

上記は2025年時点の情報なので、最新の使用量と上限についての詳細は以下から確認できます。
https://firebase.google.com/docs/firestore/quotas?hl=ja

これだけあれば、安心して開発できますよね。
ただし、無料枠を超えたときのことを考えて、以下の対策は必ず行いましょう。

  • 効率的なデータ設計を心がける
    無駄な読み書きを減らすことが、コスト削減に直結します。
  • 予算アラートを設定する
    Google Cloud Platformの管理画面から、指定した予算に近づくとメールで通知してくれる「予算アラート」を設定できます。これは絶対に設定してください。想定外の請求からあなたを守ってくれます。

3. 学習は難しい?

結論:始めるのは超簡単。使いこなすにはコツがいる

簡単な点

環境構築が不要で、基本的なデータの読み書きは公式ドキュメントを見ればすぐに実装できます。プログラミング初学者でもとっつきやすいです。

学習が必要な点

  • NoSQLの考え方
    SQLの「JOIN」に慣れていると、最初は戸惑います。データモデリングの考え方を学ぶ必要があります。
  • セキュリティルール
    前述の通り、これは必須の学習項目です。
  • クエリの癖
    SQLほど柔軟な検索ができないため、「何ができて、何ができないのか」を知る必要があります。
    幸い、公式ドキュメントや世界中の開発者のブログ記事が非常に豊富なので、学習環境には困らないでしょう。

🔮 2025年、Firestoreのこれからとどう向き合うか

Firestoreが個人開発の強力なツールであることは、2025年になっても変わりません。
最近では、以下のような新しい動きもあり、さらに便利になっています。

AIによる開発支援 (Gemini in Firebase)

「こういうデータ構造を作りたい」と自然言語で指示すると、コードやセキュリティルールを生成してくれる機能が強化されています。学習のハードルを下げてくれる良い相棒になりそうです。
https://firebase.google.com/docs/gemini-in-firebase?hl=ja

SQLも使えるFirebase Data Connect

「やっぱりSQLが使いたい!」という声に応え、PostgreSQLなどのSQLデータベースもFirebaseから直接扱えるサービスが登場しました。これにより、アプリの特性に合わせてNoSQLとSQLを使い分ける選択肢が生まれました。
https://firebase.google.com/docs/data-connect?hl=ja

まとめ:Firestoreは個人開発の武器になるか?

Firestoreは、以下のようなアプリを開発したい個人開発者にとって、最高の武器になります。

  • チャットや共同編集ツールなど、リアルタイム性が求められるアプリ
  • サーバー開発の手間を省き、素早くアイデアを形にしたいプロトタイプ・MVP開発
  • オフライン機能が重要なモバイルアプリ

何より、これだけの機能を無料で試せるのがFirestoreの素晴らしいところです。まずは触ってみて、そのパワーを体感してみてください。

個人開発ライフが、もっと楽しく、もっとスピーディになることを願っています。

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