IT界隈の動物たち
はじめに
Linux の Tux くん(ペンギン)や Go の Go Gopherくん(ホリネズミ)など、動物がロゴやマスコットとして採用されることがよくある。この記事では、IT界隈でよく見る動物たちの名前や由来を調べてみた。
この記事は以前書いた記事について、動物たちの画像の追加や、解説内容の追記・修正をした。また、項目(動物)自体を追加したり、逆に減らしたりした。
架空の生物であっても、動物っぽいものであれば記事にしている。D 言語くんや BSD デーモンくん、Lisp エイリアンなどは動物っぽくないので見送った。
また、有名なプロダクトであっても、名前や由来の詳細な解説が見つからないものは記事にしていない。
(言い換えると、記事にして面白そうなものを恣意的に選択している)
ただし、私の知見不足で記事にできていないプロダクト・動物たちもいるだろうと思う。
素敵な動物たちがいれば、ぜひコメントください。
動物たち
Linux
種類
ペンギン(Penguin)
名前
Tux
解説
名前の由来はタキシード(Tuxedo)を着ているように見えることから。
1996年のロゴコンテストで決定された。他の作品を見ると、彼が選ばれたことも納得である。
ちなみに Tux くんはGIMPで描かれている。
Go
種類
ホリネズミ(Gopher)
名前
Go Gopher
解説
彼の歴史は Go プロジェクトよりずっと前、1999年に遡る。
ニュージャージーのWFMUラジオで、Renee French 氏によって宣伝用のTシャツに描かれたのが初登場。
その後、ベル研究所のメールシステムでアバターとして起用された。
(ちなみに Renee French 氏は Glenda を描いた人。Glenda もアバターの一員)
時が経って2009年、Go プロジェクトが発足し、ロゴを検討していたメンバーに Renee French 氏が無償で描いてあげたのが「Go Gopher」である。
Python
種類
ニシキヘビ(Python)
名前
無し
解説
由来をご存じの方も多いだろうが、公式の説明を引用しよう。
Python の実装を始めたとき、Guido van Rossum 氏は1970 年代の BBC コメディ シリーズ「Monty Python's Flying Circus(空飛ぶモンティ・パイソン)」の公開済み脚本を読んでいました。Van Rossum 氏は、短くてユニークで、ほんのすこし神秘的な名前が必要だと考え、この言語を Python と呼ぶことにしました。
O'Reilly 本は中々インパクトのある表紙になっている。まあ O'Reilly は大体インパクトあるけど。
Docker
種類
クジラ(Whale)
名前
Moby Dock
解説
名前は『白鯨(Moby-Dick)』をもじったもの。Docker コミュニティ内の投票で決定した。
ちなみに上記のロゴは99designsというクラウドソーシングで採用された。デザイナーがコンペ形式で応募できるサービスらしい。
他の候補にはキリンのロゴもあった。これはこれでかわいい。
GitHub
種類
ネコ+タコ(octocat)
名前
Monalisa
解説
もともとデザイナーは octopuss と呼んでいたが、いくら訂正しても GitHub の社員が octocat と呼ぶため、octocat で落ち着いた。
octocat はあの生物種の名称であり、Monalisa という名前は社員の娘が学校の課題で名付けたもの。
詳細はネトラボの記事にある。
GitLab
種類
タヌキ(Racoon dog)
名前
Tanuki
解説
種類はタヌキなのだが、実は名前も「Tanuki」である。スーパーマリオのタヌキマリオにもあやかっているらしい。
このロゴを見てもらうと、何人かにはキツネ(fox)だといわれて、何人かにはタヌキ(racoon dog)だといわれてしまった。そこで(英語ではない単語として)「タヌキ」というのがあると聞いて、それはいい、それにしようと決めました。
また、わたしたちは宮本さんが作ったスーパーマリオの大ファンで、タヌキはスーパーマリオにおいて飛ぶ力を与えてくれます。それと同じように、利用者にはGitLabを活用して飛べるようなパワーを得ていただきたい、という意味も込めています
GNU
種類
ヌー(Gnu)
名前
無し
解説
「GNU(グヌー/グニュー)」というOSのロゴで使用されている。
「GNU」は「GNU's Not Unix」という再帰頭字語になっているため、
「GNU」が何なのかは結局分からないが、「Unix」では無いことだけは確かである。
Rust
種類
カニ(Crab)
名前
Ferris
解説
英語で Crustacean は硬い殻を持つ海洋動物を指すことから、Rust 開発者が自分たちを Rustaceans と呼んでいた。
そこから、Karen Rustad Tölva 氏が「Ferris the Crab」という可愛らしいカニをデザインし、Rust 言語の非公式マスコットになった。
Ferris は「鉄に関連する」という意味の Ferrous をもじったもので、「腐食」を意味する Rust とも意味が繋がっている。
・・・あれ?Ferris くんって非公式なの?
と思ったら、以下のページにも「unofficial mascot for Rust.」と明記されている。
PHP
種類
ゾウ(Elephant)
名前
elePHPant
解説
「PHP」という字がゾウ(elePHant)に一部含まれており、さらに「PHP」という字がゾウを横から見た姿に似ていることから生まれた。
GIMP
種類
GIMP
名前
Wilber
解説
犬のような、狼のような、狐のような Wilber くんは、「GIMP」という種である。
Wilberは "GIMP "という種の動物である。
GIMPとは何かというのは、ある種のジョークだ。
犬だとかキツネだとか、そんなことを言うのはつまらない。
このキャラクターをデザインしたとき、私は特定の動物を念頭に置いていなかった。
特定の動物を思い浮かべていたわけではない。何の説明もない謎ということだ。
Mozilla Firefox
種類
レッサーパンダ(Red panda / Firefox)
名前
無し
(ただし、日本でのみ「フォクすけ」という名前のマスコットキャラクターがいる)
解説
前身のブラウザである Netscape Navigator が Microsoft Internet Explorer に追いやられてしまい、そこから不死鳥のように復活するという思いを込めて「Phoenix」という名前で誕生した。
しかし、Phoenixはソフトウェア企業 Phoenix Technologies の商標権を侵害していたので、公募でFirebirdという名前に決定。
ところが今度はDBに同じ名前があったので、Firefox(レッサーパンダの別名)に改名してようやく落ち着いた。
みなさん命名は慎重に。
Apache Tomcat
種類
ネコ(Cat)
名前
無し
解説
O'Reilly の本に載ることを考慮して動物をマスコットにしようと考え、「自立した強かさ」を持つという意味で Tomcat(雄猫の愛称)を採用。
しかし、猫は O'Reilly の UML 本で使われてしまい、Tomcat 本にはユキヒョウが使われた。
…が、最近の Tomcat 本には念願の猫が使われた。めでたし。
Twitter(現 X)
種類
鳥(Bird)
名前
初代:Larry the Bird
二代目:Twitter Bird
解説
初代の名前はNBAの Larry Bird 選手より。社員がファンだったらしい。
ちなみに初期の Twitter のデザインは GitHub の octocat を描いたデザイナーと同じ、イギリス人デザイナーの Simon Oxley 氏によってデザインされたもの。
実は Twitter も GitHub も依頼されてデザインしたものではなく、オンライン画像マーケットサイトで購入された。
↓最初期の Twitter Bird
MySQL
種類
イルカ(Dolphin)
名前
Sakila
解説
データの大海原を進む、という意味をこめてイルカが採用された。
Sakila という名前は命名コンテストで決まったもの。
「イルカのネーミング」コンテストでユーザーから提案された多くのリストの中から選ばれました。選出された名前は、アフリカのエスワティニ(旧スワジランド)出身のオープン・ソース・ソフトウェア開発者、Ambrose Twebaze氏が提案したものです。
ちなみに Sakila は MySQL が用意しているサンプルデータベースの名前でもある。
PostgreSQL
種類
ゾウ(Elephant)
名前
slonik
解説
「動物のロゴにしたいなら、象なんてどうだい?アガサ・クリスティの小説にもある『象は忘れない』だ」
― PostgreSQL発足時のメーリスより
slonik という名前は「小さな象」を意味するロシア語に由来している。
Apache Hadoop
種類
ゾウ(Elephant)
名前
Hadoop
解説
開発者の一人である Doug Cutting 氏の息子が、大好きな黄色い象のぬいぐるみを「Hadoop」と呼んでいた。
Doug Cutting 氏いわく「短く、綴りも発音も比較的簡単で、意味がなく、他では使用されない、というのが私の命名基準」であり、「名前がソフトウェアと密接すぎると、長く使われているうちに実態と乖離することがあるため、ソフトウェアの名前は意味がないものが望ましい」
こうして「Hadoop」というどこか愛らしくユニークな名前が生まれた。
Mac OS
種類
イヌ+ウシ(Dogcow)
名前
Clarus
解説
昔々、Mac OSで用紙の向きや色を表示するために使用されていたらしい。
Clarus という名前は、 Mark "The Red" Harlan 氏が、当時のアップルのオフィスソフトウェア事業部である「Claris」にちなんで名付けた。
うーん、流石に、知らない。
Plan 9 from Bell Labs
種類
ウサギ(Rabbit)
名前
Glenda
解説
「Plan 9 from Bell Labs」は、ベル研究所で開発された分散オペレーティングシステム。
OS の名前の由来は、エド・ウッドという映画監督の『Plan 9 from Outer Space』という作品。
(ちなみにこの映画は「史上最低の映画」と評されている)
ウサギの名前である Glenda はエド・ウッドの『Glen or Glenda』に由来。
(ちなみにこの映画は「映画史上最低の50作」にランクインしている)
O'Reilly
種類
たくさん
名前
無し
解説
これまで紹介したソフトウェアや OS とは少し毛色が違うが、「IT界隈の動物たち」というタイトルで O'Reilly に触れない訳にはいかない。
O'Reilly Media は技術書を出版している会社であり、特徴的なのは多くの書籍の表紙に動物の木版画をあしらっている点である。
動物を表紙にしたのはデザイナーの Edie Freedman 氏。
彼女は Unix 系の用語(vi、sed、awk 等)を奇妙な響きだと感じた。本の表紙用の画像を探していたとき、19世紀の奇妙な動物の彫刻を見つけ、それが(奇妙な)Unix 用語によく合っていると思い、動物を表紙にすることに決めた。
ちなみに、以下のサイトで O'Reilly 本を動物名で検索できる。O'Reilly 本をジャケ買いしたい人はぜひ使ってみよう。
おわりに
技術記事では無いが、「Idea」枠ということでご容赦いただきたい。
これから作るプロダクトに動物を採用しようと思っている人にとって、この記事が少しでも参考になれば幸いである。
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