Smithy4sを使用したScala.jsでAWS クライアントを使う
Smithy4sとは
Smithy4sは、AWSが開発したAPI定義言語であるSmithyをScalaで扱うためのライブラリです。
Smithyって何?
まず、Smithyについて簡単に説明しましょう。SmithyはAWSが開発したAPI定義言語で、REST APIやgRPCなどのAPIを設計するために使用されます。従来のOpenAPI (Swagger)と同様の目的を持ちますが、より型安全で拡張性の高い設計が可能です。
例えば、以下のように直感的な構文でAPIを定義できます
namespace example.hello
service HelloWorldService {
version: "1.0.0"
operations: [SayHello]
}
operation SayHello {
input: SayHelloInput
output: SayHelloOutput
}
structure SayHelloInput {
name: String
}
structure SayHelloOutput {
message: String
}
Smithyに関しては以下の記事なども参考にしてください。
Smithy4sの主な特徴
Smithy4sには以下のような特徴があります
- 型安全性
- 簡単な統合
- 開発効率の向上
また、Smithy4sはScala.js, Scala Native, JVMのマルチプラットフォームをサポートしています。
現在Smithy4sは以下の用途に使用できます。
- http/restサーバーとクライアントの生成
- pure-scalaなAWSクライアントの生成
- CLIツールの生成
今回は上記用途の中から、Scala.jsでAWS クライアントを使う方法を紹介します。
なぜScala.jsでAWS クライアントを使うのか
まず、なぜScala.jsでAWS クライアントを使うのか?という疑問があるかもしれません。実際、AWSに対しての処理はScalaであればJava用のSDKが提供されているためこちらを使用するのが一般的です。
しかし、昨今のScalaはJVMだけではなく、Scala.jsやScala Nativeといったプラットフォームをサポートしており、これらのプラットフォームではJava用のAWS SDKを利用することができません。そのため、Scala.jsやScala NativeでもAWSを利用するためには別の方法を考える必要があります。
Smithy4sはSmithyを使用してAWSのAPIを定義し、ScalaでAWSクライアントを生成することができます。そのためScala.jsやScala NativeでもAWSを利用することができます。
ではどのようなユースケースでScala.jsでAWS SDKを利用する必要があるのでしょうか?
今回筆者はScalaを使用してサーバレスアプリケーションを開発する際に使用しました。サーバレスアプリケーションでは、バックエンドの処理をAWS Lambdaで行うことが一般的かと思います。この場合、Lambda関数内でAWSの他のサービスを利用する必要がある場合があります。例えば、Lambda関数内でDynamoDBにアクセスするなどです。
Scalaを使ったことがあるもしくは知っている人は「LambdaはJarファイルもサポートしてるし別にJVMでもよくないか?」と思うかもしれません。
確かにLambdaはJarファイルをサポートしていますが、Lambda関数のサイズには制限があります。
また、Lambda関数の起動時間も重要な要素です。
サーバレスアーキテクチャであるLambdaを使用してアプリケーションを構築する際、課題となるのは「コールドスタートにおける処理遅延」だと思います。 「JVMの特性とLambdaの特性の相性が悪い」という話もあります。
これは、JVMの場合フットプリントも大きく、また起動速度が比較的遅いからです。
JVMの特徴に対してLambdaの特徴は以下のようなものがあります。
- ワークロードの同時リクエストが増えてきたら Lambda 関数がスケールアウトし、落ち着いてきたらスケールインする。つまり、大量インスタンスが頻繁に起動、停止を繰り返す
- 使用料金は設定したメモリ確保量x処理時間で決まる。つまり、処理時間が同じならメモリ確保料が多ければ多いほど料金が高くなる
JVMは実行速度自体は高速ですが、起動速度が遅いため、JVMの起動時間も処理時間に含まれるサーバーレスアーキテクチャとの相性はあまり良くないです。
また、Jarファイルを使用した場合Jarファイルはサイズが大きくなりがちです。Lambda関数のサイズには制限があるため、Jarファイルだとすぐにサイズ制限に引っかかってしまいます。
「じゃあDocker Image化してコンテナベースのLambda関数にすればいいんじゃないの?」と思った方もいるでしょう。確かにDocker Image化してコンテナベースのLambda関数にすれば、Lambda関数のサイズ制限に引っかかることはないですが、コンテナベースのLambda関数は一定期間使用していないとスリープ状態になり、再起動時に初動が遅くなったり呼び出し元でエラーになる可能性があります。
これを回避するためには定期的にLambda関数を呼び出す必要があります。HeartBeat用のイベントを作成して、定期的にLambda関数を呼び出すことでコンテナベースのLambda関数をスリープ状態にさせないようにすることができますが、これもまたコストがかかります。
また、AWS公式ではどのくらいの期間でスリープ状態になるかは公開されていないため適切な設定が難しいです。
このような課題に対して、Node.js環境でLambda関数を実行する方法を検討してみましょう。Node.jsには以下のようなメリットがあります:
-
軽量な実行環境
- Node.jsはV8エンジンベースの軽量な実行環境で、JVMと比較して起動が高速です
- メモリフットプリントが小さく、Lambda実行時のコストを抑えることができます
- コールドスタート時の遅延が少なく、サーバーレスアーキテクチャとの相性が良好です
-
小さなデプロイメントパッケージ
- JVMベースのJARファイルは、ランタイムライブラリや依存関係を含めると数十MBから数百MB規模になることがあります
- 一方、Node.jsのデプロイメントパッケージは通常数MB程度に収まります
- 例えば、基本的なAWS SDKの操作を含むLambda関数の場合:
- JARファイル: 約50-100MB
- Node.js: 約2-5MB
- 例えば、基本的なAWS SDKの操作を含むLambda関数の場合:
- Lambdaの関数サイズ制限(250MB)を考慮すると、Node.jsの方が余裕を持ってデプロイが可能です
少し古いですが、Datadogの記事でもLambdaで最も使われているランタイムはPython
で、続いてNode
とこの2つがほとんどの割合を占めています。
このようにサーバーレスアーキテクチャを採用する際には、Nodeのような軽量な実行環境を選択することが一般的です。
では、なぜここでScala.jsを採用するのでしょうか?
Scala.jsを使用することで、Node.jsの優れた実行環境とScalaの強力な型システムや関数型プログラミングの利点を組み合わせることができるからです。
-
型安全性の確保
- Scalaの強力な型システムにより、実行時エラーを防ぎ、コードの品質を向上させることができます
- TypeScriptと比較してより強力な型推論と型チェックが可能です
-
コード共有の実現
- フロントエンド(Scala.js)とバックエンド(Lambda/Scala.js)で同じScalaコードを共有できます
- モデルやバリデーションロジックを共通化し、保守性を高めることができます
-
開発効率の向上
- Scalaの表現力豊かな構文と関数型プログラミングの特徴を活かした開発が可能です
- コンパイル時の型チェックにより、バグの早期発見が可能です
このように、Node.js環境の軽量さとScalaの型安全性を組み合わせることでJVM言語を使用したサーバーレスアプリケーションの課題を解決しつつ、高品質なコードベースを維持することができます。特にAPIサーバー等のバックエンドをScalaで開発している場合は、コードの共有や型の一貫性の面で大きなメリットが得られます。
上記2つは外部?の技術でScalaで書いたコードをいい感じに動かすものなので、今回はScala標準の機能だけでどこまでできるかやScalaでもこんな感じで使えるのかということを知ってもらうためにScala.jsでAWS クライアントを使う方法を紹介します。
プロジェクトの作成
Scala.jsを使用してAWS Lambdaを作成するのですが、ScalaにはFeralというCats Effectを使ってScalaでサーバーレス関数を書き、FaaS(Function as a Service)基盤に適合させる便利なライブラリがあります。
今回はこのFeralを使用してScala.jsでAWS Lambdaを作成します。また、作成したアプリケーションをAWS Lambdaにデプロイするにも設定が必要です。今回はAWS SAMを使用してデプロイします。
FeralとAWS SAMについては以下の記事を参考にしてプロジェクトの作成を行ってください。
これでプロジェクトの準備ができました。
今回作成したプロジェクトは以下で公開しておりますので参考にしてください。
Smithy4sの設定
プロジェクトの準備ができたら次は、Smithy4sの公式ドキュメントを参考にSmithy4sをプロジェクトで使えるように設定を追加します。
sbtプロジェクトのproject/plugins.sbt
にSmithy4sのsbtプラグインを追加します。
addSbtPlugin("com.disneystreaming.smithy4s" % "smithy4s-sbt-codegen" % "0.18.25")
次に、プロジェクトのbuild.sbt
でプラグインを有効にします。
enablePlugins(Smithy4sCodegenPlugin)
これでSmithy4sの設定が完了しました。
次に、Smithy4sでAWS SDKを使用するための設定を行います。
Smithy4sを使用したAWS SDKの公式ドキュメントは以下を参照してください。
Smithy4sはAWS SDKを生成する際に内部でhttp4s
のクライアントを使用しているため、AWS SDKを使用する際にはhttp4s
も依存関係に追加する必要があります。
libraryDependencies ++= Seq(
"com.disneystreaming.smithy4s" %%% "smithy4s-aws-http4s" % smithy4sVersion.value,
"org.http4s" %%% "http4s-ember-client" % "0.23.29"
)
これでAWS SDKを使用するための設定が完了しました。
ここからは、アプリケーションでどのAWSサービスを使用するかに応じて設定を追加していきます。
例えば、DynamoDBを使用する場合は以下のように設定を追加します。
smithy4sAwsSpecs ++= Seq(AWS.dynamodb)
// OR
// libraryDependencies ++= Seq(
// "com.disneystreaming.smithy" % "aws-dynamodb-spec" % "2023.09.22" % Smithy4s
// )
上記設定は全然違うように見えますが、実際はどちらも同じことをしているため好きな方を選んでも問題ありません。
詳細な説明
smithy4sAwsSpecs
はロードするAWSモジュールのリストを保持しています。
Smithy4sはプラグイン内部でロードするAWSモジュールのリストに基づいて、AWS SDKを生成します。
libraryDependencies
に% Smithy4s
を追加しているものは、プラグイン内部でこのキーが付与されているものをコンパイル時にフィルタリングしてモジュールのリストに追加しています。
一方で、AWS.dynamodb
は直接モジュールのリストに追加しています。
このAWS
オブジェクトはSmithy4sのcodegenパッケージ内で自動的に生成されたものであり、実態は以下のようになっています。
object AwsSpecs {
val org = "com.disneystreaming.smithy"
val knownVersion = "2023.09.22"
...
val dynamodb = "aws-dynamodb-spec"
}
そして、プラグイン内部で以下のようにlibraryDependencies
に追加していたものと同じ形式でモジュールのリストに追加しています。
smithy4sAwsSpecsVersion := smithy4s.codegen.AwsSpecs.knownVersion,
Compile / smithy4sAwsSpecDependencies := {
val version = (smithy4sAwsSpecsVersion).value
(smithy4sAwsSpecs).value.map { case artifactName =>
smithy4s.codegen.AwsSpecs.org % artifactName % version
// "com.disneystreaming.smithy" % "aws-dynamodb-spec" % "2023.09.22" こうなっているということ
}
}
このように、smithy4sAwsSpecs
に直接モジュールを追加する場合も、libraryDependencies
に追加する場合も最終的にはSmithy4sがコード生成するために使用する配列の中に同じ形式で追加されるため、どちらを使用しても問題ないということです。
Smithy4sで使用できるAWSサービスの一覧は以下を参照してください。
AWS クライアントの生成
Smithy4sの設定が完了したら、AWS クライアントを生成します。今回はDynamoDBを使用してレコードの作成と取得を行うサンプルを作成します。
まずは、DynamoDBのAWS SDKを生成できるように以下設定を追加します。
smithy4sAwsSpecs ++= Seq(AWS.dynamodb)
追加したら、以下のコマンドを実行してAWS SDKを生成します。
$ sbt compile
コンパイルを実行すると以下ディレクトリにAWS SDKが生成されます。
target/scala-x.x.x/src_managed/main/smithy4s/com.amazonaws.dynamodb
生成されたパッケージを使用することで、DynamoDBにアクセスすることができます。
import com.amazonaws.dynamodb.*
Smithy4sでAWS SDKを使用する際は、以下のようにAWS クライアントを生成する必要があります。
AwsEnvironment
はリージョンや、認証情報を保持するためのクラスです。
AwsClient
は引数で受け取ったサービスに対して操作を行うクラスを生成します。
for
httpClient <- EmberClientBuilder.default[IO].build
awsEnv <- AwsEnvironment.default(httpClient, AwsRegion.AP_NORTHEAST_1)
dynamodb <- AwsClient(DynamoDB.service, awsEnv)
yield dynamodb
これらはcats.effect
のResource
を使用しているため、リソースの解放を自動的に行うことができます。
今回はFeral
を使用しているため、以下のようにIOLambda.Simple
を継承してLambda関数を作成し、初期化処理でDynamoDBのクライアントを生成します。
import cats.effect.*
import fs2.io.compression.*
import feral.lambda.*
import org.http4s.ember.client.EmberClientBuilder
import smithy4s.aws.*
import com.amazonaws.dynamodb.*
object Handler extends IOLambda.Simple[Unit, String]:
override type Init = DynamoDB[IO]
override def init: Resource[IO, Init] =
for
httpClient <- EmberClientBuilder.default[IO].build
awsEnv <- AwsEnvironment.default(httpClient, AwsRegion.AP_NORTHEAST_1)
dynamodb <- AwsClient(DynamoDB.service, awsEnv)
yield dynamodb
override def apply(event: Unit, context: Context[IO], init: Init): IO[Option[String]] =
??? // DynamoDBのレコードを作成する処理を記述
クライアントの使用
AWS クライアントを生成したら、DynamoDBにレコードを作成する処理を記述します。
override def apply(event: Unit, context: Context[IO], init: Init): IO[Option[String]] =
init.putItem(
TableName("Smithy4sSandboxTable"),
Map(
AttributeName("id") -> AttributeValue.s(StringAttributeValue("1")),
AttributeName("name") -> AttributeValue.s(StringAttributeValue("Alice"))
)
).as(Some("Success"))
上記のコードは、Smithy4sSandboxTable
テーブルのid
とname
フィールドにレコードを作成する処理です。
このように、AWS クライアントを使用することで、DynamoDBに対して操作を行うことができます。
試しにJavaのAWS SDKを使用したコードと比較してみましょう。
private val dynamodb = AmazonDynamoDBClientBuilder.defaultClient()
dynamodb.putItem(
"Smithy4sSandboxTable",
Map(
"id" -> new AttributeValue("2"),
"name" -> new AttributeValue("Bob")
).asJava
)
どうでしょうか?ほぼ同じですよね?これはSmithy4sがAWS SDKを生成する際に、Smithyの定義に基づいて生成しているためです。
Smithy4sはここから単にString型を受け取るのではなく、Newtypeという独自の型を使用しているためより型安全性を保ちながらAWS SDKを使用することができます。
上記の設定を追加したら、以下のコマンドを実行してScalaで作成したLambda関数をjsファイルとしてビルドします。
$ sbt npmPackage
するとtarget/scala-(Scalaバージョン)/npm-package
にファイルが生成されます。
.
├── functions
│ └── insert-dynamodb
│ ├── target
│ │ └── scala-3.5.2
│ │ ├── npm-package
│ │ │ ├── index.js
│ │ │ └── package.json
このファイルをAWS SAMを使ってデプロイします。
AWSへのデプロイ
AWS Lambdaにデプロイするためには、AWS SAMを使用します。
AWS SAMを使用してDynamoDB
のリソースを作成するためには、以下のようにType
をAWS::Serverless::SimpleTable
に設定してTableName
を指定することで作成できます。
Smithy4sSandboxTable:
Type: AWS::Serverless::SimpleTable
Properties:
TableName: Smithy4sSandboxTable
DynamoDB
はこの設定だけでリソースを作成できます。
次は上記DynamoDB
にレコードを挿入するLambda関数を作成します。
作成するDynamoDB
にはLambda関数からアクセスするため、作成したDynamoDB
のテーブルにアクセスできるようにLambda関数にポリシーを設定する必要があります。
InsertDynamoDB:
Type: AWS::Serverless::Function
Properties:
CodeUri: functions/insert-dynamodb/target/scala-3.5.2/npm-package/
Handler: index.Handler
Runtime: nodejs20.x
Architectures:
- x86_64
Policies:
DynamoDBCrudPolicy:
TableName: !Ref Smithy4sSandboxTable
template.yamlの全体
AWSTemplateFormatVersion: '2010-09-09'
Transform: AWS::Serverless-2016-10-31
Description: >
smithy4s-sandbox
Sample SAM Template for smithy4s-sandbox
# More info about Globals: https://github.com/awslabs/serverless-application-model/blob/master/docs/globals.rst
Globals:
Function:
Timeout: 3
Resources:
InsertDynamoDB:
Type: AWS::Serverless::Function
Properties:
CodeUri: functions/insert-dynamodb/target/scala-3.5.2/npm-package/
Handler: index.Handler
Runtime: nodejs20.x
Architectures:
- x86_64
Policies:
DynamoDBCrudPolicy:
TableName: !Ref Smithy4sSandboxTable
Smithy4sSandboxTable:
Type: AWS::Serverless::SimpleTable
Properties:
TableName: Smithy4sSandboxTable
今回はCodeUriにLambda関数のコードが格納されているディレクトリを指定してデプロイを行います。Feralによって生成されたfunctions/insert-dynamodb/target/scala-3.5.2/npm-package/
を指定しています。ここは各自のプロジェクトに合わせて変更してください。
設定が完了したら、以下のコマンドを実行してデプロイします。
AWSへデプロイする際には認証情報が必要です。認証情報の設定は各自の好きな方法で設定してください。
$ sam deploy
デプロイが完了したら、AWS環境のDynamoDBにテーブルが作成されているはずなのでAWS CLIを使用してレコードを取得してみましょう。
aws dynamodb scan --table-name Smithy4sSandboxTable
{
"Items": [],
"Count": 0,
"ScannedCount": 0,
"ConsumedCapacity": null
}
AWS コンソールでの確認
AWSコンソールでDynamoDBのテーブルが作成されていることを確認できます。
Lambda関数も同様にAWS CLIを使用して確認できます。
aws lambda list-functions
{
"Functions": [
{
"FunctionName": "smithy4s-sandbox-InsertDynamoDB-ITah9d1K2ULS",
"FunctionArn": "arn:aws:lambda:ap-northeast-1:xxxxxxxxxxxx:function:smithy4s-sandbox-InsertDynamoDB-ITah9d1K2ULS",
"Runtime": "nodejs20.x",
"Role": "arn:aws:iam::xxxxxxxxxxxx:role/smithy4s-sandbox-InsertDynamoDBRole-6BkmoajkQy4O",
"Handler": "index.Handler",
"CodeSize": 4061116,
"Description": "",
"Timeout": 3,
"MemorySize": 128,
Lambda関数の実行
Lambda関数を実行するには、以下のコマンドを使用します。
aws lambda invoke --function-name smithy4s-sandbox-InsertDynamoDB-ITah9d1K2ULS --payload '{}' output.json
AWSコンソールでの実行
AWSコンソールからもLambda関数を実行することができます。
以下画像のように空のJSONを入力してテスト実行してみましょう。
Lambda関数を実行すると以下のようなレスポンスが帰ってきます。
{
"StatusCode": 200,
"ExecutedVersion": "$LATEST"
}
ステータスコードが200で返ってきているため、正常に実行されていることがわかります。
DynamoDBのテーブルを確認すると、レコードが追加されていることが確認できます。
aws dynamodb scan --table-name Smithy4sSandboxTable
{
"Items": [
{
"id": {
"S": "1"
},
"name": {
"S": "Alice"
}
}
],
"Count": 1,
"ScannedCount": 1,
"ConsumedCapacity": null
}
これでScala.jsでAWS クライアントを使用してDynamoDBにレコードを追加するLambda関数を作成し、実際に動作確認を行うことができました。
Jarファイルとの比較
Smithy4sとScala.jsを使用することでNode環境でAWS SDKを使用することができました。ここでJarファイルとの比較を行ってみましょう。
上記画像からJarファイルは単純な処理であっても32.6MBとなっており、Node.jsの3.9MBの約10倍のサイズとなっています。
また、実行時間についても以下のようになりました。
Java 実行時間
Node 実行時間
上記画像からもわかるように、Node.jsの方がJavaよりも実行時間が短くなっていることがわかります。
このようにNode.jsの方がJarファイルよりも軽量で実行時間も短いため、サーバーレスアプリケーションを開発する際にはNode.jsを使用するのが適していると言えます。
Scala.jsを使用することで、Node.jsの軽量さとScalaの型安全性を組み合わせることができるため、サーバーレスアプリケーションの開発においても有用であると言えるのではないでしょうか。
この計測で実際に使用したJarファイルを生成しているコードは以下に置いてあります。
(おまけ) LocalStackでのテスト
AWS クライアントを使用する際には実際のAWSアカウントを使用することもできますが、テスト時やローカル環境での開発時にはLocalStackを使用することをおすすめします。
LocalStackはAWSのローカルエミュレータで、AWSの主要なサービスをローカルで実行することができます。
LocalStackはDockerコンテナが提供されているため、Dockerを使用して構築しておきましょう。
LocalStackの構築
services:
localstack:
container_name: localstack
platform: ${DOCKER_PLATFORM:-linux/amd64}
image: localstack/localstack:latest
ports:
- "127.0.0.1:4566:4566"
- "127.0.0.1:4510-4559:4510-4559"
environment:
- DEFAULT_REGION=ap-northeast-1
- DEBUG=${DEBUG:-0}
- LAMBDA_EXECUTOR=${LAMBDA_EXECUTOR:-docker}
- DOCKER_HOST=unix:///var/run/docker.sock
volumes:
- "/var/run/docker.sock:/var/run/docker.sock"
extra_hosts:
- "host.docker.internal:host-gateway"
LocalStackを使用することで実際のAWSアカウントを使用せずに、ローカル環境でAWSサービスをテストすることができます。
Smithy4sはLocalStackをサポートしているため、LocalStackを使用してAWS クライアントをテストすることができます。
Smithy4sで構築したAWSクライアントをローカル環境に適用するには、リクエストをLocalstackのホストとポートにリダイレクトするミドルウェア(Client[F] => Client[F]関数)
を作成する必要があります。
ミドルウェアの例は以下となります。
import org.typelevel.ci.*
import fs2.compression.Compression
import cats.effect.*
import org.http4s.*
import org.http4s.client.Client
object LocalstackProxy:
def apply[F[_]: Async: Compression](client: Client[F]): Client[F] = Client { req =>
val request = req
.withUri(
req.uri.copy(
scheme = Some(Uri.Scheme.http),
authority = req.uri.authority.map(
_.copy(
host = Uri.RegName("host.docker.internal"),
port = Some(4566)
)
)
)
)
.putHeaders(Header.Raw(ci"host", "host.docker.internal"))
client.run(request)
}
次にこのミドルウェアを使用したAWS クライアントを生成します。
AwsEnvironment
では、LocalStackで使用するクレデンシャル情報を設定します。
そして受け取るClient[F]
に対してLocalStackのホストとポートにリダイレクトするミドルウェアを適用することで、LocalStackでAWS クライアントを使用することができます。
import cats.syntax.all.*
import cats.effect.*
import fs2.compression.Compression
import org.http4s.client.Client
import smithy4s.*
import smithy4s.aws.*
object LocalstackClient:
private def env[F[_]: Async: Compression](
client: Client[F],
region: AwsRegion
): AwsEnvironment[F] =
AwsEnvironment.make[F](
client,
Async[F].pure(region),
Async[F].pure(AwsCredentials.Default("dummy", "dummy", None)),
Async[F].realTime.map(_.toSeconds).map(Timestamp(_, 0))
)
def apply[F[_]: Async: Compression, Alg[_[_, _, _, _, _]]](
client: Client[F],
region: AwsRegion,
service: Service[Alg]
): Resource[F, service.Impl[F]] =
AwsClient(service, env[F](LocalstackProxy[F](client), region))
公式のサンプルコードでは特定のサービス専用にクライアントを作成していましたが、今回は汎用的なクライアントを作成するためにSmithy4sのService
を型パラメーター(Alg
)を指定して受け取るようにしました。
これで使用したいサービスに対してクライアントを生成できます。
先ほど作成したDynamoDB
用のクライアントを作成したLocalstackClient
を使用したコードに書き換えておきましょう。
override def init: Resource[IO, Init] =
for
httpClient <- EmberClientBuilder.default[IO].build
dynamodb <- LocalstackClient(httpClient, AwsRegion.AP_NORTHEAST_1, DynamoDB.service)
yield dynamodb
これでSmithy4sを使用してLocalStack
でAWS クライアントを検証するための設定が完了しました。
AWS SAMとLocalStack
を使用する場合はaws-sam-cli-localを使用することでsamlocal deploy
を実行するだけでlocalstack
へデプロイができるため今回はこちらを使用します。
aws-sam-cli-local
を使用するためにはPythonの環境が必要なので以下記事などを参考に用意しておきましょう。
Localstack上のリソース確認などはawscli-local
を使用するので合わせてインストールをしておきます。
$ pipenv install aws-sam-cli-local
$ pipenv install awscli-local
# samlocalコマンドを利用するので、pipenvのshellに入る
$ pipenv shell
# localstackにデプロイ
$ samlocal deploy
LocalStack
上にDynamoDB
のリソースが作成されたらまずは、以下コマンドを実行してDynamoDB
のテーブルにレコードが存在していないことを確認しておきます。
$ awslocal dynamodb scan --table-name Smithy4sSandboxTable
{
"Items": [],
"Count": 0,
"ScannedCount": 0,
"ConsumedCapacity": null
}
次にLocalStack
のホストとポートにリダイレクトするミドルウェアを適用したAWS クライアントを使用して、DynamoDB
にレコードを作成する処理を実行してみましょう。
$ samlocal local invoke InsertDynamoDB
コマンドを実行すると以下のようにLambdaの処理で返却していたSuccess
が表示されるためレコードが作成されたことが確認できます。
START RequestId: 87926c3f-b3be-426b-a4b8-61eb99ad7ecf Version: $LATEST
END RequestId: d0573e25-cdfa-4f53-94df-2c2c507e515b
REPORT RequestId: d0573e25-cdfa-4f53-94df-2c2c507e515b Init Duration: 0.28 ms Duration: 2327.89 ms Billed Duration: 2328 ms Memory Size: 128 MB Max Memory Used: 128 MB
"Success"
先ほど実行したコマンドを再度実行してDynamoDB
のテーブルにレコードが作成されたことを確認してみましょう。
以下のように作成したLambda関数内でputした内容と同じレコードが作成されていることが確認できます。
$ awslocal dynamodb scan --table-name Smithy4sSandboxTable
{
"Items": [
{
"name": {
"S": "Alice"
},
"id": {
"S": "1"
}
}
],
"Count": 1,
"ScannedCount": 1,
"ConsumedCapacity": null
}
これでLocalStackを使用してもSmithy4sを使用したAWS クライアントをテストすることができました。
まとめ
今回はScala.jsとSmithy4sを使用してAWS SDKを生成し、DynamoDBにレコードを追加するLambda関数を作成しました。
最近JVMだけではなくScala JSやScala Nativeに対応しているライブラリが増えてきていると感じており、Scala.jsを使用してLambda関数を使用したサーバレスアプリケーションを開発しやすくなってきていると感じていました。しかし、Lambda関数を使用する際にはAWS SDKを使用することが多いため、その他のライブラリが使えたとしてもAWS SDKが使えないと採用するのは難しいかなとも感じていました。
Scala.jsではJS用のAWS SDKを使用してfacadeを用意することもできますが、facadeを作成するのは手間がかかるためあまり積極的には使用していませんでした。
そんな中今回のSmithy4sというライブラリをTypelevelのコミュニティで知り、このライブラリがAWS SDKを生成することができるということであったため実際に触ってみることにしました。
初めはSmithy定義書からコードを生成しているということで結構イマイチなのでは?と思っていましたが、実際に触ってみると本家?のJava AWS SDKとほとんど同じようなコードが生成されておりScala.jsで使用することもできるということでかなり使いやすいと感じました。
LocalStackを使用してローカル環境でも簡単に動作させられる点も個人的に良かったです。また、AWS SDKのSmithy定義からコードを生成しているためJavaのAWS SDKと比較してもほぼ同じコードなっており、これであればAPIサーバーのようなバックエンドアプリケーションでも共通してSmithy4sのAWS SDKを使用することができるのではないかと感じました。
今現状で難点があるとすればよくわからないエラー(ブログ内でも書いた)がたまにあるということと、Smithy4s側ではAWS SDKのコードを事前に生成していないため使用側でコード生成が発生しコンパイル時間が長くなってしまうという点があります。
まあ、この問題自体は事前にコンパイルしておいたプロジェクトを公開しておくなりすれば解消できる問題なのでそこまで気にする必要はないかなとも思いました。
まだまだSmithy4sは開発途中であるため今後も機能追加やバグ修正が行われると思います。筆者はScalaが好きでできるならなんでもScalaで書きたいマンなので、Scala.jsやJVMでAWS SDKを使用できるこのライブラリを今後も使っていこうかなと思っています。
長くなりましたが、最後まで読んでいただきありがとうございました。
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